「短編集」連邦捜査部シャーレの七海建人の日常 作:馬鹿め!そっちは本体だ!
ここの先生はナナミンなので、定時前に当日の仕事を終わった日にはリンちゃんの書類を大半持っていきます。
「いつもありがとうございます、先生。では、こちらをお願いします。」
「まだあるでしょう。私ができる分は全て私に回してください。」
「ですが……」
「何としてでもあなたを定時に上がらせたいので。回してください。」
「……はい。」(うれしい)
■リンちゃんの場合
「最後に定時で帰った日と、続いた休みを取った日は?」
「……ですから先生、睡眠も食事も取れてはいますから」
「最後に定時で帰った日と、続いた休みを取った日は?」
シャーレの執務室にて。
アオイに連れてこられたリンはソファーに座らされ、七海の用意した紅茶と茶菓子を前に尋問を受けていた。
「2週間前よ。定時で帰った日も、休みを取ったのも。ちなみに休みの日にも仕事を持ち帰ってやっていたから15連勤ってとこかしら。」
「アオイ!」
本人が答えるより先に勤務状況を全て暴露されてしまったリンは思わず声を上げる。
「ごめんなさいね、先生。私たちが言っても聞かないから、あなたにお願いすることになって。」
「構いませんよ。リンさんの分の仕事をやるのでしょう?あなた方連邦生徒会のメンバーだけでは大変でしょうから私が……」
「いえ。いつも助かっているのだけれど、今回は仕事を手伝うのではなく、この人がちゃんと休んでいるかどうかを見張っておいてほしいの。」
「見張る……?すみませんが、それではリンさんも落ち着かないでしょう。」
「先生が思っているような見張り方ではないわ。リン先輩には申し訳ないけど、見張りも兼ねて一緒に休暇を過ごしてもらいたいの。だから、先生にも休暇を取ってもらうわ。」
藪蛇になることを恐れてか、大人しく紅茶のカップに口をつけるリンを余所に七海とアオイは話し込んでいた。
「私もですか?ですが、それだと尚更仕事が……」
「仕事の方は私たちで何とかできる範疇だから大丈夫です。私たちも成長しているのだから。それと、こうしてリン先輩のことで相談しに来ておいて何だけど、あなたも働きすぎよ。先生。」
「リンさんほど無理はしていませんよ。定時でも帰れていますから私は問題ありません。」
「あなたも14連勤よ?その話もしに来たのだけれど。」
「定時には上がっています。あなた方はまだ子供で、私は大人。働き方も違います。」
「そうとは言っても働きすぎです……私たちのために頑張ってくれていることは知っているわ。それでも先生にもきちんと休んでほしいの。」
「それと、あなたが最後に続いた休みを取った日はそれよりずっと前。休暇ではなく、出張として申請は出しておいたから、リン先輩のことはよろしく頼むわね。先生。」
「それと、街中だとリン先輩は仕事のこと考えて話にならないから何処か綺麗な海にでも連れていってあげて……あら、こことかどうかしら。」
「確かに。海沿いに街もあるのなら不便も無さそうですね。平日ですからそこまで人でごった返しもしないでしょう。」
「う、海?連れていくとはどういうことですか?先生?アオイ?」
「リン先輩も今日は上がって明日の準備をして頂戴。あ、先生。領収書は貰ってきてほしいわ。」
「自費で……いえ、出張でしたら経費でしたね。」
「ま、待ってください!先生と海まで行くのは決まっているのですか!?アオイ!?先生も乗り気にならないでください!」
リンの久方ぶりの休暇の日の空は、予報を裏切って明るく晴れ渡った。
リンは七海と共に休日を過ごすことに緊張もしていたが帰り際には休暇を楽しんだ表情を浮かべていた。
この日に撮った写真は、あの写真と同じ場所に収まったらしい。
「リン先輩は充分に休暇を楽しんだようね。ありがとう、先生。色々と大変だったでしょう。」
「いえ。私も久々に羽根を伸ばすことができましたから。こちらこそ。」
「次は私も連れていってもらってもいいかしら?」
「まあ、構いませんよ。」
「ふふ。楽しみにしてるわね。」