追放令嬢のスローライフ〜主目的生存戦略〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
食事を終えた私は寝間着に着替えてベッドにダイブする。
「せ、精神的に疲れた……」
前世の記憶と混ざりあってまだ数日しか経過していないからか、異様に疲れる。
ゲームの世界に生きているという興奮や魔法が使えるといった興奮も関係しているかもしれないが……。
一応砦の主のベッド……寝返りができるくらいには広い。
前世で言うとセミダブルくらいの大きさかな?
木の枠組みにスポンジっぽいマットを敷いて、その上にシーツを敷いたベッドになっている。
結構寝心地が良くて、これならばぐっすり眠れそうである。
毛布をかけて照明を消し、眠りに就く準備を行う。
明日は使える魔法の確認をしながら畑を作ろうと思う私であった……。
「とと、いかんいかん」
眠りに就く前に私は手のひらに魔力を込めて魔石を生成していく。
「電池みたいな役割を持つ魔石……これを用意しておかないと」
魔力を大量に込めると、野球ボールくらいの大きさで虹色に輝く魔石が出来上がったところで、私のMPが切れて、気絶するように眠るのだった。
「ミディア様! ミディア様起きてくださいっす」
「んん……おはようリリン」
「おはようございますっす! 今日も元気に頑張るっすよ!」
朝から元気なメイドのリリンに起こされ、私はぼーっとした頭を起こしながらリリンに着替えを手伝ってもらう。
起き上がる時にベッドからゴロリと魔石が転がり落ちる。
「夜魔石作っていたっすか。体調は大丈夫っすか?」
「問題なし〜はぁぁ〜」
あくびをしながら返答する。
睡眠によるMPの回復は空の状態から回復すると頭がぼーっとすると知っていたが、低血圧みたいになるのか……。
「これで顔を拭くといいっすよ」
濡れタオルをリリンが渡してきたので顔を拭くと、冷たくて、頭が次第に晴れてくる。
「ふぅぅ、目が覚めた。ありがとうリリン」
「いえいえ!」
1階に降りるとルビーが朝食の準備を始めていて、男2人はこの場に居なかった。
「ハンスとジョンは?」
「鍛錬で外で剣の素振りをしているっす」
窓から外を見てみると、確かにハンスとジョンが素振りをしている。
「朝食が出来たら呼ぶっすよ」
「そうだね」
ルビーの作る朝食を待ち、時間を潰していると、呼ぶ前にハンスとジョンが戻ってきた。
「おかえり」
「ただいまでーす」
「お嬢様おはようございます」
「朝から元気だね。私も体操とかした方が良いかな」
腕を振る動作をすると2人は面白かったのかクスッと笑われた。
2人は地下の井戸で汗を洗い流してくると、朝食がちょうど並べられた。
今日のメニューはベーコンエッグトーストと玉ねぎのスープ。
ベーコンエッグがトーストの上に乗っけられていた。
かぶりつきたいが、一応私はお嬢様、ナイフとフォークで小さくカットして少しずつ食べていく。
玉ねぎのスープは塩っ気が効いていてとても美味しく、トーストとの相性抜群。
ペロリと平らげると
「ルビー、今日の料理も美味しかったわ」
とルビーを褒めることを忘れない。
「恐縮ですにゃ!」
ルビーも褒められて嬉しいらしく、二股の尻尾をブンブン振っていた。
さて、朝食も食べ終わった事だし、私は外に出て畑を作ることにした。
「昨日も調べたけど、若干砂漠化しているなぁ……これじゃあ作物は育たない」
他の4人が見守る中、私は魔法を使い始める。
「土壌改善」
手を地面に置き、地面に魔力を流していくと、地面がうねりをあげて色が変わっていく。
先程まで赤オレンジっぽい色をしていた土は黒っぽい茶色の土に変わり、触った感じ栄養たっぷりの土に変わっていた。
「お見事です」
とりあえず田んぼ1個分の土壌を改善したが、周囲の土地が砂漠化しているので、囲わない限り、水を流したらせっかく整えた土の栄養が流れてしまいそうである。
「となるとだ。クリエイトゴーレム」
私は今整えた土からゴーレムを生成していく。
とりあえず5メートルサイズの巨漢のゴーレムを作ると、彼らをうつぶせで倒れてもらい、そこを魔法で耕して昨日の時点で芽が出ていたじゃがいも(種芋)や肉の木、卵擬きを植えていった。
異世界名物のゴーレム栽培である。
「ゴーレムで野菜を栽培するのですか?」
「土地を囲わないと他の土地に栄養が吸われてしまうし、私達で管理できる土地の広さは限られているから土地を地下まで囲う手間を考えるとゴーレムに植えてしまった方が手っ取り早いとは思わないか?」
「そんなもんですかねぇ」
ハンスは笑いながらそう答える。
「クリエイトゴーレムを応用して〜」
私は次に土に魔力を込めて50メートルプールくらいの大きな穴掘り、その土地を粘土質にして焼き固めると、魔法で生み出した水を中に投入した。
「これでゴーレム達は水分補給ができるね」
ゴーレム達は自らの体が崩れないように水分を補給する性質があり、そのためにため池を作成した。
ハンスは服を脱ぐと、水に飛び込んで泳ぎ始める。
「うは! 気持ちいい!」
「あ、コラハンス! お前!」
ジョンがいきなり泳ぎだしたハンスに怒るが
「ミディア様、水浴びに使っても良いですよね?」
「勿論」
私は許可を出す。
「暑いので私達も水浴びしていいっすか」
「水浴びしたいにゃ……」
「2人も泳いできなよ」
「「やったっす」にゃ!」
メイドの2人も裸になると水浴びを始めるのだった。
先程まで怒っていたジョンも申し訳なさそうにしながら自分もいいですか? と言ってきたので、もじもじしているジョンを水の中に叩き込んだ。
そのまま4人は水浴びを始め、私は他にできそうな事は無いか考えるのであった。
魔法で粘土が作れるので陶磁器を作ってみることにした。
まずは窯を作る。
粘土からレンガを作り出して、窯の形に並べていく。
窯が完成したら器を作っていく。
土を握って、粘土を作り、生地をくるくる空中で回して皿の形に作っていき、形が出来たら窯に並べて、魔法で熱源を発生させて、焼いていく。
器の形が壊れないように魔力で補強してから焼くことで皿が割れないようにする。
様子を見ながら、せっかく窯が作れるんだったらとピザ窯を作ったり、皿だけでなくコップを作ってみたりしたり、私も皆と一緒に水浴びをしたりしながら待つこと3時間後。
魔力が切れた熱源が消滅して徐々に温度が下がっていき、冷却されていく。
そして夕方になる頃にはちょっと熱い程度の温度まで冷えたので、皿を取り出すと、魔力が込められていたせいか、キラキラ黄色に輝く皿やコップが出来上がった。
前世でも市販で売れそうな出来であり、魔法を使えば簡単かつ綺麗に皿やコップが作れるんだなと思ってしまった。
「ミディア様、普通の魔族はそんな事に魔力を使ったりしないにゃ……」
ルビーから言われてしまうが、攻撃魔法で人を殺すよりもずっと健全だと思うが……。
色々な種類の皿を作ったので、それを棚に並べていき、木のプレートよりも陶磁器の皿を使っているので、料理の見栄えが良くなるのであった。