ガトランティスVSゼントラーディ 作:増えることに飽きたプラナリア
恐らくだが、最初に記憶が蘇って混乱の極みに突き落とされたあの時、私のメンタリティは私自身が気付かない内にどうしようもないほどに変質していたのだろう
その証拠に、私はこの記憶データを見て最初に考えたのは、この文化を如何にして自己の艦隊に共有するか、と言うゼントラーディの司令中枢ユニットにあるまじき思考だったからだ。普通ならばこれでメルトランディを殲滅できる! といった方向に思考に行くのが当然だからだ
しかし私はそうは思えなかった。これは恐らく前世の記憶が蘇ったあの時に、前世の日本人、と言うマイクローンとしての自分の人格などのデータが、今の私と混ざり合ってしまったが故に起きた変化なのだろう。少なくともこの時点におけるわたしにとって、この出来事は大きな転機となった
悩んだ末に、彼は段階を踏んで少しずつ艦隊へ文化を浸透させる方法を選択する。その第一段階として彼は副官である巨人型頭脳と各分艦隊の司令官、そして各自艦隊の司令官付き参謀…要は艦隊司令部参謀長、のようなポジションにある副官を招集することにした
要塞の中枢とも言うべき私を収容するためだけに設けられた広間に1000人余りの分艦隊司令官たる指揮官型と副官たる参謀型が集まり、体を動かすことのできない巨人型頭脳たちもスクリーンを介して集合していた
基本的に各艦隊司令官にはスクリーン越しに副官が対応することがほとんどのため、こうして艦隊司令官たる私自身が直接招集させることなど稀なことであり、それ故に彼らも何かも話題があったのか? と身構えていた
そんな彼らの耳に、記憶データから抽出した彼の一番なお気に入りの歌が流される
【なっ、なんだ! この音はッ!?】
突如として流れ始めた歌にその場にいたものたちは大混乱に陥る。が、すぐにその困惑の反応は未知に対する興奮と期待へと変わる
【な、なんと心地の良い音なのだ……言葉がわからないのに…我々の意識に溶け込んでいく…】
皆が歌に呑まれていく。その光景に私は改めて文化の存在しない戦闘機械たるゼントラーディにとって、これが激毒であることを再確認する
【し、司令官閣下……こ、この音はいったい!?】
副官の1人が戦慄を覚えながら私に尋ねてくる。それに私は不敵に笑うと
【これは音ではない、歌だ】
【う、歌ですか…? それがこの音の正体……】
【は、初めて聞くはずなのに…ずっと昔に聞いたことがあるような気さえしてきます……】
と心の底から不思議だと言わんばかりの表情でそういってきた副官に、私は記憶データで閲覧したとある作品の一場面を思い出す
[不思議だ、この歌、ずっと昔に聞いたような気がする…何故だ?]
そう、ゴルグ・ボドルザーが指揮するとある基幹艦隊に所属する分艦隊の司令官が述べたこの言葉……それは劇場版超時空要塞マクロスの名シーンの一つである
そう、この世界は創作の世界なのだ。そして、このまま変化や進化を得ることなくひたすらに戦いだけを求めれば、待っている未来は破滅しか存在しない
何故か? プロトカルチャー時代の遺物を頑張って使い潰してるだけの自分達でバジュラに勝てる未来が見えないからである
その未来を回避するためにも、ここで今歌を聴かせた彼らを、確実に沼に沈めて味方にしなければならないのだ
【よく聞けお前たちよ! これがプロトカルチャーの遺産、文化だ!!】
覚悟を決め、高らかに宣言する。その声に皆が口々に文化、と言う言葉を鸚鵡返しに口ずさむ
【我らは戦いのために生まれ、戦い続けるために生きる存在である! しかし、私は文化に触れたことで、戦い以外の生きる目的を、存在意義を獲得した!!】
演説を聞く者たちは皆私を見上げ、その話に聞き入っている。ゼントラーディとしてあり得ない発言であるにもかかわらず、である。それすなわち彼らの中にも、文化に触れたことで戦い以外の道を知ったからだろう
【ここに私、カイザ・ボドルザーは宣言する! 我が第1001基幹艦隊は戦いではなく、文化のために生きる一つの群れとして再誕することを! 今日この時より、我らの生きる意味は文化と共にあることである!!】
演説を締めくくる最後の言葉を、これまでで最も力強い声で宣言する。しかし誰も反応を返さず、広間の中はただ歌声が響くだけとなった
長い沈黙。その中で私は彼らの反応を辛抱強く待った
【お、おぉ…】
そして1人の指揮官型がその身を震わせながら声を発する。するとそれが引き金となった
【おぉ、おおおおおおおお!】
次々と雄叫びが上がっていく…瞬く間に広間は彼らの雄たけびによって支配される
「良かった…」
その光景を見ながら、とりあえず粛清大会しなくて良くなったこと。そして最初にして恐らくは最大と言っても過言ではない難所を乗り越えたことに、内心で安堵するのだった
序章もうちょっと伸ばしてもいいですか?
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いいよ!
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だめに決まってんだろ!