レイアウト崩れてないといいなあ……!
欲の指輪の観測業務中。すこぶる暇だ。
だが、下手なことして頭が爆発してもシャレにならないから、何もできない。
いまこうしてツール型をずっと着けていること自体、リスクのかたまりではあるんだけどな!
……そうだ、この指輪の『声』でも聞いてみるか。なにかわかるかもしれない。
ギフトってのは確か、
そんなのでも声が聞こえたんだから、アブノーマリティ自体からでも、その声を聞くことはできるんじゃないか?
その予想は当たって、断片的なアブノーマリティの声を俺の意識は聞き取った。
……うんうん。……ふむ。ふーん、なるほど?
あんまり悪意のあるような声は聞こえなかった。これは、着けてても安全……ということなのだろうか。
俺が首を傾げてると、廊下のスピーカーからなにか聞こえた。
未だに俺はコントロールチームから指示をもらったことはないが、一応アナウンスは聞いておくようにしてる……んだけど。
……? なんだ? この気持ち悪い音……。
ぐじゅぐじゅと、妙な異音が流れた後に、やっとアナウンスが始まった。
『コントロールチームから全職員へ通達する。試練が始まった。抽出チームによると、赤錆の黎明とのこと。コントロールチームから全職員へ通達……』
繰り返されるアナウンスに、俺は寝耳に水をドバドバ入れられたような気分を味わっていた。
えっ、試練? あるの?
いや、抽出チームが存在するなら、あるか……。
それはいいとしても、赤錆の試練ってのもなんなんだ。ゲームにはなかったぞ。
と、いうか。
俺は自分の薬指を見た。あれ、これって……。
すると、なんだか地面が大きく揺れたような気がして、廊下の奥の扉が、開いた。
俺はすぐ無線で報告を済ませ、懺悔の剣を構える。
「そんな気がしたよ、ちくしょう……」
それが試練だと、すぐに分かった。
『赤錆の黎明』は最初、ただの壁に見えた。だけど、あんなところに壁があるはずはなかったし、壁の正面からはぶらんと、二本の人間の腕が浮き出ている。
あと、この壁は少しずつ、動いていた。ジリジリと、俺の方に。
でも、そのスピードは遅い。
向こうから来るより先に、俺は間合いを詰めて、両手で懺悔を振るう。
だけど、壁は高く、俺の攻撃にびくともしない。ほんと、どうやってあの扉を通ったんだ?
あんまり効いてる感じもしないが、攻撃を続けるしかないだろう。斬撃を繰り返す。
そしたら、『赤錆の黎明』の腕が伸びて、俺のみぞうちを殴ってきた。
「ぐっ……」
向こうも黙って攻撃を受けるわけじゃないみたいだ。俺はうめき声を上げながら、その腕を両方とも斬り落として、距離を取る。
態勢を立て直したいのもあるけど、『赤錆の黎明』がだんだん距離を詰めてくるから。
少しずつ後ろに下がらないと、押し潰されてしまいそうだ。
進行方向の後ろから攻撃できるならそれが一番いいんだけど……この動く壁の横に、通り抜けられそうな隙間はない……か、ら……なぁ……?
まずいことに気づいてしまったかもしれない。
俺は後ろを見た。廊下は行き止まりだ。
行き止まりだった。逃げ場のない動く壁が目の前に迫っているのに。
……やばい、このままじゃ普通に圧死する。
「う、うおぉおお!」
焦りから、俺は懺悔を強く握って、必死に何度も斬りかかった。
さっき斬り落としたのにまた新しく腕が生えてくるが、それらも片っ端から斬り落とす。
ときおり攻撃を食らうが構ってられない。こいつを倒さなきゃあと10分も経たないうちにご臨終だ。
だけどこいつ、普通に硬い。あと四、五歩下がれば行き止まり。全然壊れない壁を見て、俺の内心に焦りが生まれてきた。
これを切り抜ける方法は……
俺は舌打ちする。今回だけだ、今回だけ。
……EGOを抑えていた力を緩める。というか、抑えを全部なくす。そして、装備とギフト、指輪の、すべての声に、耳を傾ける。思考を、EGOで塗り替えてやる。
ずっと、こうすることを考えてた。
バレルとクロイーの話を思い出す。『
それなら、後のことは考えない。いまこの試練を突破するために。
懺悔の茨が、剣を持つ手から腕、肩、身体中にかけて絡みついていく。
引っかき傷が全身に作られて、いままで作られたすべての傷が開いていった。
指輪の宝石がその価値を誇示するように輝きだす。
俺は壁に剣を振り下ろした。ガリガリガリと壁を削り、薄れていく感覚の中でも、確かな手応えを感じる。
もう、一度……!
「う、うあぁアあっ!」
壁を何度も斬り続けながら、侵蝕を進める。侵蝕を進めながら、壁を削る。
罪悪感と、苦痛の違和感と、安住が、ぐちゃぐちゃに入り混じって、ぐちゃぐちゃに入り混じったそれを、剣にこめ続けた。
間違いなく、自我が薄れていくのを感じる。
廊下中が俺の血液と茨で満たされている。
もう少しだ。もう少しで、壁を壊せる。もう少しで、意識を失う。
俺は迷いなく、剣を上段に構える。
ヒビの入った壁に、風穴を……!
「……アスカ! そっちにいるのか!?」
試練の向こうから、声が聞こえた。つい、振り下ろそうとした剣の動きを止める。
……そういや、報告といっしょに支援要請を出してたんだった。
EGOをもう一度抑えこんで、何事もなかったかのように、声に答えた。
「もうちょっとで試練を倒せそう! だけど、早くしないと押し潰され……ゴホッ!ゴホッ……」
「……! いま助ける! もう少しこらえろ!」
全身と喉が痛い……侵蝕のせいで喉にも傷が出来てたか。激しく咳が何度も出て、武器を取り落としてしまう。
だけど、俺が咳きこみ終わった瞬間に、ドゴォン!と轟音が鳴って、壁はブチ壊された。
衝撃波に、俺の身体も地面に転がる。血溜まりに倒れたから、べちゃりと血が散った。
「ほんとうにもう少しだったな。この短時間『懺悔』でよくやれたもんだ」
壁の向こうには、葉っぱと
倒れたまま、俺は試練を倒した男に声を上げた。
「ゲホッ。武器を変えたのか、バレル……」
「ああ、『焦燥』ってEGOだ。てかお前、血が……」
「ああ……早く試練を倒さなきゃだったから、わざとEGOを侵蝕させたんだ」
「は……? よく戻ってこれたな」
周りを見ると、廊下はおそろしく血まみれになっていた。傷は大体閉じたけど、出た血は残るらしい。
ゴホッ。ああ……さっき咳した口からも血が出てるな。
なんだか眠くなってきた……。
「バレル……俺をメインルームで回復させといてくれ……。俺はちょっと、寝る……」
「えっ、おい、アスカ!」
目をつむって、俺は気絶した。
試練のレイアウト大丈夫そうですか?
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かっこいい!
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大丈夫だよ
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ちょっと違和感あるかも
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バチバチに崩れている。