僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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今回は短いです。


第12話 まだ見ぬ悪意

「16……17……うん。ほぼ全員無事だ」

 

事後処理はヒーローと警察に任せて、生徒たちはUSJの外へと集まっていた。幸いなことに、個性を使った緑谷の指の怪我を除いて、全員大きな怪我はない。

 

「そうか、やはり皆のとこもチンピラ同然だったか」

「ガキだとナメられてんだ」

 

皆は自分たちの置かれていた状況を共有し合う。

 

「そうだ火神!!」

 

「どうした」

 

「お前いきなり1人で飛び出すなよ!!ビビっただろー!!」

 

「そうか。それはすまなかった」

 

「対オールマイトの隠し玉を倒したのはお前だったって聞いた。どんな奴だった」

 

轟が火神に尋ねる。他の者たちも目線を彼の方に向け、耳を傾けている。

 

「そうだな。相当強かったと思う。あの敵の自信も頷ける。動き自体は読みやすかったが」

 

クラス最強がそこまで言う敵に、生徒たちの間に戦慄が走る。

 

「だがそれ以上に、俺は敵連合を許せない。死人を改造して傀儡にするなんて、不愉快極まりない」

 

『⁉』

 

「し、死人って……?」

 

縁壱の発言の意味を麗日が聞く。その声は少し震えている。

 

「あの『脳無』という敵は死人が動かされているものだった。死体を利用したのか、改造される過程でそうなったのかは分からないが」

 

「そんな………」

 

まるでホラー小説のような話を聞いて、何人かの生徒も顔面を蒼白させる。

 

その様子を見て、彼は

 

「すまない。敵に襲われた直後にする話ではなかったな」

 

と申し訳なさそうに言った。

 

重たい空気を打ち破るように、刑事が彼らに声をかける。

 

「割って入るようですまないが、生徒(きみ)たちにはとりあえず教室に戻ってもらう。すぐ事情聴取って訳にもいかんだろ」

 

「刑事さん。相澤先生は……」

 

蛙吹が相澤の容態について尋ねる。彼女と緑谷・峰田は同じ場所に飛ばされ、そして脳無に敗北した彼の姿を直接見ていた。

 

「両腕粉砕骨折で、幸い後遺症は残らないそうだ」

 

「ケロ……」

 

「よ、良かった……」

 

蛙吹と峰田が安堵の声を出す。医学に精通していない者でも重傷だと分かるほどの怪我だった。命に別状は無いことに一安心する。

 

「校長先生。念の為校内を隅まで見たいのですが」

 

「ああもちろん!一部じゃとやかく言われているが権限は警察の方が上さ!捜査は君たちの分野!よろしく頼むよ!」

 

 

安全を期すため、通常より少し早い下校となった。雄英の施設に敵が襲撃したというアクシデントがあったため当然の措置と言える。

 

皆は帰宅の準備をしていたり、状況が状況だから親の迎えを待っていたりする。縁壱も荷物を整理していると、バタバタと騒がしい足音が教室の外から聞こえる。

 

「縁壱!大丈夫⁉」

 

先程HRを終えたであろう一佳が乱暴に扉を開けてA組の教室に顔を覗かせる。その大きな音にクラス中の視線が集まる。

 

「大丈夫かよ火神?!敵に襲われたって聞いたけどよ!!」

 

「火神さんがご無事でなによりです。A組の皆様も大事はないようで安心しました」

 

少し遅れて塩崎と鉄哲が彼女の後ろからひょこっと顔を出す。

 

「一佳。それに塩崎と鉄哲も。心配かけさせたな。俺は特に怪我とかはない」

 

「よ、よかったぁ~~~。アンタがやられるとは思えないけど、もしものことがあったらって気が気じゃなかったよ」

 

その言葉を聞いて安心したのか、彼女は目尻に涙を溜めながら顔を綻ばせる。そこで余裕も出来たのだろう、自分たちが視線を集めていることに気付き、居心地悪そうにして

 

「細かい話は帰りながらにしよ。迷惑になっちゃうし」

 

「そうだな!騒がせちまって悪かったなー!!」

 

4人はA組の教室を後にした。

 

 

「お父さんとお母さん、迎えに来るってさ」

 

「俺は別に構わないが……そういう訳にもいかないか」

 

3人にUSJでの出来事について話した後、鉄哲と塩崎と別れを告げた。縁壱と一佳が校門まで歩いていると、

 

「あの人……」

 

校門の近くで部下と話している見覚えのある刑事を見かけた。

 

「お久しぶりです。塚内警部」

 

「君らは……火神君に拳藤さんじゃないか!一年ぶりだね!」

 

彼の名は塚内直正。警察官である。2人は知る由もないが、彼はオールマイトの『秘密』を知る数少ない人間の1人でもある。

 

縁壱と一佳は一年前にウィステリア事件の捜査をしていた塚内と知り合った。

 

「先ほどはご挨拶できませんでしたが、お元気そうで何よりです」

 

「ああ。まさか、君たちとこんな形で再会することになるとはね」

 

会話に花を咲かせる。

 

「しかし、『あの事件』からもう1年か……時の流れは早いものだね」

 

目元を伏せて感慨深げに言う。縁壱と一佳の顔を最後に見てからたった1年しか経ってない。だが、2人の顔つきは見違えるほどに成長していた。

 

あの時、罪なき人々が殺されたという事実に心を傷めていた少年少女が今では立派なヒーロー志望になっているのを見て、彼はしみじみとした思いを抱く。

 

「…塚内さん」

 

「……すまない。なんだかおじさん臭かったね」

 

空気が湿っぽくなっているところに、塚内のスマホがピピピッと鳴る。部下からの連絡だ。2人に断りを入れてから電話に出る。

 

「どうした?」

 

『護送中の死柄木と黒霧が失踪しました!!』

 

「……なんだって?」

 

酷く焦燥した声で告げられた報告に、塚内は眉をひそめた。

 

ーーーーー

 

とあるバー。照明がついているものの薄暗い空間に、突然虚空から泥が現れる。その泥が人間大のサイズにまで広がると、中から2人の男が出てきた。

 

「聞いてないぞ、『先生』………」

 

個性を使えないように手枷を嵌められた死柄木はだらんと力なく倒れた後、呻き声を漏らす。

 

『長引いているみたいだったから『転送』を使ったが……どうやら正解だったみたいだね』

 

テレビから死柄木に向かって声がかけられる。画面には何も映っておらず、音声のみとなっている。死柄木は身体を倒したままテレビに視線だけ移して恨めしげに言う。

 

「何が改人『脳無』だ……プロですらないガキ1人に瞬殺されたじゃねえか……」

 

『……へぇ』

 

死柄木の発言に、テレビ越しに会話している者たちは興味を示す。

 

『瞬殺じゃと⁉オールマイト並みのパワーにしたというのにか⁉』

 

さっきのものとは異なる者、恐らく老人が驚きの声を挙げる。『脳無』が敗北したばかりか、相手にならなかったという事実が信じられないようだ。

 

「そうだ…顔に痣のある刀持ったガキだ。脳無の攻撃なんて掠りもしなかった。斬られても超再生が効かなかった…何がどうなってやがんだ……!!」

 

「ガキが…」と繰り返し譫言のように吐き棄てる死柄木に、声の主は教え子を導く教師のように説き伏せる。

 

『悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!』

 

かと思えば、今度は扇動者のように死柄木を鼓舞する。

 

『我々は自由に動けない!だから君のような“シンボル”が必要なんだ』

 

『死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

死柄木弔の瞳の奥。その悪意は今なお燻り続けていた。

 




皆さんは河上彦斎は引けましたか?自分はなんとか宝具1まで引けて石がすっからかんになりました……
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