チート能力:キング・オブ・ポップ   作:くさくさ

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日本競馬年代記書いててちょっと筆が止まってしまったので、息抜きにマイケルジャクソンの動画見てたら出来てしまいました。続きません。


第一話 - 突然のステージ

 目が覚めると、そこは全く見知らぬ場所だった。

 

「え……ここ、どこだ?」

 

 ざわめきと、嗅ぎ慣れない香辛料の匂い。土と木でできたような古めかしい建物がひしめき合い、行き交う人々は奇妙な民族衣装を身につけている。頭上には、二つの月が浮かんでいた。地球ではない。明らかに、異世界だ。

 

 混乱が頭を支配する。ついさっきまで、自分の部屋で音楽を聴いていたはずなのに。一体何が起きた?

 

「おい、そこの見慣れない奴!何突っ立ってるんだ!」

 

 露店の店主らしき男の怒鳴り声が耳に届く。人々は好奇の目、あるいは警戒の眼差しを向けてくる。居心地の悪さ、そして途方もない不安が押し寄せる。どうすればいい?何をすればいい?

 

 その時、体の奥底から、抗いがたい衝動が湧き上がった。それは、まるで魂が叫んでいるかのような、歌とダンスへの渇望。異世界への戸惑い、自分の身に起きた不可解な現象への困惑、そしてこの得体の知れない力への期待――あらゆる感情が混じり合い、エネルギーとなって全身を駆け巡る。

 

「……っ!」

 

 気づけば、体が勝手に動き出していた。

 

 最初に口からこぼれたのは、意味不明な、しかし魂を揺さぶるようなメロディだった。それは、この世界の言語ではないはずなのに、なぜか人々の心に直接響くような響きを持っていた。そして、足が、腰が、腕が、信じられないほど滑らかに、重力を無視するかのように舞い始める。

 

 ムーンウォーク。スピン。キレのあるステップ。

 

 雑踏の中心で、僕はただ、衝動のままに歌い、踊った。異世界に放り出された不安を振り払うように、この新しい体と能力を確かめるように。それは、戸惑いと、しかし確かな高揚感をはらんだ、即興のパフォーマンスだった。

 

(歌:無意識のテーゼ)

 

ああ、ここはどこ? まったく新しい空?

二つの月が上り、見慣れた光はない。

奇妙な新しい音、見知らぬ大地の上、

心臓は速く打ち、恐れと力で。

 

だけど何かが呼んでいる、この壁の向こうから、

深いリズム、静かな嘆願。

足が動き出す、どこから始めよう?

この恐れを踊り、魂を解き放つために。

 

(間奏:ダンスが加速し、人々が動き出す)

 

もう後戻りはしない、この未知の道で、

未来が待っている、僕が掴むために。

一歩ごとに、僕はリズムを見つける、

この木々の下で、新しい世界が花開く。

 

だから立ち上がろう、空の彼方へ、

過去を置き去りに、影が潜む場所へ。

真新しい一日、道を見つけるために、

二つの月の眼差しのもとで。

 

 最初は、人々は呆然と立ち尽くしていた。だが、僕の歌声が響き渡り、ダンスが熱を帯びるにつれて、彼らの表情が変わっていく。驚き、そして、抗いがたい魅了。

 

 そして、その瞬間は訪れた。

 

 僕のパフォーマンスが最高潮に達した時、周囲の人々が、まるで糸で操られるかのように動き出したのだ。彼らの表情は陶酔に満ち、その体は僕の動きと完璧にシンクロする。

 

「な……!?」

 

 露店の店主も、通りすがりの旅人も、子供も、老人も。皆が、僕の完璧なバックダンサーへと変貌していた。彼らは、寸分の狂いもなくフォーメーションを組み、キレのある動きで僕の舞を彩る。まるで、長年共にステージに立ってきたプロのダンサー集団のようだ。

 

(これが、あの「ダンス統率力」……!?)

 

 驚きを隠せないまま、僕はパフォーマンスを続ける。人々が一体となって踊る光景は、圧巻だった。

 

 その中で、ふと気づく。

 

 僕が降り立った場所のすぐ近くで、小さな口論が起きていたらしい。野菜を巡って言い争っていた二人の男がいた。だが、僕の歌とダンス、そして周囲の人々が繰り出す一体の舞に巻き込まれるうちに、彼らの顔から怒りの表情が消えていく。互いに目を合わせ、照れたように笑い、やがて肩を組んで、周囲のダンサーたちに加わっていく。

 

 歌とダンスは、そのまま街の喧騒を巻き込み、一つの巨大な祝祭へと変えていった。僕の歌には、この異世界での「戸惑い」と、それでも「前を向いて進む」という、無意識のテーゼが込められていたのかもしれない。

 

 やがて、歌が終わり、最後のポーズを決める。

 

 すると、魔法が解けたかのように、人々は動きを止めた。彼らは我に返り、互いの顔を見合わせる。そして、一斉に、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。

 

「す、すごい……!」「一体、何が……!?」

 

 人々は興奮し、混乱し、そして何よりも、感動していた。口論していた男たちも、なぜか和解し、笑顔で僕を見つめている。

 

 僕は、ただ呆然と立ち尽くした。

 

(僕の、この能力……。一体、何なんだ?)

 

 まだ何も理解できていない。だが、この異世界で、僕は確かに、何かを成し遂げた。そして、この能力が、この世界で何をもたらすのか、漠然とした期待が胸に広がる。

 

異世界での最初のステージは、こうして幕を開けた。




我ながらバカな小説が書けた。満足している。
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