生粋のE.G.O.I.S.T   作:ペスト医師団

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『誰も知らないアブノーマリティ』に触発されて!
やっぱりとても良い二次創作を見ると自分も作りたくなりますね!


Keep the Self,Build the Ego.
プロローグ『ZAYINのEGOで侵蝕するな』


 

「ぐワぁあァアあ!?」

 

 まるで、全身が引き裂かれてるかのような痛みを感じる。こんなに痛いのに出血はしていないのか、血の匂いも暖かさも感じない。

 そしてなぜか、激しい飢餓感を感じていた。

 

「食べサせてクれ……新鮮ナ肉を……!」

 

 口から勝手に出てくるうわ言を気にする余裕もない。身体も勝手に動いて、周りの人間が動揺したのが分かった。

 

 どうしてこんなことに。俺だって、いままでずっと腹ぺこだったわけじゃない……痛みも突然だった。

 

 確か、あの『羽ばたき(ウィングビート)』という防具を装着してからこうなったような……。

 

 と、こうなった原因を考えていくうちに、冷静になったのか、全身の感覚が少し戻って……俺が、後ろから羽交い締めにされていることに気づいた。

 そして、その拘束に抗おうとして、俺の身体が勝手に暴れているのも。

 

「あ……」

 

 ボーッとあたりを見渡すと、目の前で、一緒に入社した同期のバレルが、焦った顔して俺を見てる。意外といいやつなのかも知れない。

 まだ上手く身体が動く気もしないけど、手でも振ってやろうか。

 

 バレルは耳元の端末で、誰かと連絡を取り合ってるようだった。俺が叫んだり暴れたりする音で、端末からの声も聞き取りづらそうだ。

 

 だけど、上手く聞き取れたようで、バレルは……

 

「──了解。アスカ、一旦寝てろ!」

 

 バレルは、未だ暴れている俺に警棒を振った。そして、俺の視界は暗くなっていく──。

 

 

 

「うっひゃぁ〜、こんなに酷い侵蝕現象は初めて見たよー」

 

 声が聞こえて目が覚めると、寝転んでる俺の腕や身体をまさぐる、怪しげな白衣の女がいた。俺は驚いてその手を振りはらう。

 

「えっ、えっ!?」

 

「おっと……やっ、スーパールーキー。よく眠れたかい?」

 

「えっと、まぁ……はい。ここは……」

 

 そこは医務室というより、幻想体(アブノーマリティ)……この会社の化物の収容室のような、強化ガラスと硬質な壁に囲われた白い部屋だった。いや、この世界の俺はまだ、収容室に行ったこともないんだったか……。

 

「ここはE.G.O系等の実験室だね。室内のクリフォト抑止力を調整する設備が整ってるんだよ」

 

「へー……あなたは?」

 

「福祉チーム所属のメイベル。平時はE.G.O装備の点検と職員の装備適正のチェックを担当してる。趣味でときどき研究業務にも手を出してるけどね」

 

 メイベルさんはボサボサな黒髪の女性だ。猫背気味で、なんというか、ほとんど元の世界の俺みたい見た目だった。いや、こんなに顔が良いわけではなかったか……。

 

「キミは新人くんだよね? 入社初日にZAYIN装備で侵蝕事故を起こしたスーパールーキー!」

 

「あー、はい。新人のアスカ(明日香)って言います。まだ所属チームも決まってないんですよ」

 

 ちなみに事故(それ)のせいで、やっと出会えると思っていた幻想体(アブノーマリティ)もまだ会えていない。いや、そんな化物、会わないなら会わない方がいいんだが。

 

 そもそも、俺はこの世界よりもっと安全な世界で生まれたわけで、そこまで度胸があるわけでもない。先送りになっただけにせよ、化物に会うまでの時間が伸びて、少し安心してる自分がいる。

 他の人からすれば、同期と比べて俺はかなりビビってるように見えるだろうけど、仕方ない。俺はすでに、幻想体(アブノーマリティ)がどんなものか知ってしまっているんだから。

 

 この世界は、俺が元の世界でやっていたゲーム、『Lobotomy corporation』や『Library of Ruina』の舞台になっていた世界だ。特に、『Lobotomy corporation』は、俺が入社したロボトミーコーポレーションの本社を舞台にしたゲームで、つまりこの会社の雰囲気を、俺はすでに掴んでると言っていい。

 

 外も大して変わらないが、この会社、ロボトミーコーポレーションはとにかく命が軽い。まずここにいる幻想体(アブノーマリティ)の殺意が高すぎるし、幻想体(アブノーマリティ)の種類によっては職員を死に至らせること自体が幻想体(アブノーマリティ)を効率的に管理する最適解になったりする。

 

 生き残りたいのであれば、せめて幻想体(アブノーマリティ)の力を引き出す装備、『EGO』を装着しなければならない。特に防具は、生存率を上げるのに最重要と言っていい。

 幸運にも俺の働くここ、ロボトミー0-8091支部には余ったEGO防具が残っていたから、初日からそれを装備できた……ハズだったんだけど。

 

「それで、侵蝕事故って……」

 

「ああ、治りかけてるけど、自分の腕を見てみなよ」

 

 メイベルさんにそう言われて自分の腕を見てみると……やばい。

 腕の皮膚が裂けて、羽や歯が生えていた。肌自体も、ところどころ緑色になっているような気がするし……これで治りかけ?

 

「あと、この写真も見てみなよ。キミの口の中! 一般の人間より1.5倍多く歯が……」

 

「それはいいんですけど……原因はなんなんです?」

 

「分からない」

 

「えっ」

 

「本来侵蝕事故は、クリフォト抑止力がなんらかの原因で弱化したり、適正の低い職員がE.G.Oを着用した結果、装備の力に強く感応して、精神的・肉体的にも幻想体(アブノーマリティ)の影響を受けてしまうというものなんだけど……」

 

 つまり、化物っぽくなってしまうと。

 

 俺はまた自分の腕を見る。これはやはり、羽ばたき(ウィングビート)装備の抽出元である幻想体(アブノーマリティ)──『妖精の祭典』の影響ということなんだろう。

 

「だけど、記録が正しければ今朝のクリフォト抑止力に有意な弱化は起きていなかったし……キミも精神鑑定は受けたはずだね?」

 

「はい。つまり、装備の適正に問題があったわけでもないんですか?」

 

「E.G.Oの適性──アスカの精神鑑定におけるどの値も、著しく低いわけではなかった。キミの能力が低かったというわけではないということだ」

 

「あー、ありがとうございます?」

 

「まっ、そもそも、羽ばたき(ウィングビート)自体、大して適性が必要な方でもないしね。つまり、キミの侵蝕事故の原因は、分からない!」

 

 変な状況に、俺は頭が痛くなる。もしかしたら、歯が1.5倍多く生えたゆえの痛みなのかもしれないが。心なしか親知らずみたいな痛み。

 

「いっそキミがそういう特異体質だ、と考えるほうが簡単だな。もしそうなら、キミ本当に人間? って感じだけど」

 

「……」

 

「ま、しばらくはスーツのまま作業しなよ。こちらもいろいろ実験の準備を進めとく。ああもちろん、キミがE.G.Oを着るための実験だよ」

 

「わざわざそんなことするんですか? ありがとうございます」

 

「気にするなよ。久々に面白そうな研究テーマができたんだ、ボクも楽しみにしてる」

 

 ニコッと笑って、メイベルさんは俺に手を差し出した。俺はその手を握り返す。

 

「長い付き合いになりそうだね。よろしく!」

 

「あはは、そうならないことを祈ります……。とにかく、よろしくおねがいします」

 

 握手を終えると、メイベルさんは「じゃ、ボクも仕事があるから!」と実験室を出ていこうとした。ちょっと待ってくれ。

 

「あの! 俺の腕って治るんですかね?」

 

「ん? ああ、室内のクリフォト抑止力を強めておいたから、そのうち直ると思う。まっ、それまでここで休んでおくといい」

 

「あ、はーい……」

 

 そんな感じで、あの『ロボトミーコーポレーション』の初日勤務で、俺は、ZAYIN 防具すら安全に着れず、夕方まで実験室に放置された。




次回のアブノーマリティ→
『それが怖くて不安で、仕方ないのです』
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