ヘクトール先生   作:パリス君

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委員会の事情

「いやぁ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」

 

そうアヤネは、戦場から帰ってきたホシノに言う。

俺たちは、戦場から帰ってきた四人と部室で合流し、先程の戦闘を振り返っていた。

同じく戦場から帰ってきたシロコは、俺の方を向き語る。

 

「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った。これが大人の力……すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」

「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」

「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」

 

獣の耳を生やした黒髪の少女──セリカはそうホシノに突っ込む。

 

「そうそう、可哀想ですよ」

 

そんな二人に、ベージュのロングヘアを左側の頭部だけまとめた髪型をした少女──ノノミはそう言った。

そしてそんな四人の会話を見守っていたアヤネは、一度落ち着いたのを確認してから語り始める。

 

「あはは……少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生。私たちは、アビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している一年のアヤネ……」

 

アヤネがそう言うと、手のひらを見せるようにセリカの方を示して再度語り始める。

 

「こちらは同じく一年のセリカ」

「どうも」

 

アヤネに紹介されたセリカが俺に会釈をする。

……初対面時から思っていたが、真面目な子だ。

そして、体の向きを変え今度はシロコ、ノノミの方を手で示して語る。

 

「二年のノノミ先輩とシロコ先輩」

「よろしくお願いします、先生〜」

「さっき、道端で出会ったのが、私……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

 

アヤネに紹介された二人が俺の方を向く。

会釈をするノノミと、否定はしたが、それでもどこか得意げな顔をしているシロコ。

……個性豊かだなぁ。

それにしても、ノノミという子は雰囲気から察するに、名家のお嬢様かなんかだろう。

なぜこの学校に居るんだ?……ま、わざわざ触れなくても良いか。

最後に、アヤネは椅子に座り机に突っ伏しているホシノに体を向ける。

 

「そして、こちらは委員長の、三年のホシノ先輩です」

「いやぁ〜よろしく、先生ー」

 

机に突っ伏しながらもこちらに顔を向け、挨拶するホシノ。

だらん、としたまるで重力に勝てていないような姿だが、目を見れば未だに俺を警戒しているのが分かる。

……一回の戦闘じゃあ、信用されないかぁ。

今まで会った生徒の中で、最も神性が高く、戦闘の技術も高い、さらには大人を信用せず、常に警戒しているこの少女。

……悪い大人に騙されたことがある、これは確実だな。

しかし、それだけでは無いだろう……あの子は心に深い傷を持っている、ゆっくりと信頼関係を築くとするか。

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため、『シャーレ』に支援要求をし、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました」

 

乗り越えることができた、かぁ。

さっきのは戦場で言う偵察部隊ぐらいの立ち位置な気がするがねぇ?

ただの勘だが……この学校には陰謀のようなものがある、気がするからなぁ。

ま、注意しておくか。

 

「先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません」

「オジサン、そんなに感謝されるようなことはしてませんぜぇ?この結果はお嬢さんたちの頑張りのおかげさ。それで、話は変わるんだが、対策委員会ってのはなんだい?」

「そうですよね、ご説明します。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるのに有志が集まった部活です」

「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても、私たち五人だけなんですけどね」

 

うんうん、全校生徒で構成される校内唯一の部活ねぇ……全校生徒五人は気がかりだが。

そんな俺の疑問に答えるようにシロコは語る。

 

「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った」

 

この感じだと、人口の流出に歯止めがかからなくなり、衰退したってわけか。

シロコは続けて語る。

 

「学校がこのありさまだから、学園都市の住人もいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの。現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……」

「もし、『シャーレ』からの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね」

「だねー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生」

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです⭐︎」

「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」

「あー、確かに。しつこいもんね、あいつら」

「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか……。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……」

 

予想はしてたが、他にも問題を抱えているのか。

 

「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

「えっ!?ホシノ先輩が!?」

「うそっ……!?」

 

セリカとアヤネが、ホシノ先輩が作戦を練った!?、という驚きの表情をしている。

あの表情はを出させるということは、普段を知る二人からすれば、これは希少なのだろう。

 

「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」

 

え?いや、本来の一人称は私の方なんだろうが、自分のこと、おじさん、っていうのか!?

……流石に予想外だな、まさか少女と一人称が被るなんて、誰が予想できるんだ?

内心驚いている俺をよそに会話は進む。

 

「……で、どんな計画?」

 

セリカが疑いの目を向けながらホシノに問う。

その問いにホシノは答える。

 

「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからねー。だから、このタイミングでこっちが仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

「い、今ですか!?」

「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」

 

ホシノの説明を受け、シロコが反応する。

 

「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし」

「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

「ん?オジサンも賛成だよぉ?相手が消耗していて、こちらはまだ力が余っている。オマケに相手は油断してるんだ、反撃するには絶好のタイミングだからねぇ」

 

……あの程度の集団であれば、ここの生徒たちは倒せるだろうしな。

 

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

「善は急げ、ってことだね」

「はい〜それでは、しゅっぱーつ!」

 

 

 

 

 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました……それにしても、本当に大丈夫ですか、先生?戦場で指揮を取るだなんて……」

 

映像で映るアヤネが言う。

ま、気持ちはわかるけどね?

ただ、俺としては指揮をやりやすく、石を軽く投げて支援できる、ってので戦場にいた方が楽なんだよなぁ。

……緊急の時に助けに入れるしな。

 

「あぁ、問題ないさ。オジサン、こう見えても銃弾ぐらいは弾けるんだぜぇ?」

「……もし危険だと感じたら、後退してくださいね?」

「心配ありがとな、アヤネ。そん時はしっかり下がらせてもらうから安心しな」

 

……お、敵さん気づいたかな。

 

「ッ!半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知。おそらく敵もこちらが来たことに気づいているでしょう。ここからは実力行使です!」

 

その言葉を聞き、全員が戦闘体勢へと移る。

さて、気張るとするかなぁ。

 

 

 

「敵の撤退を確認!並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認」

 

今回の戦闘も、特に苦戦することなく勝利した。

アヤネの嬉しそうな声が聞こえる。

その声に反応して、シロコが話す。

 

「これでしばらくはおとなしくなるはず」

「よーし、作戦終了。みんな、先生、お疲れー。それじゃ、学校に戻ろっかー」

 

……これで、帰った時に他の問題を聞けるかな。

 

 

 

 

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」

 

戦場から帰り部室に戻るとアヤネが出迎えてくれた。

 

「ただいま〜」

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ」

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」

「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」

 

……カタカタヘルメット団、なんていう少し可愛らしい名前の次は、借金返済かぁ。

ま、これは聞かないとだよなぁ。

 

「その借金返済ってのは、ちなみに何だい?」

 

俺の一言で、さっきまでのわいわいとした雰囲気から気まずい雰囲気へとガラリと変わる。

最初に反応したのはセリカだ。

 

「……あ、わわっ!」

「そ、それは……」

「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」

「……!」

 

借金のことを隠すように話す二人に、ホシノが話す。

 

「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

 

……。

ホシノのその言葉にシロコが反応する。

 

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼して良いと思う」

「そ、そりゃそうだけど、先生だって結局部外者だし!」

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」

 

ホシノは語り続ける。

 

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決方法が見つかるかもよー?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」

「う、うう……。でっ、でも、さっき来たばかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」

 

……やっぱり、ここキヴォトスでは、生徒に関わる大人は悪人が多い印象だな。

いや、悪人というのも違うか?……己の利益しか考えていない、って奴は俺の時代にも多かったからな。

それが人間だろうと、神だろうと、振り回される側の事を考えていないのだろう。

セリカは語り続ける。

 

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて……私は認めない!!」

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます」

「……」

 

ホシノは少し気まずそうに下を見ていたが、やがて俺の方を向き、アビドス高等学校の今の状況を説明する。

 

「えーと、簡単に説明すると……この学校、借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ」

 

そしてホシノはその借金額を口にする。

 

「でも問題なのはその金額で……9億ぐらいあるんだよねー」

 

……これは、一筋縄じゃいかないなぁ。




オリジナル展開を混ぜるか悩み中です。(悪影響になりそう……)
少しだけ変える?(元のストーリーが完成度高すぎるよぉ。どうすれば……)

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