バック・トゥー・ザ・フローズン   作:真将

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第12話 妾はソナタの事が心底嫌いだ……

 終わっても良いと思った……

 オリビア様と……皆と共になれると……

 

 そのソーマトーリコールは一体誰のモノなのか?

 

 妾には『トワイライト』しか無かったから……

 だから、その為に戦って死ぬなら本望だった……

 でも……貴方は……妾の手を掴んだ……

 

 ムービーエンディングめいた静寂の中、彼女は想う――

 

 共に行こうと言ってくれた……

 もっと広い世界があると……

 妾が一人で歩き出せるその日まで……

 側に……居てくれると……

 十分だった……

 その言葉だけで妾は……十分だった……

 だから……

 

 ! この映像は!? 腕を掴んでいるのはスメラギではないか!? 虹色がミキサーめいて回転する空間で彼女は崖際キャッチされている!?

 

 だから……貴方は生きて……妾は……

 

 その時、冷凍庫めいた静寂空間に一つの影が現れる。おお、このソーマトーリコールは『氷結オトメ』のモノだと言うのか!? では、近づいてくる影は一体……

 

「ラナヤ」

 

 影の正体は……スメラギ!? そして、ラナヤとは……『氷結オトメ』の名前だと言うのか!?

 すると、『オトメ』はゆっくりと眼を開ける。

 

 

 

 

 

「……」

 

 間違いない。間違えようがない。

 『氷結オトメ』は、あの『トワイライト』の崩壊に飲み込まれて亜空間に消えたハズのラナヤだ。

 後に彼女が生きているのかどうかを主様(マイマスター)に問うた事があったが、結果は限りなく低いとの事。

 しかし、ゼロではないとも言ってくれた。故にいつの日か――

 

「お主と再会できると思っていた」

 

 ラナヤを覆うひし形の氷塊は彼女の氷遁によって生み出され、『旧世界の力』により更に強固になっている。

 某はメンポを解除。彼女を前には素顔にて立たねば言葉は何も通らないだろう。

 すると、氷塊の中の彼女がゆっくり眼を開けた。

 

「――久しぶりでござるな」

 

 某は微笑みかける。

 

「世界のどこかで、お主が現れたと聞いたならば真っ先に駆けつける事は主様(マイマスター)に許可を得ている。そして、お主が一人で歩めるその日まで共にいる事も」

 

 聞こえているのかはわからない。いや……きっと伝わる。

 

「某がお主への言葉は単なる口約束ではないぞ? 意思を持つ雷風。歩く森。月の都。天空の巨城――」

 

 そして、新たな仲間達との旅で更に知った事もあった。

 

「お主は一人ではござらん。誰もがお主を忘れても某は決して忘れぬ。この還ることの無い輪廻と共に未来永劫、心に刻み続けていく。だから――」

 

 こちらへ微睡みの眼を開けているラナヤへ告げる。

 

「もう、一人で行くな。ラナヤ」

 

 その時、ラナヤは頬に一雫の涙を流した様な気がした。すると、氷塊は上部から分解されるように消え去って行く。

 

 

 

 

 

 ゴウランガ……『アトランティス』の研究員達ではビクともしなかった『氷結オトメ』の氷塊が、ダストめいて消滅しているではないか!

 スメラギの言葉から何を感じ取ったのか……『氷結オトメ』……いや、ラナヤは水中めいた速度でゆっくりと地面に足をつけると、

 

「ラナ――」

「このうつけが!!」

「アイェェ!?」

 

 駆け寄ったスメラギへチャンプボクサーじみたカウンターストレートを叩き込む!

 メンポを解除していたスメラギへのダメージは100%! そのままコマめいてキリモミダウン! しかし、殴ったラナヤも力を使い果たした様に倒れ込んでしまったぞ?

 

「くっ……はぁ……はぁ……」

「ラナヤ!? 何を……いや、大丈夫か!?」

 

 スメラギは呼吸を荒くするラナヤへ駆け寄る。パンチャーストレートの疑惑よりも、彼女の体調が優先だ! ヤサシイ!

 しかし、ラナヤは近づいてきたスメラギの胸倉を掴んで憤怒の表情を向ける。一体ナゼ!?

 

「貴様は……なにを……している! 妾を……妾なんかを……追いかけて来るなど……陛下の……オリビア様の意思を……全部無駄にする気か!?」

 

 どうやらラナヤの意識は、ソーマトーリコールの最期から今の瞬間にダイレクトしている様だ。

 故に、ディメンションワールドに落ちた自分をスメラギが追いかけてきたのだと思っているのだろう。

 

「ラナヤ」

 

 そんなラナヤの怒りと混乱を鎮める様にスメラギが彼女の手を優しく掴む。

 

「細かい事情は後で説明する。だが、コレだけは言わせてくれ」

 

 その言葉にラナヤは息を整えながらもスメラギを見上げた。

 

「お主を迎えに来た。共に行くぞ!」

 

 その言葉にラナヤは視線を下に向け、身体から力が抜ける様にスメラギにもたれかかる。

 

「――――本当に……妾はソナタの事が心底嫌いだ……」

 

 その言葉はバットコールであるが、ラナヤの口調は何よりも安堵したモノだった。

 

 

 

 

 

「よし、では脱出するぞ」

 

 スメラギはラナヤを背負うと、ヒキャク荷物めいて帯で縛り、落ちない様に固定。

 氷塊で自身を護っていたからか、ラナヤの身体はほとんど動かなかった故にスメラギの背に身を預ける。

 

「……スメラギ。この借りは……必ず返す」

「某はいつでも構わぬでござるよ。今は、療養の事だけを考えられよ」

「……まさか、ソナタに背負われる日が来るとはな……」

「これも“人生”でござる。おっと、そうでござった」

 

 スメラギは一度止まると、背のラナヤに対してアイサツをする。

 

「ドーモ、ラナヤ=サン。【烈風忍者】スメラギです」

「……なんだ、その変な自己紹介は。それに【烈風忍者】だと?」

「アトランティス人特有のアイサツでござる。それと、【烈風忍者】は親友からの助言で名乗ってるでござるよ」

「…………ドーモ、スメラギ……=サン。【白髪鬼】ラナヤ……です」

 

 顔は見えないが、口調から恥ずかしそうにそう返してくるラナヤ。ヤッターカワイイ!

 

 スメラギは嬉しそうに微笑むとノーティムとの合流に走り出した。

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