魔王先生   作:zaq2

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とりあえず、こっちにだけ。


その2

「ここは……」

 

 意識が戻って最初に認識したのは、自分は薄暗い場所にいる事だった。

 

 そこから周りを照らしている明かりが見えたが、その色は赤ではなく青い炎が揺らめいており、その明りに照らされている床の上には、先程まで一緒にいたパーティーメンバーが横たわっていた。

 

 

「みんな無事か?」

 

 

 慌ててパーティーメンバーの状況を確認する、

 

 前衛のジード

 回復のアーポゥ

 後衛のマルーゲ

 

 ひとりひとり声をかけて確認をしていくと、ようやく意識を取り戻していった。

 

 

「うぅ……酷い状態だ」

「……」

「いまだに目が回ってます……"癒し"を行います」

「助かる。で、ここはどこなんだ?バーガン」

「それがわからない。気が付いた時には既にココ「気が付いたかな?」」

 

 

 最後まで言葉を発する前に明りが届かない奥の方から声がかかった。

 

 

 

「ようやくお目覚めといったところか?気分がすぐれないようだが大丈夫かな?」

 

 

 

 声のする方をみれば、先程までは暗くてよく見えなかったはずの場所が、パチンという指鳴りの音と共に急激に明るくなっては、この空間全体を光で照らし出していた。

 

 その照らし出された場所は、まるで玉座の間とでもいう場所であり、その玉座に座っている魔王そのものがこちらを見下す様に鎮座していた。

 

 

 

「魔王!」

 

 

 ようやく状況の認識が出来始め、各々が手持ちの武器を構えて対峙する。

 

 

 

「貴様、いったい何をした!」

「何を?場所を移すと言ったはずだが、聞き取れなかったのかい?それとも、転送酔いで忘れてしまったかな?」

「……転送?そんな高度な魔法が個人で使えるはずが……?」

「至極単純な内容だからな、そんなに難しい訳でもないんだがねえ」

 

 

 魔法に詳しいマルーゲが信じられないという。

 確かに、そんな大魔法を個人で使うという事は聞いたことすらない。

 魔法陣を使って、大きな装置も併用してようやく使えるという代物である。

 ならば、そういうのを隠していたという事である。

 

 

「逆に考えようみんな、周辺の被害を考えなくて済むと。全力をだしても問題ないと」

「たしかにそうだなっと!」

「準備します……」

「……こっちも」

 

 

 それだけで、何を意図するかを察してくれるメンバーたち

 いまの一やりで、戦闘準備を進めてくれる。

 相手に気取られ無いように、静かに、しかし確実に

 

 

「ああ、この手で成敗してくれる!!」

「成敗……ねぇ」

 

 

 注意をこちらにそらすため、ワザと大きな声を上げる。

 だが、魔王がっとった行動は、座っていた玉座から立ち上がり、一歩、また一歩とこちらへと降りてきていた。

 

 

「今のお前たちに出来るのかね?」

 

 

 まるで、こちらの事をとるに足らない存在とでも見下してくる。

 目くばせによって、各人は戦闘態勢へと移行する。

 

 とる戦法は既に決まっている。

 

 

「はぁ!!」

 

 

 ジードの戦斧が大きく振り下ろされる。

 叩ききるというよりも、叩きつぶすという恰好になっている武器であり、たいていの魔物はこの一撃で仕留める事は可能だが……

 

 

 直撃、といった寸でところで、その戦斧が空中で止まっていた。

 

 

「なにぃ?!」

 

 

 戦斧を引き戻し、再び苛烈な一撃を繰り出すが、そのことごとくが、ただ立っているだけの魔王の近くで……いや、いつの間にか手に持っていた物によって阻まれているかのようでもあった。

 

 

「ふむ、威力は十分だが、動きは稚拙だぞ?」

「ぬかせ!」

 

 

 叫ぶ声と共に戦斧の連打が魔王に降りかかる。

 

 アーポゥとマルーゲの強化により、筋力も俊敏さも底上げされたジードの攻撃は、何重にも振り下ろしがなされている風にさえ見える。

 

 

(そうして、ジードに集中していればいい!)

 

 

 その間に自分は魔王の背後に回っては、その背に剣を突き立てようとするも、こちらもどこからか現れた盾らしきもので遮られてしまう。

 

 

「ふむ、意識を一点に意識させその真逆から本命を入れる。悪くはないが相手によっては意味をなさないぞ?」

「ジード!!」

「おうさ!」

 

 

 二人が離れた瞬間、特大ともいえる火炎球が魔王へと襲い掛かった。

 この時の為に最上級すらも凌駕する威力となる特級の魔法である。

 この炎は、どんな相手でも燃え尽きるまで燃え続けるほどに高い威力を持つ。

 

 

「本命はこいつだ!」

「くらっときな!」

 

 

 マルーゲの特級クラスの術火力は、全てを燃やし溶かす威力を持つ。

 この様な狭い場所だと、アーポゥの防御魔法がなければ、こちらも被害が出るほどである。

 

 

「へっ、やったようだぜ。噂ほどでもねぇな」

「ジード、油断はするな。相手は魔王だぞ?」

「へいへい、けど直撃したのに無事なわけねぇだろうさ」

 

 

 そう言いながらも戦斧を構えなおすジード。

 自分も盾と剣を構えては、直撃した場所を警戒していた。が、

 

 

「ウソ……直撃したはず……」

 

 

 特級魔法を放ったマルーゲが最初に言葉を漏らした。

 なぜ漏らしたのか、それは目の前にいる魔王が"何ら変わらぬ姿"で存在していたからだ。

 

 燃え尽きるまで燃える炎ともいわれる特級魔法が直撃したにもかかわらずに、だ。

 

 

 

「ふむ、なるほど。なかなかな()()ではあったが()()すぎるな」

 

 

 

 そう言葉をこぼした魔王は、片手で振り払う動作と共に残り火を消し去っていた。

 

 

 

「高火力を撃ち込むというのは、なかなかに良いとは思うが……」

 

 

 こちらを射殺すかの視線を向けては

 

 

『"魔法"を一切受け付けない相手には意味をなさないぞ?』

 

 

 

 その巨大な圧を、その肌で大きく感じる程であった。

 

 

 

「これほどとは……」

「ウソ……特級が効かない、そんな存在なんて……いない……」

「いない?それはまだ出会っていなかっただけだろうな。試しに色々撃ってみるかい?どれも有効とはならんだろうが……」

「馬鹿に……しないで!!」

「マルーゲ!相手の挑発に乗るな!!」

 

 

 こちらの忠告を無視するように、風雪の嵐、雷光の雨など、あらゆる特級魔法が魔王へと迫り狂う。

 だが、そのどれもが魔王に届くことは一切なく、その手前で「何事もなかった」というとでもいう感じ阻まれては消え去っていた。

 

 

「とまぁ、そういう訳なのだが……」

「ウソ……ウソ……そんなはずは……」

「そろそろ無駄な事はやめたほうがよいのでは?魔力枯渇に陥るぞ?」

 

 

 再びいくつもの上級魔法や特級魔法が魔王へと飛んでいく。

 魔王が言う魔力枯渇という症状は一般人にはあるだろうが、マルーゲの魔法は"少し特殊"なために問題はい。

 

 だが、魔法も有効にならない、もちろん、物理攻撃も同様にだ。

 このままでは何も変わらない、ならばと切り札を早々に切るべきである。

 ちょうど、マルーゲが相手をしている隙に……

 

 

「アーポゥ、"封印"を」

「は、はいっ」

 

 

 未だに盾の収納部分から抜かれていない剣。

 この盾に収納されている剣は下賜された神聖武具の一つ。

 

 "魔"の存在に対しての特効能力を持つが、その威力を発動させるためには、使用者の魔力に法力、そして体力をも消耗する。

 ゆえに使える時間は長くはない、必殺の一撃としてふるうしかない。

 

 

「ジード、援護たのめるか」

「言われなくても……なっ!!」

 

 封印の鎖がとかれ、いつでも使用できる状態になっては、先に駆け出すジードに隠れるよう、その剣もギリギリまで気づかれないように盾に収めたまま魔王へと肉薄する。

 マルーゲはこちらの動きに気づいたのか、状況をしっかりと認識しては、相手の視界をさえぎる吹雪の嵐など、目くらましにもなる特級魔法をまぜてはいた。

 

 

「魔王さんよ!両手が、お留守だぜ!!」

 

 

 ジードの戦斧が魔王の獲物を抑える。

 今度は叩きつけるのではなく、相手の動きを"止める"ための絡ませる動作。

 

 

「やっちまえ!!」

「ふっん!!」

 

 そして、その横からすぐさまに封印を解いた神聖剣を抜き去り……

 

 強大な力が剣に吸われる間隔に陥るが、存在しなかった柄の先から緑色の光の刃が形成されて刃となって、魔王に突き上げ形で逆袈裟斬りが入る。

 

 

 それは、魔王の体に一筋の傷をつけるには十分であった。

 

 

「ほぅ、魔剣の類か」

「魔剣?間違えるな!これは神聖剣「ツァーリ・フシュー」貴様を倒す剣だ。"魔"を滅するための剣だ!」

「なんだって?"魔"を……おぉぉぉ」

 

 

 切り付けられた箇所から、魔王の体に亀裂が入っていく。

 

 

 そう、この剣は切り付けた魔なる存在を内側から崩壊させる剣。

 相手が"魔"の存在であればあるほど威力は絶大であり、崩壊を止める術を持ちえない。

 

 

「な、なにが……おこって……」

 

 

 だが、この剣を使えば、こちらの体力に魔力がほとんど持っていかれ、こちらも身動きがとれなくなるため、ジードに抱えられるようにその場から離れては状況を確認する。

 

 その崩壊は、魔王の全身へと広がっていっていた。

 見える範囲でも両手に、脚に、顔に、角に、その全てにその光のヒビが入り……

 

 

 

 辺り一面に光が充満する。

 

 

 

 まぶしさの余りに、腕で視界を守ったが、いつもと違う事に違和感を覚える。

 だが、相手は"魔"の存在、一撃は入れた、確実に仕留める事が出来……

 

 

 

「ふぅ……長年困っていた肩コリがほぐれた感じかの?」

 

 

 

 消滅しているはずの存在の場所がいた、その声の方に視線をみければ……

 

 

「なっ」

「そんなバカな」

「ウソよ……ウソよ……」

「……!?」

 

 

 その場に現れたのは、純白の肌と黄金の髪をし、その腰からは白い翼を生やし、その背には白い後光を携えている存在がその魔王がいた場所に現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その姿は、まるで絵本の物語にも出てきていた「創世の女神」とでもいう姿であった。

 

 

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