生粋のE.G.O.I.S.T   作:ペスト医師団

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紺青の黎明『気づきの産声』

 

 

 

 

 

 

 

 

紺青の黎明

 

気づきの産声

 

はじまりの音が鳴った。ただそれだけのことで、涙を流す私たちは満ち足りていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺青の黎明

 

気づきの産声

 

はじまりの音が鳴った。ただそれだけのことで、涙を流す私たちは満ち足りていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーっ、アスカ先輩!」

 

「ん、リアか。昨日はありがとうな」

 

「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」

 

「ところで、なにしに来たんだ?」

 

 処理の終わった書類を放置してボーッとしていたら、昨日知り合ったリアが来た。福祉チームのメインルームになんの用だろう。

 

「訓練が終わってヒマなので、社内のパトロールしてました。アスカ先輩はなにしてたんですか?」

 

「そういえば懲戒チーム所属だったな。俺も観測ログの整理が終わって暇なとこだよ。せっかくだしついてっていいか?」

 

「え、こちらこそいいんですか! それなら、私の話し相手になってくださいよ」

 

 一人で歩くのさみしかったんですよーと愚痴るリアに少し笑って、椅子から立ち上がる。どうやら、福祉チームの廊下も回るつもりらしい。

 

「一緒に来てくれてありがとうございます、懲戒チームって人数少なくて、お喋りに飢えてたんですよー」

 

「年中人手不足だってのはよく聞くよな。殉職数が多いからだろうけど、お前は死ぬなよ?」

 

「もちろんです! ……それに、アスカ先輩もですよ。昨日は大丈夫だったんですか?」

 

「うっ」

 

 痛いところを突かれた。

 

「だ、大丈夫だよ。バレルには超怒られたけど。というか後ろで見てたよな?」

 

「あれっ、気づかれてました? ふふ、けっこう真面目に怒ってましたよね、バレル先輩。心配してくれて良い人じゃないですか」

 

「まあね……」

 

 あんまり口には出さないけど、バレルにはけっこう感謝してる。俺の体質も、ちょくちょく気にかけてくれているし。

 

「あと、ギフトの方は大丈夫ですか? 昨日はちょっとしんどそうでしたけど」

 

 ああ、と俺はかぶってる帽子のつばを触る。特に苦痛は流れこんでこない。

 

「それも大丈夫だと思う。昨日の洞察作業で十分慎重ランクが上がったから、もう侵蝕はしなさそう。……ああ、リアはそんなこと心配しなくても大丈夫だからな? これは俺の体質ってだけだから」

 

「あ、それは聞いてます。噂によると体質が珍しすぎて、アブノーマリティとしてアスカ先輩の報告書が書かれているとか……?」

 

「その噂は嘘だけど……というか、嘘だと思いたい」

 

 アブノーマリティの影響を受けやすいアブノーマリティとか、どんな冗談だ。

 

 そんな話をしながら歩いていると、ちょうど俺の実験室(別名:俺を実験する部屋)に通りかかった。

 

「まあでも、けっこうな頻度で収容室に入らされてるから、言えてるかな……。ほら、あれが俺の実験室」

 

「これが噂のアスカ先輩収容室ですか。ほんとにここで宴会してるんですね」

 

 窓越しに転がってる酒の缶を見て、リアは謎の感心をしてる。またゴミ捨てずに帰ったなクロイー……。

 

「というか、誰かに宴会のこと聞いたのか?」

 

「クロイー先輩とおしゃべりする機会があって! アスカ先輩のことトラブルメーカーとか言ってましたよ」

 

「まあ間違ってないよな」

 

「でもー、朝会ったときにクロイー先輩に話しかけたら、ちょっと冷たかったんですよね」

 

「あいつ意外とオンオフしっかりしてるからなー」

 

 クロイーはすぐ色んな人と仲良くなるけど、仕事中はけっこう塩対応される。

 

 初日に命罪さんの作業してる俺を助けてくれたし、ちゃんと優しいやつではあるんだけど。

 

「あ、そうだ……」

 

 リアがなにか言いかけたとき、廊下のスピーカーからノイズが出て、アナウンスが始まることを知らせた。

 

 反射的にキョロキョロとスピーカーの場所を探す。だけどそれより先に、廊下の天井に異物を見つけた。

 

「アスカ先輩、あれって……とびら?」

 

 そう、扉だ。素朴な木製の扉が、そんなとこにあるはずのない扉が、天井をくり抜くように地面と水平に存在していた。

 

『「ガチャリ」』

 

 スピーカーと天井の扉から二重に音が聞こえて、扉が開いた。そして開いた扉から、なにか黒いものが落ちてくる。

 

 それが何かは、アナウンスが教えてくれた。

 

『コントロールチームから全職員へ通達。試練が始まった。色は紺青。時は、黎明』

 

 『赤錆の黎明』のあとは『紺青の黎明』か……知らない試練がポンポンと……!

 

「アスカ先輩、試練って……?」

 

「前の試練のときはいなかったんだっけ。ときどき出てくるアブノーマリティみたいなやつだよ。つまり、鎮圧対象だ」

 

「なるほど、懲戒チームの出番ですね!」

 

「黎明は一番弱い方だ……けど、ZAYIN装備の職員一人じゃ手に余るくらいには強い。警戒は怠るなよ」

 

 俺たちとは逆の方向へ這って行く試練を見る。

 

 扉から落ちてきた紺青の黎明は、ごみの塊だった。木片、ほこり、紙くずとかのゴミの集合体の手足が黒いゴミ袋から生えて、地面を這っている。

 

 ゴミ袋の口は開いていて、廊下中にゴミを撒き散らしていた。それが通った後には、足の踏み場もないくらいのゴミが床に散らかっている。

 

「多分これ踏んだらデバフを食らうんだろうな。回りこんで攻撃するか」

 

「えっ、すごいアスカ先輩……! 慎重ランクが上がったって話はウソじゃなかったんですね!」

 

「失礼な。昨日が明らかに慎重じゃなかったみたいじゃないか」

 

「はい!」

 

 冗談交じりに、俺たちは懺悔の剣を取り出しながら通路を走って、廊下の反対側に回りこむ。正面から試練と向かい合った。

 

「行くぞ」

 

「いつでも!」

 

 俺は両手で、リアは片手で懺悔の剣を振り下ろす。

 

 攻撃のたびにゴミ袋が裂かれていく。それと同時に、ゴミが舞って、身体にまとわりついた。

 

 どうせゴミがくっついてくるなら回りこむ必要なかったか? それに、ゴミがついても、少なくとも鎮圧には支障なさそうだ。

 

 そのまま二人で攻撃を続けていると、試練がゆっくりと腕を振り上げていた。

 

 攻撃の前兆かもしれないと思った俺はすぐ後ろへ退く。だけどリアを見ると、夢中で攻撃を続けていた。

 

「リア、危な──」

 

「きゃっ!」

 

 試練がゴミの腕を振り下ろして、リアがこっちへ弾き飛ばされる。いや、予想より強いな?

 

「だ、大丈夫か?」

 

「う……正直だいぶ痛いです」

 

「おーけい……ちょっと下がってろ」

 

 一撃一撃が重いタイプか。まあ、即死がない分、赤錆の黎明よりかはマシだ。

 

 前へ出て攻撃を続ける。ゴミ袋の裂け目が増えていくと、だんだん動きも鈍くなってきた。

 

「……斬る!」

 

 最後に懺悔を大きく振り下ろすと、完全にその動きは止まった。はあ……倒せたみたいだけど、身体がゴミまみれだよ。

 

「リア、終わっ……」

 

 後ろを振り向こうとしたら、試練の死体から爆発音が鳴って、大量のゴミが辺りにぶち撒けられた。

 

 当然、俺の背中も更にゴミまみれになった。

 

「……たぞ」

 

「だ、大丈夫ですか? 目が死んでますよ……」

 

「大丈夫……そういや、試練が始まる前になにか言いかけてたけど、なんて言おうとしてたんだ?」

 

「あ! そうですね、えっと、私もその宴会、行ってもいいですか……?」

 

「ああ、良いと思うよ。ちょうど今日宴会あるからタイミングも良いし。あーでも、福祉チームのメンツしかいないから疎外感感じるかもしれないけど」

 

「それは気にしないので大丈夫です! いやー楽しみだなぁ」

 

 その言葉に少し笑って、俺はメインルームに戻るリアについていこうとする。

 

 あれ……。

 

「アスカ先輩、どうかしました?」

 

「いや、なんか……」

 

「あ、アスカここにいたんだ、探したよー。教育チームに頼んでね、キミに追加訓練を受けてもらうことに……」

 

 廊下に入ってきたメイベルさんが、俺を、特に装備が見えなくなるくらいゴミまみれの背中を見て、半笑いになった。

 

「うわあ、こりゃひどい。紺青の黎明を鎮圧していたんだね」

 

「メイベルさん、これは……」

 

「そのゴミはつけばつくほど移動速度が下がるんだよ。まあ少し待てば消えるさ」

 

「えっ? じゃあアスカ先輩、今まったく動けないんですか?」

 

「……そうみたいだ」

 

「クックックッ、いんやぁ、久しぶりに見たな、ゴミまみれの新入り!」

 

「ご、ごめんなさい、アスカ先輩。でも……ふふっ」

 

 メイベルさんは爆笑して、リアは申し訳なさそうに少し笑って、俺はため息をついた。

 

 はあ、すこぶる不快な試練だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

紺青の黎明

 

気づきの産声

 

大きな声で泣いた、泣き続けていた。それに気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺青の黎明

 

気づきの産声

 

大きな声で泣いた、泣き続けていた。それに気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

試練のレイアウト大丈夫そうですか?

  • かっこいい!
  • 大丈夫だよ
  • ちょっと違和感あるかも
  • バチバチに崩れている。
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