ガトランティスVSゼントラーディ 作:増えることに飽きたプラナリア
私たちが夫婦となってから時間が流れた。決して短くはない時間だ
その間にまずテラフロート級の建造ドックが完成し、一番船「レッドアース」の建造が始まり、また各種産業に特化した工業船や食糧生産に特化した食糧船など、船団の維持に必要な各種船舶の設計が完了し、それらを生み出すための建造ドックの建設が始まっていた
これと並行してゼントラーディ初となる男女混合の音楽ユニットが誕生して大きな人気を獲得したことを皮切りにして、様々な文化を専門とする者たちが現れ始める
それと同時に、両艦隊の男女の間で結婚…とはいかなくとも恋人や友人と言った深い関係性を持つ者たちが急増し、両艦隊は加速度的にその合一化を速めていた他、マイクローン化して生活したいと要望する者がゼントラン、メルトラン双方から表れており、彼ら彼女らのためにマイクローンサイズで生活が可能な居住船の設計が始まっていた
このように次々と朗報が舞い込む中、軍事面において画期的な発明がカルチャー機関からもたらされた。それが何かと言うと、原作マクロスにおいて重要技術の一つであったバリア技術の確立である
このバリア技術の確立により、個艦防衛能力の飛躍的な向上が実現することとなったほか、従来の消耗戦を前提とした艦隊決戦主義から、各艦の生存力を最重視した艦隊決戦主義へと統合自衛軍が方針を転換したため、バリア技術による優れた防御性能を前提として、更なる砲撃戦能力を備えた新型艦艇の設計が始まり、その第1号として文化の記憶データを元にしてマクロス級前衛戦闘空母の一番艦が建造された
このマクロス級は居住性などと言った機能をオミットした純粋な戦艦として設計されており、その全長は分艦隊の旗艦級戦艦と並ぶ約4㎞と長大であり、記憶データの艦形状を流用して設計されているため外観に変化はない。トランスフォーメーション、ピンポイントバリア、バリアと言った新技術は全て搭載されている
またマイクローン化したゼントラン、メルトラン用の新兵器として記憶データから可変戦闘機として「VF-1 バルキリー」や「VB-6 ケーニッヒモンスター」などの兵器が導入された。こちらはクァドラン・ローの主機として使用されるキメリコラ熱核コンバータを改良、発展させたものを主機として採用しており、この大出力によってVF-1の武装は搭載されるミサイル系統以外はすべてエネルギー兵器となっている
しかしこのVF-1に関してはまだ技術的に未熟な分野の兵器と言わざる負えず、その完成度は記憶データのそれよりは低く、早急に性能を向上させた次世代機の開発が熱望されている
また前述の新たな艦隊決戦主義に基づき、艦隊の長距離砲とゴルグ・ガンツ砲の中間にあたる新たな戦術級兵器として開発コード「SMC-1」の設計が開始されていた
この一連の流れを、私はデメテーラと共に報告書という形で見ていた。どういうことかというと結婚式の後、副官達から
【司令官閣下がおられずとも、回るように準備は整えておりますので、新婚夫婦はゆっくりとその時間を大切にしてください】
[右に同じく]
と言われたためである。正直いきなり話を持ち込まれた時は何言ってんだお前は状態だったのだが、デメテーラが
[そ、そうか…ま、まぁ! 部下達のせっかくの行為を無碍にしてしまうのはいけない事ではあるし、ここはお前達の好意に甘えようじゃないか! なぁ我が夫よ!?]
と、何故か声が大きくなっていたデメテーラの言葉もあり、私達はこうして仕事を休んで2人で過ごしていた。場所はレッドアースの式場に設けられていた一室、私達は共にマイクローンの端末を介してそこにいるのだ
現在はテーブルを挟んで座っているのだが、デメテーラは飲み物を口にしつつ小説家を目指して活動しているメルトランが書いた小説を読んでおり、私は私で最近趣味として始めた分艦隊旗艦のプラモデルを組み立てていた
………
………………沈黙が、私たちの間を支配していた
【何をすれば良いのだ? こう言う時。私は何をすれば良いのだ?】
女性など前世の時の記憶を含めても経験のない私にとって女性……それもデメテーラのようなとても美しく、気立ても良く、そしてなにより強く逞しい女性を喜ばすことのできる何かを自分は持ち合わせていない
[……]
先ほどから気づかれないよう彼女話のことを何度か見ているが、彼女は変わらず小説を読んでいて…その様子からは不満があるのか、それとも現状で満足しているのかを推し量ることはできなかった
【……何をしてあげれば、彼女は笑顔になってくれるのだろうか】
動いていた手が止まる。考えても……いや考えるたびにそれで彼女は喜ぶだろうか、と言う疑問が全てを破壊していく
己のあまりの情けなさに、見下ろしていた手に持つペンチを握る手に力をこめてしまう。その時だった
[なぁ我が夫よ、私を見てくれないか?]
と、デメテーラから声をかけられ、反射的に顔を上げた私の視界に彼女の手が迫っていた
【なにを…】
と、そう言葉を発しようとした私は、しかし額に感じた微かな痛みに思わず
【うわっ!?】
と、驚きに声をあげ、持っていたペンチを握ったまま痛みを感じた額を抑えた私に、彼女はため息混じりにこう言った
[お前はまたいらぬことを考え込んでいただろう?]
そう言われた私はたまらずうっ、と呻き
【そ…そんなに態度に出ていただろうか?】
と、指摘されたことに恥ずかしくなって右手で顔を隠しながら目線を逸らした私の言葉に、デメテーラはもう一度ため息を吐いてから
[気付かないのはよほど鈍いものだけだろうな…と、思えるくらいには分かりやすく色んな所から漏れ出ていたよ]
と、呆れた様に…だがどこか楽しそうに笑いながらそう言い切るデメテーラに対し、私は肩を落とし
【すまなかった…気分を害してしまっただろう?】
と、謝罪の言葉を述べる私に、デメテーラは飽きれたと言わんばかりの表情になった後、仕方ない、とつぶやきながら
[私が本当にそう思っていたのなら自分の口でお前に伝えている。私はそんなに陰湿な女ではないぞ]
と、肘を付けた左手の人差し指で私の事を指しながら話すデメテーラの言葉に、私はハッとした後
【……すまん】
と、もう一度謝罪する私に対して、デメテーラは
[お前は私が出会って来た男たちとは本当に性格が違うな…]
と、少しだけ困ったような声質でそう言った彼女に対して、私はその言葉に強い衝撃を受けると共に、胸に小さな痛みを覚えながら
【…異端だと言う、自覚はある】
と、自分でも驚いてしまう位、ぶっきらぼうな声でそう答えた私に対し、デメテーラは
[あはははっ、違う違う…私が言いたいのはそう言うことじゃないんだよ我が夫]
と、愉快そうに笑いながらそう言ったデメテーラはそのまま続けて
[私が出会った男たちは皆高圧的で…私たち女を屈服させようとしてきたものばかりだった…]
[だから初めてだったんだよ。私たちのことを思い、言葉を尽くしてくれた優しい男は]
と、そう言って横目でチラリと見ていた私にそう微笑みかけたデメテーラの横顔が、綺麗すぎて直視できなかった私は、自分でも自覚できてしまうくらいに顔を赤くしながら目を逸らしてしまう。そんな私の…子供のような態度がことさら愉快だと言わんばかりに笑ったデメテーラは
[ふふっ…だからさ、我が夫よ。私はお前とこうして同じ時を、同じ場所で刻むこの瞬間がたまらなく愛おしいんだ]
と、そう言って飲みかけの飲みものに口をつけるデメテーラに対し、私は……
【わ、私だって…お前のような素晴らしい女性と共にいられるこの時間が…たまらなく幸福だと……思ってる……】
と、最後の方は恥ずかしさからかしりすぼみになりながらもそう言い切る。それを受けて飲みものを手に持ったまま驚きに一瞬硬直した彼女は
[…うん、そうだな。……ありがとう……]
と、その手と飲みものを使って紅潮した顔を隠しながらそう答えたのだった
この日から、私たちは自然と決まった休みの日を設けることに決めた。これは戦闘機械となるべく、最低限の休息でパフォーマンスを回復できるため、自由時間と言う概念が存在しない我々の種族特性から自由に文化に使うことのできる時間を確保するための試験的な政策……と言う建前の元群れの全員にこれが適用された
まぁ…本当の理由は私が彼女ともっとこの時間を共有したいと言う理由が本音だったのだが、それに気づいているのかどうかはわからないが、彼女はこの提案を快諾してくれた
そしてその効果は私の予想に反して大きな良い影響を群れ全体にもたらすこととなった
まず休みの日が設けられたことでこれまで出来なかった両艦隊兵士が交流に没頭することが可能になり、それは両艦隊の中で異なる価値観、視点によって熟成された文化が交わり、更なる文化の形成が行われることとなった
またこれは後になって判明した事であるが、この休みの日が制定されるまでの期間、文化に没頭することの出来なかったことが兵士達にとって相当なストレスとなっていたことが判明し、このような事例と同様の自称が水面下で起こる状況を避けるため、文化の記憶データを活用した定期的な調査活動…具体的にはアンケートによる実態調査を行うことが決定した
このような形で、我々の群れは本質的な面での変容を更に進めていくこととなった
序章もうちょっと伸ばしてもいいですか?
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いいよ!
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だめに決まってんだろ!