野郎リンカネーション~スケベ淫魔の転生冒険者学園日記~   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第10話「リンネア教頭、なんか若返る」

「襲わないって信じてたのに……嘘つきぃ……!」

 

 真っ赤な顔で自分の上に馬乗りになっているリンネアを見て、春夢はこれはどういう状況なんだと寝ぼけまなこで考えた。

 やがてぼけーっとした顔の焦点が合い、うわっと慌てて眼を逸らす。

 

 何しろリンネアの今の恰好ときたら、野暮ったいパジャマのトップスは汗だく。ボトムスに至っては寝ているうちに暑くて脱いでしまったのか履いておらず、汗で濡れたのかスケスケになったパンツだけだった。いくら同性で親しい仲でも、これは度を超してるんじゃないか……!?

 

「な、なんて恰好してるんだよリンネア!」

 

「今更何言ってるのよ、あんなポーズまでさせておいて! 本当にすごく恥ずかしかったんだからね……!? やめてって何度言っても聞いてくれないし……!」

 

 真っ赤な顔で唇を尖らせ、リンネアはう~っと拗ねたような声を上げた。

 え? これどういう感情?

 剣幕は激怒しているようなのだが、なんだか甘えているようにも見えて、春夢は困惑した。リンネアのこんな表情はかつて見たことがない。

 

(それにしても……一晩でなんか、綺麗になってない?)

 

 横目でリンネアの顔だけ見つめながら、春夢は違和感を覚えた。

 寝る前よりもお肌がツヤツヤしている気がするし、瞳もいきいきと輝いている。昨日が30代前半くらいとすれば、今朝は20代後半くらいの年齢に見える。その分言動と仕草は少し幼くなった気がするが、こちらの方が『グレン』にとっては馴染み深い。

 緑の種族は精神が容姿に与える影響が大きいと聞いたことはあるが、自分と再会したことで精神にハリが出たのだろうか。だとしたら嬉しいが。

 

 そんなクソボケなことを考えていると、焦れたリンネアがむうっと声を上げて春夢の顔をつかみ、無理やりこちらを向かせた。

 顔は耳の先まで真っ赤、上目遣いでじっと睨みながら、何やら手指を落ち着きなく組み替えてもじもじしている。

 どうしよう、BBAがとても可愛い。

 

「あ、ああいうこと女性に勝手にしちゃダメなんだからね。そりゃ嫌ってわけじゃないけど……こっちだって心の準備ってものがあるし」

 

「準備って?」

 

 小首を傾げる春夢に、今度はリンネアが眼を逸らしながらぼそぼそと小声で呟く。

 

「だからその……お手入れとか。パジャマも下着も、もっとぐっと来るの持ってるし。……その、ロマンチックかどうかって言われるとすごく良かったし、丁寧ではあったけど……欲しいなら欲しいって先に言ってほしかったな、なんて……」

 

 困ったぞ、まるで話が見えてこない。

 このままリンネアの言葉を聞いていても埒が開きそうもないので、春夢は仕方なく地雷原に踏み込むことにした。

 

「……あの、リンネア。さっきから何の話をしてるの?」

 

「何をって! だ、だから、さっきの話! あ、貴方、夜這ぃ……したじゃない……」

 

「はい?」

 

 ありえない単語が出て、春夢は一瞬硬直する。

 夜這い? それって寝ている女性のところに、男が押しかけて関係を迫るっていう……あの?

 

「い、いやいやいやいや! ないない、そんなことしてないから!」

 

「はぁ? あんだけ好き放題やっておいて、何を言うかな。警察に突き出したりなんてしないから安心しなさい」

 

「警察!? ……いや、本当に身に覚えがないんだけど……」

 

「なんでそんなウソつくかなぁ。したでしょ! 夢の中で……!」

 

「夢の中で……?」

 

 春夢はふうっと安堵の息を吐くと、明るい笑い声をあげた。

 

「あははは、なーんだ、夢かぁ。リンネア、さては寝ぼけて夢と現実をごっちゃにしてるな? もう朝だよ、顔を洗って目を覚ましてこいよ」

 

「え……?」

 

「私がリンネアに夜這いなんてするわけないだろ。そんなに信頼されてなかったのかと思うとちょっとショックだけど、まあ夢の中の話だし許すよ」

 

「いや、だから夢の話よ?」

 

「うん、だから夢の話だろ?」

 

「………………」

 

 何か重大な食い違いが発生している。

 リンネアは顎に指を置き、少し考えた。

 

 夢魔族は『精神感応』という固有能力を持つ種族だ。その本領は他人の夢の中に侵入して、自分の好きな夢を見せること。

 どう考えても春夢は昨夜その能力を使って、リンネアに夜這いを掛けた。それは間違いないはずだ。

 リンネアの経験と緑の種族としての勘がそう告げている。ついでに体中がジンジンと甘く疼いて、昨夜の行為のリアルさを訴えているし。ええい鎮まれ。

 

 しかしそれにしては春夢に悪気がなさすぎる。

 グレンは生涯を親友の剣として捧げるために、女を断った男である。誇り高き童貞なのだ。

 いくらサキュバスに生まれ変わったからといって、そこには葛藤があって然るべきだし、妹分のリンネアに手を出した負い目もあるはず。

 少なくとも自分とグレンにはそれだけの信頼があるとリンネアは信じている。

 

 だが、春夢の顔には罪悪感がまるで読み取れない。

 

 

「……グレン、貴方昨日は何か夢を見た?」

 

「ん? なんか何もない荒野で大きな枯れ木を撫でる夢を見たよ」

 

「か、枯れ木……」

 

 さりげなくショックを受けるリンネアに気付かず、春夢は笑顔で続ける。

 

「撫でてるうちにどんどん樹が生気を取り戻していってな。それがなんだかとても可愛く思えてしまって、夢中で愛でてたっけ。すごくいい香りもしたし、いつの間にか肩に止まってた小鳥の声も可愛くて。喉が渇いたなって思ったら樹の洞に樹液が溜まってて、それがとても美味しく……」

 

「も、もういい! もういいからっ!!」

 

 リンネアがあわあわと手を前に突き出した。ヤカンを額に置いたら沸騰するのではないかと思えるほど真っ赤になっている。死にたい。

 しかしこれで間違いない。

 

 春夢は昨夜、リンネアの夢の中に侵入した。

 しかし春夢は自分が精神感応を使ったという自覚がなく、しかも同じ夢がまったく違った内容として認識されている。いや、大筋では同じといえば同じなのだが、受け取り方が全然違う。なんであの情熱的な一夜が爽やかなハイキングになってしまうのか。

 

 しかしそれを素直に春夢に教えるのはキツいんじゃないか、ともリンネアは思う。

 

 グレンは親友の勝利のために生涯不犯を誓い、死ぬまでそれを愚直に実行するような誇り高い男である。サキュバスになったとはいえ、無意識のうちに妹分に夜這いをかけて好き放題したと知ったら、即座に腹を切って死ぬのではないか。

 

 サキュバスになったから大切な人に無意識で手を出しただと? ならばもう一度死んでその手を切り落とす。そういうことをやりかねない男である。

 

 せっかく還ってきたのに、そんなことでまたいなくなられてたまるか。

 よし、黙っていよう。これから夢の中で何をされても、自分さえ黙っていれば……。

 そこまで考えて、リンネアは再びボッと顔を赤らめる。

 

(え? あれをこれから毎日されるの? む、無理無理無理っ!! 頭おかしくなる! )

 

 リンネアの冒険者としての生存本能が、すさまじい勢いで警鐘を上げた。

 このままだと身も心も日常生活を送れない体にされてしまう……!

 

(ドハマリしてグレンのことしか考えられないカラダにされる! 一生引きこもってグレンを抱きしめて寝てるだけの人生になるっ!! 淫夢中毒の色ボケBBAエルフにされるっ!!)

 

「や、やっぱりウチに住むのナシ! 寮に住みなさい!!」

 

「えっ? でもここに住んだ方がいいって……」

 

「い、いろいろと不都合があるからダメ! よく考えたらハウスキーパーもいるしね! うんっ!!」

 

「あ、はい……」

 

 錯乱して何を口走っているのかわかっていないようである。

 リンネアは深呼吸して無理やり気を落ち着けた。

 

「……いい、グレン。貴方は『精神感応』能力が暴走して、他人の夢の中に勝手に入ってしまっているの。昨日貴方が見た夢は、私が見た夢と大体同じなのよ」

 

「そ、そうなのか!? ……え、そうか?」

 

「そ う な の よ !!」

 

「ハイ」

 

 昨日の夢を見てそんな反応になるかなあ?と首を傾げる春夢だが、リンネアの勢いに押されてこくこくと頷く。

 

「この状況は極めて危険だわ……!」

 

「そうか……確かにそうだな。他人の頭の中に勝手に入るなんて許されることじゃない」

 

 まあ普通に考えてこんな昏睡レ専門ドスケベ淫乱魔人を女子寮に入れるなど子羊の群れに飢えた狼を解き放つような暴挙でしかなく、我が身可愛さに生徒を差し出したとしか言いようがないのだが。

 別にリンネアとて何も考えずに保身を口にしたわけではない。

 

「だけど、いい方法があるの。私の知人に、貴方の能力の暴走を食い止めるのにうってつけの人材がいるわ。そして偶然にも、その人は貴方がルームシェアするはずだった生徒なのよ」

 

「おおっ、さすがリンネアだ! 頼りになるなぁ!」

 

「ふふ、まあね。というわけで早速入寮先に向かうわよ」

 

 そのとき、春夢のお腹がぐぅ~~、と可愛い音を立てた。

 昨日の夜あれだけ食べたのにすっかりスリムさを取り戻したお腹は、本日のエネルギー源を訴えている。まあ昨夜あれだけ運動したんだから仕方ないですね。

 春夢は顔を赤らめながら、切なげな上目遣いを送った。

 

「あの……」

 

「……どっかで朝ご飯食べてからにしましょうか」

 

「やったあ!」

 

 

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 ブルースクワッド冒険者学園。

 そこは大陸中から冒険者志望の学生が集まる、世界最大の学府だ。

 単に冒険者に必要なスキルやノウハウを教えるだけではなく、研究者によってダンジョンから産出される資源の研究やモンスターやダンジョンという特異な()()の究明も日夜行われている。

 

 多数の訓練施設や研究棟、そして学生寮を抱える学院の規模は、一般的な冒険者学校とは比較にならない。講師の質は一流、訓練施設の充実ぶりも一流、そして集まる人材の癖の強さは規格外。

 学生たちの間では、全寮制になっているのは極秘の研究内容が外部に漏れるのを防ぐためとも、個性と呼ぶにはあまりにも度が過ぎる学生や教員たちを管理下に置くためとも噂されている。

 

 春夢が連れられてきたのは、構内にいくつかある学生寮のうちのひとつだった。

 午前を少し回ったくらいの時間帯だが、新学期を数日後に控えた今は、寮内にも私服姿の寮生たちが何人かうろついていた。ヒューム、ウィッチ、デーモン、マーメイド、エルフ、ドワーフ、獣人と多種多様な少女たちが集まる姿は、さながら種族の博覧会のようだ。

 

 女三人寄れば姦しいとはよく言うが、若い女の子がきゃいきゃいとはしゃぐ声は前世では中年手前だったグレンの耳に痛く、女の子しかいない空間には心なしか生々しいまでの匂いが立ち込めているような気さえする。

 

(い、いたたまれない……)

 

 本当にここは自分のようなオッサンがいていい場所なのか。とんでもなく場違いな気がしてならない。今からでも男子寮に入寮すべきでは……?

 

 なんだか寮生たちから監視されているような気さえして、春夢は身を縮こまらせながらぎくしゃくとリンネアの後をついていく。

 

 ええい、平常心だぞグレン。自意識過剰になるな、自分は見られても噂されてもいない。人間は他人にそれほど興味なんて持っちゃいないんだ。他人の視線をあえて意識しないのが潜入行動の基本、じゃなきゃ逆に怪しまれることになるぞ……!

 

 

「見て、あの子すっごい美人……!」

 

「うわー髪の毛サラッサラじゃん。新入生だよね、種族は何だろ?」

 

「緊張しちゃって初々しいなぁ。お姉さんたちが可愛がってあげなきゃ」

 

「ぐへへ、手取り足取りお世話してお姉さまって呼ばせちゃるけんのう……!」

 

 なお、実際見られまくっているし、噂されまくっていた。

 教頭のリンネアに先導されているから寄ってこないだけで、そうでなければ女子たちに揉みくちゃにされていることだろう。女の子だって可愛い女の子は大好きだ。

 

 それに冒険者という業界では、先輩は後輩を大切に扱うものだ。いずれ冒険中に窮地に陥ったとき、助けてくれるのはかつて恩を売った後輩かもしれないのだから。

 

 先輩たちの熱視線を受けながら、春夢は本当にこの環境でやっていけるのか内心不安になりつつあった。うん、やっぱり気のせいじゃなく見られてるよこれ。

 

「リンネア、大丈夫かな。私、目立ってない?」

 

「それだけ可愛ければ仕方ないわね。ま、物珍しいだけよ。美人は三日で飽きるっていうでしょ?」

 

「そのことわざは嘘だと思うが。リンネアの顔はどれだけでも眺めていられるぞ」

 

「…………」

 

「あっ、いきなり早足になるなよ、もう!」

 

 耳を赤く染めたリンネアの後ろ姿を、春夢は慌てて追いかけていった。

 

 

 やがてたどり着いたのは、何の変哲もない一室のドアの前。

 この一角は新入生ばかりなのか我が物顔にたむろする先輩たちの姿もなく、あたりはひっそりと静まり返っている。リンネアがドアをノックする音が、廊下に響いた。

 

 

「失礼するわ、ルームメイトを連れてきたわよ」

 

「あっ、はーい!」

 

 ドアの向こうから小さな声が聞こえる。

 声の大きさと、足音は聞こえないところから、結構防音がしっかりした建物なんだなと春夢は思う。

 

「ごめんなさい、待たせちゃって……」

 

 利発そうな顔立ちの少女だった。

 緩やかにウェーブのかかったこげ茶色の髪は肩のあたりで切り揃えられ、ふわりと柔らかく広がっている。

 まなじりにはイキイキとした意志の強い光があり、これは自分への自信と聡明さを持つ者の目だと春夢は感じた。瞳に知的さを感じるが、かといって怜悧で近寄りがたいという感じはしない。幼げな顔立ちと活発な仕草が、親しみやすい印象を与えていた。

 

 春夢と同い年くらいだが、身長は春夢の胸くらいでやや小柄だ。

 

 一見すると白の種族のようだが、ルビーの色をした瞳には二重の輪のような形状をした光彩が浮かんでいて、それが明らかに彼女の種族を示していた。

 黒の種族のひとつ、マギ族。ウィッチとも呼ばれる、魔術の扱いに長けた一族だ。

 

 ……かつて殺し合いを演じた『魔族』の末裔と同居することに一抹の不安と後ろめたさを感じる春夢だが、まあ『魔族』に成り果てた今の自分が言えたことでもないし。

 

 そんなことを思う春夢の目の前で、少女の顔が恐怖に引きつった。

 

「ヒィッ!? リ、リンネア先生……!!」

 

「……ご挨拶ねー、(しずく)。それは1年ぶりに会った師への礼儀として相応しい態度かしら?」

 

「い、いえ。久々に先生を目の当たりにした感動で思わず喉が震えまして。あはは……」

 

「……先生?」

 

 どういうことだろうか、と春夢は小首を傾げる。

 この子は上級生で、リンネアに指導を受けていたとか? しかし普通はこういう学舎でルームシェアをさせるなら同期を宛がうものではないだろうか。

 不思議そうな顔をする春夢を、リンネアが振り返る。

 

「この子は冒険者学校とは別口の教え子でね、ちょっといろいろあって指導したことがあるのよ。雫、こちらは貴方のルームメイト。これから仲良くしてあげてね」

 

 リンネアが春夢を押し出すと、雫は自分の胸に手を置き、ほっと息を吐いた。

 小さく咳払いして、にっこりと友好的な笑みを浮かべてくる。

 

「初めまして、ルームメイトの朔月(さかづき)(しずく)です。緑龍帝国の出身で、種族は魔女族(マギ)。貴方よりちょっと前にこの寮に来たけど、同じ新入生だから気にしないで」

 

「あ、ああ。私は茜川春夢だ。種族は……その……サキュバス……」

 

 

 ドン引きされるのではないかと小さく呟き、上目遣いに様子をうかがう春夢だが、雫はわぁっと両手を合わせると喜びの声を上げる。

 

「あ! その名前だと、もしかして貴方も帝国出身とか?」

 

「う、うん」

 

「そっかぁ。良かったー、同郷の人で! ホントは少し心細かったけど、寂しくなくてありがたいわ。えへへ、これからよろしくね!」

 

「ああ。こちらこそ」

 

「はいはい、積もる話の前にちょっと中に入ってね」

 

 リンネアは春夢と雫の肩を抱いて部屋の中に入れ、後ろ手にドアを閉める。

 そんな彼女の様子に内心でわずかに首を傾げながらも、こちらを向いて友好的な笑顔を向ける雫に微笑み返した。

 

 よかった、この子とならうまくやっていけそうだ。社交的で世話好きのようだし、新生活の第一歩を踏み出すにあたって最高の隣人を得たと言える。

 そんなことを思いながら、春夢は握手のために右手を差し出した。

 

「これからよろしく頼む」

 

「ええ、こちらこそ――」

 

 差し出された春夢の手を、雫の手が握り返す。

 

 その瞬間、激しい電流が2人の手を走り抜けた。いや、実際に走ったわけではないが、しかしそれに極めて近い感覚。互いの魂と魂が、つながれた手を通じて回路を形成したかのような。

 

 この相手は絶対に忘れもしない。たとえ死んで生まれ変わっても、結ばれた(よすが)は消しようもない。肉体と精神が失われても、魂は覚えている。たとえ相手の器が変わっても、縁を結べば一目で分かる。この宿縁をどうして忘れられようか。

 

 だが……こんなにも懐かしく、そしてやっと取り戻したという想いが魂の奥底から湧き上がるのは何故だ。

 

 

「……お前は、大魔導……!!」

 

 かつて自分を殺した少女を、春夢は愕然とした顔で見つめる。

 

 今すぐこの場で息の根を止めるべきか。戦いにイニシアチブをとるなら今すぐ……。いや、意味がない。こちらは丸腰だ。戦争は終わった。話し合う余地がある相手だ。構うものか、刺し違えた相手だぞ。恨まれているはず。いえ、ありえないでしょ。

 

 いくつもの思考が一瞬で脳裏を巡り、春夢がわずかにフリーズする。

 その刹那の隙を、雫の反応速度が上回った。

 

「遅い……!」

 

「っ!?」

 

 雫はその腕を伸ばし、春夢の首をつかみ、体当たりするようにぶつかり……。

 

「遅いのよ、帰ってくるのが! どんだけ待ったと思ってるの、このバカ!! バカグレン!!」

 

 涙目でそんなことを叫びながら、ぎゅーっと力いっぱい抱きついてきたのだった。

 

「えぇ……?」

 

 

 

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【TIPS】

 

 

【緑の種族】

緑の龍神によって創造されたとされる種族。

エルフ、ドワーフ、小人(コロポックル)、フェアリー、マーメイド、ドラゴン、妖怪、サキュバスなどが属する。

主に緑龍帝国に生息しているが、現在では比較的大陸のどこでも見られるようになった。なお、妖怪は今なおその大半が東方諸島に生息している。

 

緑の龍神は『精神』を司る神格であるため、眷属である緑の種族はその存在を精神に拠る部分が大きいとされる。そのため寿命という面では恵まれており、数百年を生きる者も珍しくはない。反面、精神が弱ると肉体も弱体化しやすいという欠点がある。

「長生きしたけりゃよく笑え」という緑龍帝国に伝わる諺が、種族の生態をよく表しているといえよう。

 

また、精神の美しさが見た目に現れやすいという俗説があり、容姿が美しい者は精神も高貴であるとされているが、これは他ならぬ緑の種族のドワーフによって否定されている。

 

「見た目が美しいやつは心も美しいだって? バカ言うな、森で暮らしてるエルフを見てみろ。日がな一日SNSでマウント取り合ってるネット狂いの引きこもりどもの心が美しいと思うか?」

 

「本当に心が美しい奴の手はボロボロに汚れているものさ、働き者のドワーフ(アタイたち)のようにね。ワハハ!」

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