プレイリストの中の艦娘   作:青色3号

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銀の龍の背に乗って/中島みゆき -龍驤-

少女たちが海面を疾走する。焦燥感もその顔に露わに、機関を暴発するほど酷使して。貨物船から入った救難信号、その海域を目指し龍驤たちは疾走する。

 

 

「急げ、急ぐんや!このままじゃ間に合わへん!」

 

 

貨物船に深海棲艦が追いつく場面が見えるようで、龍驤は歯を食いしばる。艦載機の発艦可能海域まであと少し、しかし急く気持ちと裏腹に距離は一向に縮まらない。

 

 

ほどなく、無情なモールス信号が龍驤たちのもとに届く。

 

 

『第四福栄丸、通信途絶』

 

 

間に合わなかった―――全身から、力が抜けるような気がする。それでも機関は全力稼働をやめない。閉じた目に涙を溢れさせる龍驤の食いしばった唇から呟きが漏れる。

 

 

「ごめんな……堪忍なあ……」

 

 

それでも龍驤たちは機関を減速させなかった。もう、何もその海域には存在しないと知りながら。

 

 

 

 

 

 

 

月明かりがカーテン越しに窓から差し込み、ベッドに裸身を横臥させる龍驤を照らす。

 

 

「強くなりたいなあ……」

 

 

傍らで龍驤に身体を向ける提督がその呟き拾う。言葉の続きを待つ提督にか、それとも自分にか龍驤は囁きを続ける。

 

 

「強くなりたい……もう誰も、悲しませんでも済むように」

 

 

提督の掌が、龍驤の髪に伸ばされる。提督の大きな手が自分を撫でるのを感じる。

 

 

「なんで、うちらは人の姿に生まれ変わったんやろな。艦の姿のままなら、考えなくても済んだのに」

 

 

返事の代わりに提督は龍驤を撫でていた手を外し龍驤の指に己のそれを絡める。龍驤が縋るように自分の指を絡め返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、昼下がり。龍驤は空いた時間を多少持て余しながら鎮守府を歩く。岸壁沿いの倉庫の並ぶ一角に辿り着いたとき、向こうから体操服姿で走ってくる海防艦の姿が目に入る。

 

 

「えっほ、えっほ」と声を出しながら一定のペースで近づいてくる佐渡をなんとなく龍驤は待ち受ける。龍驤に気が付いた佐渡が手足の動きを止めぬまま龍驤の目の前で静止する。

 

 

「龍驤さん、おっす!」

 

「佐渡、自主練か?」

 

「うん!」

 

「感心やなあ。お姉ちゃん、頭が下がるわ」

「えへへ、佐渡様も強くなるんだ!」

 

 

その言葉が思いがけず龍驤の胸を打つ。自分の言葉が龍驤にもたらした効果を知る由もなく佐渡は続ける。

 

 

「誰も、悲しませないで済むように。みんなを、護れるようになるために……佐渡様だって頑張るんだぜ!」

 

 

龍驤に向かい笑顔広げ、佐渡はそのままランニングを再開し龍驤とすれ違う。振り向き、遠ざかる小さな背中を目で追いながら龍驤はどこか遠くを見るような顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

それから間もなく、演習場に龍驤の姿があった。

 

 

演習海域から戻り、桟橋に近づく。桟橋に上がる直前、そこで自分を待ち受けていたらしい提督の姿に気がつく。桟橋の手前で機関を止める龍驤に提督が声をかける。

 

 

「龍驤、自主練か」

 

 

微笑んで頷く。提督の瞳をまっすぐ見つめ龍驤は言葉紡ぐ。

 

 

「強くなりたいやない……強く、なるんや」

 

 

提督が無言で龍驤の言葉を待つ。その提督に向かい、龍驤は言葉向ける。

 

 

「泣き言なんて言ってられへん。後悔なんて、してられへん。痛みも、悲しみも全部全部翼に変えて、うちはもっと強くなるんや」

 

 

目を閉じ、胸に両手を当てて龍驤は続ける。

 

 

「今は、まだ綿埃みたいな翼しか持てんかもしれへん。それでも、うちは強くならなあかんのや……もう誰も泣かない世界を造るために」

 

 

目を開き、照れたように「へへっ」と龍驤は笑って見せる。その龍驤に微笑み向けて提督は手を伸ばす。その手を取って龍驤は桟橋に上がる。柔らかな肌越しに、人の痛みを知り、人の強さを感じながら。誰かが飛ばしたのだろう艦載機が、ふたりの頭上で翼を輝かせる。

 

 

 

 

 

今はまだ、頼りない翼でも―――

 

 

 

 

―――いつか、龍の背に乗り羽ばたく日が来ると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

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