カードゲーム世界に転生していた。あの…もしかして私がラスボスになるんですか?   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 どこかで聞いたことある名前であれば私のボキャブラリーがない故ですねぇ!


第二話「銀髪巨乳不思議ちゃん属性は狙ってない」

「どうして俺と君が戦わなくちゃいけないんだ!」

 

 目の前に映る女性は、一瞬だけ悲しむような顔をするとすぐ真顔に戻り、カードを構えた。

 

「私とあなたが戦う運命にあって、それは逃れようのない物語だからよ」

 

「くっ…なにか方法はないのか…」

 

 俺の吐露も、彼女には響かない。

 

「やるしか…ないのか…」

 

「決心したようね、それじゃ始めましょう」

 

 俺は他に方法がないと自分に言い聞かせるようにカードを構える…。

 

「「ウォーズ」」

 

『…イヒ』

 

 ん?何処から声が聞こえてくるんだ?またデッキからか?…デッキからは何も聞こえてこない…聞き間違いか?

 

『ライヒ!起きないと学校遅刻しちゃうわよ!』

 

 しかし目の前にいきなり現れたのは俺の幼馴染の安城ミライ。彼女から空のペットボトルを頭にゆっくり当てられたところで、俺は夢から覚めたようだった。

 

「え!?うわ」

 

「危なかったわねー。後10分寝ていたら朝ごはん食べ損ねていたところよ___って、どうして泣いてるの?」

 

 ミライに言われ目の当たりを拭うと、確かに涙を流していた。

 

「え、どうしてだろうな…分からないけど、何かとても悲しい事があったような気がする」

 

「大丈夫?ごめんね、もしかしてこれ痛かった?」

 

 ミライは手に持っていた空のペットボトルを見ていたが、そこまで力を入れていないだろうし、心配しすぎだ。

 

「いや、大丈夫だ。何か悲しい夢を見た気がするけど、内容が思い出せない」

 

「夢ってそんなものじゃない?」

 

「それもそうか…それより起こしに来てくれて助かった。早く朝ごはんを食べよう」

 

 ミライの両親は海外出張で、高校生のミライは地元の高校を出るために残ったが、隣の家同士なので朝や夜のご飯は出来るだけウチに来て食べにくるようになっていた。

 まぁ、高校生とはいえ一人のご飯ほど寂しいものはないだろう。少しでも寂しさを紛らわせる事ができたら嬉しいものだ。

 

「朝ごはん美味かったなぁ、昨日の残りの肉じゃがってどうしてあんなに美味しいんだ?」

 

 ミライに起こしてくれた事もあって急いで登校する事もなく、歩きながら雑談に興じる。

 

「一晩経って、味が染みてるからね」

 

「あぁそれもあるけど、昨日の肉じゃがはミライが作ってくれた物だからじゃないかな。ミライは既に母さんより料理上手くなってるし」

 

「もう、口が上手いんだから…てか、昨日随分帰りが遅かってたよね?どこ行ってたの?」

 

 あー…カオス側の戦士とのウォーズで、ミクルの奪われたデッキを取り戻すためにちょっと危ないことをした___なって言えないよなぁ。

 

「ん…あぁ、ミクルとちょっとな。そう、新しく出来たカードショップにな…行ってたんだ」

 

「ふーん、なんか歯切れ悪くない?」

 

 目を細めて怪しむように俺を睨む。やめてくれ、この話を続けたら俺はきっとボロを出す。

 

「おはよう、ライヒくん!ミライさん!」

 

「おはようミクルくん」

 

「おう、おはようミクル」

 

 後ろから声をかけてきたミクルはこんな事を口に出した。

 

「昨日は不良たちから守ってくれてありがとう!」

 

「あっ、お前…」

 

 いや、別にミクルに秘密にしてくれとか何も言ってなかったのはあるから俺の落ち度だが、まさかミライがいるこのタイミングで言うとは…。ま、まぁ、ミライもそんなに心配しないだろうし…。

 

「………」

 

 あ、ダメだな。めちゃくちゃ怒ってる…。心配が限界突破して真顔になってる。

 

「その…仕方がなかったってやつだ」

 

 最初はぐらかした事もあって、ミライから「危険なことしちゃダメ」とこっぴどく叱られてしまった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「別に放課後まで見張ってなくても、危険な事なんてしないって」

 

「本当でしょうね?」

 

「あはは…助けられた僕が言うのも何だけど、そんなに責めないであげて、元はと言えば僕の責任なんだし」

 

 ミクルにフォローされながら、俺たちは最近できたらしいカードショップに訪れた。

 LLのカードは少し持っててもデッキを作るまで持ってなかったミライが、俺たちの話しに乗り遅れないようにデッキを作るため付いてきたってのもあるだろう。

 

「まずは自分のお気に入りのカードが何か、そのカードと相性のいいカード…つまりシナジーがあるカードは何か、デッキ作りはそこからだな。ミライが持ってるカードは確か…回復が得意な白魔法使い系統だったな」

 

「そうよ、私の誕生日に興味本位でカードパックから当たったレアカード。白魔法の魔術師(ホワイトスペル)ブライダル」

 

「自分が回復するたびに相手の場のエージェントカードを一枚デッキを戻す。ターン制限のないカードだね___強力なカードだけどコストは7。でも、耐久戦が出来るコンセプトのデッキにしていけば問題なく活躍できると思うよ」

 

「そんなに出すのが難しいカードなの?」

 

「うーんそうだな。まずはLLの大まかな流れから話していこう。LLの名称はレジェンダリー・ロード、直訳すると伝説の皇帝。カードにはカードコストが存在していて、ウォーズでよく使うコストは1〜3が基本なんだ」

 

「ふーん、伝説って?」

 

「あぁ、よくわかってない。どうやら伝説の皇帝とか言われる高コストの幻のカードがあるらしいけど、ほとんど都市伝説だな。話を戻すぞ、カードの中には種類があって、場に出して相手や相手の出したカードと戦うエージェントカード」

 

「それで、人やドラゴンとか場に出して戦わないカードがスペルカードって言って、相手のエージェントカードの攻撃を防いだり、破壊したり、自分のライフを回復したり、多種多様にあるんだ。他には自分の戦いを有利に進めるフィールドカード、大まかにはこの3種類のカードを50枚に納めたものがデッキになるんだよ。その中のカードが基本的に1〜3コストが大半のもので、自分のターンが始まると同時に使えるコストが1つずつ上昇していく、だから最初から動く事が多いから、ロングゲームになり辛いって感じかな」

 

「へー面白そうだね、早速デッキを作っていきましょ!」

 

「あぁ!でもまずはデッキコンセプトを整えてからだな」

 

 新しくデッキを作る時はいつになってもワクワクしてくる…そうだ、俺も新しく手に入れたドラゴと相性のいいカードを、デッキに入れてみてもいいかもしれない。

 でも今日のドラゴは少し様子がおかしいように見える。まるで何かに恐れているように、怯えて小さく俺の肩に丸まっている。

 確かこのカードショップに行く事にも反対していたような気がする、ここ何かあるのだろうか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 あ!ようやく主人公っぽい子発見。いやぁカードショップをハシゴした甲斐があったなぁ。

 でもどうしよう、こっちから話をかけるのは話のネタがないし、何より私から話しかけるのは無粋でエレガントさに欠ける。

 

 ちょっとだけ…ほんのちょっとだけ向こうから話しかけやすい雰囲気を作るのもありかも?…ヨシ、その方向性でいこう。

 

「よし、とりあえず形にはなってきたな。じゃあ早速ウォーズしてみるか?」

 

「うん!やりたいやりたい!」

 

 どうやら主人公っぽい子が初心者の同級生とウォーズをするようだ、微笑ましい…あれ?もしかしてこの女の子ヒロインじゃないよね?初っ端から私の計画頓挫しない?

 

「僕が横でアシストするよ」

 

「あぁ、頼んだミクル。それじゃ行くぞ!」

 

「「ウォーズ!」」

 

「先行は譲るぞ」

 

「じゃあお言葉に甘えて、私のターンドロー!…ミクルくん、このカードでいいと思う?」

 

「うん序盤はそのカードがいいと思うよ」

 

「私はコスト1白魔法の魔術師(ホワイトスペル)の見習いを召喚。この子は場に出た時、デッキからカードを1枚ドロー。この子には1ターンに1度、任意のタイミングでライフを1回復する事ができる。LLのライフはお互い20から始まるけど、上限はないんだったよね?じゃあ1回復!」

 

 白魔法魔術師の見習い、コスト1 攻撃力2 守備力2

 

 女の子の出した見習い魔術師が杖を持ち上げるの光を発して、淡い光を出したように見える。

 大きなバトルフィールドじゃないから、エージェントカードのホログラムはちょっと小さいかも。でも実際のカードのイラストがちゃんと動くと、より一層別世界の感覚に陥る。

 

 ミライ ライフ21

 

「このカードは相手に攻撃することはできない、私はこれでターンエンドかな」

 

 このLLは最初のターンからかでも攻撃できるし、エージェントカードは基本召喚酔いのような出したターンに攻撃できないみたいなことはない。基本的に1〜3コストでリソースの削りあいをして、大型コストである6〜8コストのカードで勝負を決めると言うのが、LLの醍醐味だ。

 

 それと相手の攻撃に対して、バトル場のエージェントカードは前のターンに攻撃していなければ防御を選択できる。その場合攻撃力と防御力を比べて、攻撃してきた攻撃力未満の防御力を持つカードが防御した場合、そのカードは破壊されて墓地に送られる。また、攻撃する攻撃力より防御側の防御力が上の場合、防御側の防御成功となり、防御側のカードは破壊されず、攻撃側は破壊されない。

 

「定石のような動き出しだな、俺のターンドロー!まずはコスト1を払って、スペルカード竜騎士(ドラゴンライダー)入門書を発動!手札を1枚墓地に送ってデッキからカードを2枚ドローする!よし、俺はこれでターンエンド」

 

「どちらも最初は手札を整えてからだね」

 

 ターンは加速して、お互いのコストは6まで貯まった。その間に分かった事だけど、主人公っぽい子の名前はライヒくんというらしい。

 

 ミライ ライフ9

 ライヒ ライフ16

 

 ライヒくんのターンが終わって、場はミライちゃんって呼ばれてた女の子がやや劣勢。まぁ初心者で使い時を判断する必要があるコントロールデッキはなかなか難しいといえるかも。

 

「お願い来て…ドロー___やった!来てくれた!私は白魔法の魔術師ブライダルを召喚!ブライダルは召喚時にライフを3点回復する。ブライダル自身の効果でライヒくんの場のエージェントカードを1枚デッキに戻してもらうよ、選ぶのは竜騎士バズズ」

 

 天使のような翼が生えた白装束の女性が降臨したかと思ったら光の粒子をバズズに吹きかけた。

 

 竜騎士バズズ、コスト5の攻撃力6守備力3、攻撃時にデッキからコスト3以下の竜を呼べる効果と、墓地の竜か竜騎士を手札に戻す効果がある。

 ライヒくんのデッキは竜騎士で攻撃して、デッキから竜を呼び出すコンセプトのデッキのようだ。ロングゲームに強く盤面に並べる事で、防御にもなるバランスの取れたデッキカテゴリーのようだ。

 

「更に、白魔法の魔術師レインは自分がこのカード効果以外で回復した時、3点ライフを回復する。もちろんブライダルの効果でライヒくんの場のエージェントをデッキに戻させてもらうよ!選ぶのは守護竜ハーピスト。そして、白魔法魔術師の見習いの効果で1回復、レインの効果で3点更に回復するよ!場がガラ空きになったからライヒくんに全攻撃!ターンエンドだよ。ごめんねライヒくん、ビギナーズラックかも!」

 

 ミライ ライフ19

 ライヒ ライフ7

 

「すごいぞミライ!最初に召喚したブライダルを合わせて合計10点の回復と、4枚のエージェントカードの除去で俺の場はガラ空きになってしまった。この盤面を返せるカードは俺にはない…いや、無かった。」

 

 ライヒくんの目が変わった。やっぱり初心者相手だから一応手を抜いていたようだけど、熱くなっちゃったのかな…。

 

「俺のターンドロー…」

 

 ドローカードを見てニヤリとした。多分エースカードを引いたんだね

 

「俺は白亜の竜ドラゴ・クルーガーを召喚!このカードが場に出た時、手札墓地の竜と名前の付くカードを全てデッキに戻し、一枚につき、4点のダメージを相手エージェントカードに割り振り、相手のエージェントがなくなった場合、相手ライフに続けてダメージを与える!」

 

「うそぉ!…ライヒくんの竜のカードは何枚なの?」

 

「7枚…よって、防御力4のレイン、防御力2の見習い、防御力5のサンタテレサは破壊して、残り3回分、つまり12点のダメージをミライに与える!」

 

 ミライ ライフ7

 

「えぇ!つまりドラゴ・クルーガーの攻撃力は7だから___私の負け…ってこと?」

 

「そういうこと!いけドラゴ!ミライに攻撃!」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「初心者相手に本気出すなんて酷いよぉ〜」

 

「いやいや、ミクルのアシスト有りとはいえ普通に負けそうだったんだけど?本当に初心者かと思ったし、たまたま手に入れたレアカードがなければ負けてたぞ」

 

「ほんと?」

 

「あぁ、ミライはすごい才能を秘めてると思う」

 

 未来を慰めている時、視界の端に長い銀髪の女性が目に映り、カードショップから出ようとしていた。

 

『ライヒッ!まさかお前…』

 

 あぁ、そのまさかだよ。ドラゴが気にしてた人だろ?

 

『やめろ!あの女に関わるな!』

 

 ミライたちに少し席を外すことを言って、俺はドラゴの静止を振り払い、外に出るとあまり離れていないところでその女性は歩いていた。

 

 あ、どうしよう…ドラゴが怖がっていた人だけど、俺からは何も関わりがない…ん?ハンカチみたいなもの落としてる?

 

「あの、そこの女の人!何か落としましたよ!」

 

「…何かしら?」

 

 振り返った彼女は長い銀髪がサラリと流れる。高校生ではなさそうで1〜2歳の差は有りそう。大学生かな、大人の雰囲気と幼い顔立ちが同居している。あとモデルでもやってそうなほどスタイルがいい…いや。あまり見ちゃうと失礼だな。

 

「多分ハンカチだと思います」

 

「ありがとう___お礼…と言えばいいかしら、貴方、さっきカードショップに居た人よね、じゃあこのカードをあげるわ」

 

 ハンカチを拾っただけでお礼をもらうことは気が引けたけど、相手からの行為を無碍にするのも悪いと思い、とりあえず彼女から差し出されたカードを受け取る…えぇ?

 

「伝説の竜騎士マキシマイズ・ロード…。伝説のカード…実在しているなんて…あの、流石に受け取れま___あれ?」

 

 目の前の女性は何処かに消えていた。まるで夢を見ていたかのように…でも手にしている伝説のカードと、メモらしきものも一緒に渡されていたので、夢ではないと証明されていた。

 

 メモの内容はというと『そのカードは喜んでくれたかしら?でも今の貴方ではそのカードを使いこなすどころか、カードに認められていない貴方ではデッキに入れてもきっと答えてくれないと思うわ。そのカードを使いこなせるようになった時、また会いましょう』

 

「何者なんだ…」

 

「ライヒ…やめろ、これ以上あの女とは関わるな…」

 

 ドラゴが肩に乗り、並々ならない恐怖で身が硬直している。

 

「あの女性に何があるんだ?」

 

「人間にはわからぬと思うが、あの女から発せられているのは尋常ではない禍々しいオーラだ…。アレは…人がどうにかできるシロモノではない」

 

「普通に接してくれたように感じたぞ?」

 

「だから問題なのだ…人には制御できないシロモノが、あの女は制御している…だから危険なのだ」

 

 そんなに危ないものなのか…俺には普通の綺麗な女性に見えたけど…まぁでも次に会う時はとりあえず名前を聞いて…カードショップに居たならLLが出来る人だと思うしウォーズでもすれば、何か答えが見つかるかもしれない。

 それまでにこのカードを使いこなせるようにデッキを調整するか。

 

 

 

 

 




 お疲れ様でした。
 この作品の主人公の出番がなかなか無い…まぁ、シナリオ的にラスボス想定だから出られないって運命なのかも…。
 しかしやっぱりちょっとこのラスボス系主人公怪しいよ…。
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