『氷結オトメ』が異常な注目を集める理由として、発見当初からあらゆるムーブメントに対して僅かにも溶けない氷塊にあった。
ひし形の氷塊は冷気を発しているものの、削っても炙っても、崩壊することは無く、僅かに損傷すれば、マキ戻しめいて元の形に戻る。
ブレイジングヒートのヒートテックでも、グランドブレイカーのナックルパートでもビクともしない。しかし、シャクラカンは己が能力によって『氷結オトメ』の力の一部を手に入れた。
ヤッター! と喜ぶ研究員たちへシャクラカンは『氷結オトメ』から全ての力を抜き取る為の準備をする様に告げて場を去る。
そして、これまで多くのヒドイ実験の末に実験体から汲み取った、技術、魔法、特性をフルに使い、シャクラカンの能力を100%作用させる魔法陣――
『ゲンカイドレイン』を新たに組み上げ『氷結オトメ』を囲う様に設置。
万全のコンディションで挑むべく、シャクラカンは5年ぶりに眠りに着き、ネオキからネムケが取れた数時間後に『氷結オトメ』の力を全て奪い取る予定だ!
その際に残るであろう抜け殻――『氷結オトメ』の身体はテスラ25世の希望で彼が管理する事になっている。
図らずとも、スメラギのムーホンは良くも悪くもギリギリのタイミングだったのだ!
「リーダー! シャクラカン=サンのアトモスフィアを検知!」
「起きました、ヤッター!」
「『氷結オトメ』、今だ動きはありません!」
ヤキンシャチクのモータル研究員は24時間体制で『氷結オトメ』を監視している。
更にテスラコーボーは首都『アトランティス』における、特徴的なアトモスフィアの様子を常に検知していた。
「ヒヒヒフ。ヤッター。シャクラカン=サンは数時間後にここに来ますよぉ! ミナサン! 万全なオモテナシの為にヤキンです!」
「ヤキンヤッター!」
「ヤキン手当ヤッター!」
「リーダー!」
「んん? どうしました?」
一人のモータル研究員がテスラ25世に報告する。
「サンダーエフェクト=サンのアトモスフィアがスゴイ数値です!」
「周囲のモータルがリアリティショックを起こす程です!」
「この数値は……バトルレイド!? 戦闘中だと思われます!」
「実験体が逃げ出した報告はありませんが……」
テスラ25世が情報を見ようと、テーブル魔法陣へ歩み寄ったその時、
“緊急事態デスヨー! サンダーエフェクト=サンから報告! 侵入者アリ! 侵入者アリ!”
めざまし時計めいて、鳴り響くアラート。
なんと、サンダーエフェクトはスメラギと体術を交えながらも状況を報告していたのだ!
「アイェ!? 侵入者!?」
「サンダーエフェクト=サンとイクサ中のアトモスフィアは……え?」
「スメラギ=サンだと?」
モータル研究員たちがフィレットめいて首を傾げるのは仕方のない事だ。
彼らに、いや……スメラギが『氷結オトメ』を狙う理由など本人以外に知り得ない事だからである。
「なぜスメラギ=サンが!?」
「ムーホン!? いや、そんなハズは……」
スメラギのチューギは『ゴルド王国』の誰もが知る。優れた人格者だ!
「全員、ダマリナサイ!」
混乱する場をテスラ25世の声が制する。アラートだけが鳴り響く、異質な静寂に包まれた。
「結果がスベテです。サンダーエフェクト=サンとイクサしているのは間違いなくスメラギ=サンでしょう。アトモスフィアの数値をみる限り、間違いない。良いですか! 全員、ヨクキイテネ!」
彼は自分たちが何をするべきなのかを知っている。
「万が一にもスメラギ=サンがここを目指す事になってはなりませんよ! シャクラカン=サンが来るまでロージョーです! 緊急魔法陣を起動! この部屋に続くスベテの通路をフーサです!」
「「「ハイ! ヨロコンデー!」」」
「いいですか! 確実なオモテナシを――」
「! リ、リーダー!!」
「私のトーク中ですよ! 口を挟むのはペナルティだと――」
モータル研究員の一人は、オドロキに満ちた目でテスラ25世の後ろ――『氷結オトメ』を指さしていた。
テスラ25世も振り向く。おお……『氷結オトメ』が僅かに目を見開いているではないか!
一体、何に反応したのか? 彼らの会話の中に彼女のニューロンを刺激する言葉でもあったのだろうか?
「ヨメ!? すぐに解析だ!」
「エ!? フーサは……」
「そんなモノは後だ!」
テスラ25世は氷塊に張り付く様に『氷結オトメ』へ詰め寄る。
「ヨメ! もうすぐ会えるぞ! 手をつなぎ、ランデブーしよう!」
すると、『氷結オトメ』は微睡みにいるのか、ゆっくり口を動かす。
「ンン!? 何を言っている!? おい! 解析ィ! 解析はまだか!?」
「アイェェェェ! チョットマッテ!」
初めての現象にテスラ25世のテンションはウチョウテンだ。
「でました!」
「見せろぅ!」
『氷結オトメ』が何を言っているのか? その解析結果とは!?
「……『オリビア』……『ノブリス』……『トワイライト』……『スメラギ』? スメラギ=サンだと!?」
数多の単語の中で唯一、自分たちでもわかる単語は“スメラギ”の名だ!
「ヨメッ! スメラギ=サンと、どう言う関係だ!」
「あっ、また解析シタ!」
『氷結オトメ』はまだ何かを呟いている様だ。テスラ25世はソレを読み上げる。
「エット……『ウルサイ』?」
その時、膨大な魔力が『凍結オトメ』より溢れ出るとソレはツメタイ風となって空間の全てを一瞬で凍らせた。ゴウランガ!
「アイ……ェェェェ……」
当然、場にイアワセタ彼らは断末魔を上げる間もなく、瞬間冷凍改良マグロめいて動きを停止する。
「…………」
静寂になった場で『氷結オトメ』の瞳は再び閉じる。誰かを待つように――