僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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第19話 本戦開幕

昼休憩が始まり、生徒たちはぞろぞろと雑談しながら食堂へ向かう。

 

「お疲れ様」

 

「あ、火神くん」

 

1人実況者席でプレゼントマイクらと共に戦いを観ていた縁壱も降りてきて彼らと合流する。

 

「皆よく頑張ったな。お前たちならやれると信じていた」

 

「火神くんの特訓のお陰だ」

 

「俺は大したことはしていない。この結果はお前たち自身の努力の賜物だ」

 

自分のクラスメイトに労いの言葉をかけてやる。第2種目は惜しくも敗退となった者もいるが、全員第1種目を突破出来たことは喜ばしい。

 

共に食堂へ向かっていると、彼は不在の者がいることに気付く。

 

「緑谷と轟がいないようだが」

 

「そう言えば……」

 

麗日や飯田がキョロキョロと辺りを探すが2人は影も形もない。

 

「どこ行ったんやろ…」

 

 

―――食堂。

 

縁壱はいつものように一佳と共に食事を楽しんでいた。

体育祭というビッグイベントの真っ最中ではあるが、学生食堂は普段と変わらず営業している。

 

「しっかしまぁー、A組の人たちすごいな。敵の襲撃を耐えたのは伊達じゃないや」

 

「そうだろう。皆あの経験を確と己の糧にしている」

 

「私に並ぶのは轟か爆豪か、あとは緑谷くらいかと思ってたけど……自惚れてたなぁ。飯田の最後のやつ何?」

 

箸を動かしながら、先の戦いを振り返る。

A組の実力には驚かされたが、特に印象に残ったのは騎馬戦で飯田が最後に見せた『レシプロバースト』。

 

「あの技は俺も知らない。恐らく飯田が体育祭に向けて隠しておいた『切り札』だ」

 

「あのスピードは私でも対処が難しいかな」

 

(『出来ない』とは言わないのね……)

 

2人の会話にこっそり耳を傾けていた者が心の中でツッコミを入れた。

 

「一佳」

 

「?」

 

「惜しかったな」

 

彼が口にしたのは一佳が敗退したことに対する慰めの言葉。短いながらもその言葉に込められた想いは十二分に伝わっている。

 

一佳は食べる手を中断し、背もたれにだらりと寄りかかる。

 

「悔しさはあるけど未練はないかなー。お互いに全力で戦った結果だし」

 

「お前らしいな」

 

「……まぁ、チームの皆には申し訳ないことしちゃったけど」

 

自分のことを信じてついて来てくれた仲間たち。彼女たちの期待を裏切る結果になってしまったことは悔やんでも悔やみ切れない。

 

「お前と同じように仲間たちも全力で戦ったのだ。悔いはあるが満足しているのではないか?」

 

「それはまぁ、うん」

 

「確かに残念な結果に終わってしまったが、チャンスがこれで最後というわけでもなし。この経験を糧にして、己の力にすれば良い」

 

「…うん!」

 

彼の言葉を受けて心が少しばかり軽くなり食事を再開する。

 

「つーかよぉ」

 

今度は近くに座っている鉄哲が縁壱に話しかける。

 

「マジで驚いたぜ。選手宣誓の時のアレ」

 

「あー確かに。私も本当ビックリした」

 

「アレとは…オールマイトと戦うという件か」

 

「そうそれ」

 

「驚くのも無理はない。かく言う俺も聞いた時は驚いた」

 

「いつから決まったの?」

 

「一週間前には決まったそうだ。俺がその話を先生方から聞いたのはその翌日だな」

 

◆◆◆◆◆

 

「オールマイトと戦う…ですか」

 

「あぁ」

 

教師一同が出席する会議室。

放課後縁壱はそこに呼び出された。

 

彼が聞かされたのは一週間後に迫る雄英体育祭における自分の扱い。

 

上座に座る根津校長が続きを話す。

 

「体育祭は単に自分の将来を拓く為の場ではない。君たち若者にとってかけがえのない青春の一部でもある。それを奪ってしまうのは忍びないが……」

 

「…お前の実力は他とはあまりにかけ離れ過ぎている。お前が出場すれば、確実に他の生徒を食ってしまうだろう」

 

「本当にすまない、火神くん。大人の都合で生徒の自由を奪うなんて許されないことだ。雄英高校校長として謝罪させてほしい」

 

「………」

 

その姿を見て縁壱は僅かの間思考を巡らせた後。

 

「頭を上げてください、校長先生。その話、お受けします」

 

◆◆◆◆◆

 

「先生方も相当苦悩されたのだろう。正直な話、その評価にこそばゆくはあったが、校長自らの申し出とあっては無下には出来ず、お受けすることになったのだ」

 

彼の口から経緯を聞いた一佳は不満そうに口を尖らせる。

 

「そりゃアンタの強さならそういう措置になるのも納得できるけどさぁ……」

 

「オレは体育祭でお前と戦ってみたかったぜ」

 

彼女は鉄哲の言葉にうんうんと頷く。

 

「…まいっか。アンタと戦う機会なんていくらでもあるし」

 

「ああ。望むのであればいつでも模擬戦を受けよう。無論、無理のない範囲でだが」

 

「応、そん時はよろしくな!!」

 

食器の中身も空になった。食堂は変わらず混雑しており、邪魔になってしまうからそそくさと片付けて食堂を出る。

 

「俺などがオールマイトの相手など面映ゆいが…このような大役を仰せつかったからには、全力で臨もうと思う」

 

「うん、応援してるよ」

「絶対勝てよ!!」

 

 

昼休憩の時間が終わった。

 

上位4チームのみならず、予選を通過できなかった選手たちもフィールドに集められる。

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

 

ぞろぞろと選手たちが入場していく。しかしその視線は冷ややかである方向に集中している。

 

『どーしたA組!?』

 

皆の視線を集めているのはA組の女子たち。何故か(死んだ目をして)チアリーダーの衣装に身を包んでいる。

 

「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

上手い事自身の策略に嵌った女子たちを見て元凶の2人は笑みを浮かべる。

 

彼女たちは峰田・上鳴の口車にまんまと乗せられ、チアリーダーで応援することになったのだ。ちなみに、衣装は八百万が作った。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」

 

「アホだろあいつら…」

 

八百万は簡単にノせられてしまう自分に項垂れ、耳郎は露出の多い衣装を着て恥ずかしそうにしている。

 

「いいんじゃない!!?やったろ!!」

 

「好きね透ちゃん」

 

そんな状況で、葉隠はかなり乗り気だった。とても元気だ。

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目。進出4チーム総勢16名から成るトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』

 

最終種目の形式が分かり、決勝進出者たちはより一層気を引き締める。以前からテレビ越しに見ていた夢の舞台に遂に立つことが出来るのだ。

 

トーナメントの組み合わせ決めはくじ引きで行う。1位のチームから順にくじを引いていく。

 

「あの…!すみません」

 

今まさにくじ引きが始まろうとしたとき、尾白が手を挙げた。

 

「俺、辞退します」

 

その言葉にクラスメイトたちはざわつく。

 

「尾白くんなんで…!せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」

 

尾白が言うことには、彼は騎馬戦での記憶がほとんどない。恐らくC組の心操の“個性”によるものだろう。他の者が全力で戦い、奪い合って得た座なのに、自分だけ訳も分からないままそこに行くというのは到底納得できなかったのだ。

 

「気にしすぎだよ!本戦でちゃんと結果を出せばいいんだよ!」

 

「そうだよ!そんなこと言ったら私だって全然だよ!?」

 

「違うんだ、俺のプライドの問題なんだ…!俺が嫌なんだ」

 

絶好のチャンスを投げ捨てることを周囲も引き止めるが、そう言われてしまっては引き下がるしかない。

 

「僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前に、()()()()()()()()が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」

 

B組の庄田も同じく手を挙げた。彼も騎馬戦で心操と同じチームで、尾白同様騎馬戦の記憶がない。このまま決勝に上がるのは彼のプライドが許さなかった。

 

『なんだか妙な事になってるが…』

『ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか…』

 

「そういう青臭い話はさぁ、好み!!!

 

余談ではあるが、彼女は大の『青春フェチ』である。そんな彼女がこのような発言をする生徒たちを前にしてどんな対応をするかは言うまでもない。

 

「尾白庄田の棄権を認めます!!」

 

(好みで決めた……)

 

雄英は自由な校風が売りなのである。

 

ちなみに、心操チームだった青山は出場するそうだ。

 

「繰り上がりは5位の拳藤チームだけど…」

 

「そういう話で行くんだったらさ、0Pにはなっちゃったけど後半まで上位をキープして最終的なポイントも私たちより多かった鉄哲チームが適任じゃね?」

 

一佳が鉄哲チームを推薦する。まさか自分たちが指名されるとは思わなくて面を食らう。

 

「馴れ合いとかじゃなくて、ふつーに」

 

「お、おめぇらぁ!!!」

 

その言葉に鉄哲は感極まってその場で泣き叫んだ。

 

という訳で残りの二枠を誰が出るかチームで協議することになった。一人は鉄哲が出場ということですぐに決まったのだが。

 

「なあ、拳藤」

 

「うん?どうした?」

 

鉄哲がチームを代表して一佳に話しかける。

 

「譲ってもらって悪ぃんだけどよぉ、もう一枠はお前が出てくれねぇか?」

 

「……え?」

 

「チームで話し合って決めたんだ。決勝にはお前が出るべきだってな」

 

「…いいの?それなら遠慮なく貰っちゃうけど」

 

「オウよ!お前らもそれでいいだろ?!」

 

鉄哲は一佳の後ろにいた彼女のチームメンバーに尋ねる。

話し合うまでもなく、彼女らは一佳が出場することに賛成しているようだ。

 

「私なんにも出来なかったノコ……だからせめて一佳には本戦で頑張って欲しいノコ!」

 

「A組の奴らにギャフンと言わせちゃってよ!」

 

「…皆、ありがと!!」

 

 

「という訳で、拳藤、鉄哲が繰り上がって16名!!組はこうなりました!!」

 

①緑谷VS心操 

②轟VS瀬呂  

③拳藤VS上鳴 

④飯田VS発目 

⑤芦戸VS青山

⑥常闇VS八百万

⑦鉄哲VS切島

⑧麗日VS爆豪

 

それぞれ第一回戦の自分の対戦相手を把握する。

 

(2回戦目…意外と早かったな)

 

轟が見ているのは自分の対戦相手ではなく、恐らく次に戦うことになるだろう相手。

 

(来いよ緑谷。この手で直接倒してやる)

 

オールマイトを想起させるほどの力を持つ緑谷。自身の目的のためにも、彼だけは絶対に打ち破らねばならないと轟は決意を新たにした。

 

『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

 

 

―――とは言っても。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていき、遂にその時がやって来た。

 

「オッケーもうほぼ完成」

 

雄英高校教師にしてヒーロー『セメントス』が自身の“個性”で試合用のステージをつくり出す。

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局コレだぜガチンコ勝負!!!』

 

『頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!』

 

『心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』

 

雄英体育祭本戦。魂と魂のぶつかり合い。全国が注目する熱き戦いが今、幕を上げる。




これで書き溜めておいた分は終わりです。
次回ももう少し早く投稿したいです。
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