U社の巣のとある水族館で展示されていた、巨大な黒い板の一部です。一部ですが、十分すぎるほど巨大です。長い間それは板ではなく、水槽として展示されていました。いつからこれを展示していたのか、いつこれの展示室が増築されたのかを知る者はなく、関係者はみな首をかしげました。
板の材質はガラスに近いですが、光を透過せず、どのような場所に設置されても向こう側は見えません。板は黒い状態を維持します。研究者は『別の空間の黒い物体を投影している』可能性を示唆しました。
板の近くでは時折巨大な轟音が鳴り響きます。断続的な揺れが発生することもあり、ある職員はそれを『すぐ近くに巨人がいるかのようだ』と表現しました。
〈職員K-4352の死亡記録〉
当該アブノーマリティは脱走時、施設のどこかに『窓』を作ります。あちらからこちらの景色を見るための物なので、窓と表現するのが適切でしょう。
職員K-4352は自らの生命力に自信があり、当該アブノーマリティの攻撃を受けても生きていられると豪語していました。彼がその観測実験に協力を申し出たのもその自信からでした。
単純な実験でした。当時まで即死の職員しか出さなかった当該アブノーマリティの攻撃を受け、生き残ることで、職員にアブノーマリティの詳細を観測してもらう。
誰かは人命の安全を掲げ反対しましたが、当施設でこのような実験は珍しいことではないため、多くの人は黙認しました。
管理人は施設で最高の防護服を職員K-4352に着用させました。彼の能力は彼が誇示するように高く、職員K-4352は十分以上に装備を活用することができていました。
結果的に、その実験は成功しました。職員K-4352は生き延び、彼は観測記録に数行の情報を残すことが出来ました。
『窓』が作られた廊下に残り続けた職員K-4352は、数時間黒い何かに隠され見えなくなりましたが、それが通り過ぎたあと、廊下に倒れていた職員K-4352の身体は原型を留めており、立ち上がり、コミュニケーションも可能な状態でした。
しかし、その言葉はパニックになる寸前かのように整理されておらず、声もかすれており、最後には同じことを言うばかりでした。『あれは恐ろしい』と。
証言を整理するため、録音した音声は情報チームによって分析される必要がありました。
実験の数日後、職員K-4352は自殺しました。
この実験により観測された内容は以下の通りです。
・アブノーマリティは巨大だ
・我々が見ていたのは一部に過ぎない
・窓から出現したそれはすべての物体を透過できる
・それは我々に興味を持っている
・それは我々を見ている
・それは遊び半分で人を殺す
実験により、以前から囁かれていた、アブノーマリティは巨大な生命体であり、空間移動や別空間を観察する能力を持つという説が有力なものとなりました。しかし同様の観測実験を繰り返してもその全貌が明らかにされることはなく、ついに観測は打ち切られました。
T-03-k88
黒い水槽
◇アブノーマリティ 基本情報
危険度 WAW
ダメージタイプ WHITE
◇管理方法
1.作業結果が悪かった場合、黒い水槽のクリフォトカウンターが減少した。
2.作業時間が20秒以下だった場合、黒い水槽のクリフォトカウンターが減少した。
3.脱走時、黒い水槽の出現した空間に一定時間留まった職員ナンシーは死亡した。
◇アブノーマリティ 作業好感度
| 作業成功率 | 本能作業 | 洞察作業 | 愛着作業 | 抑圧作業 |
|---|---|---|---|---|
| ランク Ⅰ | 低い | 最低 | 最低 | 最低 |
| ランク Ⅱ | 普通 | 最低 | 最低 | 最低 |
| ランク Ⅲ | 普通 | 普通 | 普通 | 普通 |
| ランク Ⅳ | 普通 | 普通 | 普通 | 普通 |
| ランク Ⅴ | 普通 | 普通 | 普通 | 普通 |
◇脱走情報
クリフォトカウンター 1
| アブノーマリティ 防御 | |
|---|---|
| RED(1.5) - 弱点 | WHITE(0.0) - 免疫 |
| BLACK(0.8) - 耐性 | PALE(0.6) - 耐性 |
脱走時HP:800
脱走時行動︰
黒い窓が廊下やメインホールの一方の壁に出現する。
この窓によって、管理人はその場所の様子を見ることができなくなる。(画面では真っ黒に映る)
普段は攻撃しないが、地響きと音がだんだん近づいてきて、一定時間経つと同じ部屋にいる職員に即死級のBLACKダメージを与え、別の場所に出現する。
◇E.G.Oギフト(獲得確率:2%)
敬服(目)
見た目︰
真っ黒のサングラス。これをかけると、他の人はその人の目がまったく見えなくなる。
効果︰
精神力+6
◇E.G.O武器
WAW
敬服
見た目
真っ黒な球がついたメイス。
武器タイプ メイス
ダメージタイプ BLACK
ダメージ 15-20
速度 普通
射程 普通
*低確率で、同じ部屋に存在する敵すべてを攻撃する特殊攻撃を行う。
輪郭が見えないほど真っ黒なE.G.O。ときどき瞬きをしているという噂がある。
周りにいる者はこの武器の射程の遠近感が掴めなくなり、誤ってこの武器にぶつかることがある。しかし使用者は正確にその距離を理解することができ、彼らは決まってうまく周囲を観察しているのだと言う。
◇E.G.O防具
WAW
敬服
見た目
海中の気泡のように白い泡が描かれた、青色と水色のグラデーションの服。胸のあたりに黒い大きな円が描かれている。
耐性
RED(1.0) 普通
WHITE(0.6) 耐性
BLACK(0.8) 耐性
PALE(2.0) 脆弱
海色の服は心が洗われるように美麗だが、その美しさに疑問を抱くものもいる。装着者はみなこのE.G.Oから巨大生物が飛び出してこないか不安で仕方なくなる。しかし自らを着た者に黒い目は頓着せず、周囲を睥睨している。
裏話(読み飛ばしても問題ないです)
昨日投稿できなくてすみませんでした! その代わり本日二話投稿です。これで帳消しになったはず……?
ということで、巨大物恐怖症(Megalophobia)のトラウマアブノーマリティです。
良い感じに描写できたでしょうか? 本体が巨大すぎてどんなやつか分からないようにしよ〜って思って書いてたら予想以上に書くのが難しくなっていました。アブノーマリティを文章で表現するのってムズカしい……!
本作の中では初のWAWアブノーマリティですが、まあ難易度としては標準的なアブノーマリティですね。作業時間20秒以下というのも、そっちのほうが達成が難しいレベルと思います。
しかし転移や即死持ちと、鎮圧が面倒くさい……! あ、即死級ダメージというのは、肉の灯籠や罰鳥や愛をくださいのダメージを想像してください。一応絶望の加護とか使ってメチャクチャ頑張ったら耐えれるけど……みたいなレベルです。
とりあえず、こいつは脱走しないように心がけないといけません。もしクリフォトカウンターを下げる系の効果がこいつに使われたら……まあ、それだけがネックですね。こいつのクリフォトカウンター最大値が1なので。
作者は、他に簡単なアブノーマリティがいないならこいつも収容するかなーって感じです。
透明な一言︰最初の予定だと本体はクジラだったのですが、もうわかりません。もしかしたら海洋生物ですらないのかも?
次回のアブノーマリティ→
『いつだって私達は、空っぽの恩恵を餌に作法を守らなくてはならない』