寝ていた焚火や鍋のある部屋にある仕掛けを作動させて部屋の外への階段を通って、昨日
ここにはちゃんと
なので俺はこの松明持ちの役目。視界を確保したいのなら前方にいればいいけど、そしたら俺が初撃を食らって死ぬ。かといって後ろで殿を務めても誰にも気付かれぬまま死ぬ…どのみち死ぬので横並びで進む事になった。やっぱり問題児と生徒みたいな状況だな…
「少し寄り道するぞ。左…こっちだ」
部屋の外は洞窟みたいに暗いだけでなく歩きやすいとは限らないし、分かり易い道があるとも限らない。ずっと獣道なので案内があっても正しい道か不安で仕方ない…
「…息を殺せ。五秒で良い…」
「んっ!…」
『千と千尋の神隠し』のワンシーンのように突然口を押さえらえると、松明を持つ方の手を後ろの方へ下げさせられた。
「《
これは確か連鎖凍結魔法の
「グルルルッルゥ!」
「うおおおおォ!」
威嚇と威嚇の応戦は一瞬で、おそらく俺の目にはまだ映っていない何かをフルトーさんは殲滅している。
「《
「…もういいぞ」
恐る恐る前に出て何が起きたか見てみると、三人…いや、三
「ゴブリンですか…」
「ああ。昨日食った奴もこんな感じだった」
子供程―およそ130cmくらいの小柄ながら腐り、溶けたような歯や持っていたと思われる棍棒には血が付着していた。
「…もう」
「三匹で良かった、これで全部だ」
「えっ?」
「ここ―
「…だから三匹なんですか?」
「最低の数字ではな。最小数の"群"、それより多い"隊"。そいつらが群れて"隊"以上のコミュニティを築いた場合、"部落"と呼ばれる。ゴブリンは非合理的な行動をし、決して利巧とは思えない上に策を弄する事基本はない。だからこそ最たる脅威は数によるもの、だからゴブリンは数を把握する事が何よりの対策とされて、知らない者からなめてかかって死んでいく―つまりは物量による圧殺だ。
なんだか害獣と似た対策の仕方だなと思ったが、昨日のフルトーさんの発言も踏まえるとガチで害獣扱い何だろうな。
「それでゴブリンが原因の死者は減ったんですか?」
「いや、研究が盛んになった理由は『魔物や魔獣は自ずと群れを成す事はあっても、それは一定以上の集団と化す事はない』とされていたのが覆ったからだ。噂程度だがそうなった原因であるゴブリンの集団に所属していたのは推定七百三十二匹。だが問題は後々の研究で関わっていた個体は全部で六万五千五百三十七匹だったと考えられている…話がずれたな」
「ですね」
今のは所詮本来の通り道からは外れたところであって、ほぼ確認しただけに近い。話も道も、本筋から逸れていたのだ。脱線も良いところだな…
「お前の質問の答えだが、お前にも関係のある話だから聞いておけよ」
「そりゃ勿論」
本物の血を見て、殺しの現場を目撃した今では今日の最初とは違うような妙な違和感を心のどこかに突き刺さったままでいまいちぼーっとしてるけど、引きずってもしょうがないしな。
「『研究が進んだ事で死者は減ったか?』その質問の答えは"いいえ"だ。確かに大規模な被害は減ったが、個人やその仲間達の単位でならあまり結果は出ていない。まず考えてもみろ、小柄とはいえ武器を持ったやつ最低三人が…いや、実際は目の前にいたとして三匹全員なわけないから、だいたい二人と伏兵一人がいたとして、そいつに勝てると思うか?」
「…」当然の事ほど言うべきではないと思って、俺は答えなかった。
「…そういう事だ。世間がどんな認識だろうと、結局は自分自身にとってどうかで判断しろ」
現実問題、ゲームだって実力が一回り下の敵との連戦だって充分消耗するし、現実なら尚数の有利は覆らない。同格同士との連戦が続けばゲームだって辛いだろ?大概そういうゲームはクソゲーと呼ばれる―其れに倣うのなら、現実のなんてクソゲーだろうか?
「あともう一か所いいか?」
「また流血沙汰ですか?」
「いや、本当にただの確認だ」
今度はその言葉に嘘はないようで、彼の足取りはさっきと比べて軽い感じがした。
…さっきまでが重いだけか?
「ここ、照らせ」そう言って彼は姿勢を低くして何かを覗き込んだ。
「はい」指示された通りの場所に松明を向ける。…視界が近いので飛び散る火の粉が邪魔に思える。
「…やっぱりな」
彼が少し落胆したような―ちょっとは期待していたような声を漏らした相手は、ただの小さな池だった。
「飲み水用のですか?」
「半分正解だが、半分不正解だ。確かに飲み水の補給地の一か所だったが、壺口がいやがる」
「壺口?」
「
念の為かその
「…食べられます?」
「…スープならあるいはだな。焼くにはちょっとな」
彼はこんなので用を終えたのか再び立ち上がった。…マジにただの確認だったのか?
「…あと少し毒がある」
「えっ?」
「いや、なんてことないさ」
フルトーさんは呟くように言っていたが、全然問題になりそうなんですがそれは?
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