僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚 作:枝那
ということで5話、どうぞ。
「実技総合成績出ました」
「まさか1年に
「思わず2回YEAH!て言っちゃったよ」
「2位の子は救助Pなし、それとは対照的に8位の子は敵Pなしでの合格」
「しかし、1位は規格外だな………」
画面に縁壱が戦っている姿が映される。
「火神縁壱。まさか、あの事件の生き残りが
「調査書によれば、元々ヒーロー志望ではなかったそうだが、3年になって突然雄英を志望したらしい。そしてその理由は恐らく……」
「復讐、だよな。自分の家族を惨殺した犯人を捕まえるために……」
やるせない思いをする。ヒーローとして、目を背けたくなるような事件は何度も見て来た。被害者の中には大切な人を敵に殺され、復讐鬼と化す者もいた。
まだ年端もいかない少年の身に起こった悲劇に胸を痛めながらも、会議を続ける。
「マダソウト決マッタ訳デハナイノデハ?自分ノヨウナ被害者ヲ無クシタイト考エテヒーローヲ目指シタノカモシレナイ」
「だといいけど。でも何かの拍子に復讐心が芽生える可能性もあるし、注意は必要よね」
「香山くんの言う通りだ。彼が復讐ではなく、真っ当にヒーローとしての道を進むなら
校長の言葉に重苦しい空気は一転。教師たちの目は彼の成績とその強さに向いた。
「スタートと同時に動き出す反応、敵と要救助者をすぐに見つける視野の広さ、遠くの敵に躊躇なく武器を投擲する判断力、いずれもプロと比べて遜色ありません。後半になってくれば受験生の動きも鈍くなってきますが、彼にはそれが見られない。そして特筆すべきなのが、その身体能力」
「オールマイトに匹敵するスピードだ。彼の個性は増強型か?」
「いいえ。書類には『
「…それだけ?増強との複合型ではなく?」
「はい。あくまで刀を生み出すだけの個性です」
「となると、これは素の身体能力か、それとも本人が自覚してないだけで個性の範疇かのどちらかだな」
「もしこれが個性じゃないとしたら恐ろしいな」
「それで」
『?』
教師たちが縁壱の個性について話している中で、無精ひげを生やし髪をボサボサに伸ばした男が手を挙げる。
「どうします、こいつ?」
「どうするって…合格で決まりじゃねーか?」
「そうじゃなくて、こいつはあまりに規格外すぎます。正直言って学生のレベルを超えている」
「それは確かにそうね」
「そんな規格外の実力者が1位を取ったことで、本来はヒーロー科に足る人材が排斥されてしまうのは、不合理極まりない」
つまり、彼が言いたいのは縁壱を特別枠とし、2位から37位を一般枠として合格にしようということだ。*1
彼の提案にその場はざわざわと騒がしくなる。その言い分を理解はできるが、だからと言って定員を増やしていいものか。不公平ではないか。
教師たちが頭を悩ませていると、根津校長がオホン、と咳払いをする。
「いいじゃないか。自由な校風が我が校の売りなのさ!」
「校長……」
「相澤くんの言う通り、本来ならヒーロー科に入っていた人物が落ちてしまうというのは非常にもったいない。それに彼は
校長の後押しもあってか、教師たちは納得したようだ。
「では、火神縁壱くんは特待生枠として合格、繰り下がりで2位から37位を一般枠として合格する、ということでよろしいかな?」
『異議なし』
◇◇◇◇◇
春。
それは高校生活の始まり。
待ちに待った雄英高校の入学式。その日の朝。
縁壱は自室にて雄英の制服に着替えていた。忘れ物がないか鞄を確認していると、
「入っていいぞ」
扉の向こうに気配を感じた。それが一佳のものであると分かっていた縁壱は予め声をかける。
入室の許可をもらった一佳は軽い足取りで縁壱の部屋に入る。だいぶ浮かれている。
今の彼女は縁壱同様雄英の制服に身を包んでいる。
「じゃーん!どう?縁壱」
一佳は自身の制服姿を縁壱に見せつける。
「あぁ、とても似合っているぞ」
「ありがと!縁壱もカッコいいよ!」
登校の準備を終え、2人で玄関まで移動する。
「忘れ物は?」
「ない!」
扉を開け、家を出る。
「2人とも」
その時、両親から呼び止められた。
「行ってらっしゃい」
縁壱と一佳は振り向き、姿勢を正して返事をする。
「「行ってきます」」
そうして2人は記念すべき高校生活の一歩を踏み出した。
◇◇◇◇◇
「校舎の中も大きいねぇ…」
「そうだな」
談笑しながら雄英の廊下を歩いていく。
「A組の教室はここか。では、一佳」
「じゃ、またね」
縁壱のクラスはA組、一佳はB組である。
「入らないのか?」
扉に手をかけたまま動かない緑髪の少年に声をかける。心臓の鼓動が早く、筋肉が強張っている。恐らく緊張して入るのに尻込みしているのだろう。
「は、ハイ?!す、すいません。入ります……」
彼の気配に気づかなかったのか、ビクッと大きく肩を跳ね上げる。その少年が扉を開け、縁壱も共に入る。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」
教室に入ると、入試の時にプレゼントマイクに質問をしていた少年と、爆豪が言い争いをしていた。それを見た緑髪の彼が硬直した。縁壱が「どうした?」と心配する。
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明~~~!?くそエリートじゃねぇかブッ殺し甲斐がありそだな」
「君ひどいな本当にヒーロー志望か!?」ブッコロシガイ!?
「彼らは知り合いなのか?」
「あ、うん……かっちゃ、机に座っている人は僕の幼馴染で…」
「そうなのか」
口論がヒートアップしていく中で、飯田が緑髪の少年の存在に気づく。
「俺は私立聡明中学の…」
「聞いてたよ!あ…っと僕緑谷。よろしく飯田くん」
「俺は火神だ。よろしく頼む」
「ああ、こちらこそ。…緑谷くん、君はあの実技試験の
飯田は悔しそうに歯ぎしりをする。
「俺は気付けなかった…!!君を見誤っていたよ!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」
(気付いてなかったよ!?)
「あ!そのモサモサ頭は!地味めの!!」
飯田の勢いに気圧されている緑谷に、後から教室に入ってきた茶髪の少女が声をかける。
「受かったんだね!パンチ凄かったもん!」
緑谷は女子と話すことに慣れてないのか、顔を真っ赤にしてたじろいでいる。
「お友達ごっこがしたいなら他所に行け」
そしてそんな2人の間に水を差すように、下から声が。
床の方を見ると、寝袋に入った男が廊下に寝転がっている。
「ここは、ヒーロー科だぞ」ヂュ!
((なんか!!!いるぅ!!!))
寝ながら器用にゼリー飲料を一瞬で飲み干した。
そんな不審者に緑谷や少女のみならず教室にいる生徒が戸惑う。
「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」
(((先生!!?)))
寝袋を脱ぎ立ちながら生徒たちに言う。先生みたいな事を言う彼に戸惑いが続く。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(((担任!!?)))
2度目の驚愕。とても学校の教員には見えない男に全員の心の声が一致する。
そんな生徒たちの心情は露知らず、相澤は指定の体操服を見せる。
「早速だが
◇
体操服に着替え、グラウンドに集められたA組の生徒たち。
なんと入学初日にも関わらず、入学式もやらずそんなものを行うらしい。さすが雄英、自由だ。
「火神」
「はい」
「中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「98mです」
「え、マジ?個性なしでそれか、スゲーな…じゃあ今度は全力でやってみろ。円から出なきゃなにしてもいい、早よ」
「分かりました」
縁壱がボールを構え、集中する。相澤は赤い瞳で彼を見ている。
ゴォオオオーーッ!!
「何だ!?」
「風の音?」
「あれが彼の個性なのかな」
その様子を見ていた生徒たちの中には、彼から発せられる轟音に驚く者や、その個性について考察をする者もいる。
縁壱は腕を大きく振りかぶり、全力で投げる!
ビュオオッ!!
彼がボールを投げたことで発生した風圧により、砂嵐が巻き起こる。
砂嵐が収まり視界が晴れ、機械に記録が映し出される。
「まず自分の「最大限」を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
記録:1102.7m
その記録に周囲が沸き立つ。
「1000出たぞ1000!!」
「オールマイトみたい!!」
「すげー
「個性思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」
「……ッ!!」
その規格外の成績に興奮する者、個性を自由に使えることに心躍らせる者、かのNo.1ヒーローの姿を想起する者、対抗心を燃やす者がいる。
だが、一部の者の態度が彼のお気に召さなかったようで。
「面白そう…か。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
「!?」
「よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」
『はあああ!?』
相澤の言葉に皆騒然となる。
彼はボサボサに伸びた髪をかき上げ、意地悪そうな笑みを浮かべて続ける。
「生徒の如何は
「雄英高校ヒーロー科だ」
火神縁壱
個性「赫刀」
刀を生み出すことができるぞ!同時に生み出せるのは1本だけ!刃を潰したりなんかもできる!ちなみに握ると真っ赤になるぞ!かっこいい!
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2025/8/23
読者様の助言を受け、自分でも後から考えてみた結果、序盤の方を書き足しました。