僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚   作:枝那

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縁壱の記録をどうするか凄い悩みました…


第6話 お手並み

「最下位除籍って…!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…理不尽すぎる!!」

 

茶髪の少女が相澤の発言に異議を唱える。周りの生徒もそうだそうだと頷いている。

 

「自然災害…大事故…身勝手な敵たち…いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー」

 

ある種の正論に生徒たちは黙る。

 

「放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」

 

Plus Ultra(更に向こうへ)さ。全力で乗り越えて来い」

 

そう挑発され、生徒たちは奮起する。

 

「さてデモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

 

第1種目:50m走

 

『ヨーイ、START!!』

 

ドン!!

 

計測機器の出したスタート合図と同時に、重い衝撃音を立てながら走り出す。瞬く間にゴール地点に着いた。

 

記録:1秒56

 

「クッ…スピードで負けるとは……!」

 

「スゲェ!地面がめり込んでる!」

 

スピード系の個性を持ち、自分の速度に自信のあった飯田はその結果を見て悔しがっている。

 

「火神」

 

その記録を見た相澤が彼を呼び出す。

 

「なんでしょうか」

 

「お前…全力出してなかったろ」

 

その言葉に周囲がどよめく。

 

「いやいやいやいや」

 

「あれで全力じゃないとか嘘でしょ!?」

 

相澤はガシガシと頭をかきながら言う。

 

「周りを気にして全力を出せないんなら最初に言え。これはお前たちの『最大限』を知るためのテストなんだ。いちいちやり直すのは不合理だ」

 

「…はい」

 

「ほら、もう一度だ。今度は周りのことなんて気にせず、文字通り『全力』でやれ」

 

「分かりました。失礼します」

 

縁壱は再びスタート地点に戻る。他の生徒は静かにハラハラとその様子を見守っている。

 

『START!!』

 

ドゴォン!!

 

スタートと同時に、さっきの音とは比べ物にならない、雷が落ちたような大きな音がけたたましく鳴り、衝撃波が発生する。ギャラリーが驚いているのも束の間、既に縁壱は走り切っていた。

 

記録は………

 

0秒03

 

「スゲェエエエ!!」

 

「1秒切ったぞ1秒!!」

 

他の者たちがその記録に再び歓声を上げる一方で、一部の生徒は愕然としていた。

それは卓越した頭脳を持つ2人、飯田天哉と八百万百だった。特に飯田は自身の個性の関係上、スピードに詳しいため、より衝撃が大きかった。

 

(50mで0.03秒……俺でもあそこまでのスピードは出せない)

 

(秒速に直せば1667m/sと言ったところ。衝撃波が発生したことから考えても)

 

((火神くん/さんのスピードは音速を超えている………!?))

 

導き出された答えに、2人は戦慄する。

 

縁壱は汗一つ流さず、涼しい顔をしている。そんな彼に、一部の者はギラギラとした視線を向けている。1人は爆豪から。もう1人は、頭が赤と白に分かれた顔にやけどのある少年からだ。憎悪とすら捉えられるような、強い闘志を感じる。

 

 

第2種目:握力

 

「すげぇ!!540キロて!!あんたゴリラ!?タコか!!」

「タコって、エロいよね………」

 

複数の腕を持つマスクの生徒が540kgwという人間を超えた記録を叩き出した。

 

縁壱の結果は、

 

記録:1105kgw

 

「トン!トン超えたぞ!!」

 

ちなみに1位は八百万の1.2トン。『創造』という自身の個性をフル活用し、万力を創造することにより、僅差で勝った。

 

 

第3種目:立ち幅跳び

 

記録:23.56m

 

 

第4種目:反復横跳び

 

記録:記録不能

 

「記録不能出たぞ!!」

「影分身かよ!?」

 

反復横跳びは縁壱があまりに速すぎたため、機械が計測不能という結果になった。

 

 

第5種目:ソフトボール投げ

 

ボール投げは2回のため、縁壱はもう一度投げた。

 

記録:1267m

 

緑谷の番がやって来る。

彼は第4種目まで個性を使っておらず、今まで目立った成績を出せていない。

 

「緑谷くんはこのままだと不味いぞ…?」

「大丈夫だろうか?」

 

そんな彼を飯田と縁壱が案じる。先程∞の成績を出した少女も同じだ。その言葉に爆豪が噛み付いた。

 

「ったりめーだ、無個性の雑魚だぞ!」

「無個性!?彼が入試時に何を成したのか知らんのか!?」

「は?」

 

ついに緑谷がボールを投げる。

腕に力を集中させ、大きく振りかぶる。

 

瞬間、相澤の()が赤く光る。

 

緑谷の記録:46m

 

さっきの覇気とは裏腹にあまりに凡庸な結果。緑谷は戸惑う。

 

「な…今確かに使おうって……」

 

「個性を消した」

 

「!?」

 

「個性を消した」という発言。緑谷は相澤の正体に気が付いた。

 

視ただけで人の個性を抹消する個性を持つアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッド。

 

それが相澤消太のヒーローネームだ。

 

「見たとこ…個性を制御できないんだろ?また()()()()になって誰かに救けてもらうつもりだったか?」

 

「そっそんなつもりじゃ…!」

 

反論する緑谷を相澤は首に巻いている布で引き寄せる。

 

「どういうつもりでも、周りはそうせざるをえなくなるって話だ」

 

「昔()()()()()()()()が、大災害から1人で1000人以上を救い出すという伝説を作った」

 

「同じ蛮勇でも…おまえのは1人を救けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久。お前の“力”じゃヒーローにはなれないよ」

 

逆立っていた相澤の髪がふわりと落ちる。

 

「個性は戻した…ボール投げは2回だ。とっととすませな」

 

緑谷は2回目の準備をする。

 

「力の調整…僕にはまだ出来ない…!この一投で「出来る可能性」に懸けるのか?オールマイトも言ってたのに?一朝一夕にはいかないって…!ダメだ…ダメだ」ブツブツブツブツ

 

緑谷はさっきと同じように大きく振りかぶり、力を集中させる。

 

「まだ…」ブツブツ

 

だが、今回は違う。

 

「最大限で…最小限に…」ブツブツ

 

力を込めるのはただ一点。

 

「今」

 

SMASH!!

 

彼が投球するのと同時に、風圧が発生する。ボールは1回目の時と比べはるか遠くに吹き飛ばされる。

 

「あの痛み…程じゃない!!」

 

相澤の持つ機械に映された記録は、705.3m。

緑谷は痛々しく腫れ上がった指を抑え、涙を溜めながら笑う。

 

「先生………!まだ……動けます」

 

「こいつ………!」

 

今自分にできることを模索し、可能性を示した緑谷を見て、相澤はニヤリと笑う。

 

「やっとヒーローらしい記録出したよー」

「指が腫れ上がっているぞ。入試の件といい…おかしな個性だ……」

「スマートじゃないよね」

 

緑谷が大きな記録を出せたことに安堵する者、個性の反動により腫れ上がった指を見て心配する者がいる中で、()は大きな衝撃を受けていた。

 

「デクてめぇ!!」

 

爆豪勝己である。彼は手を爆破させながら、緑谷に向かって飛びかかろうとする。だが……

 

「落ち着け」

 

「んぐぇ!!」

 

近くにいた縁壱が彼の襟首を掴むことでそれを阻止した。爆豪は一瞬首を圧迫されえずく。縁壱が手を放し、解放された爆豪はゲホゲホと咳き込んだ後、後ろに振り向いてキッと縁壱を睨む。

 

「んだテメェッ……」

 

「今個性を使用して彼に飛びかかろうとしただろう。これ以上は看過できない」

 

縁壱の言葉は爆豪の冷静さを取り戻させる…どころか、彼の反骨心を余計に煽ってしまったようだ。彼は獰猛な笑みを浮かべて手掌をバチバチと爆発させる。

 

「上等だァ…まずはテメェからブッ殺して」

 

言葉の途中で爆豪は彼の顔面に向かって大きく腕を振るう。

 

「やらァ!!」

 

が、爆豪の腕が縁壱の顔面に届くことはなく、直前で彼の腕に掴まれ阻まれてしまう。爆豪は腕を振り払おうとするものの、

 

(なんっだコイツ……!!全然動かねェ……!!)

 

縁壱の腕はピクリとも動かない。とても人間とは思えない。石像を相手にしてるようだ。爆豪は負けじと、空いているもう片方の腕で攻撃しようとする。

 

しかし、その腕も彼の背後から飛び出した布に絡め取られて動けない。

 

「んだこの布固っ…!!」

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ「捕縛武器」だ。ったく何度も“個性”を使わすなよ…」

 

「俺はドライアイなんだ」

 

(((“個性”すごいのにもったいない!!)))

 

その場の全員の心の声が一致した。

 

「火神も、こういうのは先生(おれたち)に任せとけ」

 

「申し訳ありません。出過ぎた真似を」

 

相澤が個性を解き、次の生徒にボールを投げるよう催促する。他の生徒は、もう事態は収まったと次の準備に取り掛かる。

 

 

第6種目:上体起こし

 

記録:記録不能

 

「本日2回目!」

 

上体起こしも反復横跳び同様、計測機器が縁壱のスピードを捉えられず、計測不能という結果になった。

 

 

第7種目:長座体前屈

 

記録:72㎝

 

「すごいけど……」

「何かパッとしねぇ」

 

長座体前屈も十分優秀な成績ではあるものの、他の成績があまりに超人的であるため相対的に地味な結果になった。

 

 

第8種目:持久走

 

記録:0.90秒

 

「え!?もうゴールしたの!?」

「同時にスタートしたはずだよな…?」

 

スタートと同時にはもうゴールにいた縁壱を見て戸惑う生徒が多数。

 

これで、全8種目の個性把握テストが終了した。

 

 

「んじゃパパッと結果発表」

 

そんなこんなで結果発表の時間が来た。緑谷はこれで自分の将来が決まるため、尋常じゃないくらい緊張している。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

『!?』

 

そんな彼らに爆弾が投下された。

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

「「「はーーーーーー!!!???」」」

 

驚愕のあまり叫び出す。緑谷に至っては驚きすぎて原型をとどめてない。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ…」

 

(…いや)

 

ポニーテールの生徒がそう言うが、縁壱はそれは違うと心の中で反論する。

 

(あの時の相澤先生は()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だが、最後の最後でそれを撤回した。その理由は恐らく……)

 

縁壱は衝撃が抜け切らない緑谷にちらりと目を向ける。

 

(彼に可能性を感じたから)

 

相澤は生徒たちの様子を気にせず続ける。

 

「もう分かってる奴もいるかもしれんが、火神が今年の首席入学者だ」

 

『!?』

 

興奮冷めやらぬといった彼らに更なる爆弾が投下される。

 

「マジで!?」

 

「やっぱりそうだったのか………」

 

「アイツが………ッ!!」

 

ほとんどの生徒が首席と聞いて驚くが、彼の力を見て納得した。

 

「火神は1年生でありながらその実力は既にプロの域に達している。先の入試でこいつは敵P96、救助P84の計180Pと規格外の成績を叩き出し、特待生として認められた。その実力の高さから、本来なら定員36名のところを特別枠としての席を用意された」

 

「凄すぎる……」

 

「てか特待生とか雄英にあったんだ」

 

「これから3年間、お前たちは恐らくコイツの背中を見て成長することになる……はっきり言って、壁は大きいぞ」

 

その言葉に気圧されそうになるも、生徒たちは俄然やる気を出す。縁壱という超えるべき高い壁を知って。ヒーローになるという夢を叶えるために、これから訪れる試練に備えてより一層強い覚悟を決めた。

 

◇◇◇◇◇

 

―――初日終了下校時間。

 

あの後、クラスメイトたちから質問攻めにあったものの、「待っている人がいるため」と縁壱は抜け出した。その際、一部の女子から勘繰られたが縁壱は気にしなかった。

 

「あ、いたいた。おーい!」

 

他の生徒と一緒に歩いている一佳が手を振る。

 

「一佳……もう友人ができたのか。凄いな」

 

「うん。あ、紹介するよ。こいつ私の幼馴染の火神縁壱」

 

「火神だ。クラスは違うがこれからよろしく頼む」

 

「おう!よろしくな!俺は鉄哲徹鐵!」

 

「塩崎茨と申します。今後ともよろしくお願いします」

 

熱血そうな少年と、髪が茨でできた少女に別れを告げて、一佳は縁壱と並んで下校する。

 

「そういや入学式にA組いなかったけどどうしたの?」

 

「あぁ。担任の先生が個性把握テストというのを行ったんだ。雄英は自由だな」

 

「え!なにそれ面白そう!!」

 

「そう発言する生徒がいたため、最下位の生徒は除籍処分ということになってしまった」

 

「え、マジで?」

 

「まあ嘘だったんだが」「嘘だったの!?」

 

「全力を引き出させるための合理的虚偽だと。凄まじいな。これが最高峰」

 

「へー……近いうちにB組(私たち)もやるのかな?」

 

「恐らくそうだろう」

 

こうして、波乱の入学初日は幕を閉じた。

しかし、今日の試験は序の口。本番は明日からだ。




ちなみに1位は縁壱です。流石だね。
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