僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚 作:枝那
爆豪が物間を打破してから、時間は少しだけ遡る。
他チームからの怒涛の追手をかいくぐり、なんとか1000万Pを保持し続ける緑谷。
このまま制限時間まで逃げ切ることができればいいが、そう上手くはいかない。
「そろそろ、
混迷極まるこの戦い。最難関とも言っていい壁が緑谷たちの前に立ちはだかる。
ふぅ、と今一度息を吐いて高揚した精神を整える。緑谷らの視線の先にいるのは轟率いる上鳴・飯田・八百万チーム。
「相対するのはもう少し先かと思ったが…随分と買われたな緑谷」
常闇が黒影を出し、警戒を緩めない。
両者のにらみ合いが続く。張り詰めた空気の中で。
「飯田、前進」
「ああ!」
ついに轟が動く。
轟も彼らのことが頭にないわけではない。邪魔する者を即座に排除し、目の前の相手に集中できるよう動く。
「八百万、ガードと
「ええ!」
「上鳴は…」
「分かってる!しっかり防げよ!!」
轟がメンバーに指示を送る。
「……!切奈、切り離し!
「了解!」
一佳は轟が何をするのか見当もつかなかった。しかし、障害物競走の時に見た強力無比な“個性”とそれを十全に扱う技術・応用力から、『間違いなく厄介な何かをする』と判断。
騎馬である取陰切奈はその指示に従い、自身の“個性”で上半身を切り離す。切り離された上半身を抱え、一佳はその自慢の身体能力を以て空中へ跳んだ。そして、彼女の判断は正しかった。
八百万はシートを創造し、自身と轟・飯田をそれで覆う。仲間のことを気にする必要がなく、自分の力を最大限に発揮できる状況で、上鳴は“個性”を発動する。
「無差別放電130万V!!」
刹那、上鳴から広がった電光が周囲の選手たちを容赦なく襲う。放電が直撃し、強制的に動きを奪われる選手たち。
「悪いが我慢しろ」
そしてすかさず轟は畳みかけるようにして、八百万が創造した杖を伝い、地面を凍結させた。
『何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!!』
『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた。流石と言うべきか、障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』
『ナイス解説!!』
凍らされた騎馬たちはなんとか氷の檻を破壊して脱出を試みる。しかし、轟はそんな悠長に待ってはくれない。
「一応貰っておく」
「あぁ?!ハチマキー!!」
轟は移動しながら動けなくなった騎馬たちからさらっとポイントを奪っていく。加えて後ろに分厚い氷の壁を作り他の邪魔が入らないよう妨害する。
(拳藤には逃げられたか。出来ればアイツのも奪っておきたかったが……)
進みながら上空にいる彼女へチラリと目を向ける。
取陰と共にいち早く上空へ逃げ、放電を免れた拳藤一佳。彼女は今取陰の上半身に掴まりながら滞空している。
出来ることなら自分に並ぶ実力者を排除しておきたかったが、騎馬を封じ込むことは出来たからこれ以上後追いしないと轟は判断した。
しかし、その選択が誤りだったことにすぐ気づかされる。
「行って!!」
「かしこまり!!」
空中にいる拳藤は取陰の上半身を緑谷に向かって勢いよく
「「なっ……!?」」
緑谷と轟が同時に虚を突かれたような声を出す。
一佳が土壇場で繰り出した予想外の一手。当然緑谷も轟も一佳チームのことは警戒していたが、このタイミングで、このような策に打って出るとは予想もつかなかった。
飛ばされた取陰の向かう先は1000万P。風を切りながら一直線に飛びかかる。
「常闇くん!!」
「了解」
このまま何もしない緑谷ではない。
常闇に指示を出し、黒影で飛んでくる彼女を弾き飛ばそうとする。
取陰は十分に加速し、勢いがついているためすぐには止まれない。
ゆえに。
「はい、ざんねん」
黒影が取陰を捕まえようとした瞬間、彼女の上半身は細かく分かれ、四方に散らばる。
これが彼女の“個性”『トカゲのしっぽ切り』。全身を細かく分割させ、自由に動かすことができるというもの。
「アンタの対策はしてるっつーの!さっき爆豪を飛ばしてたでしょ!」
切り分けられ小さくなった口のパーツから器用に言い放つ。
細分化されたパーツたちはビュンビュンと緑谷たちの周辺を飛び回って彼らを翻弄する。
(B組の人の“個性”……!多分身体を複数に分割するというものだけど、これだけすばしっこく動かれるとどれが本命のパーツなのか分からない!)
彼女が飛び回るのは緑谷チームだけでなく轟チームの周囲も。迂闊に凍らせてしまえば、自分の行動範囲を狭めてしまう可能性がある。
緑谷は周囲に只管“個性”によるデコピンを打ち込み牽制する。ある程度の数は吹き飛ばせるものの有効打にはなり得ない。常闇も同じく黒影で飛び回っているパーツを攻撃する。
一方轟チームは防御に注力する。このパーツの“個性”は詳しく知らないが、小さくなっている以上恐らくそこまで力は出せない。ならばと、ポイントを獲られないよう防御に集中する。
もっとも、彼女の獲物は1000万Pで、轟のPはついでに獲れればラッキーくらいにしか考えていないのだが。
「はい、しゅーりょー」
笑いながらそう言う。
飛び回っているパーツに意識を向けさせ、彼らの意識が防御から攻撃に切り替わったタイミングで攻めに転じる。
腕をある程度の大きさまで戻した取陰は、緑谷の首に掛けられた1000万のハチマキを掴む。
「黒影!!」「アイヨ!!」
ことができなかった。
取陰の目的を見透かしていたように、常闇は彼女に向けて攻撃を放つ。伸縮自在の黒影は騎馬の間を縫って腕だけとなった取陰を的確に攻撃する。
「対策をしているのがお前だけだと思ったか?十中八九、目的は1000万だと思っていたからな。当然警戒はしていたとも」
防がれたことの悔しさで顔を歪めるも、1000万が獲れなかった以上切り替えるしかない。取陰は急いで自分の騎馬へ戻る。
「ごめん!1000万獲れなかった!」
「大丈夫、切り替えて行こう!」
取陰という邪魔者を排除した轟は氷の防壁を周囲に貼り、緑谷とのタイマンに持ち込んでいる。
「早く追い付かなきゃ!!」
「その前に、この氷を壊さないと」
足元に目を向ける。騎馬の脚は轟によって凍らされびくともしない。幸い拘束のためのものであるから、壊そうと思えば壊せる強度だ。
彼女にはこの状況を打開する手段があるものの、騎馬が全員揃っていない状況では博打が過ぎると氷の破壊に行動を移すことはできなかった。
しかし、取陰が戻ってきてチームメンバーがそろった今なら遠慮なく次の行動に移せる。
『地面に足が着いてたらアウトだったけど!』
(だったら……!)「切奈、しっかり掴んでよ!!」
そう言って、一佳は上空へ跳ぶ。ある程度の高さまで飛んだら今度は地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。彼女は落ちながら拳を構え、地面が眼前にまで迫ったその瞬間。
「ふん!!」
拳を凍った地面に思いっきり叩きつけ、足元を凍らせていた氷を無残に砕いた。
氷を破壊したはいいが、このままでは彼女は地面に落ちてアウトになってしまう。そうならないために回収するのが取陰の役割。切り離した腕で彼女を回収し、騎馬に戻す。
「よし!これで邪魔な氷はなくなった!早く緑谷のところへ!!」
◇
再び一対一で対峙する緑谷と轟。
八百万の『創造』によるサポート、上鳴の『放電』による牽制、そして飯田の『エンジン』によって生み出される高い機動力。これが轟の考え得る限り最強の布陣だ。
イレギュラーが入る余地がなくなり、加えて常闇と上鳴の相性もあってか緑谷チームは劣勢かに思われた。
この状況になって数分。未だ緑谷は1000万Pを保持していた。
(常に距離を置いて左側に…よく見てやがる。これじゃ最短で凍らせようにも飯田を巻き込んじまう。無闇な凍結は自分の首を絞めるな……)
緑谷は轟の“個性”の弱点を的確に見抜いていた。
心の中で舌打ちをする。時間も残りわずか。この調子で逃げに徹せられれば1000万を手にすることなく終わってしまう。
意図的に封じている
(それだけは絶対にしねぇ……!!)
だが、その選択だけはありえないと頭を振り払う。
脳裏にちらつくのは憎い父の顔と泣いている母の姿。
あの男の力には頼らない。絶対に
――だが、想いだけでは今の現実を変えられない。
轟は冷静に考える。この状況を打開し、緑谷から1000万を奪るための一手を。
その時だった。
BOOOM!!
「この爆発は……」「かっちゃん!?」
「何2人だけで楽しんでんだァ!!?」
氷で作られたフィールド内に、爆豪が一人先んじて参戦する。
突然の乱入者に両陣営とも驚いた顔をするが、彼だけではない。
ドゴォォン!!
「爆豪早すぎ!!」
騎馬に乗ったまま氷を砕きながら登場したのは一佳。
『おぉっとここでトップ4が集結!!喜べおめーら!!またまた大乱戦の始まりだァ!!!』
プレゼントマイクの実況の声と共に、観客席のボルテージが高まる。
ここに四つ巴のデッドヒートが完成した。
爆豪は真っ先に緑谷へ飛びかかる。
「くっ……!」(常闇くんは今轟くんに集中している。今このタイミングで防御を手薄にしてはいけない!一体どうすれば……!!)
必死に頭を回転させ、この危機を脱しようとする。そうしてる間にも刻一刻と爆豪は距離を縮める。
もはや万策尽きたかに思われたが、突然緑谷と爆豪の間に割り込むように物体が投げ込まれる。
「アンタに1000万は渡さないよ!!」
「邪魔すんじゃねぇ!!」
一佳が氷の防壁を砕いた時に生じた破片。それを彼女は投げたのだ。それだけではない。彼女の騎馬の柳レイ子の“個性”『ポルターガイスト』で破片は自在に操れる。一佳のチームに欠けていた遠距離攻撃の手段がここに来て補完出来た。
爆豪が拳藤に噛みつくが、追い付いた騎馬に回収される。
図らずも窮地を脱し安堵する緑谷。だが状況は決して良くない。
轟チームに加えて、爆豪や一佳にも注意を払わなければならなくなった。
上鳴の放電でサポートアイテムは故障し、空中に逃げるという手段も使えなくなった。
(どうする……!?)
乱入者に注意を払わなければいけなくなったのは轟も同じだ。彼は緑谷に集中するために爆豪と拳藤の対処を優先する。
さっきと同じように絶縁体シートを八百万に作ってもらい、上鳴の『放電』で周囲の動きを止めた後、凍結で完封する。
しかし。
「させねーって!!」
瀬呂がテープを伸ばし、絶縁体シートを奪う。これでは『放電』に轟たちも巻き込まれる。轟は腹立たしそうに奥歯を強く噛む。
「発目さん、ちょっといいかな?」
緑谷が相手に悟られないように声を潜めて発目に耳打ちする。
「どうかしましたか?」
「今ここにいる3チームのポイントって分かる?」
「少しお待ちください」
発目は自身の“個性”『ズーム』を駆使して轟、爆豪、一佳が現在保有しているポイントを把握する。彼女の“個性”であれば遠方でもはっきりと視界に映し出せる。
「轟さんのポイントは裏返っていて確認できませんでしたが、爆豪さんは650+375+305で1330P。拳藤さんは340+285+125で750Pです」
「ありがとう、発目さん」
「…緑谷、どうするつもりだ?」
周囲の警戒をしながら2人の会話に耳を傾けていた常闇は緑谷に発言の意図を問う。
「僕に考えがあるんだ」
「考え?」
「うん、それは―――」
緑谷の作戦を聞いた常闇は眉をひそめる。
「…正気か?もし失敗すれば俺たちの敗退は確定する」
「分かってる、でも……」
緑谷はこの混沌と化した戦場を見渡す。小競り合いをしながらも、自分の持ってる1000万を決して逃さないという闘志に満ち溢れた顔の3人。
「今、轟くん、かっちゃん、拳藤さんの3陣営が揃い踏みしてるこの状況で
その言葉を聞いて常闇はフッ、と笑みを浮かべる。
「元より俺はお前の選択に従うと決めた。最後まで付き合うさ」
『さあ残り約1分!!』
「ありがとう、常闇くん……!!」
「礼には及ばん」
タイムリミットが近いことを知らせるプレゼントマイクの声。奪い合いが更に熱を帯びる。
(何を企んでいる緑谷……)
さっきから見せる彼らの怪しい動きに轟は注視していた。緑谷の得意技は観察と分析、そしてそれらに基づいて編み出される奇策。緑谷はもはや油断できるような相手ではない。
何が来ても打ち破るだけだと、より一層警戒を強めて――
ビュン!
彼は頭に巻いた
「は?」
そんな呆けた声を出したのは誰だったか。
その場にいた轟、爆豪、一佳だけではない。観客席から見ているヒーローたちも、緑谷の暴挙に目を丸くする。
『………な、なんと緑谷、ここに来て1000万Pを投げ捨てる!!一体どういうつもりなんだぁ!!?』
『……そう来たか』
呆気に取られるヒーローたちが多い中で、相澤が実況席からボソっとつぶやく。
制限時間まで1分もないというこの状況で突然
数秒程の思考の空白の後、3チームは急いで1000万へ向かう。
これこそ緑谷の狙いだった。
◆◆◆◆◆
「うん、それは1000万を捨てるんだ」
「何?」「え?」「はい?」
全員が聞き返すが、緑谷は構わず続ける。
「一度ポイントを全部捨てて1000万に全員の意識を向けさせた後、警戒が薄くなったところを皆のPを獲る」
◆◆◆◆◆
普段の彼らであれば、緑谷の狙いにも気づけただろう。
だが、際限ない勝利への渇望。騎馬戦という緊張状態。制限時間が近いことによる焦り。そこに畳みかけるように1000万放棄という奇行。
もはや彼らに、
『轟、爆豪、拳藤、踵を返して1000万に一直線!!』
肉に群がる飢えた獣のような気迫で、投げ捨てられた1000万Pを追う。
先頭にいる飯田が加速して騎馬全体を引っ張る。爆豪は騎馬から飛び立ち先んじて1000万へ向かう。他2チームと比べ機動力に劣る一佳はここで遅れを取る。
その機動力の差を埋めるため、彼女は取陰の切り離した口パーツを先に向かわせる。
最初に1000万を手にしたのは。
「シャア!!」
爆豪だった。
彼は急いで騎馬へと戻る。
轟、一佳の2チームは即座に爆豪へと狙いを定める。
このまま1000万を持って逃げ切れば爆豪の勝ちとなる。
(まだだ……!!)
しかし、爆豪のプライドは
全員を迎え撃ち、ついでにポイントを奪ってやろうと構えたところに。
「行けェ!!」
「うん!!」
緑谷、来襲。
「「「な……!?」」」
完全に頭から抜けていた存在の襲撃に、彼らの対応が一手遅れることになる。
発目のサポートアイテムに使われていたワイヤーを体に括り付け、まだ壊れていない片方のシューズから空気を噴出させ加速する。『無重力』による軽量化、『黒影』の後押しも相まって飯田にも匹敵するスピードを生み出していた。
緑谷がまず狙いを定めたのは轟。
その勢いを利用してポイントを奪う。
「くっ……!」
当然轟は獲られまいと防御しようとする。
緑谷が“個性”の込められた手を伸ばす。その手の向かう先は轟の頭に巻かれた600Pのハチマキ。
(絶対に獲る!僕を信頼してくれた3人のためにも―――!!)
「………ッ!!」
轟は背中に冷たい予兆が走るのを感じる。彼が構えた左腕。そこから無意識の内に炎が吹き出て。
緑谷は轟の左腕に直接触れず、自身の右腕を横に薙ぐ。
その動きと同時に発生した風圧につられ、轟の左腕の防御は崩され炎は消える。
(俺は何を………)
そこでようやく轟はハッと我に変えった。
自らに課した誓約を破り、
呆気にとられているのも束の間、緑谷は彼の頭に巻かれたハチマキを奪い去る。
「ッ!クソっ!!」
悪態をつくがもう遅い。
轟がポイントを獲られたと気づいた頃には緑谷は彼らから距離を取っていた。
轟のポイントを奪ったが、まだ通過ライン突破には至らない。
緑谷が次に狙いをつけたのは拳藤一佳。
一佳のいる向きとは反対方向にスマッシュを放ち、風圧を利用して進行方向を変える。また、常闇と黒影がワイヤーを掴み、ハンマー投げの要領で移動を補助する。
遠心力がかかり、更に加速する。
その勢いを利用して、すれ違いざまに彼女のポイントも奪おうとする。
「速いは速いけど……」
だが。
「縁壱ほどじゃない」
常日頃から火神縁壱と高め合っていた一佳にとって、緑谷のスピードはあまりに遅すぎた。
「クッ……!?」
一佳は頭のハチマキを掴み、獲られるのを防いだ。
ポイントの奪取に失敗した緑谷は凄まじい勢いで騎馬に戻される。その様子を見届けた一佳は再び爆豪に視線を向ける。
「よし、コレで1000万に…「待って!!」」
1000万を奪おうと構えた時、突然取陰から制止の声がかかる。
「なんか1本足りなくない!?」
「は?……ッ!!」
取陰の指摘で自分の首に巻いていたハチマキを見る。自分の首に巻いていたのも含めてハチマキは3本。しかし首にかかっているのは1本しかない。そのかかっているハチマキのポイントは。
「~~~ッ!!やられたッ!!!」
悔しそうに表情を歪める。
奪われたのは285Pのハチマキ。
緑谷が1000万を放棄した後の奇襲。
一佳も轟、爆豪同様に1000万へと意識を向けていた。
しかし、緑谷が轟から奪ったのを見て彼の狙いにも次第に気付いた。
轟から奪った600Pでは通過ラインには達しない。次は自分か爆豪に狙いを定めると考え、いつ来てもいいように警戒していたのだ。
―――今回は、それが仇となった。
確かに彼女の読みは当たっていた。
だが、警戒していたのはあくまで
爆豪のように騎馬に先駆けてポイントを奪うという方法を取っている緑谷チームは彼以外にポイントを奪う手段がないと思い込んでいたのだ。
一佳は緑谷以外への警戒が手薄になっていた。
緑谷がロケットの如く迫り来る間、一佳チームの全員は彼に注意を払っていて、背後から伸びる
常闇の『黒影』は伸縮自在。その情報をB組の生徒が知る由もない。
「ありがとう常闇くん!」
「それはこちらのセリフだ。お前が拳藤たちの気を引いてくれていたお陰でポイントを奪うことができた」
『そろそろ時間だカウントダウンいくぜエヴィバディセイヘイ!!』
残り10秒。プレゼントマイクと観客たちによるカウントダウンが開始される。
「流石だ、緑谷くん」
9秒。飯田は挑戦すると宣言した相手に心からの賞賛を送る。
8秒。飯田が『奥の手』を使用する決心をする。
「轟くん、しっかり獲れよ…!」
7秒。飯田の警告に轟たちが身構える。
6秒。飯田が“個性”の出力を限界まで高める。
「トルクオーバー……」
5秒。飯田が大きく息を吐く。失敗は決して許されない。
4秒。彼の脚にあるマフラーから蒼炎が吹き出る。
「レシプロバースト!!」
3秒。初めて飯田が誰にも見せたことのない『裏技』を使う。
2秒。空気を切り裂きながら超加速した飯田が爆豪の騎馬に近づく。その爆発するようなスピードに爆豪は反応できない。
1秒。スピードに耐えながらも、轟は1000万のハチマキに手を伸ばす。
『TIME UP!!!』
0秒。無情にも試合終了を告げる声が響き渡った。
生徒たちの内心など露知らず、そそくさと結果発表へと移る。
はてさてその結果は。
『1位轟チーム!!』
「やったな轟!!」
「……あぁ」
1000万を爆豪から奪い取り、1位に逆転した轟チーム。他のメンバーはその喜びを嚙みしめている一方で、轟の表情は暗い。
『2位爆豪チーム!!』
最後の最後で1000万をかっさらわれ、悔しさを隠そうともしない爆豪。それを切島たちは少し引いた目で見ている。
『3位鉄て…アレェ!?心操チーム!⁉いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』
「ご苦労様」
実況者も知らぬうちに逆転していたC組の心操チーム。
彼のチームの者は何が起こったのか分からなくて戸惑っている。
『4位緑谷チーム!!』
そして4位が緑谷。轟と一佳から奪ったポイントで通過ラインを無事突破した。
『以上4組が最終種目へ進出だぁーーー!!!』
「ごめん、一佳……」
「ううん、気にしないで。こっちこそゴメン。皆と一緒なら最終種目まで行けるって言っちゃったのに」
一佳チームは惜しくも敗退という結果になった。
『一時間ほど昼休憩を挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!』
【雄英コソコソ噂話】
実は作者は爆豪が1000万を手に入れたタイミングで
爆豪(それは雑魚の思考だ)
というモノローグを入れようとしていたぞ!!