ヘクトール先生 作:パリス君
店を出る四人を見送るべくアビドスの五人は店の外もできていた。
セリカがアルへ語りかける。
「それじゃあ、気をつけてね!」
「お仕事、上手くいきますように!」
「あははっ!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!じゃあね!」
屈託のない笑顔を見せて手を振るアル。
ラーメン屋で、少し悪そうに振る舞っている時もあったが、根がどう見ても良い子だ。
……やれやれ、今は敵、だからなぁ。
「ふう……いい人たちだったわね」
「……」
「……」
満足げな顔をするアルと、複雑そうな顔のカヨコ、そしてニコニコしているムツキ。
「社長……あの子たちの制服、気づいた?」
「えっ?制服?何が?」
「アビドスだよ、あいつら」
「…………なななな、なっ、何ですってーーーーーー!!!???」
「あはははは、その反応うけるー」
「はあ……本当に全然気づいてなかったのか……」
「えっ?そ、それって私たちのターゲットってことですよね?わ、私が始末してきましょうかっ!?」
「あははは、遅い、遅い。どうせもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだし、その時暴れよっ、ハルカちゃん」
会話が進む中、アルは未だ衝撃の事実に驚いたままだった。
「う、うそでしょ……あの子たちが?アビドスだなんて……う、うう……何という運命のいたずら……」
「何してんの、アルちゃん。仕事するよ?」
「バイトのみんなが、命令を下るのを待ってる」
「本当に……?私、今から……あの子たちを……」
「あはは、心優しいアルちゃんに、この状況はちょっとキツいねー。『情け無用』『お金さえもらえればなんでもやります』がうちのモットーでしょ?今更何を悩んでるの?」
「そ、そうだけど……」
「これ、完全に参ってるね……」
「こ、このままじゃダメよ、アル!一企業の長として、このままじゃ!行くわよ!バイトを集めて!」
バイト達の集まる広場へ来た四人は代表と話す。
「なんだよ〜、遅かったじゃん」
「少し野暮用よ。準備はできてるわね?」
「もちろん。何でもいいけど、残業はナシでね。時給も値切られてるし」
「細かいことは今は置いておいて!さあ、行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」
「出勤〜!」
「はあ……」
「アル様!私、頑張りますから!ひとり残らず、ぶっ潰しちゃいますっ!」
アビドスの校舎に集まった五人。
アヤネより報告があると集められたのだ。
「校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」
「まさか、ヘルメット団が?」
「ち、違います!ヘルメット団ではありません!……傭兵です!おそらく日雇いの傭兵」
「へえー、傭兵かあ。結構高いはずだけど」
「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」
「しょうがねぇ、出動だ」
「前方に傭兵を率いている集団を確認!」
「あれ……ラーメン屋さんの……?」
「ぐ、ぐぐっ……」
ノノミと目が合った瞬間、アルは気まずさで目を逸らす。
しかし怒っているセリカが、アルに言う。
「誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」
「あははは。その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」
「……なるほど。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ」
「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」
「ちょっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書きだってあるんだから!」
ノノミの発言にアルが焦ったように訂正する。
アル曰く、一応ビジネスらしい。
「私は社長!あっちが室長で」
そう言い、ムツキの方へ視線を移す。
「こっちが課長……」
次はカヨコの方へ視線を移す。
「はあ….…社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ……」
「誰の差し金?……いや、答えるわけないか」
シロコはそう言うと、銃を構える。
「力尽くで口を割らせるしか」
「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ?総員!攻撃!」
一斉に鳴り響く銃声。
……相手の四人に対応させる生徒はどうするか。
アルは、あの四人の中で最も強いだろうし、狙撃はかなり厄介だ……ホシノならば完璧に対応できるだろうな。
ムツキは、おそらく爆弾を使うだろう……ノノミのマシンガンでの制圧射撃で動きを封じれれば良いか。
ハルカは、武器はショットガンで近距離型、タンクだと仮定しても、接近されなければ良い話だ……セリカの俊足に任せるとしよう。
カヨコは、あの四人の中でもかなりの手慣れだろう、冷静で頭が良いのも厄介だ……シロコとの一騎打ちで抑えるべきか。
「ま、やるとするか……ホシノ、アルの射撃を防いでくれ。ノノミはマシンガンの制圧射撃でムツキの行動を封じてくれ」
「わかったよー、先生」
「わかりました⭐︎」
「セリカはハルカの対応を頼む。シロコはカヨコを抑えてくれ」
「ん、わかった」
「わかったわ、先生!」
「これは持久戦だ、時間を稼げれば一気に形成逆転する。倒すことよりも抑えることを第一に考えろ」
さて、俺は各々の戦闘に邪魔になりそうな奴から無力化するとするか。
数時間の戦闘後、キーンコーンカーンコーンという音が鳴った。
すると一人のバイトの傭兵たちが次々に口を開く。
「……あ、定時だ」
「今日の日当だとここまでね。あとは自分たちでなんとかして。みんな、帰るわよ」
「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
アルが次々に戦闘を止め帰っていくバイトたちに言った。
しかしバイトたちは聞く耳を持たず戦闘を終了していく。
「終わったってさ」
「帰りにそば屋にでも寄ってく?」
「こらー!!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと!帰っちゃダメ!!」
アルは帰っていくバイトたちの背中に語りかけるが振り返りもせず帰っていく。
「アル、お前さん忘れたのか?自分でこの時間までってバイト達に言ったんだろう?別にバイトの子達は給料のために戦闘をしてるんだ、残る理由なんてないんだよ」
「……先生は全部知ってたんだ?」
カヨコがそう聞いてきた。
便利屋の四人は一度戦闘を中止し、アルの近くまで撤退したようだ。
「まあな。っと言っても、オジサンはバイトの子に今日のバイトはいつ終わるのかを聞いただけだ……で、どうする?四人になったが……まだやるかい?」
「こりゃヤバいね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて……アルちゃん?どうする?逃げる?」
「あ……うう……こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」
「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うるさい!逃げ……じゃなくて、退却するわよ!」
そうして四人は逃げ……退却して行った。
「待って!……あ、行っちゃいましたね」
「うへ〜逃げ足早いね、あの子たち」
「……詳しいことは分かりませんが、敵兵力の退勤……いえ、退却を確認。困りましたね……妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます……一体何が起きているのでしょうか……」
「まあ、少しずつ調べるとしよう。まずは社長のアルって子の身元から洗ってみたら。何か出てくるよ、きっと」
「はい。皆さん、お疲れ様でした。一旦、帰還してください」
まあ、特に目立った損害はなく戦闘を終えれて良かったと言うべきかな。
「いやぁ、お前さんら、みんなよく頑張った!各々の持ち場で完璧に役割をこなしてて、オジサン感激だよ」
「うへー、そう言う先生もバイトの子達を何十人も無力化して援護してくれてたじゃん」
「ん、そのおかげで私たちは邪魔なく戦闘できた」
全く、キヴォトスの生徒はみんな良い子たちだねぇ。
「さ〜て、帰還するとしようか!」
少し短かったので2話投稿。
……ヘクトールは積極的には会話に参加しなそうだけど、ちょっとヘクトールの台詞少なすぎるかなぁ、頑張りたい。
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