生まれ変わったら精〇だった……   作:なな

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第三話

「貴様ら! 流水岩砕拳を愚弄するか! バング先生の一番弟子チャランコ参る!」

 

 そう高らかに吠えた男は鬼サイボーグことジェノスに詰め寄る。

 が、チャランコが敵うわけもなくジェノスに片手で容易くいなされてしまった。

 

 S級ヒーロー3位のシルバーファングに誘われ、バングの道場にやってきたサイタマとジェノス。

 二人を自らの道に誘うべくバング自ら流水岩砕拳を披露したわけだが、二人にはまったく響かずチャランコが怒った、というわけだ。

 

「これが一番弟子? バング、お前の道場は実力者揃いと聞いていたんだが」

 

 侮蔑を込めたジェノスの言葉がバングに刺さる。

 バングは気まずそうにぽつりぽつりと話し出す。

 

「ん……まあ、弟子の一人が暴れおっての……。実力派の弟子達を全て……いや、ほとんどを再起不能にしてしまったせいで他の門下生も恐れて辞めてしもうたわ」

 

「そいつ強いのか? 名前は?」

 

 ここに来て初めて興味を示すサイタマに対し、バングは「ガロウ……当時の一番弟子じゃった……」と不自然に言葉を止める形で答える。

 

「先ほどから妙な言い回しをするな? ……そのガロウはどうなったんだ?」

 

 バングの煮え切らない話し方にイライラしながらジェノスが問う。

 

「いや、それが、ワシが道場に来た時にはガロウがいなかったんじゃが……。どうもガロウは最後の一人に返り討ちに遭ったらしい」

 

「へー、ならそのガロウより強い奴が弟子の中にいたんだな。……ん? でもガロウが一番弟子だったんだろう?」

 

 サイタマが不思議そうに聞く。

 

「ガロウと肩を並べておった二番弟子がやったそうじゃ。……どうも実力を隠していたらしい。ガロウが一方的にやられたようじゃ。そしてボコボコにしたガロウを連れてどこかへ消えてしもうたわ。……二人とも有望だと思っておったんじゃがな」

 

 悲しそうにそう言うバング。有望と思っていたという言葉に嘘が無いことが分かる。

 

「一番弟子を一方的にボコボコにか、しかしなぜ実力を隠して……。その二番弟子は何者なんだ?」

 

「名はクロイセイシ。常に全身に黒いタイツを身に付けておる変わった奴じゃった。稽古中はタイツを脱げと言っても絶対脱がなかった頑固者じゃ。無理やり脱がそうとしてもだめじゃった。だが才能は本物だった。どんどんと流水岩砕拳をものにしていっていたらからのう……」

 

「……おい、バング。そいつは本当に人間なんだろうな? どう考えても怪しいだろ。怪人なんじゃないのか?」

 

「んー、でもおもしろい奴じゃぞ? 腰も低くて謙虚で好感が持てたし。いや、確かに変なやつじゃったが、まさか怪人なんて……」

 

 ジェノスが鋭い口調でバングに詰め寄る横でサイタマの表情が険しくなっていた。

 

 

 

 ……クロイセイシ、ね。

 

 

 

 サイタマがその名を反芻する。そして……。

 

(なんか、変な名前だな)

 

 サイタマは親近感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーロー協会の本部を抱えるA市を一望できる高台に無数の黒い塊が集結しつつあった。

 それは無数の黒い精子。

 くつろいでいる者、遊んでいる者、集中している者、プロテインを飲んでいる者……様々な黒い精子が集まりつつあった。

 

「おーおー、いっぱい集まってるなぁ……。50兆体は超えたか? まだまだ増えてるしよ。我ながら恐ろしいぜ……」

 

 時間の経過と共に高台を覆う黒い面積が際限なく増えていく。

 そして黒い世界を恒星の如く照らすように黄金色の塊が一つ現れ、また一つ……と増えていく。

 黄金色の輝きが5つに増えたところで、その内の一際輝きを放つ一体が高台の最前列に進み出て、無数の自分達を見渡す。

 

「集まったのは150兆体程ですか。そのうち黄金精子が5体、多細胞精子が27体。今回集結命令を出した地域を考えると、まあこんなものでしょう。……しかし、なぜここにポチがいるのです?」

 

 黄金精子が問いかけた先には尻尾をふりふりと振るポチがいた。

 

「ついさきほど手懐けたのですが、付いて来たんですよ。まあ、作戦に支障はないでしょう」

 

 ポチと対峙した別の黄金精子が答える。

 

「……いいでしょう。話を戻しますが、私は30兆体合体をした身。『ボロス』が相手だろうと私一人でも十分な気はしますが、相手はサイタマの攻撃を耐えることのできる強怪人。油断はできません。しかし何より気を付けなければならないのがサイタマより先にボロスに接触する必要があること。とにかく時間との勝負です、――おっと」

 

 黄金精子が何かに気付き後ろを振り向く。

 その視線の先には突如現れた巨大な宇宙船がA市の上空を覆うように移動していた。

 ボロスの乗った宇宙船が現れたのだ。

 

「さあ! いきますよ!!」

 

 その掛け声と共に、百五十兆の黒い精子は五体の集合体になり、それぞれ一体ずつ黄金精子の肩に乗っかる。そして多細胞精子も体を小さくし黄金精子に掴まると五体の黄金精子が力強く地面を蹴りつけ、宇宙船に向かって飛んでいく。

 宇宙船までは目算で2キロほどあるが黄金精子の跳躍力があれば一蹴りで十分。仮に推進力が足りなくても集合体の一部を分裂させ、空中での即席の足場にすればよい――名付けて精子階段。

 

 ポチも宇宙船に向かって走り出した。ただ地上から向かうつもりなのか、高台から下に降り立ち、高い建物を踏み台にしながら宇宙船に向かって行く。あれならこちらと同じくらいのタイミングで着きそうだ。

 

 もうすぐで宇宙船に着地するという所で宇宙船に設置されている大量の砲身が動いているのが見えた。A市に向けて照準を調整しているのだろう。あのまま発射されれば原作通りA市は粉々になるだろう。

 

 ……あーあ、A市の方々ご愁傷様。

 

 そう思っていると、突然真下から眩い光が発生した。

 

 これは――『焦熱弾』!?

 

 なんと駆けるポチが自身の巨大な口から溢れるほどの巨大な光弾を生み出していた。どう見てもさきの戦いで多細胞精子に向けられていたものより大きい。まだ本気を見せていなかったらしい。

 あの砲身が自分に向けられた攻撃と判断したのか――。

 

「ポチっ――」

 

 止める間もなく焦熱弾が発射された。直径十メートル以上はある巨大な焦熱弾が発射され一直線に宇宙船に向かって行く。それが連続で何十発も発射される。

 やはり焦熱弾の照準は大量の砲身。

 

 そして次々と大爆発を起こす。こちらまでその熱波が来るほどの攻撃。

 

 宇宙船の砲身すべてに当たったわけではないが、それでも半分は使い物にならなくなったのではないだろうか。

 向こうは、まさか自分達が不意打ちを食らうとは思わなかっただろう。

 そうこうしているうちに俺達は宇宙船の上に降り立つ。ポチも地上から跳躍し軽々と俺達の傍に降り立った。

 ポチの攻撃のせいなのだろうが、宇宙船からA市に向けての攻撃はまだ行われてない。恐らく混乱しているのだろう。

 だがこれは、サイタマの初動を遅らせることに繋がっているかもしれない。結果オーライとしよう。

 

 

 

 ちなみにヒーロー協会本部を攻撃しようしていた天空王は運悪く焦熱弾に命中し塵と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……まさかこちらが先手を取られるとは。

 

 暗黒盗賊団ダークマターの頭目であるボロスは思案していた。

 

 それに先ほどのゲリュガンシュプからの報告によると敵は複数だがいずれも凄まじい力を有しており、迎撃に向かった部下はことごとく気絶させられているらしい。殺されたという報告はなく敵の目的がよく分からない。

 そしてどうやっているのか凄まじい速さで船内のマッピングを行っているようで、もう間もなくここへ――

 

「おや、どうやらここが目的の場所らしいですね」

 

 落ち着きはらった声が響く。

 まだ侵入があったと報告があってから五分程度しか経過していない。

 ボロスが玉座から立ち上がり侵入者を迎える。

 現れたのは黄金色に輝く者だった。同じ容姿の者がさらに二体現れる。そしてやはり同じ容姿の黒色の者も複数体現れる。

 事前に聞いていたこの星の住民の特徴と微妙に異なる気がする。

 

 ……こいつらが侵入者か。

 

 現れた者達から溢れ出るエネルギーを見てその実力を測る。

 

 ふむ、……なるほど。

 

 ボロスは静かに口端をあげた。

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