4月1日
時計に0が4つ並んでから2時間ほど、
私と先生は今日も遅くまで仕事に追われていた
「……先生」
"……なに?コノミ"
私が気だるげ声で呼びかけると、同じような気だるげな声が帰ってくる
「明日……じゃないや。今日ってさ、エイプリルフールなんだって」
"あぁ……そう言えば、いろんな子が話してたっけ"
「生徒たちが楽しみにしてる日なわけだしさ、私たちも乗っかってみる?」
生徒が人口の大半を占めているキヴォトスで、イベントや流行りについていけないのは死活問題だし、
何より、一応私も身体の年齢的には学生だからね
たまのイベントぐらい楽しみたいよ
"いいね、それ。何か案はある?"
案……はあんまり考えてなかったな
う〜ん。シャーレとして発言するのなら、混乱を招くような嘘はよろしくないし、
出来る限り簡潔で、嘘だと分かりやすく、それでいて少しは騙せる嘘……
「そうだねぇ……先生は生徒皆から人気だし、そんな先生が誰かと付き合ってる、なんて嘘なら、皆盛りあがるんじゃない?」
今のキヴォトスで先生を知らない生徒は居ない
なら、先生にまつわる嘘にするのがいいでしょ
ちょっと不安が残るけど
"えぇ……それ、大丈夫?"
「いや、流石に大丈夫でしょ。わざわざエイプリルフールの日の投稿になるわけだし」
"確かに、それなら大丈夫かな"
「じゃあそれで……んん〜、流石に疲れたね。今日はこのぐらいにしておこうか」
明日は多分、イベントにあやかって先生に会いに来る生徒が多いはず
少しでも身体を休めておかないと
……そう言えば、今日は人、あんまり来なかったな
"そうだね、私はシャーレに泊まるよ……おっとと"
「大丈夫?ずっと座ってたからね、急に立ったら危ないよ。一人で行ける?」
"はは……なんとか"
「もう……手貸してあげるから。ほら、行くよ」
"いつも悪いね……"
私は非力だけど、それでもキヴォトス人ではある
先生の体重をちょっと支えるぐらい……うっ……わりとしんどい……
「ほら、着いたよ……ありゃ、寝ちゃってる……ふぁ……私も……眠気が……そうだ、最後に……」
【シャーレ公式】
シャーレの先生に、意中の人!?
「こんなもんで……いいでしょ……」
「……ん……んぇ?ここは……シャーレか……なんで、ていうか……何の騒ぎだ?」
なんだか周りがうるさい……これで目を覚ましたのか
「確か……遅くに仕事終えて、帰ろうとして……ん?」
隣に誰か……先生!?
「なんで先生がここに……!?ていうか、同じベッドで……!?」
私何した?なんかやらかした?
取り敢えずお互い服は着てるね、よし……
「えっと……そうだ。先生が一人で休憩室に行けそうになかったから手伝ってあげて……そのまま私も寝落ちしたのか」
大分夜も遅かったしなぁ……なるべく気をつけないと
変な噂たてられても困るし
「参ったな、こんな姿誰かに見られちゃ面倒くさい。特にあの砂狼とか狐に……最近ユキノも変だっけ」
そう言えば、何の騒ぎだったんだろう
今日は何かの日だっけ
「えっと、確か今日は4月1日……あぁ、エイプリルフールか」
シャーレでも何かしようって話だった
……う〜ん、何か忘れてる気……というか、間違えてる気がする
でも、エイプリルフールってそんなに騒ぐイベントだったかな
「おっと、もうこんな時間か。そろそろ今日の当番が……」
鍵を開けておかないと……
「あ!今関係者が出てきました!!早速お話を聞いていきたいと思います!」
「……へ?」
なに……これ?
なんでこんなに人が集まってるの?
ざっと見ても百人は居る……見えないだけで外にも居るんじゃないかコレ
「コノミさん!今朝の投稿の意味するものはなんでしょうか!?ぜひ詳しくお願いします!!」
「シノン?投稿が意味するものって……何のこと?」
「ん、はぐらかさないでちゃんと説明して。内容によっては◯す」
「貴方様ぁ……何故私ではなく……」
「コノミ、お前は私……たちのパートナーではなかったのか?あれだけ私に尽くすと言っておきながら、他の男にうつつを抜かすとは……」
……まずい
皆が怒ってるのは伝わってくるんだけど、何で怒ってるのかが全くわからない
「えっと、皆一旦落ち着いてくれる?いまいち状況が掴めてないんだけど」
「またまた〜、今日の明朝に投稿されたあの文章についてですよ!やっぱり匂わせですか?牽制ですか!?」
匂わせって何?牽制って?
今日……深夜……あぁ、あれか
「……な〜んだ、そんなことか。エイプリルフールだよ、エイプリルフール。ちょっとした冗談だって」
「エイプリルフールは昨日ですよ?」
「……え?」
「え?」
「嘘……だよね?」
「ん、今日は4月2日。間違いない」
「ホントに……?」
「えぇ、間違いなくホントです」
「これもエイプリルフールの嘘だったりは……」
「しない。今日は4月1日ではないからな」
じゃあ、本当に、
今日の日付は……
スマホを取り出し確認する
「4月……2日?」
あれ?私丸一日寝込んだ?
いや、流石にそんな事は無いはず……
ていうかそれなら、ちゃんと4月1日に投稿してる……そうだ!投稿!
「……これも、4月2日かぁ」
……参ったな。徹夜で私も先生も頭がやられてたかな……昨日はシャーレに籠りっぱなしで、珍しく来客も少なかったし……完全に誤解してた
ていうか、イベントの日なら生徒が来るじゃん普通
なんで昨日に限って来なかったのさ
はぁ……どう言い訳しよう
「え〜と、その……」
「さぁさあ!いい加減本当の事を教えてもらいますよ!先生とどこまでいったんですか!?」
「……悪いけど、そんなにネタになるようなことじゃないよ。疲れてた私と先生が、一日日付を間違えてただけだし」
"えっ、私日付間違えてたの?あとこの集まりは何?"
「……はぁ」
私の溜息の後に大量の怒号や叫び声が聞こえる
間が……間が悪いよ先生……!
そりゃ周りでこんなに騒いでたら目覚めるのは当然だけどさ?私もそうだったし
でも、同じ休憩室から出て来ちゃったらもう言い逃れができないじゃん……
「やっぱり、あの記事の内容は本当だったんだ……」
……ん?ちょっと待って?今……
「……記事?投稿じゃなくて?」
「……あ、それでは私はここらでお暇させて……」
「ユキノ、シロコ、ワカモ。シノンを押さえて」
「あ、あぁ。了解した」
「ん?ん……分かった」
「え?あぁはい」
「ちょ!離してください!何も悪い事は……」
記事……これか?
【クロノス報道部】
先生、まさかの社内恋愛か!?お相手は勿論……!
【クロノス報道部】ねぇ……
これは……久々に、説教モードかな?
頭の上で手を一度大きく叩く
「静かに……シノンを離してあげて」
「了解」
「ん……ん?」
「えぇ。はい、どうぞ……何故私は大人しく言う事を聞いて……?」
「ねぇ、シノン」
「ひぃ!?」
「これ、何?」
「こ、これは、その……!」
「私、前も言ったよね?憶測と、不確かな情報を報道するな、って……」
「あの……そうだ!報道の自由!報道の自由が……!」
「シノンにとっての報道は、嘘八百を並べることなの?」
「……いえ、違います」
「はぁ……今回は日付間違えて、尚且つあんな投稿した私も悪いからここまでにしておくけど、またこうやって誰かに迷惑かけるような記事を書くなら……」
「か、書くなら……?」
「……シャーレの権限で、クロノス報道部の運営に介入するかも?」
「そ、それだけは!それだけはご勘弁を!?すぐに記事を訂正して然るべき場所で謝罪します!」
「えっ、ちょ……行っちゃった」
然るべき場所で謝罪って……記者会見でもする気なのかな
"あ〜……随分と大事になったみたいだね"
「久々に私もやらかしたよ。まさか日付を間違えるなんて……やっぱり寝不足ってのは駄目だね、想像以上に頭が回らなけなる」
"舌が回っれないよ……私もだ"
「あ〜……今日こそは定時で上がって、多めに睡眠とろうか。さぁ、後は……」
"うん……"
周りを見渡す
……これだけの生徒、どうやって帰そうか
絶対混雑しちゃうだろうし……
あ、シノンもあそこで引っ掛かってる
"……これだけの生徒、どうやって帰そうかなぁ"
「ちょっとずつ進めるしかないね。時間が掛かりそうだ……」
"ごめんね。私がもっとしっかりしてれば……"
……な〜に言ってんだか、この人は
「いいのいいの。年齢差はあるけど、同じ職場で働く仲間でしょ?助け合いの精神で上手くやっていこうよ」
"……そうだね。ありがとう、コノミ"
「じゃあ、改めてよろしくね、先生」
"うん、よろしく。コノミ"
「おぉ……素晴らしいです!お二人の熱い友情……『男女の、そして年齢を超えた絆』。この記事は売れますよ……!」
「……さっき怒られたばっかりなのに、よく書く気になるね」
「ひぃ!?やめます消します!!」
「いや、消さなくていいけど……まぁ、その内容なら荒れたりはしない……かな?」
「……ちなみに友達以上の関係になった事、もしくはなる予定は?」
「無いよ!?…………一応聞いてきただけ成長して……あっ、もう居ない!?」
眠い
割と短期間で書いたのであまり上手くは書けてない可能性が
コノミは精神的には大人なので、先生とは同僚、仲間として仲良くしてほしいですね