ホロライブラバーズ『Undertaleを愛する者』獲得ルート 作:ヘビーなしっぽ
<朝だ。
<潤羽に自分の分もちゃんとしろって言われたからな…。
<台所に立ち、弁当を作る。
+アルティメットカツ弁当を二つ入手しました。
<学校へ向かおう。
<教室に入る。
>よう、潤羽。
「サンズ君。おはようなのです」
<返事を返してくれた潤羽に弁当を手渡す。
「ありがとなのです」
<潤羽がニコッと笑って言う。
>ああ、どういたしまして。
<俺もそう返し、席に着く。
<それと同時に担任が教室に入ってきた。
「よーしお前ら。出欠確認するぞー………っと、ん? おい、誰か百鬼知ってる奴いるか?」
<出欠確認をする為に名簿をめくった担任が、疑問顔でクラスを見回した。
「おかしいな…連絡もなかったんだが…。まあいい。それじゃ…」
<担任が話を続けているが、頭に入らない。
<ただ単に百鬼が居なくなっていただけなら、そこまで気に留める事は無かっただろう。
<だが、どうも昨日見たニュースが妙に頭から離れない。
<…いや、気にしていたら今日の授業が頭に入らない気がする…。
<俺は心の奥に感じていた気持ちを押し込んだ。
うっそだろお前www。まさかの1日ですよ一日wwww。
オワタ。
<昼休みだ。
<潤羽と弁当を食いながら、百鬼の話をする。
>…どうしたんだろうな。百鬼。
「あー、クラスもちょっと沈んでる様に感じるのです」
<潤羽も少し違和感を感じていた様だ。
>なんでかね…嫌な予感を感じて止まないんだ。
「ええ…サンズ君ってそういうの敏感な人ですか?」
>いや…分からん…。
「でも、あんまり重く捉えなくてもいいんじゃないですか?明日になったらひょっこり顔出したりして…」
>ああ…確かにな。
<それだけ話すと、話題を変えた。
<放課後になった。
<気が気でないまま、下校する。
<…………………………その時だった。
>……ん? あれは………。
<赤と白っぽい和服を着た少女が視界の端にちらと映る。
>まさか…。
<和服の少女を見た方向に向けて歩いてみる。
<数分もかからずに、和服の少女を発見することができた。
>……”CHECK“
<誰にも聞き取れない様な小さな声で言う。
百鬼あやめ
種族:鬼人
基礎スキル:天性の肉体 大胆不敵 剛力
追加スキル:双刀術“皆伝” 縮地 高速移動 武芸百般 空中斬り 上段突き 中段突き 一刀流:兜割り 双剣術:フォトンエッジ 双剣術:螺旋斬 双剣術:鬼人乱舞 双剣術:居合斬り 双剣術:居合抜刀気刃斬り 双剣術:威合 双剣術:抜刀二連斬り
専用スキル:鬼人の咆哮 爆裂悪鬼斬 鬼人化 鬼火 鬼化 それもまたなきり
加護:武神の加護
<やはり百鬼だ。
<声をかけようと思ったが、それは憚られた。
<理由はと言うと、どこかへ歩いて行く百鬼の横に、薄汚れた着物を着た、あまり良い印象を受けない男性がいるのだ。恐らく百鬼の連れか何かだろう。
<しかも、その男は何かを警戒しているのか、チラチラと横や背後を確認するのだ。
<…これ以上は少し危ないか。
<10分程尾行したところでそう思った俺は、最終手段に出る。
>…”無限増殖能力:二倍“発動。
<小さく呟き、自分を複製すると、男と歩く百鬼の背後までこっそり移動させ、“影潜り”を発動させ百鬼の影に潜ませる。
<…あまり褒められたことではないが…これで百鬼の動向をある程度探れるだろう。
<もし何も無かったら素直に謝ろう…。
<そう判断し、今日は帰ることにした。
……ッスゥー。
……お嬢かぁ…。
……………………………お嬢かぁ…(脱力)
お嬢は強いですからね…厄介なイベントになるでしょう…。
いやあ…死んじゃうかも…ウケんね。
>ッ?!
<もの凄い悪寒を感じ、勢いよく上体を起こす。
<時間は………夜中の3時。
>………この感じ……。殺されたのか。
<この感覚はジェビルとの訓練中に何度も味わった。
<死の気配だ。
<だが、俺は生きている。ということは必然的に、“二倍”で作った俺が死んだと考えるのが妥当だろう。
<俺は、分身体に意識を巡らせる。
<分身体はどこで………嘘だろ?
<どうやら幽世で死んだらしい。
<……幽世…。行った事はないが、話に聞く限り鬼の迫害が一層過激な場所らしい。
<そこにあの男と?
<分身体とはいえ、数段力は劣るが、一応アレも俺だ。それに、“影潜り”には気配遮断能力もある。殺されたという事は、つまり気配遮断に気づかれたということだ。それも幽世で?
<………この嫌な予感当たっているのかもしれない。
<…一応行ってみるか。
<学校に欠席の連絡を入れ、クローゼットに手を突っ込み、ジェビル一押しの装備を取り出して着ると、デビルズナイフとまだ寝ているバクを引っ掴み、バクのストラップを右肩に。デビルズナイフを背中にかけると、家を飛び出した。
「アァ? なんだァサンズ。こんな朝っぱらからァ…」
<走っている最中に、揺れに気づいてバクが目を覚ました。
>緊急だ。バク。今どれくらい入ってる?
<荒々しく聞くと、バクは戸惑いながらも答える。
「金の話か? ……あー…10万くらいだな」
>分かった。バク。飯だせ。
「はァ…ったく、バック使いが荒いぜ…」
<バクは、さっきから何が何だか分かっていないようだが、俺の言うことに従ってくれている。
<バクは言いながら、巨大な舌でバクに中にあったパンを適当に引っ掴むと、ベッと外に吐き出した。
<俺はそれをキャッチして口に運ぶ。
「で? 行き先はどこだ?」
<バクの声を聞きながら、ショートカットでビルの上にう移動する。
>幽世だ。
<そして、走りながらバクに答える。
「ほォ! 幽世か! 旅行に人気なところだな!」
<バクが声を弾ませて言うが、俺はビルから飛び降り、その壁を蹴り付け反対側のビルに移動し、ビルによじ登ってから答える。
>いや、そんな穏やかなモンじゃなさそうだ。
<よじ登ったビルの真正面のビルにデビルズナイフの刃先を刺し、勢いをつけてデビルズナイフを引き抜きながら飛び上がり、真正面にあったビルの屋上に飛び乗る。
「なるほどなァ。おおかた、昨日の鬼神の嬢ちゃんか」
<走り出した頃にバクが言った。
>察しがいいバックパックで助かる。
<ショートカットを一回挟み、これまた真正面にあるビルの上に着地する。
「幽世ってのは…確かワープゲートを通らねェことには向こう側に行けねェんだろ?」
>ああ、その通りだ。
<言いながら、助走をつけてジャンプし、右斜め前にあるビルの屋上についているフェンスに右手をつき、右手を起点に体を一回転させ、右斜め前のビルのフェンスを飛び越えると同時に屋上に着地し、走る。
「お前のその慌て具合から伺うに。穏やかじゃねェな」
<屋上からジャンプして、パイプを掴み、ビルの側面をよじ登り、屋上に行く。
>そうだな。珍しく嫌な予感がする。
<屋上から、軽く地面と進行方向を見据える。
「じゃァ急げよ。すっとろいぞ」
<バクが笑いながら煽る様に言葉を発する。
<それと同時に、屋上からジャンプし、目の前のビルの屋上のフェンスに両手で掴まり、体を持ち上げ、屋上に着地してもう一度走り出す。
>うるせえよ背負われてるだけのバックが。
<登ったビルの屋上にあった給水塔に登り、もう一度あたりを見渡すと、軽くピョンと飛び跳ねてビルから落ちる。
<落下中に、右手の人差し指から糸を発射し、道路を跨いで反対側にあるビルの側面に糸を固定すると、体の重心を動かし、どこぞの蜘蛛男の様に移動する。
「おッ、言ったな? じゃあお前が背後から襲われても助けてやんねェぞ?」
<バクがそんなことを言うので、スイングの勢いで空中を浮かびながら、左手の五指から糸を発射し、目算で500m先のビルに糸を固定し、重心を移動させ空中を移動する。
>んじゃ、俺もお前がボロボロになっても補修してやんねーぞ。
<500m程先にあったビルの側面に5本の糸だけでくっつきながら言うと、バクは動揺混じりに焦りを隠せずに言う。
「お前ッ、そりゃずりィぞ!」
<バクの言葉とほぼ同時に右手の人差し指と中指から糸を射出し、これまた500m程離れたビルの屋上に固定し、左手の糸を全て引っ込める。
>分かってるよ、じゃ、この話は終いな?
<屋上にトトッと音を立てながら着地し、進行方向を見据える。
>………小路地か。
<多少面倒そうに言いながら、ビルの屋上から飛び降りて小路地に入る。
<狭すぎて糸では移動できない為、落下しながら背中から触手を左右対象に2本ずつ生やし、左右のビルを押さえつけながら進む。
「ぅへ、気持ち悪りィ進み方だな」
<バクが言うのを無視し、さらに触手のスピードを上げ、小路地から出ると、高い建物があまりにも少ない住宅街に出た。
<糸を使ってスイングする移動が封印された為、俺は背中から赫い羽を生やし、宙に浮かぶ。
「多種多様だな…ったくよ」
<空を滑る様に飛ぶ俺を見ながらバクがそんなことを言った。
>便利だろ?
「ああ、便利すぎて怖いぐらいだな」
>そりゃありがとさん。
<しばらく飛んで、俺はワープゲートのある建物まで到着できた。
<剛翼をしまってから、幽世に行く人達の列の並ぶ。
「そんでサンズ。お前の分身体は一体どこでやられちまったんだ?」
>ああ、空間も変なんだが場所も更に変でな…。見てみる限り、かなりボロい倉庫だったな。マークしてあるから場所を見失わないのだけが救いだな。
「へェ、そいつァなんとも怪しいな」
>ああ……っと、俺の番か。当日券の購入ってできますか?
<並び始めて五分もしないうちに俺の番になった。休日になると、幽世行きのゲートは死ぬ程混雑するらしいから平日で助かったところはある。
「はい、受け付けております。当日券ですと、一枚1万円からになっていますが」
>大人用を一枚貰えますか?
「分かりました。今すぎ発行いたします。少々お待ちください」
>分かりました。
<係員が奥の方に引っ込んだ。
「なァサンズ。お前、行ったところでどうすんだ?もしかしたら別になんも起きてねェかもしれないぜ?」
<バクがそういうのだが、行かないわけにもいかない。
>行かないで何かありました〜より、行って解決できました〜の方がいいだろ?
「まァ確かにそうだけどよ…」
>何もなかったら学校サボって幽世デートと行こうぜ?バク。
「…キメェ、オレにそんなこと言ってくんなよ…」
<バクがうざそうに舌打ちをしながら言った。
<とそこへ、先程の係員が戻ってきた。
「はい、こちら当日券となっております」
>ありがとうございます。
<言いながら、当日券を受け取り、バクの中から一万円ちょうどを引っこ抜き、係員の手に置く。
「それでは、よい旅路を」
<係員の言葉を背に受けながら、俺はワープゲートを潜った。
「ぉえええええ…?!」
<そして幽世初っ端で聞いたのはバクの嗚咽だった。
>ちょ、おま、バク?!
「なんだァ、ありゃ…死ぬ程酔っちまった…」
<珍しくグロッキーなバクを背負い直し、走り出す。
「……で、こっから…ぉぇっ……どんぐらいあんだ? …ぅっぷ…サンズ」
>吐くんじゃねえぞ。……大体25km前後ってトコだ。
<バクの問いに答えながらターミナルとなっている建物から飛び出し、背中から再び羽を生やし、空に浮き上がる。
「随分ぅっぷ…長えな…」
>ああ、だから回復すんなら今のうちだぞ。
「ケケケ…っぷ…忠告感謝……ぉぇ…するぜ」
<素直に礼を言うバクに少し驚きながらスピードを上げて空を飛ぶ。
>………遅いな。
<スピードを上げたはいいものの、それでもまだ。足りない。
<25kmを飛ぶには、些か遅すぎる。
<最高速…でもあまり変わらないだろう。だったら…。
<背中に再び触手を生やし、4本ある触手全てに、ブラスターを握らせる。
<そして、全弾同時に発射する。
<ドォォォォン! という独特の発射音と共に発射されたブラスターを空を切り、その分俺を加速させた。
「ぅおおっ?! おい、サンズ?! 流石にっ…!」
<バクが困惑混じりに言う。
>なんかあったじゃ遅えからな。今出せる最高速だ。我慢しろ。
「ンなこたァ分かってんだよ! オレが懸念してんのはお前がしっかり飛べんのかって話だ!」
>俺を誰だと思ってんだ…バク…。
「信じるぞ?! 信じるからな?!」
>あーはいはい。勝手に信じてくれ。
「安心感無ェなァ!」
<ぎゃあぎゃあ騒ぐバクを軽くあしらい、俺はそのまま風を切って進む。
<そして約五分後。俺は分身体が殺された倉庫へ辿り着くことができた。
「ぜはー…ぜはー……ひ、ひでェ目にあった…」
<たまたま地面に突き刺さっていた巨大な木の廃材の後ろに着地するや否や、バクが息を吐きながら言った。
>……バク。静かにしろ。
<だが、俺は、身を屈めてしゃがみながらバクを一喝すると、バクは一瞬で静かになった。恐らくバクも気がついたのだろう。
「…人間か。どうする?」
<まだ少し息が荒いが、バクの言う通り俺たちの進行方向上に、人間がいるのだ。
<それが一人で、かつ武器を持っていなければどんなに良かったことか。
<そう。俺達の進行方向を塞いでいる人間達は、ざっと数えて三十人強。もしかしなくてももっといるだろう。
<そして、全員完全武装。防弾チョッキやらマシンガンやらを持って厳戒態勢であたりを見張っているのだ。
「どうも見るからに怪しいなァ」
>ああ、同感だ。じゃあ…。
「おう、やっちまえサンズ」
<言わずもがなだ。バクに返事を返しながら、俺は左右の手を敵がいる方向に向け、糸を放った。
<数秒後、一番近くにいた男が、なんの前触れも音もなく膝から地面に崩れ落ちた。
<誰にも気づかれてはいない。次には、2番目に近かった者。3番目。4番目と連鎖していく。
<だが10人ほど殺した時だった。やはりこの数を殺すのを隠蔽し切ることはできない。
「おい、お前ら何を遊ん……でぇっっ?!」
>バレたか。
<舌打ち混じりに俺が言うと、背中に背負っていたバクが立ち上がってしゃがんだ。
<獰猛に牙を剥きながらバクは嗤って言った。
「ケケッ、なァサンズ。オレに行かせろ。酔ったからか?少し前からどうも腹が減って仕方ねえんだ…!」
<なぜ酔ったら腹が減るのか。疑問には思わなかった。というか疑問に思っている時間がなかった。
<バクがしっかりと立ち上がる。長い影が伸びていった。
<立ち上がったバクは巨大だ。
<2mを超える巨体。縦に細長い“口しかついていない”顔は、獰猛に歯をギラつかせながら笑みを浮かべていた。
<両手の甲に一つずつ付いた目が、ぎょろりと蠢き、敵を捕捉した。
<バクは、通称”人外”と呼ばれる異能の一つだ。要するに、霊とかそういうやつだ。
<バクの能力は、本来異次元の様なバックの内容量なのだが、もう一つに変身がある。
<変身すると、前述の通りデカいうえに2足歩行が可能になる。
<他にも、ジェビルに匹敵する怪力も備え合わせているのだ。
>ああ、いいぞ。殺ってこい。
「その言葉を待ってたぜェッ!」
<そう叫ぶと共にバクは風になったのかとツッコミを入れたくなる速度で敵の群れに突っ込んでいき、さっき仲間が死んでいることに気づいた奴を右手だけで引っ掴む。
「ひッ、いいいいい?! なんだ!? おい!? お前ら! 助けてくれえ!!」
<掴まれた男は、バクに気づいていない。
<そりゃあバクは人外なんだから常人には見えなくて当然だ。
<バクは、男を頭の上にぶん投げる様にして掲げると、ガバァッ…と大口を開け……男の体を手放した。
<バクの口は、そこらの名刀よりも鋭利だ。そんな口に人が放り込まれたら。どうなるかなんて想像に容易い。
<大きく開かれたバクの口に男が落下する。
「なッ、なんだあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”?!?!?! 痛いっ!? 痛い痛い痛い痛いッッッッッッッッッ?!?!」
<バクの口に放り込まれた男は、生きたままバクに捕食される。
<バクは、ジタバタと無我夢中に暴れる男をその怪力で黙らせ、無理矢理口内へ押し込んでいく。
「やっ、やめっ、やめろおおおおおおおおお!!!???」
<男の絶叫と共に、バクが口を閉じて男を飲み込んだ。上半身が千切れて地面にゴトっと音を立てながら落ちた。
<まだ死にきれていないのだろう。上半身が、「死にたく無い」と何度も繰り返し呻きながら、腕ガリガリと地面を引っ掻いている。
<その声と音を聞きつけ、何事かと別の男達が近づいてくる。
>バク…あいつ派手にやりすぎだ…!
<俺は咄嗟に、悪魔召喚を発動させ、ゴーストを呼び出すと、バクの援護に向かわせる。
<ゴーストは、バクの少し後ろで無数の手を伸ばし、男達を捕らえていく。
「ッ?! なんだ?! 動けッ…!」
「ぐッ、これはァッ!」
「なっァ?!」
<悲鳴を上げながら、男達が次々と捕まっていく。
「サンズゥ……ゥヒッ、全員捕まえたぜェ?」
<バクが愉快そうに嗤いながら言うのを聞いて、俺は立ち上がった。
>ああ。そうだな。
<言いながら、廃材の陰から出る。
<出た瞬間、男達の視線を受ける。
「お前か! さっさと外せ! 痛い目に見たくなきゃな!」
<ゴーストの手に締め付けられながらも、こちらを睨んでくる男に、こちらは言葉で返す。
>…お前は誰目線なんだよ。自分の状況分かってんのか? ビチグソ垂れ流しながら脅迫されてもなんの圧力も感じないんだが?
<言いながら、男の側頭部に蹴りをぶち込み、一撃で意識を吹っ飛ばす。
「お、おい! お前俺らが誰か分かってんのか?!」
<別の男がまたしても言葉を吐く。
>…知らん。だが、友人に関わってそうだからな。だが、違ったら後が面倒だ。だから食
うのを一人に留めたんだ。そんな事も分からないのか?
<冷めた視線で男を見つめる。
<…一人一人ぶっ叩いて気絶させるのも面倒だ。ならアレの試運転にいいかもしれんな。
<そう思い、俺は今まで使っていなかった能力を発動する。
>“刻々帝:時喰みの城。
<言うと、俺の左目が金の時計に変わり、俺を中心に地面が黒く塗り潰された。
<次の瞬間、左目の金の時計が反時計回りに、普通の時計では見ることのできないような速度で回転する。
「なっ、なんだ…? ちから…が……」
「くそ…ガキ……てめえ…なに、を……」
<ゴーストの手に囚われていた男達が次々と倒れていく。
>敵に教えてやる義理は無えな。バク行くぞ。
<呻き声を上げる男達は放っておく。
「あァ、分かってるよ」
<少し遠くの方で、震えながら鎮座しているゴーストを回収し、倉庫の扉の方に歩き出す。
「待て…! 殺す気か…?!」
<男の一人がそう言いながら俺を見ていた。
<…生ぬるい事をいうやつだ。俺は冷めた目で男を見ながら言う。
>…殺さないで欲しいのか? 残念ながら無理だな。お前らの寿命が尽きるか俺が友人を取り戻すか…どっちが早いかのチキンレースだよ。精々生き足掻いてみろ。
<言いながら俺は背を向けて歩き出す。
「ケケケッ、相変わらず、えげつねェことすんな……ァ? おい、サンズ。こいつら全員鬼じゃねえか?」
<バクは、最初の方こそ笑いながら言ってきたが、改めて男達を確認したのか、ん? と疑問顔でオレに言葉を放った。
<俺もバクの言葉に少し疑問を抱き、歩みを止めて奴らを見直した。
<…確かに、頭から少しだけ突き出たツノが見える。バクの言う通り、男達は鬼だった。
<読心を発動して鬼達の心を読む。
>……成程な。仕事もなくて家もなくて…。自分達は何もしていないのに事あるごとに居場所を追われて…そんでたまたまボスっぽい奴に金積まれたって感じか?
<鬼達が肩を揺らす。動揺しているのだろう。
<読心で読み取っただけで、完璧に当てられた訳ではないだろうが、恐らく9割方合っていることだろう。
<奴等の種族が鬼だった事には驚いたが、敵である可能性がある以上、やることは変わらない。俺は再び背中を向けて歩き出した。鬼達はもう衰弱して声も出ない様だ。
<さっき使った能力。時喰みの城は、範囲内にいる生物の”寿命“を吸い取る技だ。
<吸い取った寿命は、そのまま俺に移動する。その証拠に、今も左目の金の時計が反時計回りにぐるぐると回っている。
<少し歩いて、巨大な倉庫に着いた。
「見れば見るだけでけえな」
<バクが倉庫を見てそう言った。
<確かにでかい。変身したバクの10倍。いや、もしくは15倍だろうか?天井は高く、敷地面積もでかい。目算から想定するに、恐らく豪華客船の一艇くらいは入ってしまうだろう。
>だけど廃れてるな。
<そう、俺の言葉の通り、木でできている倉庫は、既にカビが繁殖しまくったためか変色し、元の赤い木材が見えなくなっていた。ところどころに打ち込まれている釘なども錆びてボロボロになっている。遠目から見ていた時も思ったが、いかにも怪しい。
「ケケケ、油断すんなよ? 何があるか分かんねェからな」
<バクが真剣そうな声音で言った。バクらしくもない。
<バクの言葉に頷き、両開きの巨大な扉に手を添える。
>…開けるぞ。
「ア? みなまで言うな。分ァ~ってるよ」
<巨大な舌でバクはベロリと舌なめずりをした。
<それを横目で見ながら、倉庫の扉を開ける。
<ぎ、ぎ、ぎ、という錆びついた音を響かせながらも、扉は開いた。
<中に入る。バクも俺の後ろを付いてくる。
<……誰も居ない。屋根があるため、真っ暗闇で、その中にハエが数えきれないほど飛んでいる以外には何も見受けられない。
「………? なんだァ、誰も居ねえじゃねェか」
<バクが拍子抜けした様に声を上げた。
<その時だった。
<気配感知に、大量の気配が引っかかる。
<ハエだ。8方向全ての暗がりから、一斉に大量のハエが飛び出してきたのだ。
<…あまりのキモさにそんなことしている暇が無いと分かっているが思わず鳥肌が立つ。
>ッッ?! “蒼炎”!
<多少焦りながらも、足元に向かって踵押しを決める。
<すると、俺を中心とした半径5m程のあたりに蒼い炎の壁が立ちはだかり、辺りがボッと明るくなった。
<円形に広がった蒼炎にハエ達は、なす術なく勢いのまま突っ込み、超高熱で持ってその身を焼き滅ぼさせていく。
「なッ、なんだってェの…!」
<バクが驚き混じりに言う。
<まだ何か言おうとしていたが、それは別の声に阻まれた。
「クフフフフ…先程の不意打ち…よく防げましたねぇ」
<暗闇から声がする。蒼炎の明かりが届かない奥の方からだ。
>……誰だ? 返答とその内容によっては体にでけえ風穴ぶち開ける事になる。言葉は慎重に選べ。
<俺は声音を低くして威圧する様に言う。
<だが、暗闇の中にいる人物は、怯えた様子もなく言った。
「私の名ですか? クフフ…そんなに知りたいのなら教えてあげましょう」
<一拍おいてから、影の奥にいる人物は自らの名を名乗った。
「お初にお目にかかります。私、魔王軍四天王が一角。ベルゼブブと申します」
<目の前にいるのであろう人物は、そう名乗った。
>なっ、ベルゼブブ…?!
<背後にいるバクからも動揺が伝わってくる。
<ベルゼブブ…。アイツは魔王国エル・ロコの魔王軍の四天王の一人…。
<ハエを従える悪魔…。成程。通りでこのあたりはハエが多いわけだ。
>……魔王軍の四天王サマがこんなド田舎で一体何してんだ?
<俺の質問に、ベルゼブブはさもありなんと答える。
「クフフ…魔王様の意向でして…現世(うつしよ)の征服をする時に幽世からの援軍を危惧してまずは幽世を征服してしまおうとのことでして…」
<耳障りに嗤いながら、ベルゼブブは言った。
>…へえ? そんなに喋って大丈夫か?
<問うと、ベルゼブブは背後から大量のハエを呼び出しながら、いやらしい笑みを張り付けて言う。
「ええ、大丈夫ですよ。なぜなら…………貴方には死んでもらう予定ですので」
>チッ、気色悪ィ……ああ、そうかい。ご丁寧に全部喋ってくれて感謝するぜ。くそったれが。
<ザッと感知した感じ、ここに百鬼の気配は無い。
<だが、ベルゼブブを放置しておく訳にもいかない。
「して…貴方は如何様でここまで?」
>………友人を探しに来た筈なんだが…今に話を聞くに、お前を放置するのは良く無いと判断した…。だから。
<左手にカオススライサー、右手にカオスセイバーを顕現させ、背中から触手を4本生やし、口を開ければ、口内から蒼炎がボォッと巻き上がり、両目が、火がついたかの様にゆらゆらと揺らめき、バクが背中から飛び出して巨大化し、獰猛に歯をギラつかせながら頬を裂く。
<同時に、この建物の外周全体に蒼炎を走らせ、あかりを点ける。
>…お前を殺す。
<カオスセーバーの切先をベルゼブブが居るであろう暗がりに向ける。
「……嗚呼、殺さなくてはならない馬鹿者がまたやってきてしまった…」
<ベルゼブブは悲壮感たっぷりにそう言うが、言葉の端々に笑みが浮かんでいるのを俺は見逃さなかった。
<ブブブブブ…と何かがこちら側に飛んでくる羽音が聞こえ、蒼炎の明かりが届く範囲にベルゼブブが入った。
>ッ、
「なんだありゃァ…」
<俺とバクが同時に反応を見せる。
<ベルゼブブは、ハエをそのまま人間の大きさに置き換えたかの様な見た目をしていた。
<だが普通のハエとは違い、紫色と黒の中間あたりの色の光沢のある外殻と、人間の頭蓋骨の様な頭部の横からそれぞれ飛び出した赤い目玉。そして右側の手全てに握られる人間の頭蓋骨が乗ったロッドが目を引いた。
<口は縦よりも横に少し長く、左右の口の端から象牙の様な牙が突き出ていて、口には人間の歯の様なものがついており、左右の羽に、それぞれ髑髏のマークが刻まれている。尻尾の先端には、スズメバチを思わせる長い針がついている。刺されたらマズイのは、体験しなくても良く分かった。
「最初から私が出張るのは…少々面白みに欠ける。こういうのは如何です?」
<ベルゼブブはそう言うと、ハエの大群を何処からともなく飛び出してきて、空中で球体を作った。
>…………なんだと…?
<その球体の中にある気配を察知して、俺は思わず声を溢す。
「おいッ! おいサンズ! あの中には何があるってんだ!」
<バクが焦りを前面に押し出した声で聞いてくる。
<………。答えなかった。
>…そのうち分かる。
<俺は尚もニヤついた表情を隠さずにこちらを見つめるベルゼブブを睨んだ。
<ベルゼブブは、こちらを煽る様に手で肩を抱き、ブルリと身を震わせてみせた。
「な……ァっ、サンズ…。ありゃァ…!」
<バクが驚愕した様に言う。
<実際驚愕していたのだろう。
<ハエの球体が消え失せ、その中にいた人物が床に降りてきた。
「貴方のお友達というのは…ひょっとしてこの方ですか?」
<…。恐らくアイツは分かっているのだろう。
<…降りてきた人影は……。
<俺の探していた友人。百鬼あやめだった。
完全に私事なんですけど、寝不足すぎてやばいので今日は早めに寝ます。
明日部活のコンクールなので…まあがんばります。