残響と青春と楽団の協奏   作:イズモ様 カワ(・∀・)イイ!!

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楽団員全員出すまで書たいね

桶の桃ジュースさん      
評価ありがと茄子



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お気に入りありがとう茄子


サイコロマーァン

 

コンクリートの深層は、空気さえ動かない。

 

収容局ここは、あらゆる規律も理性も通じぬ者たちを幽閉するための施設だった。

しかし、その一番奥──隔絶されたひとつの拘束房だけは異質だった。

 

整えられた鉄格子。整備された冷却システム。無駄に思える防護と監視が、逆に「理性のある危険性」を物語っている。

 

その中央に、ひとりの男が座っていた。

 

ゼホン。かつて人の肉体と意識を改造し、“人形”として使役する禁忌の研究を行っていた者。

眼差しは淡く冷たい。口元は動かず、息も静か。まるで人間としての感情を、意図的に切り捨てたかのようだった。

 

そんな静謐を破るように、鉄靴の足音が近づいてくる。

 

「……また監視か。」

ゼホンが呟く。

 

いや、違った。

その足音には“リズム”があった。

 

「クックック……こんにちは、ゼホン様。お客様をお連れしました。」

 

現れたのは黒服。漆黒のスーツ、顔にはいつもの穏やかな微笑。

ゼホンは目だけを動かし、背後に続く人物を捉える。

 

「へえ。随分整った収容環境だ。まるで演奏会の前室みたいだな。」

 

軽やかな口調とは裏腹に、その姿は異様だった。

青みがかった礼服のような衣服。腰には巨大な、音符のような鎌。そして、何より──その眼。

笑っているのに、どこまでも冷たい。無垢でありながら、壊れている。

 

「お前は?」

 

ゼホンの声に感情はなかった。ただ、問いだけが落ちるように発された。

 

「アルガリア。俺のことを知ってる奴なんて、ほとんどいないけど」

 

「……無名か。」

 

「うん、でも気にしないで。どうせすぐにこのキヴォトス全体に響かせる名前になる。君が協力してくれれば、だけど。」

 

ゼホンは鼻で笑った。だが、声には出さなかった。

 

「協力? 俺が、か。」

 

「そう。俺は楽団を組んでる。今はまだ人数も少ないけど、ちゃんと“理念”がある。演奏もするし、革命もする。まあ、そういう集まりだ。」

 

ゼホンはゆっくりと視線を上げた。

 

「革命のつもりなら、方法が稚拙すぎるな。ここに来る前に、何か壊してきたわけでもないんだろう?」

 

「うん。でも、壊すだけが始まりじゃない。崩すためには、まず“内側”から変えないと。」

 

「その内側ってのは……俺か?」

 

「君の中にあるもの。君が失ったもの──いや、君が失いたくなかったもの。それが、俺の演奏には必要なんだ。」

 

アルガリアは壁にもたれ、腕を組んで微笑む。黒服はその背後で静かに観察していた。まるで舞台を見る客のように。

 

ゼホンはしばらく黙っていた。

 

「……お前は、“選択肢”を持った奴か。」

 

「どうだろう。俺はいつだって、選びながら進んできた。でも、それは“欲望のまま”だったかもしれない。」

 

「なら、お前は間違っている。」

 

淡々と告げるゼホンの口調は変わらない。

 

「選択とは、希望のある者がするものだ。俺には、最初からなかった。人生はただの人形遊びだ。誰かが、どこかで、糸を握ってる。それを知らないまま、生きていくだけ。」

 

アルガリアは黙って聞いていた。否定もしない。ただ、笑みを消さず、確かに聞いていた。

 

「……だが。」

 

ゼホンはわずかに身を起こす。鎖の鳴る音が部屋に響いた。

 

「たとえ今は縛られていようが、俺がお前たちの糸を全て切ってやる。」

 

「いいね。」

 

アルガリアの目が細くなる。笑っていたが、その奥で、何かが燃えていた。

 

「俺はまだ、何も失ってない。けど、近い未来に……俺にとって、たった一つの世界が壊れてしまうかもしれない。妹が、消えてしまう世界が。」

 

ゼホンの眉がかすかに動いた。

 

「その未来を壊すために、俺はこの都市を響かせたいんだ。間違ってるとされてるこの世界の“正しさ”を、根本から変えたい。」

 

「…………」

 

ゼホンは静かに息を吐く。

 

「それでも、お前の信念は綺麗すぎる。俺のように腐りきったものに、それを繋げるな。」

 

「腐ったものからしか、本当の音は生まれない。俺はそう思ってる。」

 

アルガリアは手を伸ばした。

 

「一緒に、演奏しよう。君の人形も、君自身も、俺が響かせてみせる。」

 

ゼホンは目を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……じゃあ、人形遊びを始めてみようか。」

 

「!」

 

「お前の手で、俺の糸が解けるかどうか、確かめさせてもらう。」

 

その瞬間、黒服が満足げに笑った。

 

「ククク……やはり、ゼホン様は見事です。」

 

ゼホンはその笑いを無視し、拘束具に手をかけた。

 

「このままでは人形たちが全部壊れそうだな。付き合ってもらうぞ、アルガリア。」

 

アルガリアは頷いた。

 

「任せろ、仲間だろ?」

 

ゼホンの言葉が収容局の冷たい空気を切り裂いた。

「……その言葉、壊れるまで覚えていろ。」

 

拘束が外れ、ゼホンの手が静かに宙をなぞる。その指の動きに応じるように、床に転がっていた破損した人形のひとつが、ぎこちなく起き上がった。

 

金属と肉の軋む音が静かに鳴る。

人間だった形を無理やり模したその存在は、息づいているようでいて、死の香りを纏っている。

 

アルガリアは目を細めて見つめた。

「……その子、意思があるんだな。」

 

ゼホンは答えない。ただ、赤い多面体の仮面が、かすかに振動する。

その感情は読み取れない。だが、彼の肩越しに立つ人形たちは、どこか痛々しいほど、忠実だった。

 

「人形に言葉は要らない。……けれど、俺には聞こえる。壊れる寸前の声が、ここまで響いてくる。」

 

アルガリアは鎌の柄を握り直し、小さく笑う。

「壊れる寸前の音……その音もまた、演奏になる。ゼホン、君の音は俺の演奏に必要だ。」

 

「……お前の言葉は、耳障りだ。だが……そうだな。腐ったものからしか出ない音もある。」

 

ゼホンの口調は変わらない。冷たく、乾いている。

けれどそこには、一滴だけ、人間としての熱が残っていた。

 

黒服が一歩下がり、観察者のポジションへ戻る。

「さて、では私は団長とゼホン様をこのまま見届けるとしましょう。お二人の“演奏”には、きっと意味がある。……世界にとってはどうか知りませんが。」

 

アルガリアがゼホンに背を向け、歩き出す。

「……黒服、俺たちの新しい演奏は、きっと世界を変える。……違うか?」

 

「いえ、違いませんとも。ですが、世界を変える代償もまた、大きい。」

 

「代償?ああ、そんなものなら最初から支払うつもりだよ。」

 

その背に、ゼホンの声がかぶさる。

「……なら、一つ忠告をしておく。」

 

「ん?」

 

「糸を操るのは難しい。……けれど、切るのはもっと難しい。たとえお前がどれほど強くても、想いが絡まった糸は、案外お前自身を縛るぞ。」

 

アルガリアはふと立ち止まり、短く笑った。

「……俺には守りたい音があるんだ。アンジェリカの未来を、音楽で包みたい。もし、それで縛られるなら、それもまた良いじゃないか。」

 

ゼホンの仮面の奥で、微かに目が細まった。

 

「……じゃあ、せいぜい、切れない糸に縛られて苦しむことだな。」

 

その背後で、壊れかけの人形がゆっくりと歩き出す。

自らの意志ではない。けれども、それを命令と呼ぶには、あまりに静かで、切実な動きだった。

 

アルガリアは、出口へと向かいながら呟いた。

 

「ようこそ、残響楽団へ……ゼホン。君の音が加わって、ようやく俺たちは、演奏の第一章に入る。」

 

ゼホンは返さなかった。ただ、踏みしめた床に響く金属音が、ひとつの合図のように残った。

 

静寂の中に、音が生まれる。

 

腐敗の底から、執念が生んだ音。

 

それはまだ名もなき旋律。

けれど、確かに世界を震わせる前触れだった。

 

 




ゼホン目線なので脳内アルガリアはなしです。

ゼホンは真っ先に生徒を逸れたキャラです、生徒に子供いるのはまずいので是非もないね

ローランくんはどうしよ?

  • 出さない選択肢ある?(生徒とし出す)
  • 落ち着ける撃っとけ(大人として出す)
  • 未亡人!エッチなのはダメ死刑(出さない)
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