僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚 作:枝那
なんか続きが見れないんですけどバグですか?
「申し訳ございません。相澤先生」
「火神……」
片膝をつき、救助に遅れてしまったことを相澤に詫びる縁壱。相澤は感謝の気持ちと申し訳なさを抱きながら掠れた声で返事をする。
「オイオイ。先生が心配で飛び出して来たのか?かっこいいなあ」
2人の間に水を差すように、死柄木はニタニタと不気味な笑みを浮かべている。縁壱は相澤を庇いながら、静かに敵を睨みつける。
「………」
「シカトかよ。
黙ったままでいる縁壱を煽る。それでも彼は返事をすることはなく、死柄木はチッと不機嫌に舌打ちを零す。
睨み合いが続いている状況で、彼の隙だらけの背中を狙う影が3つ。身の程も弁えず1人で飛び出してきた馬鹿な子供と笑いながら、その命を刈り取るために凶器を向けて。
「え?」
誰かが呟いた。
気づけば彼の後ろには、どさりと音を立てて敵たちが力無く倒れていた。
振り向くことすらせず、刀を鞘に収めたまま、首、顎、鳩尾といった急所を的確に狙い、最小限の動きで敵を制圧してみせた。
その様子を見ていた敵たちが呆けているのも束の間、彼の姿が一瞬ブレたかと思えば、広間に再び赤い炎が巻き起こる。その炎は敵同士を線で結ぶように移動した後、倒れている相澤の所へと戻る。
敵たちは何が起こったのか理解できないまま気絶した。
縁壱は相澤を他の者が救助できる安全な場所に移動させた。
今ここにいるのは縁壱と、死柄木と脳無の3人のみ。
「すごいなあ、今どきの学生は。全然目で追えなかった。あれだけいた敵も一瞬でやられた。恥ずかしくなってくるぜ敵連合…!」
仲間がやられているのに、余裕を崩さない死柄木に、縁壱は言葉をかける。
「ワープゲートの敵は抑えた。応援も既に呼んだ。今すぐ投降しろ」
「…は?」
その言葉を聞いた死柄木は間抜けな声を出す。
「はあーーー………」
そして、苛立ちを隠すこともなく長い溜息を吐き、ガリガリと乱暴に首を掻き毟り始めた。しばらくして落ち着きを取り戻すと。
「脳無、入口に行け。まずは黒霧の奪還だ」
死柄木に命令を下された脳無は、入口の方へ体の向きを変え、凄まじいスピードで一直線に向かって行く。
それよりも速く、縁壱はその直線上に先回りし妨害する。
命令を実行するのに障害となる存在を脳無は排除するように動く。さっき相澤を軽く捻り潰した打撃を目の前の縁壱の顔面目掛けて食らわせようとする。
眼前に迫るパンチを、縁壱は最初から分かっていたかのように回避し、鞘から刀を抜いて、脳無の両腕と両足を峰で殴打した後。
「日の呼吸 陽華突」
頭を左の掌で押し出し、脳無の鳩尾を中心に無数の突きを放った。
神速の抜刀術。脳無の動体視力を以てしてもその動きを捉えることはできず、一方的に攻撃を食らってしまった。しかし、
(骨にひびが入る程度の力で殴ったはずだが……)
縁壱はまるで攻撃が効いておらず、相手がピンピンしていることに眉をひそめる。
死柄木は顔面に張り付いた手の下で、にやりと瞳を歪ませ、笑いを堪えるような調子で言う。
「無駄なんだよ。そいつはオールマイトの100%にも耐えられるよう
「……『ショック吸収』といった辺りか」
ダメージがないこと、死柄木の発言から目の前の敵の“個性”に当たりを付ける。
(打撃が効かないとなると……)
対抗する手段はある。だが、相手が敵だからといってそこまでしていいものかと逡巡する。悩んだ末に彼は口を開く。
「最後にもう一度言う。大人しく投降しろ。そうすればこれ以上傷つけるつもりはない」
「あ?この期に及んでまだ勝つつもりでいるのか?ダッセェなぁ」
「……そうか、もういい」
その言葉を皮切りに脳無が再び動き出し、彼に殴り掛かる。しかし、これも難なく避ける。瞬きの間に脳無の背後へ移動し、収めていた刀に手をかける。
ゾッ…
彼が構えた瞬間に生じた、圧倒的な威圧感。死柄木は思わず後ずさりし、血の気が引く。
脳無に至っては、本能でその危険性を察知し、1秒でも早く彼を殺すべく、今までとは比べ物にならない速さとパワーで襲いかかる。
それに合わせて縁壱も動き出し、加速する。
脳無は拳を彼の心臓目掛けて突き出し、縁壱は赫く輝く刀を振るう。
両者が衝突するまで、1秒もかからなかった。
皆がかろうじて認識できたのは、2人が動き出したその瞬間のみ。次の瞬間には、2人は攻撃動作を終えた状態で交差していた。
ぼとりと重いものが落ちる音がする。脳無の両腕は、肘から先が綺麗に断ち切られていた。
縁壱は構えていた刀をしまい、くるりと振り返って死柄木の方へ歩みを進める。
脳無は腕を失ってもなお、与えられた命令を実行しようとしていた。隣を通り過ぎる縁壱に手を伸ばそうとしたその時、ある違和感に気付いた。
足が思うように動かせない。
ずるりと視界がズレ、気づけば脳無は前方に倒れていた。
その光景に全員が息を呑む。
あの一瞬で彼は腕だけでなく、足までも刈り取ってみせたのだ。
四肢を奪われ、自由に身動きが取れない脳無はモゾモゾと地面を這いずり回る。対する縁壱は五体満足。かすり傷一つついていない。疑いようのない、彼の勝利だ。
「…ハ、ハハハッ!!」
だが、死柄木は高らかに笑う。自分たちの勝利を確信するように。
「だから無駄だと言っただろーが!脳無には『
そこで彼は異変に気づいた。
「…おい!何をやってる!早く治せ!」
本来なら失った手足はすぐ生えてくるはずなのに、一向に治る気配を見せない。そこで死柄木に焦りが生じ、額に冷たい汗が流れる。
「その刀のせいか⁉超スピードの個性じゃなかったのかよ⁉クソチートが……!!」
先ほどまでの余裕からは一転、癇癪を起した子どものように喚き出す。
死柄木の予想は正しい。
縁壱の“個性”『赫刀』は、肉体のみならず、肉体にある
「対オールマイトの兵器だぞ…!?サンドバッグ人間だぞ…!?なんでプロでもないガキ1人に負けてんだよ!!?」
ガリガリと首を掻きむしりながら不満を撒き散らす死柄木に縁壱はゆっくりと近づく。
「ふざけるな!なにがヒーローだ!人の手足を奪っておいて!」
自分の行いを棚に上げて、縁壱のことを謗る。
「そうやって誰がために振るう暴力は美談になるんだ!敵もヒーローも同じ暴力を振るってる筈だろ!所詮オマエは抑圧の為に暴力を振るってるに過ぎない!」
あまりに稚拙で支離滅裂な暴論を吐く。それに対して縁壱は足を止めて。
「何を言ったところで、今のお前の言葉には『重み』がない」
「このガキーーッ!!」
そう一蹴した縁壱に激高した死柄木は縁壱のことを掴もうとするも、わずかに身体を横にずらして躱した彼に、首に手刀を落とされ意識を失った。
その場にいる全員が呆然としていた。
これだけの暴挙をした敵連合を名乗る者たち。その主犯格のあまりにあっけない最後と、それを1人で圧倒してしまった縁壱の強さに言葉を失った。
「もう大丈夫!!私が来た!!………アレ?」
その空気を打ち破ったのは、バン!と扉を乱暴に開いたオールマイト。彼の到着で他の者たちも我に返った。
◇
USJに到着した後、オールマイトは施設内に散らばった生徒たちの救出と敵の退治に向かった。No.1の称号は伊達ではなく、全員の救出と敵の制圧、その両方完遂するのに5分もかからなかった。
やがて飯田の応援要請を聞いた雄英教師陣と警察も到着し、敵たちは次々に拘束されていった。
「火神少年」
「オールマイト」
敵がいなくなり、散らばった生徒たちも戻って来ている中で、オールマイトが縁壱に話しかける。
「13号とイレイザーヘッドを救けたのは君だそうだね」
「はい」
「……すまなかった」
オールマイトは縁壱に深々と頭を下げて謝意を述べる。
「敵連合は私を狙って
その謝罪の言葉を静かに聞いていた縁壱は口を開く。
「頭を上げてください、オールマイト。貴方は情けなくなんてない。紛うことない平和の象徴です」
それに、と続けて、
「
そう、信じられないことを言い放った。
オールマイトは一瞬身体を硬直させた後、
「なぜ…」
ごく一部の者にしか明かしていない自身の秘密を知っている理由を問うた。
「俺は生まれつき、生き物の身体が
信じ難いことの連続だった。
『赫刀』という“個性”。
天はこの少年に二物も三物も与えた。
だが、同時に、
「辛くは…なかったのかい?」
“個性”に由来しない『透き通る世界』。超人のような力だ。しかし、決して良い事ばかりがあった訳ではないはずだ。
「…確かに、俺は幼い頃漠然とした疎外感を抱いていました。一佳や施設の皆と会ってから、その理由が分かりました。ですが、俺はこの目を疎ましいと思ったことは一度もありません」
オールマイトと視線を交わしながら、彼は続けた。
「この世界はあらゆるものが美しい。生れ落ちることが出来ただけでも幸福に感じます。余すところなく、この世界を視ることが出来るのが、俺はたまらなく嬉しいのです」
「―――」
言葉が出なかった。
弱冠16歳の少年には似つかわしくない、達観した老人のような言葉。
ナチュラルボーンヒーロー
この言葉がこれ以上なく相応しい人間がいるだろうか。
きっと彼は自分の後継と共に、皆を引っ張っていくヒーローになるだろう。
その未来に思いを馳せたオールマイトは、
「HAHAHA!!私も負けてられないな!!」
「?」
そうやって豪快に笑い飛ばした。
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個性「赫刀」
刀を生み出すことができるぞ!同時に生み出せるのは1本だけ!刃を潰したりなんかもできる!ちなみに握ると真っ赤になるぞ!かっこいい!
赤い状態で人間を切ると体内の“個性因子”も焼き切ることが出来る!エグイ!