外は危険なのでダンジョンにコモります!   作:雨傘音 無咲

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【第九話】休題、暢気なもので

 「にしたって驚きましたよ。自分から変な気は起こすなとか言っといて、結局自分から突っかかりにいくんですもん」

「そりゃ、お前にあれやらせても半殺しにされるだけだろうからな。もしやると言ったとしても、お前にゃやらせねぇよ」

振り返ってみれば、どうやら先程の戦闘は一種の教訓を与えるつもりだったというか、無駄に挑発的な言動や行動もそれだったらしい…それにしたって身を張り過ぎとは思うけれど。

エルフの暗殺者(あのおんな)がなんて言ってたか聞いたが、俺もあれには少し驚いた。結果的には素材的に全くの無意味だったが、まぁ、いい挑戦だったんじゃないか?」

よく言うもんだ。俺がああしてなきゃ結果は『挑発してわざと追い詰められて、簡単に反撃する』事で警戒を促そうなんて、あいつがそんなに素直なタイプとは思えなかった。

「ちゅー…」

いつの間にか俺の肩に乗っていたあのねずみが、少しバツが悪そうに小さく鳴いた。

 そうだ、俺達の猿芝居のような人形劇じみた茶番の経緯はどうあれ、事実俺達はこの一匹のねずみに助けられたのだ。ある意味では恩人…恩…ねずみなら恩鼠とでも言えばいいんだろうけど、こいつは普通のねずみじゃなくてモグラネズミ ―何? 恩土竜鼠とでも書けばいいの?

暴走族みたいになっちゃうけど?

…まぁ、戯言だよ。こんなんさ。

「そういえば、フルトーさん。こいつ飼っていいですか?」

彼は品定めをするようにそのモグラネズミを見る…と思いきや、見ているのは俺の方だった。

「…大丈夫か?」

「俺はねずみ一匹も世話できないって思ってるんですか?」

そんなに信頼ないの、俺。

…まぁ、当然か。昨日あったばかりの奴を信頼しろって方が無理だよな。

「大丈夫ですよ、ネズミくらい死なせませんて」

「いや、食糧の余裕を疑ってるんだ。案外喰うからな、モグラネズミってやつは…」

「そうなんですか?」

片手で収まる手乗りサイズ…ひょっとしたらそれよりも小さいかもしれないのに、こいつそんなに大食なの?

「それでも魔獣の近縁種…それに、基本雑食だしな」

「ははっ…はっ…」

そう聞くと途端に恐ろしく思えてきた…

 彼の指摘に苦笑しかできなかったけれど、何故だかこいつには可能性を感じる。それが良いものという確証はない。鬼が出るか蛇が出るか、それすら判っていないこの小さな勇者がきっとなにか ―目に見えないものを与えてくれると信じて。

…もしかしてフルトーさんが俺を助けた理由もこんな感じなのか?

そう思うと、申し訳なくなってきた。

「名前どうすんだ?」

「そうですね…」

じゃあシンプルイズベストって事で―

「『ちゅーた』…ってのはどうですか?」

俺の答えに彼は苦笑しかしなかったけれど―まぁ、今はこれでいいと思う。

 ―無鉄砲なくらいが、馬鹿々々しく大胆(ガッツ)なくらいで丁度いいのかも。




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