ハム子に憑依転生したら何故かキタローもいるんだけど? 作:がははw
何が、起こったのだろうか。
うつ伏せに倒れた少女が気づいた時には、既に辺りは荒れ果てていた。
突然起こったムーンライトブリッジ上の爆発。車のパーツはあちこちに散らばり、橋を照らすライトは点滅を繰り返す。
「ママとパパは_」
立ち上がろうとしたが、足が上がらない。振り返り確認してみると、乗っていた車の残骸が足を絡めていた。そしてその残骸から、微動だにしない2人の手が見え_
突如、聞いたことのない音が聞こえた。
少女が日本で生きてきた中で聞く訳のない、パンという渇いた音。聞こえる方向に顔を向けると、
「_ばけもの…」
黒の衣、仮面の中から見える髑髏のような顔で、手に剣を持っている化け物がそこにいた。しかし、銃を持っているようには見えない。だったらさっきの音は、と少女が思ったとき_
「ここで絶対に食い止める、であります」
自分より年上の、ロケットのように足の炎で飛ぶ女性が後方から飛び出してきた。彼女は指から発砲し、化け物に攻撃している。
「___あ……れ…?」
強い頭痛が少女を襲う。あの知らない女性を見て、不思議と頭が痛み出したのだ。
「……ムーンライトブリッジ、化け物、ロボットのような人_アイ…ギ…ス…?」
経験していないはずの記憶が頭を巡る。目の前の出来事も知っているような不可解な現象で脳が軋むのを感じる中、ある声が聞こえた。
「ダメージ甚大、これ以上の戦闘は不可能と判断。ならば_」
女がある方向に目を向く。その目を追いかけると、自分と同じくらいの背丈をした、青髪の少年がいた。片目が覆われて、ボロボロになったその少年を、少女はどこかで見たような_
「____あ」
頭の痛みが治まるのと同時に、それまでの記憶がストンと入ってきた。
少女はハッキリと思い出したのだ。此処はペルソナ3の世界で、自分は今、全ての“始まり”の真っ只中にいるということを。
「_ごめんなさい」
少年に向かって、そう呟く女性_アイギスの姿を捉える。そんな彼女の右手には、青黒く燃える炎のような物がある。間違いなく、少年を贄にし『あれ』を行おうとしていた。
(駄目だ! 『それ』をしたら彼は…! 彼が…!)
まだ2人には距離がある。間に合うかもしれない。持てる全ての力を使って車の残骸から抜け出し、少年の所にまで走る。
しかし、彼女の方が行動は早い。一瞬でも時間をと、なりふり構わず少女は叫んだ。
「待ってアイギス! 止まって!」
「なっ_」
少年の体を押しのける。アイギス本人より、少年の方に行った方が距離が近かったからだ。
ああ、間に合った。少女がそう思ったその時、
ドクン
突如、激しい痛みが心臓を襲う。声にならない叫びを上げる中、少女の耳に少年の叫び声が聞こえた。
(間に…合わなかったの? でも…この痛みは…)
と考えるのも束の間、視界が黒く染まっていく。
せめて、少年の安否を、と倒れた状態のまま少年に目を向けると、ありえるはずのない、信じられないものを目にした。
少年の瞳の奥、そこからある少女の顔が見えていたのだ。
ポニーテールでもしてたであろう明るい茶髪は半端に結ばれ、可愛らしい暖色の服はボロボロ。
弱りきった赤い眼はこちらをずっと見ていた。
「…はは」
乾いた笑いが口から溢れる。同じように、瞳に映る少女も笑う。その時、体力の限界か、急激に目の前が黒くなっていく。そんな中で、無意識のうちに少女は呟いた。
「私、ハム子じゃん…」
そこで遂に、少女は意識を失った。
♢
3日ほどが経って病院で目覚めた後、少女改めハム子はベッドの上で1人ぼやいていた。
「_キタローに会えるのは嬉しいけど、転生するならもっと平和なところが良かったなぁ…」
どうしようもないことを言いながら、先ほどまで書いていたメモを見る。今分かっていることを書き殴ったその文字列を、自身の頭に入るようゆっくりと読み上げる。
「前世は平凡なOL、ペルソナ3のことは知っていて、転生して
ハム子の口から、大きなため息が溢れる。他界した今世の両親には申し訳ないが、正直窓からダイブしてもおかしくない程に希望を感じない。
「でも、そんなこと無理だよなあ…」
自身の胸に目を向ける。年相応の貧相な体だ、とかそんなことを考えているのではない。
「多分、『デス』が封印されているんだよね」
あの日の心臓の痛み。あれはペルソナ3に登場する諸悪の根源、『デス』が自分の中に封印されたことによる影響だろう。自殺なんてしたらデスが解き放たれ『ニュクス』登場、世界ごと破滅は目に見えている。
「だったら
そこまで言い、ハム子は意識を失う前に聞いた少年の叫びを思い出す。あの時、デスが封印された自分と同じタイミングで叫んでいた、ということは_
「キタローの中にも封印されている…」
悲しいことに、自分とキタローの双方にデスが分割されたと考えざるを得ない。本来、デスによって感情が希薄になるが、それが感じられないのは自分が女だから*1ということに加え、そういった理由があるのだろう。
「キタローの入学阻止は多分無理。それまでに自力をつけるために
再びため息が1つ。もう
「とりあえず原作介入して、助けられる人は助けるようにしよう。えっと…」
床頭台にあるペンを手に取り、原作にあったことを書き記す。
「死亡者はキタロー、荒垣先輩、美鶴パパ、理事長、あと場合によってはチドリか。チドリはキタローが花を買い忘れても問題ないようにして、荒垣先輩は恋人になれば助かったけど…なんか悪女だな、
不可能。そう言おうとした口をハム子は手で覆った。言ってしまうと、本当に無理だと思ってしまうからだ。
「_キタロー、最推しなんだけどなあ…」
気だるげだが、やる時はカッコ良く、たまに見せる笑顔が心を射抜く、前世で最推しだった彼を思い出す。
「死なせたく、ないなぁ…」
仲間思いの彼、誰よりも優しかった彼。彼だって、死にたくてやった訳じゃないだろう。
守るための方法が死ぬことだったから。叶うならば、もっと皆といたかっただろう。
「私に彼と《同じ力》があれば…」
そこまで言った途端、ハム子の頭にある考えが頭をよぎった。放心しペンを落とすが、全く見向きもしない。
「そうだよ! 私は
出来る、可能、ポッシブル。不可能だと思ったことが覆されたことで、声はさらに激しくなる。
「キタローがニュクスと戦うその直前、そのタイミングで彼を説得して、私が全てを背負う!
急に叫んだことで、ゴホゴホと咳がでる。渇いた喉を潤すために水を一気に飲み、頭も冷静になったところでハム子は再び独りごつ。
「さて、そうなると色々準備しなきゃ。タルタロスに入れなくても鍛える方法はあるし。転生特典か分かんないけど、幸い親族もいない。さっさと準備を_あ、その前に…」
一度深呼吸をし、
「私、ハム子って言うの! 皆んな、これからよろしくね!」
「__なんか子供っぽい…。いやでもまだ7歳だから…いやいや、今は高校生になった超絶可愛い天才ハム子ちゃんの練習だから…」
__________
憑依ハム子
P3の世界に憑依転生した人。キタロー達にバレないように計画を進める。
タルタロス以外で鍛える場所を思いついたようだが__
プロローグだからギャグが少ない…