プレイリストの中の艦娘   作:青色3号

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手紙/Uru -雪風-

空がようやく白み始めるその時間、目を覚ましてようやく見慣れるようになった天井を見つめる。一糸まとわぬ身体をベッドの上に起こし、胸元を布団で覆い隠しながら雪風は傍らの提督の寝顔に目をやる。

 

 

提督が、目を覚ます。雪風の姿に気がついて、声をかける。

 

 

「もう、起きていたのか?」

 

「ハイ。なんだか目が覚めちゃって」

 

 

そうか、と寝た姿勢のまま提督は呟く。その腕が雪風に伸ばされる。雪風の細い腕を掴み、提督はその小さな身体を自分の方に引き寄せる。

 

 

「え、しれえ……」

 

 

雪風はそのまま組み伏せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セーラーワンピースと格闘しながら雪風が大きな声をあげる。

 

 

「も~!遅刻寸前じゃないですか!せっかく早起きしたのにぃ~!」

 

「ゆ、雪風があまりにかわいいから……」

 

「そんなこと言ったってごまかされません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りの演習と座学を終え、雪風は駆逐艦寮の裏の干し場に立つ。色とりどりの洗濯物が風に揺られてそよそよとそよぐ。自分の制服の替えを物干し竿に引っかける雪風に天津風が声をかける。

 

 

「雪風、洗濯?」

 

「うん」

 

 

雪風の方に足を進め、意味ありげな表情浮かべながら天津風が悪戯っぽい声を出す。

 

 

「そうね、下着なんかいくらあっても汚れちゃうものね」

 

「あ、天津風!」

 

 

真っ赤な顔で噛みつきそうな顔をする雪風に天津風はくすくすと笑い声向ける。その表情を和らげ、天津風は雪風に言葉向ける。

 

 

「雪風はいつも楽しそうね……退屈なんて、知らないみたい」

 

「うん、毎日楽しいよ。退屈なんてしているヒマないよ」

 

 

えへへ、と笑って雪風は応える。目を閉じ、祈るように胸の前で両手組み合わせ雪風は言葉紡ぐ。

 

 

「この毎日も、しれえがくれたものなの。だから、毎日楽しいの……愛おしいの」

 

 

そっか、と天津風は微笑浮かべる。雪風が目を開いて空を見上げる。

 

 

「勿忘草色だ」

 

「勿忘草色?」

 

「うん」

 

「その言葉も、あの人に教わったの?」

 

「うん」

 

 

天津風もつられて空を見上げる。澄んだその色を見上げ、天津風は呟く。

 

 

「きれいね」

 

「うん」

 

 

綿菓子のような雲がひとつ、勿忘草色を流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岸壁を、雪風は歩く。海からの風が心地よい。

 

 

「雪風、散歩かい?」

 

「あ、時雨」

 

 

立ち止まって雪風は時雨の近づくに任せる。雪風の前に来た時雨が雪風の膝に貼られた絆創膏に気づく。

 

 

「それは?」

 

「あ、今日の演習ですりむいちゃって。そしたら、しれえが貼ってくれたの」

 

 

愛おしげに雪風は膝の絆創膏に目線を落とす。時雨の顔に優しい微笑み浮かぶ。

 

 

「大切に、されているんだね」

 

「うん」

 

「雪風、そういえば少し提督に似てきたね」

 

「そうかな?」

 

 

微笑はそのまま、声色を少し変えて時雨は呟く。

 

 

「もうすぐ、出撃だね」

 

「うん」

 

 

日の迫る大規模作戦への出撃、そのことを思い出させないかのように海は静かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

埠頭に艦娘母艦が停泊している。その艦内に艦娘が吸い込まれていくのを見守る提督に向かい、雪風は笑顔で敬礼捧げる。

 

 

「しれえ、行ってきます」

 

 

言葉の代わりにひとつ頷く。変えぬ笑顔で雪風も力強く頷き、身を翻す。その小さな背中が遠ざかってゆくのを提督は見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督執務室に戻り、提督は椅子に座る。机の上の封のされていない封筒に手を伸ばす。雪風が、残していった手紙。いつも、出撃前に置いていく手紙。

 

 

 

便箋を広げる。

 

 

 

少女特有の丸っこい文字で提督への言葉が並べられている。しれえの部屋に、慣れてきたこと。天津風に、からかわれたこと。時雨に、しれえに似てきたと言われたこと。

 

 

 

会えなくて、少し寂しいこと。きっと、無事に帰ってくること。

 

 

 

最後に他のより少し大きい文字で書かれた結び―――『しれえは、雪風のほこりです!』

 

 

 

 

帰ってきたら、また話したいことが増えたなと提督は思う。それまで、雪風が帰ってくるまで鎮守府の窓明かりを絶やさないようにしようと思う。また何度も読むだろうその手紙を、提督は机の引き出しの奥にそっとしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、艦娘たちが帰還する。白い制服の少女が、満開の笑顔で執務室に姿を現す。

 

 

「しれえ、ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

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