ガトランティスVSゼントラーディ   作:増えることに飽きたプラナリア

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群れとしての形

前話から少しの時間が流れ、その間に大きな変化がいくつも起きた

 

まずはカルチャー機関の手によってゼントラーディ製の兵器の整備が可能になった。これにより工場が失われてもう生産が出来なくなってしまったグラージの再利用が可能となるだけではなく、独自の生産ライン構築による希少な兵器、艦船の再生産が現実味を帯び始めていた

 

更に船団創設計画がデメテーラ側に共有され、2隻の旗艦級要塞を合流させた超巨大船団の創設計画が正式にスタートし、カルチャー機関において最初の居住用の超大型船…通称「テラフロート級都市型居住船」の設計が終了した

 

この艦艇はゼントランがマイクローン化せずに居住することを前提に設計されていたものであるため、その全長は約500㎞と非常に長大である。船の形状としては船首は四角柱、船体自体は六角形、船尾にはメインノズルを囲うようにして一回り小さいサブノズルがかこう円柱型の機関部を備えた形状をしている

 

また船体の大部分は外の宇宙空間を見れるように半透明の素材を利用した天幕型の内壁と、船首に搭載された開閉式の外壁(上下に搭載され、これらが合わさることで完全密閉が出来る)を持っている

 

このテラフロート級はそのまま設計データをデメテーラ艦隊のメルトランたちが住む居住船に使えるようコピーされたものの仕様変更が行われている最中であるが、ひとまず建造ノウハウの獲得や各種技術蓄積を目的に、軌道上にテラフロート級の建造用ドックの建設がスタートしている

 

このように着々と私たちの群れがその形を成そうとしている最中、レッドアースの地表に存在する鉱物資源採掘基地の中で最大規模を誇る第11番基地に、新たに大きな建物が建設されていた

 

建設されているのは巨大なドーム型の式場であり、マイクローンが100万人収容できると言う規格外のサイズで作られていた。使用目的は私とデメテーラの結婚式である

 

ハッキリ言うが私はこんな大きな規模で結婚式を行うつもりはなかった。いや結婚式そのものをやらないとかではなく、こんな専用の巨大式場を用意して両艦隊の隅々にまで映像で見せる、と言うことを目的にするつもりは欠片も無かった

 

そもそも本来の予定であれば両艦隊の中で比較的交流がちゃんとできているものの中から希望者にしてもらってそこから少しずつ交流を促進させていくとかそういう方向で行こうとしていたのになぜ私がデメテーラと結婚することになっているのかいや結婚そのものはいやと言う訳ではないのだ彼女はまぁそりゃ美しいしとても強い女性だそれは精神的にも肉体的にも本人の気質的にも疑いようは無くてだから結婚するのは嬉しいのだが私のような男と彼女が果たして釣り合うのだろうかと考えてしまうと気が引けてしまうと言うかなんというか初めて感じるこの感情の正体が分からなくてとても混乱していると言うか

 

【司令官閣下。現実から目を背けている時間はもうございませんぞ】

と、新郎の控室で思考のるつぼに浸っていた私に、副官がそう声をかけて来る。それにはっと我に返った私は、副官に礼を言った後、深呼吸を一つしながら立ち上がり、正面の鏡で自分の体をチェックする

 

もとより司令中枢ユニットであるためマイクローン化する必要などない私にその機能は無いのだが、今回の結婚式のためにカルチャー機関の手によって外部操作用の端末(マイクローン)が用意されており、私はそれに意識を写すことでこの端末を動かしていた

 

端末は何と言うか…シーツに身を包んだ頼りない細身の少年と言った感じのマイクローンだ、肌はゼントラン特有の緑であり、髪型は焦げ茶色のオールバック&ショートポニーテール。顔立ちはいわゆる童顔。マジで子供と言った印象だ。まぁ明るい寄りの表情だとは思うが…これは設定ミスってはいないだろうか?

 

等と考えていると、新婦側…即ちデメテーラの準備が終わったという連絡が入り、私は彼女を迎えに控室を出て行く

 

[…ど、どうだ? 似合っているだろうか……]

控室を出ると正面の扉からちょうどデメテーラが出て来ていた

 

深淵の宇宙にあって尚輝きを失わない恒星のような猛々しい赤い髪…彼女の思慮深さを思わせる深海のように深い青の瞳…完璧なバランスの顔立ち…すらりと伸びた手足から覗かせる小麦色の健康的な肌…慎ましやかでしかし確かにそこにあるのだとわかる美しいプロポーション。それが純白のヴェールに包まれることで儚さと幻想的な美しさを醸し出し。彼女と言う絶世の美を更なる高みへと引き上げていた

 

[か、感想くらい…言ったらどうだ?]

と、頬を赤らめ、視線を私から逸らしたデメテーラの言葉に、彼女と言う存在に飲み込まれていた私は

 

【綺麗だ…】

と、気付けば口から言葉が漏れ出していた。それを聞いたデメテーラは気恥ずかし気に

 

[そ、そうか?]

と尋ねて来る。それに私は壊れた人形のようにぎこちない動きで頷くことしかできず、それを見たデメテーラは

 

[…そうか、良かった]

と、嬉しそうに微笑む彼女の笑顔が発揮した破壊力に私のハートが粉砕されている中

 

[あれでは先が思いやられますね]

 

【同感だ】

と、そんな二人の副官たちはそれぞれため息を吐き出すのだった


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結婚式自体は何事も起こることはなく、平穏無事に終わることができた

 

会場には多くのメルトランとゼントランが出席しており、皆がスクリーン越しか、私達を直接見て

 

【おぉ……デカルチャー】

 

[デメテーラ様、綺麗……]

 

と、何やら色々感想やらを話し合っていた。が!そんな様子などとても見ている余裕のない私に、デメテーラが苦笑交じりに声をかけた

 

[そう固くなるなカイザ、堂々としていればいいのだ、堂々と]

 

【お前のような美しい存在と並び立って、緊張しないゼントランはいない……無茶を言わないでくれ】

そんなデメテーラの言葉に、微かに視線だけをちらちらと向けながら、だいぶ固くなった声で答える私

 

[そ、そうか……]

と、私の言葉にデメテーラもまた、頬をうっすらと紅潮させる

 

そのようなやりとりを経て、とうとう目的の場所へ到着した私とデメテーラは、そこで神父の役を担当する私の副官の1人からこう尋ねられる

 

【新郎カイザ様、あなたはここにいるデメテーラ様を病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?】

 

【我が名と同胞達にかけて誓おう】

力強く宣言する。続けて副官はデメテーラに対してこう尋ねる

 

【新婦デメテーラ、あなたはここにいるカイザ様を病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?】

 

[我が名と同胞達にかけて、誓おう]

デメテーラもまた力強く宣言する。そしてそれを見届けた副官はゆっくりと頷き、続いてデメテーラの副官の1人が恭しく私たちのはめる指輪を持ってくる

 

【では指輪の交換を】

そう促された私たちは、それぞれに相手の指輪を手に取り、それを互いの指にはめる

 

その時私は、デメテーラの表情が一瞬だけとても嬉しそうに綻んだ気がしたが、それを確かめるより早く、副官が

 

【それでは、新郎は新婦に誓いのキスを!】

と宣言し、私は意を決してデメテーラの肩を優しく抱き、キスをしようとする

 

[………どうした?]

と、デメテーラが少しだけ不思議そうに首を傾げて尋ねてくる。その原因は私が一向に動かない……いや、動けないままでいたからだ

 

私はそんな彼女の問いに答えることができなかった。理由はなぜかはわからないが「このまま彼女を手にしても良いのか」という漠然とした不安に襲われてしまって、動くことができなかったのだ

 

[ふふ…馬鹿なゼントランだな、お前は]

と、そんな私の様子に何かを察したのか、デメテーラはそう言って笑ったかと思うと、私の腰に手を回して自身の方に抱き寄せ、それに驚きたじろいだ私の唇を強引に奪った

 

【】

あまりの事態にフリーズする私と、満足そうに唇を奪うデメテーラ。一連の流れを見ていた副官は思わずため息を吐き出してしまっていたがそんなものを見る余裕など当時の私にはなかった

 

あまりにも長い時が流れたのかと錯覚してしまうような‥実際には数秒の時間が流れ、彼女が唇を離した

 

【あ…】

フリーズしたまま私の口から反射的に言葉が漏れる。それに悪戯っぽく笑ったデメテーラの笑顔に、私はただ呑みこまれる事を自覚しながら、しかし何もすることはしなかった。何故なら

 

彼女の笑顔が、何よりも美しいと思えたから

 

 

【今この瞬間、我らの間に新たな夫婦が誕生した!!】

と、副官が高らかに宣言を行う。そうして次の瞬間に起こったのは会場を震わせるほどの喝采だった

 

万雷の拍手と共に皆が口々に私たちを称え、叫ぶ。その熱狂の渦の中、私はその光景を嬉しそうに眺めるデメテーラになんとか動かした頭でこう言った

 

【デメテーラよ、改めていうが私は不器用な存在だ…何かと苦労をかけるだろうが……どうか私を……】

と、そこまで行ったところでデメテーラが私の名を呼ぶことで話を遮る

 

[くどいぞ、我が夫よ]

と、そう言って集まったもの達から私へと向き直った彼女は、微笑みを携えてこう言った

 

[私達はもう夫婦なのだ。どんな苦楽の中にあっても、共に笑い合おう]

その言葉に。私は自分でも気づかないうちに自身の拳を硬く握り締める意を決して自分から彼女を抱き寄せる

 

その行為に彼女は驚くが、すぐに私の意図を察したのか仕方がない、と言いたげにため息を吐いて私に体を委ねる

 

そんな彼女に、私は自分から口づけをした。彼女のその言葉に、この行動が答えだと伝える為に

 

 

 

 

 

デメテーラはただ、それを受け入れた

序章もうちょっと伸ばしてもいいですか?

  • いいよ!
  • だめに決まってんだろ!
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