インフィニット・ストラトス―空を駆ける渡鴉―   作:D-ケンタ

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第二話 クラスメイトは……

新学期。それは新入生たちが青春に胸を躍らせる、そんな日である。ここIS学園も例に漏れず、多くの学生たちが入学し、これからの生活への期待に胸を膨らませていた。

しかし、周囲と反対に絶望した表情を浮かべている人物が一人。

 

(最悪だ…)

 

彼の名前は織斑一夏。幸か不幸か、女性にしか扱えないはずのISを男性で初めて起動してしまった男子学生だ。

ほぼ強制的にIS学園へと入学させられた彼だが、現在の状況は精神的にかなりキツく感じている。

周囲から突き刺さる、まるで動物園の珍獣でも見るような目線。加えてつい先程自己紹介でスベり、担任である自分の姉からの愛のあるツッコミを受けたことで、更に気分は落ち込んでいた。

 

「あ、織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「い、いえっ。副担任ですから、これくらいは。ところで織斑先生。その…」

「ああ。アイツなら調せ――ゴホン、準備に時間がかかっているらしく、遅れるそうだ」

 

二人の会話に一夏は少々疑問を感じたが、この状況ではそれもすぐに霧散し、再び気の重そうな表情を浮かべた。

 

(千冬姉が担任か…ただでさえ落ち着かないのに、気の抜けない生活になりそうだ…)

 

その後、千冬からの挨拶に女生徒たちが大音量の黄色い声援を上げたりしたこともあり、より一層そう思った一夏であった。

 

 

SHRのあと、かつての幼馴染と再会し、久しぶりに会話を交わしたりした一夏。

そして入学して最初の授業の時間がやってきたのだが、ここで彼は壁にぶつかってしまった。

 

(まずい…全然わかんねえ)

 

初日の授業ということで油断はしていたが、それにしても理解が追いつかない内容に、冷たい汗が流れる。

とはいえ、授業の内容は基本中の基本のところらしく、実際周囲の生徒たちは問題なく理解しているようで、彼のような頭を抱える生徒はいなかった。

 

「えっと、今の時点でわからないところはありますか?」

「あ、あの!」

「では織斑君、どうぞ」

「ほとんど全部分かりません!」

 

一夏が縋るようにそう言うが、真耶はまさかの返答に驚愕するばかりである。そして他にも分からない者がいるか尋ねたが、当然他に一人もいるはずもなく、一夏はマジかよ、と焦りの表情を浮かべた。

そこにいきなり自身の頭部に衝撃が走り、気付けばSHR後一時教室を後にした千冬が戻ってきて、その手に出席簿を構えていた。先の衝撃は、千冬が弟の醜態に制裁を与えたものであった。

 

「お前、入学前の参考書は読んだか?」

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

その発言によって更に出席簿の制裁が一夏を襲う。

実の弟とはいえ、信じられないことをやらかしたという事実に、流石に呆れ顔を抑えられず、ため息を吐く。

 

「後で再発行してやるから一週間以内で覚えろ。いいな」

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと…」

「やれ」

「はい…」

 

有無を言わせぬ圧力にNOとは言えず、頷くしか無い一夏。

その様子に千冬は再びため息を吐き、視線を真耶へと向ける。

 

「えーと。授業中ではありますが、クラスメイトを紹介します」

 

真耶のその発言に教室内がざわつく。

 

「諸事情により準備に手間取っていたが、先程ようやく終わってな。入ってこい」

 

千冬が呼びかけると、教卓側のドアが開けられた。そして、入ってきた人物を見て、驚きのあまり教室内が一瞬静寂に包まれる。

 

「え…?」

「嘘」

「まさか…」

 

ところどころから困惑する声が上がる。その人物は教卓の側まで来ると、そこで初めて生徒たちへと体ごと視線を向けた。

 

「俺以外にも、いたのか…」

 

一夏も含め、全員が驚いたのも無理はない。

高めの身長、精悍な顔立ち、色素が抜けたような色合いの頭髪、更に特徴的なのは引き込まれるような赤い瞳。一夏と同じ()()()()()()に身を包んだその人物は、紛れもなく男であった。

 

「いろいろな事情により報道はされていませんが、織斑くんと同じ男性での適合者です。では自己紹介をお願いします」

「……」

 

真耶が彼にそう声をかけると、彼は少しの沈黙の後、視線だけを真耶の方に向けて無言で頷いた。そして、再び生徒たちの方を見ると、首に巻いてあるチョーカーらしきものに手を触れた。

 

『―――レイヴンだ。よろしく頼む』

 

口を全く動かさずに発せられた、まるで合成音声のようなその声。感情が全く感じられないその声を聞いた瞬間、生徒全員が自身に嫌な汗が流れるのを感じたという。

そのせいか、一夏のとき以上に最小限の自己紹介であったが、それにリアクションする者は誰一人居なかった。

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