追放令嬢のスローライフ〜主目的生存戦略〜   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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砦の掃除です!

 荒野の中に塔の様な砦がポツンとそびえ立っていた。

 

「ゲームでは見なかったエリアだな」

 

「お嬢様?」

 

 私の呟きに反応するジョンであったが、私は何でも無いと首を振る。

 

 私は土を触るためにしゃがんで、土を握ってみるが、パサパサしていて水分が足りていない感じがする。

 

「サーチ」

 

 私は探知の魔法で地下の様子を探知すると、地下水脈はあるようだが、だいぶ深い位置に存在する。

 

 こりゃ掘るにも一苦労かもしれない。

 

「土壌はだいぶ厳しいね……土を魔法で改善しないと作物を育てるのは厳しそう」

 

「お嬢様、何も作物を育てなくても定期的に我々が食べる分の食料は届けられると思いますが」

 

 デュラハン騎士のジョンがそう言うが、私は今後戦局が悪化していけばこちらで自給自足生活をしなければならないかもしれないと説明する。

 

 ジョンだけでなく、メイドの2人やもう一人の騎士であるハンスもそんな事は無いだろうと首を傾げる。

 

「とりあえず砦の中に入ろう」

 

 私達は砦の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 砦は見えている部分は狭そうであったが、地下空間はそこそこある感じで、砦の壁の側面が螺旋階段になっており、3層になっていて、1階には台所と食堂、2階が騎士達の詰所、3階が主の生活スペースになっており、地下に倉庫、食糧庫や深井戸、牢屋があった。

 

 最低限の寝具や調理器具、清掃用具は揃っていたが、前の管理者もそこまで手入れをしていた訳では無いらしく、窯には煤が付いていたり、床に汚れ、壁に蜘蛛の巣が張っていたりする。

 

「まずは掃除からね」

 

 騎士のハンスとジョンに馬車の荷物を倉庫に移動させるように言い、メイドのリリンとルビーの2人と一緒に掃除をしようと、私は豪華な服を脱いで倉庫で見つけた給仕服に着替えた。

 

「にゃにゃ! ミディア様はゆっくりしていてください! 私達で掃除はやりますよ!」

 

「そうっす! ゆっくり休んでください」

 

 ルビーとリリンの2人が慌てて掃除をしようとする私を止めるが

 

「砦の掃除を2人でやるのは厳しいでしょ。魔法が得意な私がやった方が早いから、皆でちゃっちゃと終わらせますよ」

 

 静止を振り切って、掃除を始めてしまう。

 

 メイドの2人は申し訳なさそうにしながらも、掃き掃除を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 掃除をしながら私の使える魔法について考える。

 

 魔法はその人の生命エネルギー……ゲーム的にはMPと呼ばれる力を消費して魔法という超常現象を起こすことができる。

 

 今世の記憶では、私の魔力総量は魔王様に匹敵するほど膨大で、第一王子の婚約者となったのもこの魔力量を子供に遺伝させることが出来れば魔王軍はより強力な存在になる……という思惑があったり……。

 

 まぁ実質魔力総量はレベル100になった勇者よりも多い事が保障されているから、魔力は使い放題。

 

 ただし私の場合戦闘系の魔法に制限がかかっている。

 

 例えば水の塊を生み出すとか、大規模の土壌改善とかは得意なのだが、火の竜巻を起こすとか氷の槍を降らせるみたいな攻撃魔法に分類される魔法がすっごい苦手なのである。

 

 前世と混ざった今でも攻撃魔法の苦手なのは改善しないであろうが、使い方次第では攻撃魔法に匹敵する魔法を使うことはできそうである。

 

 例えばゴーレムを生み出す魔法。

 

 ゴーレムという使役するモンスターを生み出す魔法であるが、これを大量に操れば、攻撃魔法が使えなくても、ゴーレム達が暴れまわるだけで十分被害を与えることができるだろう。

 

 まぁ攻撃魔法が使えたとしても勇者に勝てるとは思えないので、生存戦略的には生活に適した魔法が使える方が有り難い。

 

 魔法で水の玉を生み出し、それを性質変化させて洗剤入りの泡だった水に変化させると、台所の窯や煙突に水の玉を突っ込み、高速で回転させた。

 

 洗車機に洗われる車みたいに、煙突の中や窯の中の煤が取り付いて、真っ黒に汚れた水を煙突から外に投げ出す。

 

「汚れてるなぁ……補修もしておこう」

 

 魔法で窯のひび割れとかを塞いでいき、補修も完了する。

 

 そのままシンクを洗ったり、台所の床を洗浄していく。

 

 壁の汚れなんかも落としていき、数分で台所はピカピカになっていった。

 

「魔法すげぇ……便利過ぎる」

 

 ちなみに魔王軍ではこんな事に魔法を使うなと突っ込みが入る所業である。

 

「生活に魔法を使って何が悪いんだろう。少なくとも戦闘で魔法を使って人を殺すよりもずっと有意義だと思うけど」

 

 台所が終わったので、私は地下の掃除を始める。

 

 特に井戸。

 

 井戸の水がちゃんと湧いているか確認するために、私は浮遊魔法と光源魔法を使いながら、井戸の底を確認する。

 

「水質は問題ないけど水量が心許ない……か。もう少し深く掘ってみますか」

 

 私は採掘の魔法で井戸の底を更に掘り進み、そのまま崩れないように壁を作っていく。

 

 追加で30メートルほど掘ると水の勢いが強くなった。

 

 地下水脈に当たったらしい。

 

「よしよし」

 

 地上に戻った私はバケツを投げてみて、滑車を引いて水をくみ上げると、ちゃんと水を汲むことができ、その水を飲むと冷たく澄んでいた。

 

「よし、井戸もこれで大丈夫……ん、おーい」

 

「お嬢様!? 何故ここに!」

 

 ジョンがちょうど荷物を運んでいた。

 

「井戸の整備をしていたの。水飲めないと死活問題でしょ」

 

「危ないのでお辞めください!」

 

「浮遊魔法使えるの私だけなんだから適材適所ってやつよ……それよりも食料系の運搬ご苦労さん」

 

「あ、え、どうも」

 

「ちょっと運んだ品物見ても良い?」

 

「ええ、どうぞ。危ない物は無いのでご自由にどうぞ」

 

 ジョンは次の荷物を運ぶために戻ってしまった。

 

 さてさて食料の確認とまいりましょうか……。

 

「食料系はゲーム通りだな」

 

 和製ゲームなだけあって、食料品は日本のスーパーで揃いそうな物ばかり。

 

 じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、かぼちゃ、トマト、大豆にグリンピース、カブ……リーキなんて珍しい野菜もあったり……。

 

 メインは小麦粉で、全部粉に挽かれていた。

 

「うーん、育てられそうなのはじゃがいもだけかな……今度持ってきてもらう品には野菜や作物の種を持ってこないとなぁ……」

 

 まぁちゃんと支援が届くうちに生活基盤を整えないとね。

 

「ミディア様、何かありましたか?」

 

 別の荷物を運んできたハンスが鎧を脱いでTシャツ姿で荷物を運んでいた。

 

 デュラハンらしく、首から火っぽい何かが揺らいでおり、その上に頭が浮いていた。

 

「あ、ハンス。いや、栽培できそうなのじゃがいもくらいしか無いかなっても思って」

 

 するとハンスが横に来てドサッと荷物を置く。

 

「一応食料になりそうな作物の種を持ってきていますよ」

 

「でかした! どんなの?」

 

「そうですね」

 

 袋から出されたのは卵だった。

 

「卵?」

 

「これ卵擬きっていう植物の実なんですよ。ミディア様知りませんか?」

 

 思い出したぞ……食料不足だからって卵の代用品に卵味の植物を作り出した狂った学者が居たな……卵の供給量増えたって補給部が喜んでいたが……もしかしてこれに入れ替わっていたのか? 

 

「卵も肉も民間に回ってくるのは代用品ばかりですよ、このご時世。もっとも味は卵とほぼ一緒なのと、食中毒になることが普通の卵よりも減って代用品なのに本物の卵を駆逐する勢いで広まってますけど……」

 

「えぇ……」

 

 これでも四天王の娘だから良いもの食わせてもらっていたんだな私。

 

 庶民は代用品まみれとか……戦時の日本か? 

 

「じゃがいもと卵擬き、それに棒状の肉塊が生える肉棒の木を植えましょう」

 

「待って、肉棒の木って……あ、いや思い出してきた」

 

 ケバブの肉塊みたいなのが地面から生えてくるサボテンの一種。

 

 サボテンなので外皮をケバブの様に切るのはNGで、切り倒して1本丸々食べる肉の代用品である。

 

 成長速度は竹並で苗を植えれば1日30センチ近く成長し、3メートルまで大きくなると、今度は横に大きく太くなっていく。

 

 おおよそ2カ月で食用となり、3カ月で枯れて種になる。

 

 種から苗にするのが難しく、水を大量に吸収するので戦地では敵兵の血肉で育てたりもするので人肉の木とも言われている作物である。

 

「前線だとこれが貴重な食料になっているらしいですからね。家畜を前線に連れて行くわけにもいきませんし」

 

 ハンスの言葉で私は思い出す。

 

 魔王軍の兵站状況が深刻なことを。

 

 

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