「ドーモ、【烈風忍者】スメラギです」
ヒノキ産の馬車天井を破壊し、目の前に着地したワザマエは全身が黒ずくめの覆面ニンジャによるモノだった。
『千年華』ブランドの覆面、黒装束、マフラー。それらは夜闇に煙めいて溶け込む事ができるだろう。
「くっ……ドーモ、スメラギ=サン。ブレイジングヒートです」
オキャク――ブレイジングヒートも同じ様に両手を合わせてアイサツを交わす。
見ている方々には異様な光景だろう。しかし、コレは彼らにとって必要不可欠な事なのだ!
アイサツに始まりアイサツに終わる。
これが『アトランティス』が栄華を極めた理由である。
相手を敬う心を持たなければ、ファック&サヨナラするアウトローと何ら変わらない。故に『アトランティス』の住人は必ずアイサツから始まり、アイサツに終わる。
これは、『アトランティス』の政治参謀でもあるオダ・ノブナガ=サンのワノココロが基準として伝わっている。
「スメラギ=サン……何故、俺に……『シックス・ナイツ』に敵意を向ける!?」
『シックス・ナイツ』は『ゴルド騎士団』総長シャクラカンより選定された六人の強者達であり、王国のガーディアンリーダーに任命されているエージェント達である。
王族護衛とはハタケチガイだが、国を護ると言う点では対立関係には無いハズ。
故にブレイジングヒートはスメラギから放たれる異常な敵意のデドコロが解らない。
「王族警護だからだ、ブレイジングヒート=サン。シャクラカンは下法に触れた。『トワイライト』を繰り返させはせぬ」
「『トワイライト』? ゲホウ? スメラギ=サン。一体何を――」
「次はこちらのインタビューだ」
圧を増すスメラギにブレイジングヒートは言葉を飲み込み押し黙る。コワイ!
「『凍結のオトメ』はどこに隠されている?」
「! スメラギ=サン!? どこでソレを!?」
ブレイジングヒートの動揺は仕方のないモノだ。
一週間前まで気さくなに挨拶を交わし、ジョーギで楽しく遊んだ程にフレンドなスメラギに別人のように詰められてるのだから。
「やはり知っているのだな。ブレイジングヒート=サン。言葉を選んだのは友でもあったソナタへの慈悲だ。『旧世界』の力を得たソナタは以前のソナタではない」
「な、何を言ってるスメラギ=サン! 俺は俺だ! 何も変わっていない!」
「信じるべきは言葉ではなく身を挺した信頼」
スメラギの圧が膨れ上がる。それは語る言葉など無意味と告げていた。
「『ゴルド王国』を『トワイライト』の二の舞にはさせぬ! せめて、カイシャクは某の手で渡してやろうぞ! ブレイジングヒート=サン」
「ふっ……ふざけるなぁぁぁ!!」
途端、ブレイジングヒートが火だるまめいて燃え上がり、一瞬で馬車は炎に包まれる。
「アイェェェェ!?」
ウンテンシュはスメラギのアンブッシュに意味も分からずに馬車を進めていたが、松明めいて燃え上がる客車にはリアリティショック寸前だ。
「イヤー!」
火だるまめいたブレイジングヒートに対し、スメラギは渾身の手刀にてカイシャクを狙うも、
「イヤー!」
ブレイジングヒートの炎はポップコーンめいて弾けると客車を二つに分ける爆発を引き起こす。ゴウランガ!
「アイェェェェ!?」
スメラギは『千年華』産によるメンポと装束にてヤケド回避! 落下する馬二頭とウンテンシュをマフラーを使い、引き寄せプリンセスキャッチにて着地。罪のない彼らを危険に晒したせめてものワビだ。ワザマエ!
「これで新しい馬車を買うと良い。巻き込んで済まなかった」
インゴットの束を渡したスメラギは、夕立にて濡れた地面を蒸発させつつ着地するブレイジングヒートへ向き直る。
火だるまめいていた炎は少しだけ収まり肩に残る。しかし、これはスメラギに萎縮したワケではない。
「お、オタッシャデー!!」
ウンテンシュはインゴットを抱えると馬に乗って場を離れる。
これから起こるイクサに巻き込まれれば、間違いなく死ぬ。
「…………」
「…………」
向かい合うスメラギとブレイジングヒート。
上空の客車爆発は夕立にホームインしていた住人たちが外の騒ぎに気づき始めるまで――一分弱!
「イヤー!」
スメラギがクナイ投擲。しかし、ブレイジングヒートは身体を揺らめかせ、ソレを通過させた。
ヒートミラージュ。ソレがブレイジングヒートの技の一つである。
周囲との温度差を利用し対象の標準を誤認。まるで、蜃気楼に石を投げつけるか如く、攻撃は当たらない。ワザマエ!
「俺に飛び道具は効かぬぞ! スメラギ=サン!」
イヤー! ブレイジングヒートが攻める。スメラギに接近すると手刀を一閃。スメラギは大きくステップを踏み、ラビット回避!
すると、背後の近くの銅像にブレイジングヒートの手刀がトーフめいて突き刺さる。
「そして、近接も効かぬ! このヒートテックは攻防一体の必勝技! 唯一の欠点は持続時間だが、シャクラカン=サンのインストラクションによってそのディフェクトは無くなった!」
景色を歪める程の熱量を腕に集中する事であらゆる対象をヒートブレイクする。
対するスメラギは――
「もはや、見切った!」
怯まず、衰えず、ブレイジングヒートに構えを取りつつ宣言する。
「最後の言葉を選ぶが良い! ブレイジングヒート=サン!!」
「ならば……焼け死ね!!」
ブレイジングヒートがスメラギへ接近! 僅かにも触れれば火ダルマ必至! アブナイ!
「イヤー!」
「! なんだと!?」
おお、スメラギは互角にブレイジングヒートと体術を交えて打ち合っているではないか。
読者諸君は彼の腕に注目して頂きたい。
スメラギの手は水の膜に覆われている!
夕立により降り注いだ周囲の水。それを『水魔法』で集め、ウォーターガントレットを生成。これによりブレイジングヒートの熱を低下させ、その先にある彼の生身と体術を交えているのだ!
「馬鹿な! この程度の小細工で、俺のヒートテックが!?」
「イヤー!」
一瞬の動揺。ソレを的確に見抜いたスメラギの手刀がブレイジングヒートの身体を貫く!
「ぐふ……」
致命傷! 心臓を貫かれたブレイジングヒートは死を避けられない。
「おのれ……こんな……所で……だが……スメラギ=サン……お前は終わりだ……」
「…………」
ジュソの様にブレイジングヒートが呟く。スメラギはソレをイチゴンイック聞き逃さない。
「他の『シックス・ナイツ』……シャクラカン=サン……そして……グランドブレイカー=サンが貴様を逃さぬだろう……」
そして、ガク……と事切れたブレイジングヒートからスメラギは手刀を引き抜くと丁寧に寝かせる。
「元よりそのつもりだ。友よ」
そして、『白炎』にて火葬めいて燃やすと夜空を見上げた。
ザワザワと人の眼が多くなる最中、跳躍し、夜闇に紛れるバッタめいて屋根へ跳び上がる。
「『氷結のオトメ』……近くに来ているのだな、ラナヤ」
そして、薄闇の中へ消える。目指すは首都『アトランティス』の研究区画――テスラコーボーであった。