ガトランティスVSゼントラーディ 作:増えることに飽きたプラナリア
レッドアースが出航してから2ヶ月が経過し、共住する人々から提供されたさまざまな意見、批判、不満とレッドアースの運用データと発生した問題点、課題点などの収集が進められる中、航海そのものは平和なものであった
そんなレッドアースに比べ、それを護衛する艦隊もまた、その力を振るうことはなく、各種運用テストが継続して行われ、投入された新兵器、艦船のテスト自体はSMCを除いて完了していた
そして遂にSMC…オーバーロードのトランスフォーメーションと砲撃テストが行われることとなった
艦隊の最前衛にまで前進したオーバーロードは、ゆっくりとその形態を砲撃形態と名付けられた人型形態へと移行させ始めていた
本体の主推進機関が搭載された脚部が艦体中央…人型形態で言う胴体の下部に移動を開始し、それに合わせて胴体の前面が開いて格納されていたブリッジが顔を覗かせる。そのブリッジ形状はマクロスのものを踏襲したデザインで、違いとしては頭部の両側に巨大なパラボラアンテナが斜めに搭載されていることだろう
そのまま両腕が変形前は横に伸ばしていたそれを下に下ろし、砲身そのものは水平を保つ形で位置を調整することでトランスフォーメーションは完了する
[これより旗艦の砲撃テストを行う。目標、前方の大型小惑星を含んだ小惑星帯]
プレナータの命令に従い、砲撃準備を告げる警報が全艦に通達される中、ゆっくりと主砲…正式名称を「試製戦術級荷電粒子超重砲 スーパーマクロスキャノン」と名付けられた新兵器が動き出す
その形状は先端がドーム型となった六角柱の巨大な戦艦をそのまま取り付けたような特異な外見をしており、大部分が上下に分かれるが、ちょうど中央付近の外装部のみが残り、一定間隔でそれを支えるために上下に分かれた砲身の外装部の一部がズレることで脱落することなくつながっている
【スーパーマクロスキャノン各砲身展開完了、全反応炉の全力運転を開始】
ブリッジクルーの1人が報告を上げたのを皮切りに次々と報告が上がっていく
[エネルギー充填率15%、各砲身の負荷係数の上昇率は許容範囲内]
[目標小惑星帯を射程内に収めました]
【各砲塔の射撃連動システムに異常なし】
[エネルギー充填率55%、各砲身の負荷係数の上昇率は以前許容範囲内]
開いた砲身内で膨大な量のスパークが迸る、それはエネルギーが充填されていくにつれてさらに激しさを増していく
【射撃準備完了しました】
最後の報告が上がり、それを受けて艦隊司令官たるプレナータは命令を下した
[撃て]
刹那、砲身内から漏れ出すほどに激しく発せられていたスパークが消え、次の瞬間には赤ともオレンジともつかない悍ましい色の光の奔流が放たれ、発射時の衝撃波は予め防御体制をとっていた護衛艦隊を大波に翻弄される木の葉のように揺らす
そして、放たれた4つの光は進路上のあらゆるものを消滅させながら、目標として定められた月の80%ほどの大きさの小惑星に直撃する
直撃を受けた目標は着弾点から瞬く間に亀裂を生じさせていく。そしてあっという間に小惑星が崩壊を始める中、放たれたエネルギーは崩壊を始めた直後の小惑星を、小惑星帯ごと吹き飛ばすほどの巨大な火球に変貌させた
その圧倒的な光景を前に誰もが初めは圧倒されたが、その力が自分たちを守るものであることを思い出すにつれ、熱狂的なまでの賛辞へと変貌を遂げていった
[……これが、SMCの力か…]
しかしそのような状況下にあって尚プレナータは自身が預かることとなった力の強大さに正しく畏怖の感情を覚えながら、それでもカイザやデメテーラと結んだあの言葉を思い出し、正しくレッドアースを守る為にこの力を振るおうとより一層の覚悟を決める中、火球は見る間にそのサイズを縮小させ、最終的には運良く破壊を免れたごくわずかな小惑星を残して消え去る
こうしてオーバーロードの砲撃テストは成功したものの、数多くの問題点が浮き彫りとなることとなった。例としては発射時の反動が大きく、艦体各部の構造に歪みを生み出す結果となったことをはじめ、大なり小なり合わせ1000近い問題点が報告された
[やはり実戦を前にテストを行ったのは必要なことだったな]
と、自室で報告を聞き終えたプレナータはそう言ってため息を吐きだす。現状オーバーロードはテストの影響で変形すると艦体各部…特に両腕の関節部が破断してしまう危険性がある為に砲撃形態のままの航行を余儀なくされている。そのような体たらくにこれが実戦でなくて良かったと安堵のため息をプレナータは吐いたのだ
【私も同意見です。現状ではまだまだ未熟な兵器と言わざるおえません】
と、報告を上げた部下もプレナータに肯定を示す。それを受けて彼女は部下に対して
[オーバーロードの現状には後で詳細に目を通そう。下がっていいぞ]
と退室を促し、それを受けて部下が退室する。それを見送った後にプレナータはオーバーロードの現状に関する報告書を読もうとしたその時だった。彼女の自室の扉が開き、尋常ではない様子で部下が入室してくる
[プレナータ司令官! 至急ご報告したいことが!]
と、切羽詰まった様子でそう言ってくる部下に、まずは落ち着け、と言葉をかけつつ報告書から手を離す
[はっ! それが哨戒機からの報告で、巧妙に隠されていたものの、艦隊旗艦より10時の方向、約20万kmの地点でフォールド特有の空間振動を検知しました!]
と、部下はプレナータに報告をあげる部下に対して彼女は眉間に皺を寄せながら
[それは確かなのか?]
と聞き返す。それに部下は
[間違いありません。サイズからして小型艦であると思われますが…詳細については現在調査中です]
と答える部下に対し、プレナータは素早く命令を下した
[哨戒機の数を増やせ、船団の安全確保が最優先だ]
[はっ!]
[それと前衛艦隊は戦闘配置に移行させろ、ほかは警戒体制で待機。オーバーロードも後方に配置転換させろ]
[はっ!]
命令を受けた部下は一礼してから入ってきた時に負けない慌ただしさで退室し、残されたプレナータは
[まずはオーバーロードの試射は見られたと考えて動くべきだろうな。敵と仮定してフォールドの原因がどのような目的を帯びてここにいたのか。それが分からなければ対応のしようがない]
[まずは正体を考えるか……ゼントラーディかメルトランディの斥候…いやだとしたら威力偵察を行わないわけがない……そうなると敵は全く未知の勢力ということになるのか?
[徒らに攻撃して事態を悪化させることなく、冷静にこちらの動きを把握し、即座に撤退する判断力を持った未知の勢力が、我々の進路上……あるいはその周辺に存在することになるわけか]
と、冷静に報告に挙げられた未確認の存在に対して考察を深めながら、その内容を書き出しつつ、ブリッジとの間に通信回線を開く
【これは司令官閣下。報告は受けたようですな】
と、慌ただしく動くブリッジで指揮を取っていたドミトスが対応してくれた
[一度群れに報告を入れるべきだと考えるが、お前はどう思う?]
【妥当な判断ですな】
[もう少ししたら私もブリッジにあがる。すまないがもう少しの間指揮を頼む]
【お待ちしております】
[ではな]
と、そう言ってプレナータは通信を切ると、一呼吸つけてはやる気持ちを抑えてから立ち上がり、自室を出てブリッジへと向かうのだった