残響と青春と楽団の協奏   作:イズモ様 カワ(・∀・)イイ!!

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楽団の日常いいよね…いい


グレタおばちゃん!でも食材が!

湿った裏通りを抜けると、そこだけ灯りが滲む一角があった。

テントの入口から漂ってくるのは、香ばしい匂いと、微かに響く弦楽器の音。

中では、青い服に身を包んだ指揮者――アルガリアが、空席の中央に立っていた。

 

「来てくれて嬉しいよ、グレタ。」

落ち着き払った声が響く。笑顔は柔らかいが、その奥底に何か蠢く狂気が見える。

 

「ったく…あんた、何であたしの名前知ってんだか。」

グレタは腕を組み、コック帽を揺らしながら鼻を鳴らす。

「用があるのは飯かい? それとも客の噛みつき相手かい?」

 

「両方だよ。」

アルガリアは即答した。

「俺は舞台を作る。音楽で色彩を落とす舞台だ。でも、その舞台には欠けている音がある。

 貴方の料理の音だ。」

 

「料理に音ぉ?」

グレタは呆れたように笑った。「あんた、頭の中まで音符で出来てんじゃないかい。」

 

「ははは。だから分かるんだ。

 匂いは前奏、味は旋律、後味は余韻――あんたの一皿は、一曲なんだよ。

 それを、俺の指揮に合わせて奏でてほしい。」

 

「……」

グレタはしばし無言でアルガリアを見た。

冗談かと思ったが、その瞳は本気だった。落ち着いた声色と裏腹に、

客席のざわめきよりも濃い熱が、彼女の言葉にはあった。

 

「アンタ、変わってるねぇ。普通、料理人にそんな誘いしないよ。」

 

「普通じゃ、色彩は落とせないから。」

アルガリアは一歩踏み出し、笑顔を深めた。

「退屈な厨房よりも、もっと騒がしい場所で。

 客が泣いて笑って、生きる意味を思い出す舞台で。

 あんたの包丁を振るってほしい。」

 

「……しょうがないねぇ。そこまで言われちゃ、断れないよ。」

グレタは溜息をつき、にやりと笑う。

「ただし、食材はあたしの好きに選ばせてもらうよ?」

 

「もちろん。」

アルガリアは手を差し出す。

「ようこそ、残響楽団へ。」

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

残響楽団の拠点奥、巨大な厨房では――。

鍋の蓋が跳ね上がり、何かが中から「ギャーッ!」と鳴いた。

 

「おっとっと、まだ生きが良すぎるわねぇ!」

巨大フライパンを手にしたグレタが、笑いながら鍋に押し込む。

 

横で見ていたフィリップは、眉一つ動かさず紅茶を啜った。

「……それ、食べる前に絶命させる意味はあるんですか」

「美味しくなるなら何でもええのよ!」

「……虚無ですね」

「虚無もスパイスになるのよ、あんたも食べな?」

 

背後ではオズワルドが、鍋から立ちのぼる香りを嗅ぎながら、妙に芝居がかった声を上げた。

「あんれまぁ! これは嗅ぐだけで涙腺がシクシク鳴く匂いでございますなぁ!」

「泣くのは煙のせいじなんじゃないでしょうか?」とエイリーンが首を傾げる。

「煙? これは情緒の蒸気でございますよ!」

「わけわかんないこと言ってないで、アンタ皿洗って」

「アイヤー! 団長の私が皿を!?」

「団長じゃないだろ、あんたサーカス団長でしょ」

と、横から突っ込むのはタバコを咥えたターニャだ。

 

「……あー、いい匂い……」

厨房の入り口で、エレナがぼんやり立っていた。

「お、生き血シチューに興味あり?」

「血じゃない料理なら、興味ない」

「じゃあ今日は我慢ね。魚介のパエリアだから」

「……魚介の血は?」

「無い!」

 

その横でゼホンは黙々とエビの殻を剥きながら、ぼそりと呟く。

「……人形より手間かかるな」

「食材を人形にすんな!」と即ツッコミを入れる。

 

「おーい、団長はー?」とターニャが声を張ると、

いつの間にかアルガリアが厨房の隅に立っていた。

「俺は見てるだけでいいよ。こういう音もまた、演奏の一部だからね」

「音……?」

「ほら、油が弾ける音、包丁がまな板を叩くリズム……それらが混ざって、ここにしかない台所交響曲になる」

「……相変わらずわけわかんねぇな、旦那」

「まぁ、わけわかんない方が美味しい料理もあるだろう?」

「なるほど、確かに」とグレタはニヤリ。

 

結局、料理が完成するまでの間――

食材が一度鍋から逃げたり、オズワルドが皿を空中でジャグリングして割ったり、フィリップが炎を無意識に強めて焦がしかけたり――

台所はまるで戦場のようだった。

 

だが、テーブルに料理が並んだ瞬間、全員が満足そうに笑った。

狂気と破天荒さと、それでも消えない仲間意識が詰まった、残響楽団らしい食卓だった。

 

「ほい、全員そろった? じゃ、いただきまーす!」

グレタの号令で、一斉に手が伸びた。

ターニャは肉の塊にかぶりつき、フィリップは黙々と皿を片付ける勢いで食べ、エイリーンは小さく切り分けたパエリアをちょこちょこ口に運ぶ。

 

「うぅーん! これは……!」

口いっぱいに頬張ったオズワルドが突然立ち上がり、両手を広げる。

「グレタの料理は、舌にお祭り騒ぎを呼び起こす!」

「うるさいから座れ、皿飛ぶぞ」ターニャが骨付き肉で小突く。

「お祭りは高く飛ぶほど楽しいんですよ!」

「……じゃあ飛べ」ターニャが骨を投げ、オズワルドは本当に後ろに飛んだ。

 

「おいおい……」

ゼホンは眉をひそめつつも、オズワルドの背中をさりげなく引き起こす。

「骨が刺さったら面倒だろ」

「優しいのねぇ、ゼホンくん」

「違う。床が汚れると片付けが面倒なだけだ」

「……人形みたいなこと言うね」

「人形師だからな」

 

テーブルの端では、エレナとがスプーンでパエリアの米を一粒ずつ並べている。

「なにしてんの」グレタが覗き込む。

「血管に見えてきたから、並べて形を作ってる」

「やめろ、食欲なくなるわ!」

 

そんな中、フィリップがぽつりと呟いた。

「……やっぱり、食事って儚いですね」

「また出た、バニタスバニタス」ターニャが笑う。

「食べれば消える。作る手間も、味わいも、一瞬で終わる。……でも、それでいいのかもしれません」

アルガリアがそれを聞き、箸を止めて笑った。

「一瞬だから美しいんだよ。演奏も、料理も、同じだ」

「そういうの、かっこいいこと言ってるようで、結局旦那は食べたくないだけじゃねぇの?」

「ばれた?」

 

食後、団員たちは思い思いにくつろぎ始めた。

エイリーンは食器を丁寧に並べ直し、ゼホンはエレナと並んで血管ライスアート*1を片付け、ターニャは肉の骨を磨いて武器にできないか試している。

 

そして――

「さてと……そろそろ次の“買い出し”に行くか」グレタが立ち上がる。

「材料が足りませんか?」とエイリーン。

「ええ、ちょっとね。今日のディナー、まだ決まってないのよ」

「まさか……また人……?」

「さぁ、それは行ってからのお楽しみ♪」

 

その一言で、何人かの目がギラリと光った。

狂気と笑いが入り混じる日常は、こうしてまた外の世界へと続いていく――。

 

 

 

薄暗いキヴォトスの街角。

グレタが巨大なショッピングバッグをぶら下げ、先頭を歩く。

「さあさあ、今日は最高の材料を手に入れるわよ〜!」

 

後ろから、ターニャが無言で鋭い目を光らせてついてくる。

「どうせ今回も暴れまわるんだろうな」

「まあまあ、そんな怖い顔しないでよ。買い出しは楽しいものよ?」

 

エイリーンは人込みの中で自分の歯車を回しながら慎重に進む。

「…変な連中が多いですね」

「歯車は噛み合ってこそ機能するってものよ」グレタはにっこり。

 

「相変わらず、あんたの見た目は罪深い」ターニャが苦笑。

「でも、そのおかげで交渉がスムーズよ。店主もビビって値段まけてくれるから」

 

小さな市場に到着。

そこには奇妙な食材が所狭しと並び、屋台の主が威勢よく叫んでいた。

 

「この人参はどうだい? 新鮮で美味いぞ!」

グレタはその人参を一口かじり、「……うん、なかなかだわ!7本もらうね」そう言って食べかけの人参と7本の人参を手に入れだ。

 

すると、遠くでガチャガチャと騒がしい音。

「ハァ……またズレた歯車が暴れていますね?」エイリーンが眉をひそめる。

 

音のする方へ歩くと、スケバン達が抗争を起こしていたそれを見て「……ディナーはあれで良いかい?」

「いいよね」ターニャは指をポキポキ音を鳴らし言葉を続ける「どの部位残したら良い?」それにサメの怪物が答える「頭一つと手5脚6と…ああ後できる限り内臓に傷無いと嬉しいね」

 

それにジャッカルの怪物は拳で応える「気を付けるッよぉ」

「ハア!?何だコイツ、邪魔すン゙ッッ」ターニャの振り上げた拳が一人のスケバンの胸を鮮血と共に穿つ

「ハッ?あえ?な、なんで」その死はそこにいたスケバン全員に思い出すことの無いトラウマが刻まれその恐怖は伝播する

「おー団長の言っていたのは本当だったのかい?本当に殺せる…便利だねえ」

その場はただの鮫と狼の狩場と成りその場には少しの血痕と鉄の匂いが残っていた

 

やっとのことで人肉を確保し、楽団は慌ただしくその場を離れる。

 

「ま、これでまたあの鍋が美味い料理を作れるってもんだ」

「……鍋に人肉入れるのって、どうなんでしょうか?」フィリップが小声でつぶやく。

「気にすんな! 残響楽団の食卓はいつだって狂気の宴よ!」

 

闇夜に消える彼らの背中に、狂気の旋律がひそかに響いた。

 

 

*1
本人命名




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