ヘクトール先生   作:パリス君

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連邦捜査部「S.C.H.A.L.E」

俺の意識はアロナの教室から出た後、元に戻っていた。

手に持っているタブレット──シッテムの箱の中では、俺がさっきまで居た教室の中にアロナが居る。

俺の居る地下室では、少し離れた場所で、七神リンが誰かと通話をしている。

 

「……はい。分かりました」

 

カチャッ、という音と共に七神リンは俺の方を向き、話し始める。

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連峰生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」

 

そう言った七神リンの顔は明るかった。

 

「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたこと、連邦生徒会を代表して深く感謝します」

「そんな感謝されることはオジサンしてないぜぇ?……そういやぁ、ここを攻撃してた子たちには、手を打ってあるのかい?」

「その事であれば、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」

 

討伐……ま、ここの基準で考えれば殺害まではいかず、牢獄のような場所に連れて行くのかな。

それこそ矯正局、とう言う場所などに連れて行くのだろう。

 

「それでは「シッテムの箱」は渡しましたし、私の役目は終わったようですね」

「それなら、リンお嬢さんにはシャーレの紹介をしてくれると助かるなぁ」

「あ、そうですね。では、ついてきてください。連邦捜査部「シャーレ」をご紹介します」

 

そう言い終えた後、歩き出す七神リンについていく。

 

 

 

 

 

「ここがシャーレのメインロビーです」

 

そう言った七神リンの視線の先には、空室。近々始業予定、と書かれた紙が貼ってある。

 

「長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」

 

七神リンは扉を開き、部屋の中に入っていく。

俺もそれに続き中に入る。

 

「そして、ここがシャーレの部室です。ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう」

「面倒なんだけどねぇ……それで、オジサンはこれから何をすれば良いんだい?」

「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かやらなきゃいけない……と言う強制力は存在しません」

 

お?そりゃあ楽──

──いや待て、目標のない全くの中立組織、しかも権力はあるときたら、厄介ごとに巻き込まれやすいじゃないか。

 

「キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です……面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れていませんでした」

 

捜査部から、何でも屋に名称を変えたほうがいいと思うけどね?

 

「つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い……ということですね」

「おじさんは呑気に楽しく生きていきたいだけだからなぁ……やりたいことは特にないぜ?」

「……本人に聞いてみたくも、連邦生徒会長は相変わらず行方不明なまま。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません」

「……」

「今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……」

 

……ま、先生という生徒という少女達を導く立場にいながら、何もしないってのも良くないしなぁ。

 

「……もしかしたら、時間が有り余ってる「シャーレ」なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」

 

何より、この世界の少女──いや、生徒たちにも楽しく生活して欲しいって気持ちもあるしな。

 

「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いて置きました。気が向いたらお読みください……すべては、先生の自由ですので」

「ありがとよ、リンお嬢さん」

「感謝されるようなことはしていませんよ。私はただ、面倒な仕事の書類を先生の机の上に置いただけです……それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡します」

 

そう言い終えると、七神リンは退出していった。

……書類は、後々目を通すとするかねぇ。

 

 

 

 

 

俺はシャーレの外に出ていた。

といっても、シャーレの目の前にある、ちょっとした広場に来ただけなんだが。

理由は、外の様子の確認と今回知り合った生徒との交流のためだ。

まだ俺には、この世界での人脈が全然ない。

人脈を広げるキッカケ作りにも交流は必要だからな。

 

「お疲れ様でした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

 

シャーレ周囲の状況を確認していた俺に、ユウカが声をかけた。

ユウカの他にも周りには今回の一件で知り合った生徒が多く居る。

 

「皆んなお疲れ様。後、そう簡単には有名にはならないだろうよ」

 

……SNSについては詳しく知らないけどな。

内心そう思っている俺に、ハスミが話しかける。

 

「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生」

 

ハスミの言葉に銀髪の少女──スズミが頭を下げる。

トリニティ総合学園か、覚えておこう。

続いて、ベージュ色の髪の少女──チナツが話す。

 

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください」

 

ゲヘナ学園、これも覚えておこう。

そして最後にユウカが話す。

 

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」

 

ミレニアムサイエンススクール……ここの学園数は本当に多いなぁ。

ま、得た情報は多かったな。

一旦、部屋に戻るとするか。

そうして、俺はシャーレのオフィスに戻る。

 

 

 

 

 

キヴォトスのとある歩道橋に一人の少女が居る。

その少女は狐の面を被り、和服に身を包んでいる。

名をワカモ。

 

「……ああ……これは困りましたね……」

 

ワカモは呟きながら歩道橋を歩く。

 

「フフ……フフフ……ウフフフフフフ♡」

 

 

 

 

 

「あはは……なんだか慌ただしい感じでしたが……ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした」

 

アロナが言った。

俺はアロナの教室にまた来ていた。

時間は空いてしまったが、アロナにも感謝を伝えておこうと思ったためだ。

実際、アロナは魔力の回復もできるらしく、非常に助かっている。

 

「アロナも色々とありがとうな。お前さんの力がなけりゃあ今回の一件は解決できなかっただろうよ」

「えへへ〜。でも、本当に大変なのは、これからですよ?これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです……!」

 

アロナは続けて語る。

 

「単純に見えても決して簡単ではない……とっても重要なことです……それではキヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします、先生」

「任された仕事だ、キッチリとやるとするかねぇ。よろしくな、アロナ」

「それではこれより、連邦捜査部『シャーレ』にとして、最初の公式任務を始めましょう!」




プロローグ編終了。
……ちょっと文字数が少なめになっちゃいました。

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