バック・トゥー・ザ・フローズン   作:真将

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第4話 テスラ工房

「私の調べによると、内部構造は思ったよりも複雑で、世界各地から多くの存在が拉致監禁されているわ」

 

 ノーティムはポーチから情報を集めて記憶するマジックキューブにて地下施設(アンダーテール)の見取り図を魔法的立体映像として目の前に出力する。

 コレは『永遠の国』が彼女へ行った時に、そこの技術を魔法的に再現したのだ。実にワザマエである。

 

「地下3階は内部関係者の居住階。4階から下では非人道的なモノの開発が進められているわ」

「やはり、秘密主義故に人の出入りはかなり制限されているようだな」

「ええ。外に出る時も監視の『首輪(マーカー)』が着けられるそうよ。あらかじめ決められた時間を過ぎたり、余計な事を喋ったら吹き飛ぶみたいね」

 

 コワイ! シークレットの徹底具合を前にモータルの命などカミフブキよりも儚いコトガラだ。

 

「5階は実験をする区画。ここに私の目的がある」

「うむ」

 

 ノーティムは『ゴルド王国』とはデスリバーを挟んで向こう側にある『精霊の国』のエージェント・ウォッチである。

 その肩書は【妖精王】に任命されし四人の『マスタークラス』の一人であり、誘拐された同胞たちの行方を捜していたのだ。

 その過程で『ゴルド王国』へ辿り着き、スメラギとコンタクト。協力関係を結ぶ事で互いの目的をナガシソーメンめいたムーヴにて達成しようという利害関係である。

 

「『テスラ工房』は思ったよりも複雑で慎重ね。恐らく研究員達は皆、天涯孤独で主に地下で生活しているわ」

「それ程に隠したいモノがある裏付けでもある。先ほど、ブレイジングヒート=サンにインタビューし、『氷結オトメ』の存在を確認してきた」

「あら、もう彼らに手を出して良かったの?」

 

 ムーホンをやるとは聞いていたが、時期が早いことにノーティムは猫めいて首をかしげる。

 

 『シックス・ナイツ』に手を出すと言う事は、イッキウチコワシの宣言の様なモノ。太陽が昇る頃にはスメラギの役職は王族護衛からバウンティメンバーとして『ゴルド王国』全域へ伝わるだろう。

 

「時は一分一秒を争う。それほどに『旧世界の力』は侮れぬ」

 

 スメラギから静かで冷静なアトモスフィアが流れる。ノーティムとしては彼程の実力者がコレほどまでに言わしめる『旧世界の力』の異端性に緊張感を覚えざる得ない。愛用しているキセルを仕舞う。

 

「まるで使命のようね。けど、ルールー王は貴方にとても懐いている。……凄く悲しむと思うわ」

「……全てを護る為だ。国も陛下も分かってくれる。その為にも『氷結オトメ』は必ず奪還せねばならぬ」

 

 その眼は『ゴルド王国』のより良き未来の為にカミカゼでさえ厭わない瞳だ。

 

「それなら地下6階。ここだけはまだ調査が未達成だけど、『氷結のオトメ』は他の階層では確認出来なかった」

「ならば間違いなくそこだ」

 

 スメラギは『氷結のオトメ』を見たことはない。しかし、確実にそこに居ると断言できる。

 

「間もなく、シャクラカンが二日の眠りから目覚める。このタイミングは『シックス・ナイツ』が王城へ招集され自然と警備は薄くなるハズよ」

 

 するとノーティムは腰のポーチから一つの小瓶を取り出した。一見、コショウビンめいた何の変哲もない小瓶であるが、それは彼女が造ったマジックアイテムの一つである。

 

「準備は良い?」

「うむ」

 

 小瓶のコルクを取ると、おお……何と言う事だ。スメラギの姿が、水に溶ける絵の具が如く穴に吸い込まれていくではないか。

 

『相変わらず、面妖な魔術だ』

「ふふ。マジックボックスは苦手?」

 

 いつの間にか、スメラギは瓶の中に立っていた。

 ノーティムが使ったのは普段彼女が収納に使っているマジックボックスである。生物を入れるのはジンドーに反する為にドートク的に禁止されているが、確実に潜入するならナビゲートは彼女に任せる方が良い。

 

 そして、ノーティムはポンポンと自身の服を叩くと、ワザマエ! 魔女風味からテスラコーボー研究員じみたコスチュームへ変貌したではないか!

 

『このまま、『テスラ工房』の裏口から侵入するわ。目的のモノを見つけたら合図を送るわね』

「頼む」

 

 マジックボックスからは外の様子はわからない。

 故にスメラギはノーティムの合図を待つ間、ザゼン呼吸にてコンディションを整えつつその時を待つ。

 

 

 

 

 

「ヒヒヒ……ヒヒヒ……イイヨー、スバラシ! ブラボー!!」

 

 一人のマッドサイエンティストが『テスラコーボー』の6階で毎度の如く、コールを上げていた。

 

 彼の名前はテスラ25世。

 『テスラコーボー』では代々トップインテリジェントが跡目を継ぎ、彼らは“テスラ”の名を名乗る。彼は25代目だ。

 

「アァ……イイヨー、もうすぐシャクラカン=サンが目覚め、君は自由になる……そして、私のヨメになるのだ!!」

 

 テスラ25世の目に映るのは『氷結のオトメ』。彼は、ひと目見た時から氷塊の中で停止するオトメにヒトメボレし、ヨメとする事を勝手に決めていたのだ。コワイ!

 

「ハヤク! ハヤク! ヒヒヒー!」

 

 今日がそのウェディングデーとなる事にステラ25世は疑う事なくその時を待ちわびる。

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