日の入りが早くなった月の夕暮れ時。冬の冷たい空気が染みる中、カービィとメタナイトはプププランドの中央広場にて、デデデ大王によるイルミネーションの点灯式に参列していた。
夕闇が迫る空の下、プププランドの住民たちは今か今かとライトアップの時を心待ちにしている。主催者であるデデデ大王は、中央広場の真ん中にある大木の直近に設けられたタープテントの下で、自らの出番を控えていた。
式典は間もなく始まる。そこでメタナイトは、周囲に飾り付けられた点灯前のイルミネーションをぐるりと見渡し、隣に居るカービィへ何気無い話題を持ち掛けた。
「今年も大掛かりな準備になったようだな、これはまた大層綺麗なものになるに違いない。なぁ、カービィよ?」
「そうだねぇ」
冬の風物詩に感心を持ちながら言うメタナイトに、カービィはまるで興味が無いと言わんばかりにあっさりと返す。そんなカービィに、メタナイトは言葉を続ける。
「カービィよ、たまには食べることと寝ること以外にも興味を向けてみてはどうだ?」
「そんなこと言われてもなぁ。まぁ、こうして寒い中外に出てるだけでもまだいいじゃん」
「それはそうだが、うぅむ……」
ああいえばこういう。相変わらず怠けた思考にとらわれたままのカービィに、メタナイトは頭を悩ます。戦力に長けているのは良いし、それに越したことはないが、もっと人格的な面で成長して欲しいものだ。
彼の意欲を更に伸ばすためにはどのように促せばいいのだろうか。少し考え、メタナイトは主催者の想いを汲み取ってカービィに物申す。
「なぁ、カービィ。せっかくデデデ大王がこの国の住民に少しでも景気付けになるようにと思い、わざわざ時間を割いて用意してくれたのだ。それを無碍にするのはどうかと思うぞ?」
するとカービィは、無表情を貫いてメタナイトに反論する。
「……いつだったかな? デデデ大王はこの国の食べ物を盗みまくってたよね。でも、あれから心を入れ替えて今はちゃんと大王として認められてるけど、どうしたものかなぁ」
答えになってないことを言って、無理矢理 話をそらそうとするカービィ。この発言に、メタナイトは完全に呆れ返った。
「……もういい」
そこまでいったところで、玉乗りをしながら歩み寄ってくる参列者が。マルクだ。
「ヘイヘーイ! カービィにメタナイト、キミたちも来てたのサ?」
飄々と声を掛けてきたマルクに、カービィが一言。
「生きてたんだ」
「勝手に殺すんじゃないのサ!」
無関心というか毒舌というかデリカシーが無いというか。とにもかくにもメタナイトはカービィのドライさに胃を痛めていた。そもそも彼の体内に胃という臓器があるのかは不明だ。
そして中央広場の時計台は17時を示し、そのタイミングを見計らってデデデ大王はタープテントの中から出てきた。
広場の中央に立ち、自身を取り囲む住民たちをぐるりと見回すデデデ大王。彼は一通り仰ぎ見た後、柔和な笑みを浮かべ、住民たちに対する歓迎の意を言い表した。
「プププランドの者たちよ、まずは今日は寒い中集まってもらったことに感謝する! 今日集まってもらったのは他でもなく、このプププランド全域に飾り付けられた煌びやかなイルミネーションを一早くその目に焼き付け、少しでも皆の励みになればと思い来てもらったのだ!」
堂々とした勇ましさと人情を感じさせるデデデ大王に対し、住民たちからは拍手が送られる。そこからもデデデ大王の演説は続き、ついに点灯の時を迎えた。
「では、いよいよ点灯だぞ! スイッチオン!」
イルミネーションの灯りを点けるため、コードに繋がったスイッチを押す。が、点かない。
(ん? あれ……オカしいな……)
点かない。
(なっ……マズい……このタイミングで故障か?)
まさかの事態に、デデデ大王が焦りを見せ始めているのもさることながら、住民たちは徐々にザワめき出す。それはカービィやマルクも例外ではなかった。
「どしたの? 点かないじゃん、これだけみんな集めておいてそれはないよ」
「ホントなのサ。もしこれで最後の最後までつかなかったら、ここに居る何人かは激オコなのサ」
これだけの住民を集めておいてこの様か。デデデ大王が困惑の色を強めていく一方で、メタナイトは事態の原因に察しがついた。
(もしや、電力が足りないのでは?)
そう勘付いたメタナイトは、早速カービィに指示を出す。
「カービィ、あれは恐らく電力が足りないのだ。コピー能力、プラズマで電力を送るんだ」
「しょうがないなぁ。コピー能力、プラズマ!」
カービィはしぶしぶながらプラズマのコピー能力を発動。頭に装備したプラズマの帽子を中心に電力を溜め、そのまま浮遊してデデデ大王の元に飛んでいく。
「おーい、デデデ大王ー」
「かっ、カービィ!?」
間延びした口調で呼ぶカービィに、デデデ大王は勢い付いて顔を上げる。そして、電気の膜を張ったそれは、デデデ大王の頭上に飛来した。
「これを受け取ってぇ?」
「あぎゃああああ!」
カービィは自身の中で溜め込んだ電気の弾を、デデデ大王目掛けて思い切り打ち込んだ。あまりにも突飛な行動に、デデデ大王や周囲の住民はおろか、メタナイトとマルクも驚愕している。
「いや、大王に送れとは言っとらんぞ!」
たまらずメタナイトは大仰に突っ込む。電力を溜めてコードを持つだけで良かったというのに何をやっているのか。
しかし、結果オーライなことに、デデデ大王がスイッチを持っていたため送電に成功し、イルミネーションは点灯した。
「大王……キミは王の鏡なのサ……住民のために身体張るなんて……」
何かと釈然としないが、これでプププランドの夜は 優しく煌びやかな光に包まれるのだった。