僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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第10話 敵連合

「敵ンン!!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

突然の襲撃に切島が混乱しながら言う。彼の言う通り、ヒーローが数多くいる学校に侵入するなんてまともな思考とは思えない。雄英が用意したプログラムと言われた方がまだ納得できる。

 

「先生、侵入者用センサーは!」

 

「もちろんありますが…!」

 

「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうこと出来る“個性(ヤツ)”がいるってことだな」

 

轟が状況を冷静に分析する。

 

「校舎と離れた隔離空間、そこに少人数(クラス)が入る時間割…バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」

 

相澤は13号に避難と学校への連絡を試みるよう指示を出し、首に巻いた捕縛布を手に取り戦闘の準備をする。

 

「先生は⁉1人で戦うんですか⁉あの数じゃいくら“個性”を消すといっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

 

「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」

 

そう言って、広間に突撃していった。

 

敵たちが単身乗り込んできた相澤を嘲笑するのも束の間、個性を使えなくなった敵はヒーローにバッタバッタとなぎ倒されていく。

 

数の利は相手の方が圧倒的に上回っているのにも関わらず、まるで相手にならない。

 

「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析してる場合じゃない!早く避難を!!」

 

13号の指示に従い、A組の生徒たちは急いで出口へ向かう。だが、

 

「させませんよ」

 

そんな彼らに、広間にいたはずの黒い靄が立ちふさがる。

 

「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは」

 

平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして

 

(は⁉)

 

No.1ヒーローのオールマイトを殺すという、あまりに荒唐無稽な計画にそれを聞いた生徒たちは一瞬愕然となる。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが何か変更あったのでしょうか?まぁ…それとは関係なく…」

 

敵は物腰穏やかな口調のまま自身の()を広げ、13号はグローブの指の部分を開いて何が来ても対処できるよう個性を使う準備をする。

 

「私の役目はこれ」

 

そして、そんな敵に向かって飛び出そうとする爆豪・切島を縁壱が寸でのところで食い止めた。

 

「火神!なんで止める⁉」

 

「出るな。13号先生の射線に入る」

 

「お、おう。すまねぇ…」

 

「チッ」

 

13号の“個性”『ブラックホール』が黒い靄を吸い込み始めた。しかし、その頃には遅かった。広がった靄は生徒たちを包み込む。

 

「散らして」

 

「2人とも、上だ!」

 

「嬲り殺す」

 

その個性が空間転移系のものだと結論を出した縁壱は、近くにいた爆豪と切島に逃げるよう指示を出す。自力で飛べる爆豪はともかく、切島は機動力に劣るため縁壱が彼のコスチュームを掴み、ワープゲートの範囲外へと出た。

 

「皆は!?いるか!?確認できるか!?」

 

「散り散りにはなっているがこの施設内にいる」

 

ワープゲートの個性によって、A組の生徒たちはUSJ内の各エリアに飛ばされバラバラに散らばった。転移しなかったのは13号と飯田、麗日、障子、砂藤、瀬呂、芦戸、爆豪、切島の9人だ。

 

「……委員長!」

 

「は!」

 

「君に託します。学校まで駆けてこの事を伝えて下さい」

 

13号は飯田に学校への連絡を任せる。

 

「警報鳴らず、そして電話も圏外になっていました。警報器は赤外線式…イレイザーヘッドが下で、“個性”を消し回っているにも拘らず無作動なのは…恐らくそれらを妨害可能な“個性(もの)”がいて…即座に隠したのでしょう。とするとそれを見つけ出すより君が駆けた方が早い!」

 

「しかしクラスを置いてくなど委員長の風上にも…それにスピードなら火神くんの方が!」

 

「いや、コレはお前にしかできないことだ。やってくれ、飯田」

 

「外に出れば警報がある!だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろう⁉」

 

「外にさえ出られりゃ追っちゃこれねえよ!!おまえの脚でモヤを振り切れ!!」

 

「救う為に“個性”を使って下さい!!」

 

皆にそう言われ、飯田は決心がついた。そしてそのやりとりを嘲笑うかのように。

 

「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」

 

「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」

 

 

『ブラックホール』と『ワープゲート』。あらゆるものを塵へと変えてしまう個性と、空間を繋げ物理攻撃を無効する個性。13号が靄の身体を吸い込み続けることで、彼女はその敵を封殺していた。

 

だが、その均衡が刹那のものであることに気づいたのは、当事者である2人と、火神縁壱のみであった。

 

彼は近くにいる爆豪と切島に、敵に悟られないようこっそりと耳打ちをする。

 

「2人とも、落ち着いて聞いてくれ。このままでは13号先生は負ける」

 

「…は⁉」「アァ?」

 

「先生は災害救助専門のヒーロー。戦闘経験は少ない。それにあのワープゲートはブラックホールすらも繋げられる。今は様子見しているようだが、もし先生の背後にでも持っていかれたら…」

 

「そんなの…超ヤベェじゃん!早く助けねぇと!」

 

「だが、今前に出たら個性に巻き込まれてしまうし、最悪ブラックホールに吸い込まれて塵にされてしまう」

 

「じゃあどうすれば……!」

 

「…火神。それを何で俺たちに話した?」

 

静かに聞いていた爆豪が、縁壱の意図を聞く。

 

「協力して欲しい。先生を傷つけず、奴を無力化する」

 

「「!!」」

 

敵を倒すという縁壱の提案に、2人は目を見開く。そして、さっきまで敵に好き勝手されてフラストレーションが溜まっていた爆豪は、獰猛な笑みを浮かべる。切島も、腹を括って強く頷く。

 

「敵の“個性”は『ワープゲート』。物理攻撃を無効化する無敵のような個性だが、それにも弱点はある。あの個性は自身の肉体を靄状のワープゲートに変えるが、その箇所は()()()()()()

 

「……え、なんでそんなこと分かるんだよ?」

 

「俺には分かるんだ。細かい仕組みは今は説明出来ないから、とりあえず信用して聞いて欲しい」

 

「わ、分かった」

 

「話を続ける。奴は実体を靄で覆うことで、攻撃を無効化している。だが、攻撃をすぐに転移させることはできないと思う」

 

「……なるほどなァ」

 

「え、なに?どういうコト?」

 

そこまで聞いて縁壱の考えていることが分かった爆豪が言葉を漏らす。そしてまだ理解できてない切島が爆豪に聞く。爆豪は呆れたような顔をしながら説明する。

 

「つまり、火神(コイツ)はあのモヤヤローが13号に向かって“個性”で攻撃しようとした瞬間、13号を離脱させて、それと同時にアイツを攻撃するっつーコトだ」

 

「ああ。タイミングは俺が言う。俺は先生を助けるから、2人は奴を攻撃してくれ。攻撃する箇所は、あの装飾の部分だ」

 

「応!!」「やってやるよ…!!」

 

話している内に、状況に動きがあった。それまで一方的に吸われ続けていた敵は口を開く。

 

「13号。災害救助で活躍するヒーロー。やはり……」

 

「今だ!!」

 

縁壱は、敵の身体を注視して、その個性を使用するタイミングを完全に見抜いていた。彼は2人に合図を送る。

 

爆豪と切島が敵に向かって飛び出したのと同時に、縁壱も13号に向かって駆ける。

 

「な⁉」

 

「火神くん⁉」

 

目にも止まらぬスピードで、13号を安全な場所まで隔離する。そして。

 

BOOOM!!!

 

爆発音を轟かせながら、炎と硬化した腕が敵の身体に叩き込まれる。ワープゲートで防御することも出来ず直で攻撃を食らってしまった敵は、そのまま爆豪に組み敷かれた。

 

彼はそのまま敵に爆破する手掌を押し付ける。

 

「動くな!!『怪しい動きをした』と俺が判断したらすぐ爆破する!!」

 

「ヒーローらしからぬ言動…」

 

「念のため気絶させておこう」

 

「グハッ!!」

 

「ヒーローらしからぬ追い打ち…」

 

敵の首の部分を刀の峰で強打する。鼓動からも気絶していることを確認して、とりあえず一安心だ。

 

「瀬呂。テープを貸してくれ。こいつを拘束する」

 

「お、おう……分かった」

 

敵を拘束した後、縁壱は13号に頭を下げる。

 

「勝手なことをしてしまい、申し訳ありません。13号先生」

 

「いえ……3人が助けてくれなければ、僕はやられていたでしょう。こちらこそ、すいません。ヒーローである僕が、君たち生徒に助けられてしまうなんて」

 

13号も頭を下げる。本来なら守るべき生徒に逆に守られてしまった。ヒーローとして不甲斐なし。穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。

 

急展開に状況が飲み込めていなかった他の者たちも、ようやく理解が追い付いた。

 

「どうして3人だけでやろうとしたんだよ」

 

「すまない。こちらの意図を敵に知られる訳にはいかないから、近くにいた爆豪と切島にしか共有できなかったんだ」

 

一つ脅威が取り除かれ、生徒たちにも精神的な余裕が出てきた。しかし、まだ危機は去っていない。13号は飯田に指示を出す。

 

「行ってください。飯田くん。今すぐに」

 

「はい!!」

 

飯田はエンジンをフルスロットルで回転させ、全速力で出口へと向かった。

 

「さて、皆さんも早く避難してください」

 

「そんなのできません!散らばった人たちは戦ってるのに!」

 

「そうですよ!皆が危険な目にあってるのに俺たちだけ逃げるなんて!」

 

13号の指示に散らばったクラスメートを見捨てられないと生徒たちは抗議する。

 

「いいですか。ヒーロー志望でも君たちはまだ子ども。こうなった責任は我々教師たちにあります。逃げることは恥じゃない」

 

13号はそう生徒たちを諭す。反論の余地なく、彼らは一足先に避難することになった。

 

「さあ、君たちも早く出口へ………火神くん?」

 

13号の呼びかけに応じず、出口とは真反対の方向を見ている縁壱。その視線の先にあるのは。

 

「…先輩⁉」

 

 

時間は、縁壱たちがワープゲート敵を拘束した少し前に遡る。

 

「23秒」

 

「本命か」

 

敵の数が減り、リーダー格と思しき、全身に人の手が付いた男を相手する相澤。

 

「24秒。20秒」

 

捕縛布を男に飛ばすが、掴まれてしまう。

 

「ちっ!!」

 

「17秒」

 

相澤は悪態をつきながら、逆にグイッと布を引っ張り敵を引き寄せる。そして、それと同時に敵の鳩尾に肘撃ちをかます。

 

「動き回るので分かり辛いけど、髪が下がる瞬間がある。一アクション終えるごとだ。そしてその間隔は段々短くなってる」

 

彼の肘は敵の腹に届くことはなく、直前で受け止められてしまった。

 

「無理をするなよイレイザーヘッド」

 

そして、敵に掴まれた相澤の肘はボロボロと崩れ落ち、その皮膚の下が露わになった。だが、相澤はそれを意に介さず頬を殴り、一旦距離を取る。

 

「その“個性”じゃ…集団との長期決戦は向いてなくないか?普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか?それでも真正面から飛び込んで来たのは、生徒に安心を与える為か?」

 

緑谷の言う通りだった。イレイザーヘッドの得意とするのは敵の個性を消してからの捕縛という『早期決着』。集団かつ長期戦は不利。しかし彼は生徒を守るために、単身飛び出した。

 

「かっこいいなあ。かっこいいなあ」

 

まるで無邪気にはしゃぐ子どものように、その努力を嘲るように、賞賛の言葉を贈る。

 

「ところでヒーロー」

 

相澤は目の前の敵に気を取られて気付けなかった。

 

「本命は俺じゃない」

 

脳をむき出しにした、生気を感じられない男の魔の手に。

 

 

対平和の象徴、改人“脳無”

 

 

「先輩…⁉」

 

13号、そして生徒たちが見たのは相澤が脳を露出させた異様な敵に組み伏せられている姿だった。再び動揺が広がる。

 

「あの敵は一体……⁉」

 

「分かりません。ですが、状況は最悪です。あの敵はオールマイト並みの力を持っています。このままでは、相澤先生は…」

 

「なんですって…⁉」

 

オールマイトに匹敵する力を持つという敵。真偽のほどはさておき、状況が最悪というのは変わらない。13号は急いで生徒たちに指示を出す。

 

「皆さん急いで離脱してください!いつあの敵が君たちを攻撃してもおかしくない!火神くんも……ッ⁉」

 

その場にいた誰もが―爆豪でさえもが―彼の気迫に息をのむ。まるで全身を鎖で縛りつけられたように、指先一つ動かすことすら儘ならない。

 

縁壱は広間の方を向いていて顔は見えないが、それでも彼の立ち姿から伝わってくる。

 

『怒り』だ。

 

表情が希薄で、普段から何を考えてるか分からない縁壱があそこまで感情をむき出しにしていることに、生徒たちは気圧されながらも驚く。

 

「か、がみくん……」

 

「重ね重ね申し訳ございません。13号先生。処罰なら後に如何様にも受けますので」

 

火神は絞り出すように声をかけた13号に対して謝罪の言葉を口にする。

 

「待っー!!」

 

13号の制止の言葉を振り切って、彼はエントランスから消え去った。

 

 

「“個性”を消せる。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまりただの“無個性”だもの」

 

『脳無』と呼ばれた敵に腕を折られ、ダラダラと血を流す。

 

(小枝でも折るかのように…!身体の一部でも見れば消せる…!つまり素の力がコレか!オールマイト並みじゃねえか…)

 

ヒーローとして鍛え上げた肉体を容易に破壊するその力。相澤の脳裏にはNo.1ヒーローではなく、1人の生徒の姿が過る。

 

火神()ならば……

 

その邪念を即座に振り払う。彼の力はトップヒーローと言っても過言ではない。その精神性・判断力も。そんな彼にヒーロー免許を与えられない社会の仕組みを不合理に感じてならない。だが、だからと言って生徒である縁壱に頼るなど、先生としても、ヒーローとしてもあってはならないことだ。

 

脳無の太い腕が相澤の頭を掴み、持ち上げる。その顔面を勢いよく地面に向かって叩きつけ―――

 

「あ?」

 

――ることはなかった。

 

手だらけの男…死柄木は怪訝な声を出す。一筋の炎が視界を通り過ぎたかと思うと、そこに相澤はいなかった。脳無は失った獲物をキョロキョロと探し回っている。

 

そして、その炎が行った先にいたのは、さっきまで脳無に捕まっていたはずのイレイザーヘッドと、彼に頭を下げる侍のような男だった。

 

「申し訳ございません。相澤先生」




昨日のニンダイでぽこポケとZAの情報が来て激熱。
メガゲッコウガがマジ楽しみすぎる。
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