僕のヒーローアカデミア ヒノカミ英雄譚 作:枝那
【爆発少年のこれから】
少年は自分のことを『特別な人間』だと思っていた。
『爆破』という恵まれた“個性”を持ち、周囲の人間から囃し立てられてきた。
自分だけが凄くて、自分以外は凄くない。
自分以外の『凄くない』人間の中で、最も凄くないのが幼馴染の緑谷出久だった。
彼は個性を持たない無個性だった。爆豪勝己にとって道端に転がる石に過ぎなかった。
爆豪は何かにつけて緑谷のことをあげつらい、優越感に浸っていた。
だというのに―――
『大丈夫?たてる?』
緑谷は爆豪を助けた。今まで見下していた人間が、自分に手を差し伸べた。
自分を顧みず他者を助けるその姿が、爆豪にはとても不気味に映った。
だからいじめた。緑谷出久を遠ざけるように。
成長するにつれて、彼のプライドは膨れ上がっていった。
やがて雄英高校に入学し、これからNo.1ヒーローへの出世街道が始まる。
同じ学校に通うクラスメイトも、自分の人生を飾り立てるためのモブでしかなく、自分を阻む者は誰一人として存在しない。そう思っていた。
何の間違いか、無個性の出久も雄英に受かっていた。挙句の果てに……
『SMASH!!』
“無個性”であったはずの彼は、“個性”を使っていた。
『なぜ?』『ありえない』『あいつは自分より下のはず』…そんな考えが、頭の中を錯綜していった。
その上。
『火神が今年の首席合格者だ』
モブでしかないと思っていた人間は、自分の遥か上にいる存在だった。
衝撃の連続だった。
そしてその折り重なった衝撃は、彼の肥大化したプライドを容易に粉砕した。
帰宅後、彼は自室のベッドの上に転がっていた。どうやって帰ったかも覚えていない。爆豪の頭の中を占領していたのは、緑谷出久と、火神縁壱の姿。2人の顔が頭の中に生まれては消えていく。
「ふざっけんな……!!」
自然と、涙がこぼれる。
「こっからだ……!!」
彼のプライドが粉々にされてもなお、
「俺は
彼の心は折れていなかった。
改めて、決意を固める。
◇◇◇◇◇
【首席合格の裏側で】
―――個性把握テスト終了後、職員室。
「以上が、A組の生徒の成績になります」
相澤は他の教員ヒーローに今回のテストの結果を共有していた。
「全く、入学式にも参加させないなんて…」
「まぁまぁ、先輩がこうなのは今に始まったことじゃないでしょう」
相澤の行動を非難する声が上がるが、それを宇宙服のようなコスチュームを着たヒーローがたしなめる。
「それで、どうなんだい?
「…やはり、異常と言わざるを得ません」
校長が相澤に火神縁壱について聞く。
「テストの時あいつを視ましたが、身体能力は変わらずでした」
「素でオールマイトに匹敵するということか」
「あいつが競技に取り組むとき、呼吸の音が聞こえました。恐らくあれに種があるのでしょう」
雄英教師陣には一つの懸念があった。
それは、火神縁壱が複数の個性を持っているのではということだ。
他者から個性を奪い、他者に個性を与えることのできる“個性”。教師たちには心当たりがあった。
かつて、“個性”という異能が発現し、社会が混乱の最中にあった超常黎明期。
その時代に『魔王』として君臨した敵。
火神縁壱はその手の者ではないかという懸念だった。
校長は、その『魔王』についてよく知るオールマイトに聞く。
「どう考える?オールマイト」
「…校長、私は奴がこんな目立つことをするとは思えません。もし仮に奴が生き延び、間者として雄英に生徒を送り込むとしても、あからさまに疑われるような個性を与えるとは考えにくい」
「それもそうだね」
校長はオールマイトの言葉に納得する。奴と直接相対した彼が言うのだから、説得力はある。職員室の張り詰めた空気がほどける。
火神縁壱が敵ではないこと。これ以上生徒を疑わなくてよいことに安堵の声が漏れる。
そんな緩んだ空気の中、校長は「だが」と続けて、
「引き続き注意はしよう。彼が敵じゃないとしても、あの力の秘密を解明しようとし、あわよくば利用しようとする輩が出てくるかもしれない。彼だけじゃない。生徒たちは絶対に守らなければならない」
『了解』
ひとまず、火神縁壱への疑惑は晴らされた。
かっちゃんの内面を書くの凄い苦労しました………