いや、私は見るだけで十分だから……   作:新緑葉

6 / 7




四月の愚者

 

4月1日

時計に0が4つ並んでから2時間ほど、

私と先生は今日も遅くまで仕事に追われていた

 

「……先生」

"……なに?コノミ"

 

私が気だるげ声で呼びかけると、同じような気だるげな声が帰ってくる

 

「明日……じゃないや。今日ってさ、エイプリルフールなんだって」

"あぁ……そう言えば、いろんな子が話してたっけ"

「生徒たちが楽しみにしてる日なわけだしさ、私たちも乗っかってみる?」

 

生徒が人口の大半を占めているキヴォトスで、イベントや流行りについていけないのは死活問題だし、

何より、一応私も身体の年齢的には学生だからね

たまのイベントぐらい楽しみたいよ

 

"いいね、それ。何か案はある?"

 

案……はあんまり考えてなかったな

う〜ん。シャーレとして発言するのなら、混乱を招くような嘘はよろしくないし、

出来る限り簡潔で、嘘だと分かりやすく、それでいて少しは騙せる嘘……

 

「そうだねぇ……先生は生徒皆から人気だし、そんな先生が誰かと付き合ってる、なんて嘘なら、皆盛りあがるんじゃない?」

 

今のキヴォトスで先生を知らない生徒は居ない

なら、先生にまつわる嘘にするのがいいでしょ

ちょっと不安が残るけど

 

"えぇ……それ、大丈夫?"

「いや、流石に大丈夫でしょ。わざわざエイプリルフールの日の投稿になるわけだし」

"確かに、それなら大丈夫かな"

「じゃあそれで……んん〜、流石に疲れたね。今日はこのぐらいにしておこうか」

 

明日は多分、イベントにあやかって先生に会いに来る生徒が多いはず

少しでも身体を休めておかないと

……そう言えば、今日は人、あんまり来なかったな

 

"そうだね、私はシャーレに泊まるよ……おっとと"

「大丈夫?ずっと座ってたからね、急に立ったら危ないよ。一人で行ける?」

"はは……なんとか"

「もう……手貸してあげるから。ほら、行くよ」

"いつも悪いね……"

 

私は非力だけど、それでもキヴォトス人ではある

先生の体重をちょっと支えるぐらい……うっ……わりとしんどい……

 

「ほら、着いたよ……ありゃ、寝ちゃってる……ふぁ……私も……眠気が……そうだ、最後に……」

 

【シャーレ公式】

 

シャーレの先生に、意中の人!?

 

4月2日2:23

「こんなもんで……いいでしょ……」

 

 

 

 

 

 

「……ん……んぇ?ここは……シャーレか……なんで、ていうか……何の騒ぎだ?」

 

なんだか周りがうるさい……これで目を覚ましたのか

 

「確か……遅くに仕事終えて、帰ろうとして……ん?」

 

隣に誰か……先生!?

 

「なんで先生がここに……!?ていうか、同じベッドで……!?」

 

私何した?なんかやらかした?

取り敢えずお互い服は着てるね、よし……

 

「えっと……そうだ。先生が一人で休憩室に行けそうになかったから手伝ってあげて……そのまま私も寝落ちしたのか」

 

大分夜も遅かったしなぁ……なるべく気をつけないと

変な噂たてられても困るし

 

「参ったな、こんな姿誰かに見られちゃ面倒くさい。特にあの砂狼とか狐に……最近ユキノも変だっけ」

 

そう言えば、何の騒ぎだったんだろう

今日は何かの日だっけ

 

「えっと、確か今日は4月1日……あぁ、エイプリルフールか」

 

シャーレでも何かしようって話だった

……う〜ん、何か忘れてる気……というか、間違えてる気がする

でも、エイプリルフールってそんなに騒ぐイベントだったかな

 

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ今日の当番が……」

 

鍵を開けておかないと……

 

「あ!今関係者が出てきました!!早速お話を聞いていきたいと思います!」

「……へ?」

 

なに……これ?

なんでこんなに人が集まってるの? 

ざっと見ても百人は居る……見えないだけで外にも居るんじゃないかコレ

 

「コノミさん!今朝の投稿の意味するものはなんでしょうか!?ぜひ詳しくお願いします!!」

「シノン?投稿が意味するものって……何のこと?」

「ん、はぐらかさないでちゃんと説明して。内容によっては◯す」

「貴方様ぁ……何故私ではなく……」

「コノミ、お前は私……たちのパートナーではなかったのか?あれだけ私に尽くすと言っておきながら、他の男にうつつを抜かすとは……」

 

……まずい

皆が怒ってるのは伝わってくるんだけど、何で怒ってるのかが全くわからない

 

「えっと、皆一旦落ち着いてくれる?いまいち状況が掴めてないんだけど」

「またまた〜、今日の明朝に投稿されたあの文章についてですよ!やっぱり匂わせですか?牽制ですか!?」

 

匂わせって何?牽制って?

今日……深夜……あぁ、あれか

 

「……な〜んだ、そんなことか。エイプリルフールだよ、エイプリルフール。ちょっとした冗談だって」

「エイプリルフールは昨日ですよ?」

 

 

 

 

 

 

「……え?」

「え?」

「嘘……だよね?」

「ん、今日は4月2日。間違いない」

「ホントに……?」

「えぇ、間違いなくホントです」

「これもエイプリルフールの嘘だったりは……」

「しない。今日は4月1日ではないからな」

 

じゃあ、本当に、

今日の日付は……

 

スマホを取り出し確認する

 

「4月……2日?」

 

あれ?私丸一日寝込んだ?

いや、流石にそんな事は無いはず……

ていうかそれなら、ちゃんと4月1日に投稿してる……そうだ!投稿!

 

「……これも、4月2日かぁ」

 

……参ったな。徹夜で私も先生も頭がやられてたかな……昨日はシャーレに籠りっぱなしで、珍しく来客も少なかったし……完全に誤解してた

ていうか、イベントの日なら生徒が来るじゃん普通

なんで昨日に限って来なかったのさ

はぁ……どう言い訳しよう

 

「え〜と、その……」

「さぁさあ!いい加減本当の事を教えてもらいますよ!先生とどこまでいったんですか!?」

「……悪いけど、そんなにネタになるようなことじゃないよ。疲れてた私と先生が、一日日付を間違えてただけだし」

"えっ、私日付間違えてたの?あとこの集まりは何?"

「……はぁ」

 

私の溜息の後に大量の怒号や叫び声が聞こえる

 

間が……間が悪いよ先生……!

そりゃ周りでこんなに騒いでたら目覚めるのは当然だけどさ?私もそうだったし

でも、同じ休憩室から出て来ちゃったらもう言い逃れができないじゃん……

 

「やっぱり、あの記事の内容は本当だったんだ……」

 

……ん?ちょっと待って?今……

 

「……記事?投稿じゃなくて?」

「……あ、それでは私はここらでお暇させて……」

「ユキノ、シロコ、ワカモ。シノンを押さえて」

「あ、あぁ。了解した」

「ん?ん……分かった」

「え?あぁはい」

「ちょ!離してください!何も悪い事は……」

 

記事……これか?

 

【クロノス報道部】

 

先生、まさかの社内恋愛か!?お相手は勿論……!

 

 

4月2日6:00

 

 

【クロノス報道部】ねぇ……

これは……久々に、説教モードかな?

 

頭の上で手を一度大きく叩く

 

「静かに……シノンを離してあげて」

「了解」

「ん……ん?」

「えぇ。はい、どうぞ……何故私は大人しく言う事を聞いて……?」

「ねぇ、シノン」

「ひぃ!?」

「これ、何?」

「こ、これは、その……!」

「私、前も言ったよね?憶測と、不確かな情報を報道するな、って……」

「あの……そうだ!報道の自由!報道の自由が……!」

「シノンにとっての報道は、嘘八百を並べることなの?」

「……いえ、違います」

「はぁ……今回は日付間違えて、尚且つあんな投稿した私も悪いからここまでにしておくけど、またこうやって誰かに迷惑かけるような記事を書くなら……」

「か、書くなら……?」

「……シャーレの権限で、クロノス報道部の運営に介入するかも?」

「そ、それだけは!それだけはご勘弁を!?すぐに記事を訂正して然るべき場所で謝罪します!」

「えっ、ちょ……行っちゃった」

 

然るべき場所で謝罪って……記者会見でもする気なのかな

 

"あ〜……随分と大事になったみたいだね"

「久々に私もやらかしたよ。まさか日付を間違えるなんて……やっぱり寝不足ってのは駄目だね、想像以上に頭が回らなけなる」

"舌が回っれないよ……私もだ"

「あ〜……今日こそは定時で上がって、多めに睡眠とろうか。さぁ、後は……」

"うん……"

 

周りを見渡す

 

……これだけの生徒、どうやって帰そうか

絶対混雑しちゃうだろうし……

あ、シノンもあそこで引っ掛かってる

 

"……これだけの生徒、どうやって帰そうかなぁ"

「ちょっとずつ進めるしかないね。時間が掛かりそうだ……」

"ごめんね。私がもっとしっかりしてれば……"

 

……な〜に言ってんだか、この人は

 

「いいのいいの。年齢差はあるけど、同じ職場で働く仲間でしょ?助け合いの精神で上手くやっていこうよ」

"……そうだね。ありがとう、コノミ"

「じゃあ、改めてよろしくね、先生」

"うん、よろしく。コノミ"

 

 

 

「おぉ……素晴らしいです!お二人の熱い友情……『男女の、そして年齢を超えた絆』。この記事は売れますよ……!」

「……さっき怒られたばっかりなのに、よく書く気になるね」

「ひぃ!?やめます消します!!」

「いや、消さなくていいけど……まぁ、その内容なら荒れたりはしない……かな?」

「……ちなみに友達以上の関係になった事、もしくはなる予定は?」

「無いよ!?…………一応聞いてきただけ成長して……あっ、もう居ない!?」

 

 

 





眠い
割と短期間で書いたのであまり上手くは書けてない可能性が
コノミは精神的には大人なので、先生とは同僚、仲間として仲良くしてほしいですね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。