追放令嬢のスローライフ〜主目的生存戦略〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「はへぇ……回復の泉の水で作物育てるとこうなるのか……」
ダンジョンの中で実験的に育てていた作物が無事に実った。
というか凄い量実った。
今回育てたのはスイカだったが、回復の泉の水で育てたやつは蔓が天井まで伸びて、大きな実が大量にぶら下がっている状況で、普通では無い。
「よいしょっと」
魔法で天井付近のスイカを収穫して1つ割ってみると中身は普通のスイカっぽい?
「味は……ふむふむ、甘いね」
普通のよりも甘い気がするが、許容範囲内。
回復の泉の水は作物の生育を早める効果があるのかもしれない。
まぁ確かに成長するのに植物の組織を分裂を繰り返すのだから、回復薬の効能である組織の再生と似ているから成長を早めるのは確かに分かる。
「まぁ回復薬を普通こんな贅沢に使ったりはしないけどね……」
回復の泉から回復薬が湧き出ているから出来ることであり、こんな農法は普通出来ない。
「ダンジョンの要塞化を考えてもダンジョン内の農法は考えないと……皆を飢えさせるわけにもいかないし……」
私は更に効率的な農法を考えるのであった。
ルルが精霊達を生み出して数週間。
ジョンとハンスに今度は布製品を多めに持ってきてもらうようにお願いし、また回復薬を入れた壺と宝石類を積んで運んでもらった。
一応綿も育ててはいるが、収穫までにまだまだ時間がかかりそうなので先を見据えての行動である。
それと早い作物はもう育って食べられるようになった。
カブ系の作物は成長が早いね。
精霊達やオーガ達も採れたての作物に喜んでいた。
ただダンジョンの探索は5階層で完全に足止めが入った。
ギガースというモンスターがこちらに敵対的行動をして攻撃してくるのである。
ギガースは巨人に足は蛇が付いているというモンスターで、身長は3メートルから5メートルほど。
足の蛇は毒性はないものの噛まれたら痛いのと、足が止まると棍棒を振り下ろしてくる。
知能は高くなく、人の言語も理解できないモンスターである。
それがダンジョンの部屋の中央に鎮座しているので通り抜ける事も出来ず、いわゆるボスモンスターというべき存在であった。
試しにオーガ達が挑んでみたが、物理攻撃に耐性があるのがなかなか倒せす、ようやく倒したと思ったら、数分後に別個体がリポップする仕様で、厄介極まる。
現在オーガ達が運んできたギガースの死体をルルが検死している段階である。
「ふむふむ、魔法攻撃はよく効きそうだね。特に炎や雷といった攻撃魔法はよく効くだろう」
「オーガ達曰く、ギガースを倒した先には扉があり、その先にはまだ踏み入れてないらしい」
「ダンジョンに扉ねぇ……ミディアはダンジョンの仕組みは私よりも詳しいんじゃないかな?」
私に振られるが、詳しいと言っても資料で見た知識とゲームでの知識でしか無いが……。
「ダンジョンにある扉の先には別の階層が広がっているはずだよ。ただダンジョンの内容が大きく変わる。今まで洞窟の様な場所で戦っていたが、扉の先は開けた草原かもしれない、溶岩溢れる活火山かもしれない、湿地帯かもしれない……もしかしたらそのまま洞窟が続く可能性もある」
ダンジョンに設置されているゲートは別世界に続く扉である。
ダンジョンの内容がガラリと変わる可能性もあるし、同じ様な空間が続く可能性もある。
だいたい変わるが8割なので、今回も変わると思ったほうが良いだろう。
ゲームでもダンジョンの奥のゲートを潜ると雰囲気が変わる場所がしばしばあり、生態系がガラリと変わる場合もあれば、そんなに変わらない場合もあった。
「なるほどねぇ……つまりその先には更に別のモンスターがいるかもしれないってことだろ! 研究しがいがありそうじゃないか! ワハハ」
私的にも、もしダンジョンに籠もるとなった際に侵入口がその扉1つに限定されるのは大きい。
ただ門番となっているギガースが少々邪魔ではあるが。
さてさてどうしたものかね……。
「レイン!」
私は雨雲を出して広範囲に雨を降らせる。
畑の面積も徐々に広がってきて、現在は野球場5つ分の面積が広がっていた。
精霊達が手伝ってくれたお陰である。
「ミディア様!」
「どうしたの? ルビー」
「もうお昼の時間ですにゃ! 昼食にいたしましょうにゃ!」
「そうかそうか。ちょっと待ってね」
私はゴーレムを呼び寄せると、背中に実っていた肉の木を切断の魔法で切り倒す。
「よっと」
幹部分を掴み、ルビーに
「これ昼食か夕食に使える?」
「もちろんですにゃ! じゃあ今日は肉料理にいたしましょうにゃ」
と言ってくれた。
まぁケバブの肉みたいに見えるが、実際は植物。
食感や味はほぼ肉だが野菜の一種である。
家畜の飼育技術が進んでいない魔族にとって安定して食べられる肉擬きなので需要は高い。
今日のメニューはハンバーガーらしく、パンにトマトとレタス、それにさっきの肉擬きが入って、ソースがかけられていた。
お嬢様としてはナイフとフォークで食べたほうが良いのだろうけど、齧り付いてしまう。
(自給自足体制が整うのにもう暫くかかる。それまでは父親の支援が無ければ不自由な生活が続くことだろう。ゲームだとこの後反攻作戦が始まるけど、そうなれば飢餓の行進になる。そうなれば父親もこちらの支援どころではなくなるだろうからな)
私は支援が受けられるうちに生活基盤を固めようとより一層努力するのであった。
ジョンとハンスが帰ってから5階層を突破しようとも考えたが、精霊達とオーガ達の実力が黄金スライム狩りや魔法の種の摂取で急激に上がっているので、私、ルビー、リリン、オニマル、タケマル、リファの6人で突破を試みることにした。
まぁやることは簡単で、盾持ちのオニマルとタケマルに前衛を張ってもらい、私は攻撃魔法が使えないので魔法障壁を展開して防御を固め、ストーンゴーレムを召喚してギガースの体に取り付いて動きを封じる。
そこに残りの3人で魔法を叩き込めば、簡単に倒せるって寸法である。
「よしよし、じゃあ扉を開くよ」
私が扉を開いてみると、洞窟……ではなく、渓谷の様な場所に出た。
川の畔に扉があり、キャンプとかには凄い適している土地に感じる。
私達の後ろには滝があり、人工太陽の光が木々の隙間からこぼれている。
「ミディア様、この水も回復の泉と同じ効果かと思うっす」
水を調べに行ったリリンがそう言うので、私も確認すると、確かに水は回復薬になっているっぽい。
川をよく見ると、黄金スライムがここにもいて、あとウナギ型のモンスターや鮭っぽいモンスターが川を泳いでいる。
川の奥の方を見ると、熊モンスターが川の鮭をとって食べているではないか。
私達は熊モンスターに近づくと、大きさは2メートルほどで青と黄色の毛をしていた。
私達に気がつくと、彼が取った鮭モンスターを1尾渡してくれた。
「あ、ありがとう」
熊モンスターはどういたしましてみたいな澄ました顔をすると、鮭を加えて森の中に消えていった。
「敵対的なモンスターではないっぽいな」
「ということはここも安全地帯ってことっすか?」
「そうなるだろうね。とりあえず」
私は扉の前に木々を切り倒してログハウスを作り、セーフハウスとした。
「木材が手に入るのは良いことだね。ただ扉の先に敵対するギガースがいるのが問題だけど」
木材がない問題は解決したが、別の問題に直面するのだった。