僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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マジで遅れてすいませんでした。
リアルで忙しかったのとスランプ気味になっていたのと、ZAやっていたので投稿が遅くなってしまいました。


第13話 特訓

USJ襲撃から2日後。

 

臨時休校を挟んでの登校。教室の空気は普段とあまり変わらないけれど、皆心の中は穏やかではないだろう。敵の襲撃という事件が起きたから当然だ。

 

そんな彼らの内心など気にすることなく、時間割は普段通りに進んでいく。もうそろそろ朝のHRの時間だ。

 

「お早う」

 

『相澤先生復帰早えええ!!!』

 

ギプスを付けたまま教室に入って来た相澤に、生徒たちは皆一様にツッコミを入れる。流石はプロだ。

 

「先生無事だったのですね!!」

 

「無事言うんかなぁアレ……」

 

とはいえ、流石にダメージが身体に響いているようで、ヨロヨロと重い足取りで教壇に向かう。

 

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

『⁉』

 

相澤の発言にクラスがにわかにざわつく。

 

「戦い?」

 

「まさか…」

 

「また敵がーー!!?」

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

『クソ学校っぽいの来たあああ!!』

 

生徒たちは戦々恐々とした先ほどまでの態度とは一転、ホッと安心しつつテンションを上げて叫ぶ。その一方で、冷静に耳郎が質問する。

 

「待って待って!敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか⁉」

 

もっともな懸念である。他の者もその言葉に確かにと冷静になる。

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ」

 

なにより、と続けて。

 

「雄英の体育祭は……()()()()()()()。敵ごときで中止していい催しじゃねえ」

 

相澤の言う通り、雄英体育祭は日本のビッグイベントの一つだ。

かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれたが、現在は規模も人口も縮小した。

そして日本において今「かつてのオリンピック」に代わるのが雄英体育祭なのだ。

 

当然のことながら、全国のヒーローもスカウト目的の為に観戦する。

 

「年に1回…計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

 

その言葉を聞いて、生徒たちは闘志を火に焚べていた。

 

 

そんなことはあったものの、午前と午後の授業を終えて、もう放課後だ。

今日の所は早めに下校して、来たる雄英体育祭、2週間後に迫る一大イベントの準備をする。

 

…の、ハズだったのだが。

 

「なにごとだあ!!?」

 

1年A組の教室の前には人だかりができていた。これでは帰れない。

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

 

「敵情視察だろザコ」

 

よそのクラスが相手だろうと爆豪は相変わらずの平常運転だ。

 

「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭(たたかい)の前に見ときてぇんだろ。意味ねえからどけモブ共

 

「知らない人のこととりあえずモブって言うのやめなよ!!」

 

あまりに傲岸不遜な物言いに、クラスメイトからも非難の声を向けられる。そこに。

 

「どんなもんかと見に来たがずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」

 

「ああ⁉」

 

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅しちゃうなぁ」

 

人混みを掻き分けて紫髪の男子生徒が前に出る。爆豪の反応も気にせず彼は続ける。

 

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……」

 

それを聞いた者たちに緊張が走る。

 

「敵情視察?少なくとも普通科(おれ)は調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

 

(((この人も大胆不敵だな⁉)))

 

あの暴君(爆豪)にも臆することなく噛みつく彼の態度に、A組の生徒たちはそんな感想を抱いた。

 

特に気に留めた様子もなく教室から出ようとする爆豪を切島が引き止める。

 

「爆豪ちょっと待ってくれ!!」

 

「あ?」

 

「火神が『呼吸』を教えてくれるっつったろ?放課後に体育館借りて皆で特訓しようぜって話になったんだけど、お前も来ねえか?」

 

「………行く」

 

少しの間を置いて、爆豪もその特訓に参加することになった。

 

「オッシャ、じゃあ決まりだな!!よろしく頼むわ火神!!」

 

「ああ。では、早速行くとしよう。善は急げだ」

 

 

雄英高校はその巨大な規模だけあって施設の数も潤沢だ。事前に申請すれば生徒は自由に利用することができる。

 

昼休みのうちに体育館の利用申請を済ませておいて、A組の生徒は体育館に集まった。引率として相澤もいる。これからA組の生徒たちは火神に『全集中の呼吸』を教えてもらう。

 

……のだが。

 

「なんか」

 

「多くない?」

 

その数に違和感を抱いた者が数名。

なんと、A組以外のヒーロー科、すなわちB組の生徒も集まっていたのだ。

 

どうしてB組も一緒に?という疑問を皆が抱いている。その中で一人、切島が縁壱に問いただす。

 

「なあ火神。どうしてB組までいるんだ?」

 

「それはだな……」

 

ーーーーー

 

1年B組の教室。その扉の前に縁壱は立っていた。他のクラスに入るという機会は思っていたよりも少なく、少しばかり勇気のいる行為なのだが、彼にそれは当てはまらなかった。

 

「一佳、いるか」

 

微塵もためらうことなく扉を開け、一佳を呼び出す。突然の来客にB組にいる生徒の視線が集まる。

 

「あれ?どうしたの」

 

「今日放課後、A組で『呼吸』の訓練をするんだが、お前にも付いて欲しい」

 

「……あー、そういうこと。いいよ、特に予定とかないし」

 

つつがなく話が進み、長居する理由もないのでB組の教室から出ようとする。

 

「あれあれあれあれぇ⁉」

 

そんな彼に待ったをかけるように、突然横槍が入る。教室に背を向けていた縁壱は一体何事だと振り返り、その声の主を見た一佳は「ゲッ」と顔を顰めた。

 

「敵の襲撃を耐え抜いたA組の生徒じゃないかぁ!!わざわざB組に何の用かなぁ??」

 

「物間……」

 

一佳はため息をつきながら頭を抱える。

 

彼の名は物間寧人。B組の生徒であり、少々…いや、かなり性格に難のある生徒だ。

 

突然絡まれた縁壱はきょとんとした表情のままその質問に答える。

 

「何の用って…一佳に特訓の手伝いをしてもらうためだが」

 

「相手しなくていいって」

 

律儀に応対する縁壱。一佳は面倒なことになる前に早く話を終わらせようとする。

 

「我らがB組の最高戦力を君たちA組の特訓に参加させるだってぇ?そんなこと認めるわけにはいかないなぁ」

 

「決めるのは一佳だろう?」

 

正論である。だが、物間は怯むことなく、更に捲し立てる。一体何が彼をそうさせるのだろうか。

 

「次の体育祭!君たちA組が主役でいられると思ったら大間違いだ!今のうちに、精々噛みしめるハンカチを用意しているんだね!!」

 

そう言って高らかに笑う物間。その首に向かって。

 

「フンッ!!」

 

「ゴホァ⁉」

 

見るに堪えなくなった一佳が恐ろしく速い手刀を放つ。縁壱でなければ見逃してしまうだろう。意識を失い倒れる物間をB組の生徒が回収する。とても手際が良い。それを見届けた一佳は縁壱に手を合わせて申し訳なさそうな表情を向ける。

 

「ごめんな。B組(ウチ)の物間が……」

 

「随分と個性的な人だな」

 

「あいつはああいう奴だから…」

 

「…もう行く。授業も始まるから」

 

「ちょっと待ってくれ火神」

 

今度こそB組を出て自分のクラスに戻ろうとする縁壱を鉄哲が引き止める。

 

「どうしたんだ?」

 

「その特訓よォ、俺も行っていいか?」

 

「ああ。構わないぞ」

 

「オシ!!ありがとうな!!」

 

「礼には及ばない。他にも参加したいという人がいたら、連れてきてくれ。可能な限り対応する」

 

ーーーーー

 

「…ということがあって、B組の一部の生徒も訓練に参加することになった」

 

経緯を説明され、皆得心が行った。とは言え、来ているB組の生徒は少ない。これから体育祭が控えているのに、個性不明というアドバンテージを捨てたくないのだろう。

 

来ているB組の生徒は鉄哲、塩崎、そして……

 

「そちらは初めましてだな」

 

全身が毛むくじゃらの眼鏡をかけた男子生徒と、小太りで灰色の髪の男子生徒。

 

「宍田です」

 

「僕は庄田。君たちの強さの秘密についてご教示願いたい」

 

宍田獣郎太。庄田二連撃。一佳も含めた5人だ。

 

聞くところによると、以前から一佳(と縁壱)の強さの秘密に強い興味を抱いていたらしい。2人とも近接戦タイプのようだし、同じく徒手空拳で戦う彼女に関心を持つというのには納得だ。

 

自己紹介をした後、縁壱はキョロキョロと周囲を見回す。

 

「彼は来ていないのか?」

 

「彼?……ああ、物間ね」

 

あの濃い人物像は忘れたくても忘れられない。

 

「あいつは来てない。というより来させてない。A組に何言い出すか分かんないし」

 

「それはまあ……そうだな……」

 

縁壱の脳内には簀巻きにされている物間のイメージ図が浮かび上がっている。その物間のことを知らないA組連中は疑問符を頭に浮かべている。

 

「ここにいない奴のことは置いといて……さ、時間もそんなないし早くやろ?」

 

「そうだな」

 

気を取り直して、訓練に取り掛かる。それと同時に緩んでいた空気が一気に引き締まる。

 

ゴホン、と軽く咳き込んだ後、縁壱はA組・B組の前で口を開く。

 

「A組の皆には以前話したように、B組の生徒は一佳から聞いているかもしれないが、俺たちは『全集中の呼吸』という特殊な呼吸法を使う。今日の訓練は皆にそれを教えようと思う」

 

「あ、ちょっと待って」

 

「どうした?」

 

とんとん拍子に話が進むかと思いきや、彼の言葉を遮って一佳が小さく手を挙げる。

 

「これから皆に『呼吸』を教える前に、どんなものかまずは私たちで戦って実演してみせない?」

 

彼女の発言を聞いてA組・B組の生徒たちがにわかにざわめく。縁壱は乏しい表情のまま、その言葉の意図を問う。

 

「何故?A組(みんな)には既に呼吸を見せてあるし、B組(そちら)も一佳が戦っているところを見ているだろう?」

 

「と言っても1回や2回くらいでしょ?まだ呼吸のことをよく知れてないと思うんだ。それに、ここ最近アンタと戦っていないから、私も腕試しをしたいんだ」

 

一佳は縁壱に向けて拳を突き出す。快活な笑みを浮かべ、しかしながらその目はギラギラと滾っている。

 

「そういうことならば、断る理由はない。では、予定を変更して、皆に俺たちの戦いを見せよう」

 

 

少し距離を取って向き合う縁壱と一佳。彼の手には、刃を潰した赫刀が握られている。その2人の周囲を取り囲んで、他の者たちは静かに観戦をしている。

 

互いの顔を見つめ合う2人の表情は真剣そのもの。彼らから放たれる刃物のように鋭い雰囲気に呑まれそうになりながらも、クラスメイトたちは少しばかり高揚していた。

 

A組最強の火神縁壱。知り合ってまだ1週間程度だが、彼の規格外っぷりはよく知っている。そして、そんな彼と相対するのはB組最強の拳藤一佳。

 

『全集中の呼吸』という前代未聞の技術を修める者同士の戦い。これにはどの生徒も興味津々だ。

 

ある者は2人の戦いを余すことなく分析し、ある者はいずれ戦うことになる相手の力を見定めようとし、またある者はこの戦いを自分の糧とし貪欲に食らおうとしている。

 

飯田が離れた所から、2人の間に割り込むように腕を水平にまっすぐ伸ばす。

 

「それでは……勝負開始!」

 

その言葉と同時に飯田が腕を挙げる。

 

 

先に動いたのは一佳だった。

 

刀を持ったまま動く気配を見せない縁壱の周囲を縦横無尽に駆け巡り、彼の背後に回り込む。そのがら空きの背中に向けて、まずは挨拶代わりに拳を叩き込む。

 

拳に伝わってくるのは冷たく固い感触。

 

縁壱は一瞥することもせず、刀を拳と背中の間に滑り込ませることで打撃を防いだ。

 

防がれることは一佳も想定内。冷静に、次の手を繰り出す。

 

彼女は後ろに飛び跳ね、縁壱と距離を取る。今度は真正面。態勢を立て直した後瞬く間に距離を詰め、連撃を浴びせようとする。

 

無数の乱打。一発でも当たればひとたまりもないだろう。だが、縁壱は刀でそれを受け止める。

 

「なんてラッシュだよ……」

「しかも火神はそれを全部捌いてやがる」

 

しばらく攻防が続いた後、一佳は縁壱の顔面ど真ん中に向かって拳を放つ。

これも縁壱は難なく防ぐ。

 

だが、

 

「ハァッーーー!!」

 

「!」

 

一佳は拳を刀に触れさせたまま、更に突き出そうとする。それと同時に、彼女の拳が何倍にも()()()()()()。その余波に、縁壱は後ろへと吹き飛ばされる。

 

これが一佳の“個性”『大拳』。拳を巨大化させるというシンプルなものだが、呼吸によって強化される肉体、そしてそれから繰り出される体術により、強力無比なものに昇華している。

 

「チッ!」(浅かった……!!)

 

縁壱に一杯食らわせた事実に、観客たちがにわかに沸き立つ一方で、一佳は軽く舌打ちをする。吹き飛ばされた方向から、彼はゆっくり歩いてくる。

 

「あんだけの攻撃が全く効いてねぇ…!!」

「多分、拳藤さんが拳を膨らませる直前に後ろに跳んでダメージを無効化したんだ」

「ラッシュにも全て対応していた。未来予知でもしてんのか?」

 

ある程度の距離まで近づき、一佳と対峙する。

 

「あれだけ打ち込んでノーダメとか自信無くすなぁ」

 

「よく言う。準備運動みたいなものだろうに」

 

「うん。ようやく、身体あったまってきたとこ!!」

 

口角を上げながら言い終えると、彼女の姿がぶれる。それと同時に、縁壱の姿も掻き消える。

 

さっきとは比べ物にならない速度で戦闘を繰り広げる。辛うじて目で追える程度で、その攻防の全容が掴みにくい。だが、辺りを舞う砂埃、あちこちから響く刀と拳がぶつかる音が、その戦闘の激しさを物語っている。

 

「……すげぇ」

 

誰かが小さくつぶやいた。

 

プロに引けを取らない戦い。『呼吸』を操る猛者同士の戦い。全員がまばたきすることも忘れ、その戦いに見入っている。

 

再び距離を取る。全ての攻撃を捌き切れた訳ではなく、所々傷を負ってしまっている一佳。その一方で、汗一つかかず涼しい顔をしている縁壱。

 

「これで終いにしよう」

 

「ああ。そうだな……!!」

 

呼吸を整え、2人が同時に構えを取る。

 

動き出したのは、ほぼ同時。

ドォン!とまるで地面が爆発したような音を立てて、互いに突撃する。

 

一佳は渾身の一撃を。縁壱は最小限、効率重視の一撃を放つ。

 

両者の衝突の余波により、また砂埃が立ち昇る。

砂煙が晴れ、ようやく2人の姿が鮮明に見える。

 

一佳の拳は縁壱の眼前で止まっていて、縁壱の刀は一佳の首筋に当てられていた。

 

全員が息を呑む。

 

その静寂を打ち破るようにして、

 

「ハァーー……負けたぁ~~~!!」

 

一佳が力無く地面に倒れこんだ。悔しそうな、けれど晴れやかな表情をしている。

 

「しばらく戦わない内に随分と腕を上げたな、一佳。すごいぞ」

 

「ありが…とっ!」

 

差し伸べられた手を取って、弾みをつけて立ち上がる。

 

「自分でも結構強くなったと思ったんだけどなー。やっぱお前には敵わないな」

 

「そんなことはない。一佳の成長には目を見張るものがある」

 

呑気に会話している2人とは対照的に、その戦いを見ていた者たちは驚愕に体を支配されていた。しかし、同時に2人の戦闘は、彼らの闘志に火をつけた。

 

これからの体育祭に向けて、より一層の熱意を持って強くなろうとするだろう。




そういえば皆さんは御三家をどの子にしましたか?
私はチコリータです。
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