僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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第17話 騎馬戦

「“個性”発動アリの残虐ファイト!でも、あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!」

 

第1種目が終わっても、休憩する暇などない。

15分間のチーム決め兼作戦タイムが与えられ、次の第2種目に備えなければならない。

 

この難関を乗り切るため、皆考え得る限り強力なチームを作るため交渉を進めている。やはりと言うべきか、チーム決めの交渉はクラスメイトにかけている。

 

他者との連携や、“個性”の把握、それらに基づいた作戦の立案。プロになれば当たり前に行うことの数々。これはその予行演習に近い。

 

 

チーム決めが順調に進んでいっている中で、1000万というポイントを与えられた緑谷はというと……

 

超避けられてる!!

 

完全に孤立していた。

 

他クラスの生徒たちはそもそも自分のクラスで固まっている。A組の生徒たちは露骨に目線を彼から逸らし、声を掛けに行ってもやんわりと断られてしまう始末。

 

(やっぱり保持し続けるより終盤に奪う方が戦法として理に適ってるもんな…)

 

(加えて轟くんやかっちゃんと違ってちゃんと“個性”を見せてないから信用もない……)

 

万事休す。かと思いきや……

 

「デクくん!組も「麗日さん!!!」わっ

 

彼の前に救いの女神が現れた。

 

麗日の言葉を聞いた瞬間、スプリンクラーの如く緑谷の目から涙が溢れだす。

 

「い、良いの⁉多分僕超狙われるよ⁉」

 

「ガン逃げされたらデクくんが勝つじゃん」

 

「それは過信してる気がするよ、麗日さん……」

 

「するさ!何より…」

 

仲良い人とやった方が良い!

 

遠慮がちになっている緑谷に、彼女は咲き誇った花のような笑みを向けた。

 

「…………!!」キュン

 

「どうしたの!!?不細工だよ!?」

 

「あ、いや、直視できないくらいうららかで……」

 

眩しい笑顔を見せる麗日を直視出来なくなった緑谷は思わず目をギュッと強く瞑った。

 

「実は僕も組みたかったんだありがとう!スムーズに意思疎通が出来る人のほうが望ましいし!」

 

「麗日さんの“個性”と()()1()()である策を考えていたんだ!」

 

 

「ん?」

 

「「飯田くん!!」」

 

緑谷は飯田に自分の策を話した。

 

飯田の『エンジン』という“個性”。それに加えて麗日の『無重力(ゼログラビティ)』の“個性”を使用し騎馬を軽くすれば、高い機動力を得られる。逃げに徹すれば誰も追い付けないだろう。

 

互いの“個性”を補完する良い作戦だ。

 

「流石だ緑谷くん。だがすまない、断る」

 

なんと、飯田は緑谷の提案を拒み、轟とチームを組むことにしたのだった。

 

「入試の時から君には負けてばかりだ。素晴らしい友人だが、だからこそ、君についていくだけでは未熟者のままだ。君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない」

 

俺は君に挑戦する!

 

緑谷と麗日に背を向けてそう宣言した飯田。

その宣言を聞いてようやく緑谷も自分の状況を理解した。

 

(もう…始まってる!全員敵!そうだ、僕は今トップ。友達ごっこじゃいられない――!!)

 

「私と組みましょ1位の人!!!」

 

「わああ近!!誰!!?」

 

彼らの前に突然現れた少女。彼女はかけていたゴーグルを外して自己紹介をする。

 

「私はサポート科の発目明!あなたのことは知りませんが立場利用させてください!!」

 

「あっあけすけ!!」

 

その歯に衣着せぬ物言いにツッコむ。発目は緑谷の反応を気にすることなく口を開く。

 

曰く。1位の緑谷はこの会場内で最も注目を浴びる存在。そんな彼と組めば必然的に自分のベイビー(発明品)達が大企業の目に留まることになる。そしてこれは何も彼女にばかり美味しい話ではない。サポート科は自分の発明品を体育祭に持ち込むことが出来る。その発明品を利用し緑谷は騎馬戦を有利に進めることが出来る……だそうだ。

 

「これなんかお気に入りでして。とあるヒーローのバックパックを参考に独自解釈を加え…」

 

「それひょっとしてバスターヒーロー“エアジェット”!?僕も好きだよ」

 

「本当ですか!ちなみに私の“個性”は……」

 

(即気ィ合っとる)

 

生粋のヒーローオタクである緑谷と、生粋のメカオタクである発目。お互い通ずるものがあるのだろうか、先ほどの困惑はどこへやら、即効で打ち解けた。

 

(飯田くんと組めなかったのはかなり痛いけどこの人なら…!)「あと一人…!!」

 

麗日と発目の名乗り上げにより、孤立していた緑谷にも光明が見えてきた。

だが、最後のピースが欠けている。緑谷は周囲に目を向ける。

 

(皆もう固まっちゃってるか!?ええいそこはいい!僕らの騎馬に足りない力、それを補えるのは……)

 

「デクくん!?」

 

緑谷はある生徒に狙いを定め、他の者に取られまいと足早に駆ける。

 

「君だ!」

 

 

「15分経ったわ!それじゃあいよいよ始めるわよ!!」

 

短いようで長かったチーム決めタイムが終わり、ようやく騎馬戦が始まる。

選手たちは気を引き締め、観客のヒーローたちは次はどんな活躍を魅せてくれるのか楽しみで仕方がない。やはり、ヒーローたちの関心はA組に寄せられている。

 

 

 

しかし、ここにA組ばかりが目立っているこの現状を気に食わないと思っている者が。

 

「ここにいるほとんどがA組にばかり注目している…」

 

B組の物間寧人だ。

 

火神()に至ってはオールマイトと戦えるという特別扱い。おかしいよね?彼らと僕らの違いは?“会敵”しただけだぜ?」

 

障害物競走の結果は上位がA組で固まっている。対してB組は中位下位にいる者が多数。

だがそれでいい。A組の快進撃には驚かされたが、それもまだ想定の範囲内。

 

「調子づいたA組に知らしめてやろう皆」

 

B組が逆転する未来とA組が悔しがる姿を頭に浮かべて、彼はほくそ笑んだ。

 

 

 

(一佳は鉄哲たちとは分かれたのか)

 

実況席にいる縁壱は自分の幼馴染に目を向けた。彼女と組んだのはB組の生徒たち。メンバーは女子で固まっている。そして鉄哲と塩崎は同じチームだ。

 

(緑谷は……)

 

次は1位の緑谷に目を向ける。チーム集めに苦慮していた彼だったが、何とかメンバーを集めることができたらしい。

 

(なるほど、そう来たか)

 

彼が最後に選んだピースは常闇踏影。『黒影(ダークシャドウ)』という伸縮自在のモンスターを操る“個性”を持つ彼は、緑谷たちに足りない防御・攻撃力を補完する事が出来るだろう。

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』

 

プレゼントマイクがカウントダウンを開始する。

 

『いくぜ残虐バトルロワイヤルカウントダウン!!!3!2!1!

 

START!!!

 

プレゼントマイクの開始宣言と同時に、選手たちは一斉に1000万(緑谷)に迫る。

 

「実質1000万(それ)の争奪戦だ!」

 

緑谷は当然逃げの一手を取る。

 

が、

 

「沈んだ…!!?」

 

鉄哲チームの生徒の“個性”により地面が泥のように変化し、機動力を奪われてしまう。ここぞとばかりに他チームはポイントを奪おうとする。

 

「麗日さん発目さん!!顔避けて!!」

 

緑谷は早速発目作のサポートアイテムを使用する。ピ、という短い起動音と同時に背中に付けたジェットパックから炎が噴出し、勢いよく上空へ飛んで沼から脱出する。

 

「耳郎ちゃん!!」「わってる」

 

耳郎がイヤホンジャックの耳を伸ばし、滞空している緑谷たちを攻撃する。

空中で上手く回避行動が取れないが、それを補うのが常闇の役割だ。

 

彼の腹から伸びた『黒影』は伸ばされたプラグを弾く。

 

「良いぞ黒影。常に俺たちの死角を見張れ」「アイヨ!!」

 

「すごいよかっこいい!!僕たちに足りなかった防御力、それを補って余りある全方位中距離防御!!」

 

「選んだのはお前だ」

 

「着地するよ!!」

 

緑谷の履いているシューズ型サポートアイテムから空気が噴出され、難なく着地する。

 

(麗日さん以外を浮かして総重量は麗日さん+装備や衣類分のみ!!)「機動性バッチリ!!」

 

「でしょー!?」

 

『まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!各所でハチマキ奪い合い!!1000万狙わず2~4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

「奪い合いィ?違うぜこれは一方的な略奪よぉ!!」

 

怒涛の追跡から逃れる緑谷たちの前に現れたのは、

 

「障子くん一人!?騎馬戦だよ!?」

 

騎馬戦のルールに反しているのにも関わらず堂々と駆け巡る彼に、緑谷は動揺を隠せない。だが、立ち止まっている暇はなく、即座に逃げる。

 

しかし。

 

「コレは、峰田くんの?!」

 

いつの間にか、峰田の“個性”である『もぎもぎ』が地面にばら撒かれており、それに気付かず踏んでしまった緑谷たちは動きを制限されてしまう。

 

「ふっふっふ………」

 

「峰田くん!!」

 

大きく広げ、包み込むように閉じていた複製腕の中から峰田が顔を覗かせる。小柄な峰田と、複製腕という“個性”を持つ障子の組み合わせだからこそ出来た芸当だ。

 

「それアリなんだ!?」

 

「アリよ!!」

 

驚いているのも束の間、緑谷たちは急いでその場から離れようとする。だが、高い粘着力を持つ『もぎもぎ』はちょっとやそっとでは離れない。それに畳みかけるように。

 

「わ!!?」

 

複製腕の隙間から、ピンク色の長い触手のようなものが飛び出し、緑谷たちを攻撃する。

 

「流石ね緑谷ちゃん」

 

「蛙吹さんもか!!すごいな障子くん!!」

 

障子の身体に隠れていたのは峰田だけではなく、蛙吹もだったのだ。カエルの長い舌と弾丸のように射出されるもぎもぎの多段攻撃。これには緑谷チームのみならず、他のチームも避けるので手一杯だ。

 

バシュ!!

 

逃げるのなら横ではなく上へ。緑谷はジェットパックを強引に起動し上空へ避難する。

 

「ああベイビーが引き千切れたぁ!!」

 

しかし、無理矢理飛んだからか、もぎもぎによって地面にくっついたままのシューズが壊れてしまった。

 

サポートアイテムを一つ失ったのは痛手であるが、あのままポイントを奪われるよりマシだ。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

空へと逃げた彼に狙いすましたかのように、爆豪も空を飛んでポイントを奪おうとする。

 

「常闇くん!!」

 

「了解」「アイヨ!!」

 

即座に常闇は黒影を出現させ、爆豪を殴り飛ばそうとする。

 

BOM!

 

「なっ……!?」

 

しかし、爆豪はポイントの奪取から回避へ即座に思考を切り替える。小規模の爆破を放ち、後方へ移動する。

 

『オォー!!爆豪、あの状態で常闇の攻撃を華麗に避けるゥー!!』

『自分の斜め前下へ爆破を放つことで、攻撃と回避を同時に行った。並の反射では出来ないことですね』

 

黒影の攻撃を回避した爆豪は、小刻みに爆破を放ちながら、さっきとは逆方向へ回り込む。常闇も急いで黒影を移動させようとするが、彼に追い付けない。そして、1000万のハチマキに手を伸ばす。

 

「5%…デラウェア・スマッシュ!!

 

だが、彼がハチマキを掴むより先に突然巻き起こった風圧によって吹き飛ばされてしまった。

 

爆豪の動きを分析・予測していた緑谷は、いつでも攻撃できるようにフルカウルを発動させていた。そして、彼がポイントを取るギリギリまで引きつけ、デコピンの要領で“個性”を発動。

 

直撃はしてないものの、爆豪は突風によりバランスを崩す。このまま地面へ真っ逆さまに落ちるだろう彼の胴体に、白いテープが巻きつけられる。

 

「ナイスキャッチ!!」

 

「チィ!」

 

瀬呂の“個性”によって、爆豪は元居た位置へと戻された。

 

『つーか爆豪騎馬から離れたぞ!?いいのかアレ!?』

 

「テクニカルなのでOK!地面に足が着いてたらアウトだったけど!」

 

騎馬に戻った爆豪は、態勢を立て直し再び緑谷に狙いを定めた。

 

爆豪が欲するものは頂点の座と完璧な勝利。そしてここでの理想とは1000万を獲ること。彼の闘争心は静まるどころか、むしろ逆風を浴びメラメラと燃え盛っていた。

 

その意識は今、1000万P(緑谷出久)へと向けられている。

そしてそれは爆豪のみならず、彼と組んでいる切島、瀬呂、芦戸も同じだった。

 

それはつまり、刺客の可能性を頭から排除していることを意味する。

 

意識外からの奇襲。ヒーローとしてあまり褒められた行為ではないものの、このような乱戦においては覿面に効果を発揮する。

 

待っていましたと言わんばかりに()は暗い笑みを浮かべながら、存在を悟られぬよう、すれ違いざまに背後から手を伸ばし――

 

 

ガシッ

 

 

「なっ……!?」

 

「誰だテメェ」

 

伸ばされた腕を強く掴む爆豪。奇襲をかけた張本人――物間はまさか防がれるとは思っていなかったのか、目を大きく見開いた。

 

『おおっと!爆豪、B組物間の奇襲にも難なく対応!!完全に死角だったけどな!!』

『まぁ、訳分からんスピードの奴と一戦交えたからな。そこら辺の感覚が鋭敏になってるんだろう』

 

おぉっ……!とプロたちから感嘆の声が出る。A組を抑えてB組の印象を強めるつもりが、逆に食い物にされたことに内心焦りながらも、物間はそれを取り繕って薄ら笑いを浮かべる。

 

防がれたのは想定外だが、まだ勝機はある。乱暴に手を振り払い、言葉を紡ぐ。

 

「『誰だ』…か。流石だなぁ、天下のA組様は。B組(僕ら)のことなんてまるで眼中にない」

 

「あぁ?」

 

「まぁそれもそうだよね。『敵の襲撃を耐え抜いた期待の新星』なんておだてられれば、浮足立って周りも見えなくなるか」

 

「………」

 

「さっきの障害物競走なんてその証拠。その場限りの頂点(トップ)に執着して、人参ぶら下げた馬みたいに前しか見えていない」

 

「コイツ…!」

 

全力で戦ったことに対する侮辱。自分のみならずA組の努力に泥を塗ったことに、切島が憤慨する。

 

「まぁお陰でこっちも助かったよ。君たちが馬鹿正直に勝利を目指してくれて。君たちが前方で戦っている間、“個性”やら性格やらを観察させてもらったんだ。後に有利になるようにね」

 

「組ぐるみか……!」

 

「いや?クラスの総意って訳じゃないけど。でもいい案だろう?」

 

そうやって観察していく中で、物間は爆豪に目を付けた。トップの生徒の中でも最も御しやすい人間だと判断したからだ。完璧主義でキレやすく、常にトップに立とうとする人間。恐らく、彼は煽り耐性が低いだろうと。

 

故に、爆豪の神経を逆なでするような言葉を放ち続け、冷静さを奪ったところを狩る。

そういう手筈だったのだが――

 

「ハッ、随分とおめでたい頭してるみてぇだなァ。自分の実力が足りねぇのを作戦だと言い訳してやがんのか。みっともねぇ」

 

爆豪は鼻で笑いながら、物間の言葉を一蹴した。

 

「なっ……」

 

「ちょっ」

 

その言葉に物間から笑みが一瞬剥がれ落ちる。口角をひくつかせ、それでも動揺していることを悟られるわけにはいかないと、表情を保ち続けた。

 

煽り返した爆豪に、これ以上は流石にまずいと考えた瀬呂は制止の声をかける。だが、それより先に。

 

BOOM!!

 

「グゥッ……?!」

 

「凡戸!!」

 

爆豪は腕を横に伸ばし、近づいてきた他のチームに向けて目を向けることもなく爆破を放つ。彼らから離れた位置にいたため、そこまで大きなダメージではないものの、よろめいてしまう。

 

これ幸いと、物間たちは一旦爆豪チームから距離を取ろうとする。爆豪勝己は自分の予想を上回る傑物だった。これ以上戦うのは危険だと、急いで逃げる。

 

「待ちやがれェ!!」

 

「ハハッ、しつこいんだよ!円場、頼む!!」

 

単身飛び込んできた爆豪に嫌味を飛ばしつつ、仲間に指示を送る。円場と呼ばれた少年は、爆豪に向けて息を強く吹き込む。送り込まれた空気は爆豪の前で硬化し、円形の壁となる。突然空中に出来た不可視の障壁に爆豪は阻まれる。

 

(んだコレ…!空気の壁か…?)

 

「ハハッ!ざまーみろ!」

 

見事に引っかかった爆豪を嘲りつつ、その隙に乗じて急いで離れる。

 

BOM!

 

「なんだ……?」

 

爆豪は空気の壁を破壊する訳でもなく、壁に掴まりつつ真反対の方向に向けて爆破を放つ。

 

BOM!BOOM!!BOOOM!!!

 

『なんだなんだァ!?爆豪、虚空に向かって爆破を放ち続ける!一体何をするつもりだァ!!?』

『まさか……』

 

彼の為そうとしていることの意図に気付いた者はごく僅か。爆豪のチームの者でさえもその全容を把握できない。

 

「急いで爆豪に追い付くぞ!」

 

「応!!」

 

しかし、彼の実力とセンス、No.1となることに努力を惜しまないその姿勢は、短い間でもクラスメイトたちは把握している。そして、それらによって築き上げられた爆豪への信頼が、残された騎馬たちを突き動かす。

 

パキンッ

 

「!?」

 

ガラスが割れるような音を立てて、空気の壁に穴が空く。

爆豪は爆破する手を止めようとしない。

 

周囲の者が何をしているのかと訝しむが、その隙だらけの姿にポイントを獲るため近づこうとする。

 

そして。

 

BOOOOM!!!

 

特大の爆発。破砕音がかき消されるほどの爆発音と煙幕に、近づいた者たちは蹴散らされる。

 

不可視の壁を突き破り、ミサイルのように物間たちの方向へ突っ込む爆豪。瞬く間にその距離は詰められる。

 

逃げようとしてももう遅い。

 

爆豪は物間の首にかけられたハチマキを掴み、

 

BOOM!!

 

容赦なく爆発を浴びせながら、そのポイントを全て奪い取った。

 

観客席がワッ、と盛り上がる。

 

『爆豪!!物間チームのポイントを奪取!!彼は完璧主義ってやつだな!!』

 

『壁を割ってそのまま奪うという方法もあったろうに……』

 

『それだけでは足りないと判断したのでしょう。故に、限界まで力を溜め込み、最大速度で奪いに行くという手段を選んだ。仲間が絶対に自分を回収してくれるという前提があってこそですが』

 

 

物間の作戦は決して間違っているわけではなかった。この体育祭という場において、体力を温存して次に備えるというのも一つの戦略だ。

 

ただ、物間たちは見誤っていたのだ。常に頂点を狙う者、本物の強者に追い付かんとする者の執着の強さを。

 

 

「キャッチ!っと!」

 

瀬呂が爆豪をテープ越しに掴み取り、騎馬へと戻す。

 

「やったな!!これで通過は確実……」

 

「まだだ!!」

 

切島の言う通り、元々爆豪が持っていたポイントと物間から奪ったポイントを合わせて通過ラインを突破した。

 

けれども、彼はこの程度では決して満足しない。

 

「次は1000万だ!!今度こそ獲りに行く!!」

 

チームのメンバーたちは呆れたような、好戦的な笑みを浮かべながら、次の獲物に向かって行く。




物間くんには申し訳ないことをしたなとは思ってますが、かっちゃんが原作とは少し変化していることを書きたかったのでこうしました。ゴメンね。
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