追放令嬢のスローライフ〜主目的生存戦略〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「なぁ、1階層の他の道調べなくて良かったのか?」
「ん?」
ハンスに話しかけられた俺は下の階層に降りながら返答する。
「お嬢様達が今日潜るって言ってたからな。事前に調べておいた」
「事前って……夜のうちにか?」
「そうだ」
「じゃあろくに寝てないんじゃないか? 大丈夫なのか?」
「体の方は問題ない。疲労も特に残ってないからな」
俺はそう返答しながら、他の道に何があったかの説明をする。
と言っても、他2つの道の先には左側の道よりも小さな回復の泉……左側の道のが広々として遠くまで泳げる広さがあるが、こっちは池っていうくらいの大きさで、水深も腰までに浸かれるくらいで10人くらい入ればギチギチになる程度の広さしか無かった。
これが中央の道なので、おそらく左側の道の先の回復の泉から漏れ出したのがこちらに流れ込んできているのだろう。
「右側の道は何があったんだ?」
「出入口のゲートの所並みに広い空間と、そこから細い道が何本か伸びていたな。まぁ出てくるモンスターは黄金スライムだけだったが」
「このダンジョンで出てくるモンスターは黄金スライムしか居ないのか?」
「それは奥に行けば分かるだろう」
進んでいくとまた広い空間に出た。
「これはまた……」
上の第一階層と大まかには変わりないが、穴が幾つも掘られており、そこがゴブリン達の寝床となっていた。
「どうやらゴブリンの巣窟らしいな」
俺とハンスは剣を構えるがゴブリン達は俺達を見ても一向に攻撃してくる様子は無い。
「なんだ? 襲ってこないな」
「ゴブリンって動く物に対して攻撃してくる犬程度の知能を備えた小鬼だと思っていたが……」
攻撃してこないので近づいてみると、彼ら石で作られたピッケル片手にダンジョンの穴を掘り、キラキラ光る石や宝石っぽい石を集めているように感じる。
また穴を掘る最中に球根みたいな物を掘り起こし、それを齧りついて食事をしていた。
「ゴブリンは何でも食べるって聞いたことがあるが、何食べているんだあれ?」
「球根……にしてはでかいな」
俺の顔面と同じくらいの大きさの球根をガジガジと噛む者、ピッケルで細かく潰してから食べる者と様々。
ゴブリンが食えているということは俺達でも食べられる物ではあると思うが……。
「ホブホブ」
珍しそうに眺めていると、ゴブリンの1匹が俺達に近づいて球根みたいな食べ物を渡してきた。
「なんだお前……これくれるのか?」
「ホブ!」
そうだと言わんばかりに胸を叩く。
手を前に出して代わりに何欲しそうな目をしていたので、俺は袋を漁ってルビーが作ったビスケットをゴブリンに渡す。
「ホブ! ホブ!」
ゴブリンは嬉しそうに飛び跳ねて何処かに走り去っていった。
「とりあえず……これなんだ?」
「カブ……じゃ無いよな?」
とりあえず背負い袋の中に入れて先に進むのだった。
「また分かれ道か」
ゴブリン達が掘った穴とは大きさの違う通路が3つほど。
何処に繋がっているのやら。
「この階層は友好的なゴブリンだけか?」
「かもしれないが、先に行くかどうするか」
「お嬢様達を待たせているし、行けるとしても次の階層には行かないぞ」
「ああ、道は俺が選んで良いか?」
「ハンス頼む」
「おう」
ハンスは何処にしようかなと指差してから、1階層は左側からだったので今度は右側から攻めるようである。
右側の道を進んでいくと、広い部屋にぶつかり、ゴブリン達より一際大きなモンスターが穴を掘っている。
「オークか!」
「今度は敵対するか?」
剣を構えてオークに対峙するが、オークは一瞬こちらを見ると、興味を失ったのか、穴掘りを再開してしまった。
「なんだコイツ……」
「さっきの球根みたいな残骸が落ちているな」
穴を掘っている横に球根みたいな物の残骸が落ちていた。
球根みたいな物の中には種の様な物が入っており、俺はハンスと顔を見合わせてから、とりあえず種を回収しておいた。
あとはオークはこの球根を食べるために穴を掘っているらしく、鉱石系はガン無視で、土塊の中に鉱石っぽい物が数多く落ちていた。
「魔鉄の鉱石っぽいな。一応回収しておくか」
「見る人が見れば宝の山だなここ」
オークは1体だけっぽく、襲ってくる訳でも無いので、放置して別の通路に進んでみた。
中央の通路では、1階層の回復の泉の水が流れているのか、ここも池になっていて、ゴブリン達が水浴びをしたり、水を飲んだりしていた。
最後に左側の通路を進んでみると、ゴブリン達の倉庫らしく、箱や樽が乱雑に置かれていた。
ゴブリン達が見張っている訳でも無いので、箱を1つ開けてみる。
キシャー
箱を開けると触手をうねうねさせた箱に寄生したモンスター……ミミックだった。
「ハンス避けろ!」
ミミックにかぶりつかれそうになったハンスは箱を蹴り飛ばして噛みつき攻撃を回避。
ミミックは戦闘態勢でキシャーキシャーと威嚇している。
「ようやくモンスターらしいのが出てきたな」
「ハンス、ミミックは箱に寄生して箱そのものを体液で固めている。攻撃するなら箱の中だ」
「箱の中だって! そんな場所に手を突っ込んだら食われるぞ」
「だったら……ハンス、一瞬ミミックの動きを止めさせてくれ、魔法で中身ごと燃やす」
「おう!」
ハンスは走り始め、ミミックに突っ込んでいく。
ミミックは触手を箱の外に出して、それを足の様に動かし、駆け始める。
ミミックがハンスに噛み付くために飛びかかった瞬間に、ハンスはミミックの触手を切断し、態勢が崩れたミミックはハンスに噛み付く事無く、左にズレて、片側の触手が斬られたことで動けなくなる。
「ファイヤーボール!」
俺はその隙を逃さずにファイヤーボールをミミックにぶつけた。
キシャー!
断末魔が響き渡り、ミミックはこんがり焼けて動かなくなった。
「ナイスジョン! お前いつの間に魔法の威力そんなに上がったんだ?」
「いや……俺もびっくりしている」
俺のファイヤーボールは今まで拳くらいの大きさの火球を投げる魔法だったが、今俺が投げたのは顔面くらいの大きさで、威力がいつもの3倍くらいあった気がするし、よく燃えた。
プスプスと焼けたミミックを見て、俺は美味しそうだなと思ってしまった。
「なぁこれ美味しそうじゃないか?」
「ジョンまじか……」
流石にハンスにドン引きされてしまったが、剣で突き刺して試しに1口食べてみる。
「コリコリしていて歯応えが良くて……なんていうか食べたことのない食感だな」
「マジでジョン食べてるし……」
「ハンスも食べてみろよ」
「ええ……」
そう言っても断らないのがハンスらしい。
怪訝そうな目で焼きミミックを見ているが、恐る恐る1口食べてみると
「んん! 結構いけるな! 美味いわ」
「だよな! 美味いよな」
俺達はミミックを食べて腹を満たしていくのだった。
腹を満たした俺達は他の箱や樽を漁ってみる。
何個かはミミックが飛び出すが、中には宝石が入っていたりすることもあり、ダンジョンの宝箱も混じっていた。
「平和な時代だったらダンジョンに潜って生活をするみたいな職業の人達もでてきたんだろうな」
「人類側には居るらしいぞそういう職業の人達」
「マジ? いいなぁ、俺騎士やるよりもそういうので暮らす生活をしたかったわ」
「俺は騎士の生活に満足しているけど」
「だけどジョンの戦い方は騎士っぽくねぇよ」
そんな会話をした後に下の階層に行く道を見つけたので、第二階層の探索はここで終了にし、俺達は第一階層に居るお嬢様達の所に戻るのだった。
「お嬢様って大胆だな」
「肝座ってるよな」
石で出来た椅子に横になって全裸で眠っているお嬢様にメイドのリリンとルビーを見て、彼女達は大物だなと考えるのであった。
ミミッキュの味のイメージはタコです。