デュエルカフェの店員さん   作:盆回

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一挙放送後は書きたくなっちゃう衝動に身を任せて投稿。
Ⅳ話まで来たらもう短編とは言い張れないので連載に変更しました。


予兆、邂逅

 

 IVと黒咲兄妹が来店した衝撃的な日の夜。

 結局その後は誰と決闘をする訳でもなく、つつがなく業務時間を終わらせることができたけれど……そんな穏やかな日常に反して不安は募ってしまう。

 

 

 

 何せARC-V内でのエクシーズ次元といえば、それはもう目も当てられないほどの被害を被るのだから。

 

 

 街は壊滅、食料は不足、住める場所すら限られる世紀末。その上融合次元の刺客が往来し、遭遇すれば決闘者非決闘者の区別なく襲われカードに封じ込められる。アニメで見た時でさえ前作のZEXALキャラクター達が息づいていた見覚えのある街が破壊されているのがショッキングだったのだ、今俺が暮らしている現実の世界がそうなれば、想像するのも恐ろしい。人間のカード化なんてものも、シュールだと揶揄することは出来なくなっている。

 

 

 以前、ここがエクシーズ次元であればその時はその時だ、なんて思っていた。けど、その可能性の示唆を自分の目で見ればどうだ。そんな呑気なことは考えられなくなってしまっている。

 

 そんなことはまるっきり杞憂で、ただZEXALの世界にも本編に登場していないだけで黒咲兄妹は存在していたのかもしれない。だけど、もし本当に侵攻が起こってしまえばどうなる? 俺の家族が、友達が、俺自身がカードにされるかもしれない。……それどころか、命を失うことになるかもしれない。そうなってしまえば俺は、……俺はどうすればいいんだろう。

 

 

 

 

 

「はあ……」

 マンションの自宅で誰に向けるでもない溜め息を一つ。憂鬱に浸りながらも、かち、かちとマウスを操作する。

 

 

 今はパソコンで調べ物中だ。どうにかしてこの世界があの壊滅した次元ではないという証明が欲しくて、相違点を探す。じっとしていると不安感に押し潰されそうになるというのもあり、情報で頭を埋めないとやってられない。自分で自覚できるほどに俺は今やさぐれていた。

 

 

 

 

 ──ZEXALとエクシーズ次元との差異はいくつかある。

 

 例えば『RUM』(ランクアップマジック)。ZEXALではバリアン世界だのアストラル世界だのの力を利用してモンスターをランクアップさせることが可能だが、それには相応の負荷が掛かる、という諸刃の切り札として使用されていたカード。それがARC-Vでは特殊な力の介入もデメリットもない普通のカードとして登場している。

 

 例えば天城カイト。ZEXALの彼は銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)を主体としたデッキを扱い、ARC-Vの彼は『光波』(サイファー)という派生を使っていた。

 

 

 どれも今の俺には調べることが出来ないことだ。前者は今は流通していないがアカデミア襲撃後に一般化でもされたのかもしれないし、後者も後からデッキに手を加えた、ということが有り得るかもしれない。天城カイトの性格も、ARC-VがZEXALの後の話と考えるには無理があるが、この世界での彼の行動も活躍も、原作に一切関わっていない俺には知りようがない。

 

 ……ずっとアニメのZEXALの世界であると信じていたけれど。もしかしたらこの世界が、俺の知識の中のZEXALの歴史とは全く違う道を辿っている可能性はあるんだ。ただ俺が知らないだけで。

 

 

 

 

 

 うんうんと頭を抱え、何かないかと地図サイトを開いてみる。ARC-Ⅴでハートランドの地形なんて確か出てこなかったし意味はないか、と思いながら、最早見慣れた地図を眺めて。

 

 

 

 

 ぱち、と目に入った文字で、思い出した。ARC-Vの数少ない、侵攻前の情報を。

 

 

 

 

「ハートランド学園……そうか、学校名!」

 

 

 

 ええと、……何だっけか。二十数年前の記憶であるから具体名は思い出せないけど、確か黒咲隼とユートが通っていたと明言されていた学校。それがZEXALで九十九遊馬達が通うハートランド学園と同じ風景だったはず。

 

 思い立ってすぐに調べれば、その学校はハートランド学園という名称のまま。念の為に見たこの街にある他の学校も、ぼんやりとした記憶とはいえARC-Vのそれとは一致しないことだけは分かる。

 

 

 

「はー……」

 今度は安堵の溜め息。まだ不安要素は拭えないが、少なくともあの次元と全く同じ世界ではないというのは証明できた。未来のことは不確定とはいえ、悲惨な未来の可能性が五分五分程度に落ち着けばまだ心の安寧は保てる。

 

 

 

 俺はただの凡人だ。金があるとか、名声を持っているとか、身体能力が凄いとか。アストラル世界に半身がいるとか、前世がバリアンだとか、近未来的な科学技術を持ち合わせているとか、そういう特別なものは何もない。だからこうして心を落ち着かせるしかない。

 

「俺一人が侵攻のこと知ってたって、どうしようもないもんなあ」

 

 

 

 

 

 

──────…………

 

 

 

 

 

「あれ、忘れ物……」

 

 

 

 今日も今日とて出勤日。

 今しがた退店した客の席を片付けようとしたところで、椅子に一枚のカードが残っていることに気付いた。表返すと見えたのは緑枠のよく知った魔法カード、『融合』だった。……融合が嫌いという訳ではない。自分でも使っているし。けれど、先日の憂いもあってかこのカードを見ていると何だか胸騒ぎがしてしまう。カードに罪は無いんだけれども。

 

 

 

 何はともあれ、忘れ物なら届けなければ。

 幸いなことに、退店からさほど時間は経っていない。窓を覗けば客であった青年の後ろ姿をギリギリ確認できた。

 

「店長! ちょっと忘れ物届けてきます、そう時間はかかりませんからー!」

「りょーかい、気を付けてねー」

 

 

 

 

 

 先程見えた背中の進行方向に向かって走る。当の本人はカードを落としたことなど全く気付いていないようで、こちらを振り向くことなく細い路地を曲がっていった。見失っては骨折り損だ、とスピードを上げる。

 

 

 幸いにも、少し進んだところでその青年は立ち止まっていた。ほ、と全力疾走で荒くなっていた息を整え、声を掛ける。

 

 

「お客様、これ忘れ、て……」

 

 

 

 

「ええ、はい。……警備や警戒は無いに等しく、侵攻は容易と見えます」

 

 

 

 否、掛けようとした。声が喉の奥で途切れた。

 青年はこちらに気付いて振り向くでもなく、通信装置による会話をしていた。……見た事のない、機械で。

 

 

 

「はい、……申し訳ありません、次元が異なるせいでしょうか、通信が少し悪く……はい。すぐに帰還を。失礼します」

 

 

 

 次元。

 侵攻。

 俺が最近ずっと脳内で繰り返している言葉であり、俺が最も聞きたくない言葉。手に持った融合のカードが灼熱を帯びたような錯覚に陥り、嫌な汗が背中を伝う。

 

 

 

「……アカ、デミア?」

 呆然と呟いた。呟いてしまった。

 

 

「ッ誰だ!!」

 次の瞬間、奴が勢い良く振り向く。

 ──そこで、確信に変わる。先程晒していた素顔は、今や見覚えのある仮面に覆われていた。いつ仮面を被ったんだ、なんて言ってみる余裕なんてない。

 

 

 

 

 融合次元の刺客。あらゆる次元の統合を望む侵攻者。

 

 

 目の前にいる男は、間違いなくアカデミアの戦士だった。

 

 

 




一挙放送後はその時に活躍したキャラについて何かしら書きたくなる衝動。今すごくバリアンのこと書きたい。

ARC-V、結構うろ覚えの部分が多くて……見返したいから一挙放送来てくれ……
でもZEXALもうろ覚えじゃん はい
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