野郎リンカネーション~スケベ淫魔の転生冒険者学園日記~   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第17話「茜川春夢、蜘蛛の悪夢を終わらせる」

 HPを全損した春夢は、体の芯から全身を駆け巡る衝撃の余韻にじっと耐えていた。

 

 バリアドレスは破壊されるとき、派手に弾け飛びながら魔力の衝撃波を放つ。これによって防ぎきれなかった敵の攻撃からのダメージを相殺し、オーバーキルによって着用者が死亡することを防ぐのだ。

 

 その代わりに、着用者もこの衝撃波による反動によってしばらく身動きが取れなくなり、衝撃が抜けるまで待つか、他者によって救助されるのを待つほかなくなる。

 だが、こういうときは下手に動かない方がいい。何故ならHPが全損している状態で次にモンスターの攻撃を受ければ、確実に致命傷となるからだ。

 幸い、バリアドレスは破壊された後もしばらくその場に小規模な結界を作る。敗北したとしても、下手に動かず救助を待てばいい。冒険者学園ではそのように教わる。

 

 当たり前のことだ。自分の命よりも大切なものなどないのだから。

 

 ……目の前で子供の命が奪われようとしているのに、我が身可愛さにみすみすそれを見逃せというのか?

 そうだな、そうだろうさ。それがまっとうな判断だ。そういった判断ができる冒険者が、優れた冒険者ってやつだ。そんな御託なんて、

 

「くそくらえだ!」

 

 いつだってグレンは自分の信念を信じて生きてきた。

 子供は未来の種、その可能性を守ることが自分の役目だと思ったから、柄でもない白教の勇者の称号まで受け取った。

 周囲の勇者の誰もが無限の死と蘇生に狂っていくなかで、その信念だけを信じて戦い続けた。この世から消えてなくなるその瞬間まで、ただそれだけが願いだった。

 

 それを曲げたら自分じゃなくなる。たとえ死んだ後でも、信念だけは捨てられない。

 頼む、体よ動いてくれ。俺は、まだ意地を張り続けたい。――もちろん、貴方が望むなら。

 

「がはっ!?」

 

 春夢の体に突然強力な魔力が流れ、その衝撃に血を吐きそうな悲鳴を上げる。

 一体何が、と春夢は戸惑うが、次の瞬間に自分の体が動くようになっていることを知った。

 自分の体に魔力でショックを与えて、防衛本能で無理矢理覚醒させたよ。さあ、やろう!

 

「やらいでか……!」

 

 春夢は飛び起きると、まだ赤く輝いている消火斧を拾い上げる。

 

 瀕死の怪人は、フロアの奥に向かって疾走しているところだ。

 フロア中に並ぶ繭のどれかに囚われている子供を喰らって、力を得ようとしている。それだけは阻止しなければ……!

 

 だがどうやって?

 残されたエネルギーを脚力にすべて割り振った虫に先回りできるのか?

 そもそもどの繭に子供が囚われている? フロアの奥は真っ暗で、ゴーレムコアの照明も失った今の自分の目では何も見えない。

 子供が囚われた繭がわからなければ、助けようがない……!

 

 心をよぎる絶望を、奥歯を強く噛みしめてぶち殺す。

 あきらめるな、考えろ! 頭を回せ! 今は指示してくれる誰かなんていない、自分で考えるんだ。ただ一本の剣でいいなんて思考放棄はやめろ!

 

(『餌だ、子供の肉がいる! ハハハハッ、じわじわと悪夢を見せて怖がらせてたからなぁ! きっとおいしく熟成されてるぞっ! そうなったら完全回復だ、ハハハハハッ!! 子分の相手をしてる魔導師もブッ殺して、私の一人勝ちだ! ハハハハハーーーッ!!』)

 

 そうだ、あの怪人は何と言った?

 悪夢を見て怖がらせて熟成させる。つまり子供たちは今、悪夢を見せられている。

 

「夢の扱いでサキュバスに勝とうなんざ、千年早いだろうが!」

 

 自分にはきっとできる。冒険者グレンにできなくても、サキュバスの茜川春夢にならきっと夢を見ている者の位置がわかるはず……!

 そう信じながら、春夢はフロアの奥に目を凝らした。頼む、俺がサキュバスに生まれ変わったというのなら……その素質よ、力を貸してくれ! ――もちろん。

 キンッと音を立てて、春夢の心臓の位置が緑色に輝く。だが、彼女はそれに気づく様子もなく、ただ祈るように闇の中を見つめ続けていた。

 

「……見えた!」

 

 闇の中で、子供が泣き叫んでいるのがわかる。

 同時に、彼らが見せられている夢の内容も伝わってきた。

 

 それはひどくおぞましく、陰惨な夢だった。

 同じ孤児院の子供たちが小蜘蛛の群れに貪り喰われているのを見せつけられる。あるいは自分が小蜘蛛に生まれ変わらされ、別の子供を貪り喰わされる。やめてよ、体を止めてよとどれだけ懇願しても聞き入れられず、蜘蛛の糸で操られる人形のように怪人の命じるままにされる。一度終わってもまた次のシチュエーションへ。

 闇と鮮血に彩られた、残虐で終わりのない悪夢。

 

 その瞬間、春夢の理性が吹き飛んだ。

 

「ふざけやがってッッッ!!」

 

 グレンのスキル“点火(イグニッション)”は、シンプルな強化能力だ。

 手にした武器に魔力を通し、自分の体の延長として扱う。

 グレンの闘志が高まれば高まるほど武器は赤熱し、温度と切れ味を増す。

 ただそれだけの、どこにでもあるようなスキル。

 

 子供に危害を加えるという最大の逆鱗に触れ、春夢が手にした消火斧が激しく発光する。その輝きが、フロア全体を眩く照らし出す。直視すれば間違いなく失明するだろう。

 

『な……』

 

 ちょうど子供が閉じ込められている繭に牙を突き立てようとした怪人が、背後からの光に気づいて身を竦ませる。

 だが彼我の距離は10メートル以上もある。HPを全損した冒険者がまだ動くなど聞いたこともないが、今更あいつが何をしようが間違いなく自分が子供を喰い殺す方が速い。魔法か何か知らないが、間違いなく子供を巻き込むだろう。そんなことができるものか、お前は黙って子供を守れなかったことを噛みしめるがいい!

 怪人は口を大きく開くと、柔らかい子供の肉に勢いよくかぶりつく。

 

 

 ……空間が遠く離れているのなら、その空間ごと斬ればいい。

 守らねばならない対象がいるのなら、その対象を避けて斬ればいい。

 自分にはそれができる。何故なら自分は、ただ一本の剣だから。生涯のすべてを勇者たる友に捧げ、その剣であろうとした男だから。

 “斬る”という行為において、自分は誰よりも優れた剣だと信じている。

 

「断空一閃!!」

 

 春夢がその場で手斧を振り下ろす。あまりにも無造作な手つき。

 その刃から飛んだ赤い剣閃は、繭にかぶりつこうとした怪人の顔面を襲う。

 

『……ん? ハハハッ、なんともない! 幻術で足止めか? くだらないこけおどしだな!』

 

 一瞬ヒヤリとした怪人だが、彼はすぐに笑い声を上げた。

 

 その手元では、繭が真っ二つに裂けている。

 繭の中では魔族の子供が目を閉じたまま苦しそうにうなされ声をあげていたが、彼の体にはまったく異常はなかった。ほんのわずかな切り傷さえもついていない。

 

 そのことに怪人は少々疑問を覚えたが、すぐに彼は別の異常に気が付いた。

 

『んんっ? なんだ、視界がおかしいぞ? 左右の風景がずれて見える……。おい、小娘! 私に何をした! くだらない幻術で攪乱できるとでも思ったか? 命が惜しければ、今すぐこの術を解け!』

 

 そうやって顎を動かしたことで彼の顔についた裂け目は大きくなり……そして完全に真っ二つに裂けた。

 唐突に襲う激痛と、そこから体液が抜けていく感覚。

 

『ああああああ!? 私の、私の顔がああああああ!!! 顔が真っ二つに裂けてるうううううう!! イギャアアアアアアアアアアアアア!?』

 

 500年前の白と黒の戦乱において、100人の勇者のうち最後まで残った一組の勇者パーティにいた戦士、グレン。

 魔王軍では彼と相対するとき、絶対に子供を人質にとってはならないと厳命されていた。

 彼の戦意が最高まで高まったとき、その剣閃の鋭さは空間すらも断ち切り、百を超える魔族兵をまとめて斬って捨てたという。

 

 当時でさえあまりにも誇張がすぎると笑い種になっていた事実を、怪人は500年の時を越えてその身で体験することになった。

 

 だが、それでも怪人はまだ生きていた。頭部の半分を齧り取られ、さらに残った半分を断ち割られ、ドロドロと濁った体液を垂れ流しながらも、それでもまだ消滅には至っていない。恐るべき生命力だった。

 

 一方、春夢が手にした消火斧がドロリと融け落ち、床に滴ってジュウ……と白い煙を上げる。ぶすぶすと蜘蛛糸を焦がす嫌な臭いが立ち込めた。

 限界がきたのだ。グレンが“点火”し終わった武器は、必ずこうなる。ドワーフの名工が丹精込めて鍛え上げた至高の逸品である大剣ですら融けるのだ、超合金とはいえただの消火斧が耐えられるわけがない。

 

 痛い、確かに痛いが……。これで私の勝ちだ、と怪人は裂けた唇を吊り上げた。

 相手はHPもない。武器もなくして丸腰だ。

 自分もまもなく死ぬだろうが、その前に子供を喰らって卵さえ産めば勝てる。もう相手はただの小娘だ、恐怖に震え上がるがいい!

 そう思って顔を上げた次の瞬間、

 

「“点火(イグニッション))”」

 

『!?』

 

 バールを“点火”した春夢の殴打が、怪人の真っ二つに裂けた顔面を横殴りにした。

 

『な、なんだ!? なんなんだお前は!? HPはもうないんだ、丸腰だぞ!? 何故戦える!? 攻撃が当たったら死ぬんだぞ、ビビれよ! 怖がれよ! なんなんだよ!?』

 

「HPだぁ!? 知るか! 俺が生きてた頃にそんなもんなかった! “加護”があろうがなかろうが、誰もが戦いに向き合ってた! 誰もが泣きながら死に抗ってた! 今更ヌルいこと抜かしてんじゃねえ!! とっととおっ()ね化け物が!!」

 

 爛々と瞳を殺意に輝かせながら、春夢が吼える。言葉と共に燃え盛る金属棒を叩き付け、トドメを刺そうと激情のままに攻撃を続ける。

 そう、彼の生きた時代には“加護”がないのが当たり前だった。それでも誰もが生身で戦争に赴き、あるいはモンスターと戦った。どれほど体を鍛え上げようとも、当たり所が悪ければ即死するような巨大なモンスターと、生存のために戦い抜いたのだ。

 

 完全に意識を前世に返らせた春夢が、致命傷を恐れずに肉弾戦に挑むのは彼女にとっては当然のことだった。

 煌々と輝く瞳は血に酔い、殺意に猛る。可愛らしい顔立ちに浮かぶ狂奔は、もはや戦鬼そのもの。

 その形相に、

 

『ヒ……ヒギイイイイイイ!! く、来るな! 来るなアアアアアアッ!!』

 

 怪人は滅多やたらに両腕を振り回し、絶叫を上げた。

 本来人間を恐怖させる存在であるはずのモンスターが、春夢の気迫を前にして恐怖に囚われたのだ。

 

 その振り回す両腕にはヤッキーのコンクリート製の体すら切り裂く破壊力が秘められており、当たれば間違いなく春夢は即死するだろう。

 しかし当たらない。まるで風に舞う羽のように、ひらりひらりと腕をかすめて避けられる。

 

『あああああああ! 当たらない! 当たらない! なんでだよ、さっきは当たっただろう!? あああああああああっ、どうなってる!? どうしてだよぉぉぉぉ!!』

 

 慣れてきた。

 春夢は次で死ぬという土壇場まで追い込まれて、ようやくこの体の戦い方を身に着けてきたのだ。

 敵の攻撃を風圧で察知し、紙一重でかわして、カウンターでぶん殴る。

 茜川春夢がこれまでに培い、体に染みつかせてきた戦い方が馴染んでいく。

 

 しかし、トドメが刺せない。

 どれだけ殴っても、怪人はしぶとく生き延びている。

 何故? いくらモンスターとはいえ、頭部をここまで破壊されて生きていられるわけがない。

 モンスターにも急所というものはある。たとえば脳や心臓。伝承から生じたモンスターには特殊な部位を弱点にしているものもあるが、大体のモンスターは重要な部位を破壊されれば消滅する。

 そこは生物と同じだ。人間の怨念から生じた怪物であるために、人間が『そこを潰されれば死ぬ』と思っている部位を破壊されれば死に至る。

 

 頭部を破壊されても死なないのなら……。

 

「そうか。その頭は偽物か!」

 

 春夢は跳躍すると、怪人の頭を越えて背後に回り込む。

 そして勢いよく赤いマントをはぎ取ると、その尻には蜘蛛そのものの頭部があった。

 

 いや、違う。正確に言うなら、こちらが本物の頭部なのだ。

 これまでヤッキーと春夢が攻撃していたのは、大蜘蛛の尻についていた偽の頭。こいつは常に尻を上げ、そこについている偽の頭を弱点に見せかけていたのだ!

 

「人にケツ穴向けてしゃべってんじゃねえよ屁こき虫が! くたばれ!!」

 

『い、嫌だああああああああ!!』

 

 叫びと共に春夢はバールを大蜘蛛の顔に叩き付ける。

 しかし、大きな金属音と共にその一撃は弾かれることになった。

 

「くっ、硬い……!?」

 

 反動でじんじんと手を痺れさせながら、春夢は眉をしかめる。

 

『は、ハハハハハハッ! わ、私の正体は鉄蜘蛛だぞ! そんな棒きれなど、この鉄の体に通るものか! ざ、残念だったな! ギャハハハハハハッ!』

 

(さすがに金属棒を武器とみなすのは無理があるか……)

 

 “点火”は武器を強化して、切れ味を上げるスキルだ。

 グレンが握るならば、元がどれほどなまくらでも研ぎ澄まされた刃となる。

 しかし元が刃でなければ、さすがに切れ味の上げようがない。

 

 蜘蛛恐怖症と“怪人赤マント”の都市伝説が結びついて生まれた、体が鋼でできたモンスター“鉄蜘蛛”。その体に金属棒を叩きつけても、非力な少女の筋力では傷のつけようがなかった。

 

『今度こそ万事休すだな! そこで私の食餌を指を咥えて見ているがいいわ! いただきまあああああああああすっ!』

 

 大蜘蛛は体の向きを変え、本来の頭で子供に齧りつこうとしている。

 ここまで追いつめておいて、逃すしかないのか……?

 ……いや! さっき自分で言ったはずだ!

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 春夢は大蜘蛛の頭に飛びつくと、その瞳のひとつに真っ赤に燃えるバールを突き刺した。

 

『があああああああああああああっ!? くそっ、まだあがきやがって! だが、こんなものでは私は……』

 

「今だ、ヤッキー! 釘を打てええええええええッ!」

 

『!!!!』

 

 春夢の声に、そのすぐ後ろで様子を窺っていたヤッキーが飛び出してくる。

 頭部と指を失って大蜘蛛を取り押さえることもできず、それでも春夢の魔力反応を頼りに背後に控えていたのだ。

 

 そう、それは先ほどヤッキーのコアが春夢にされたこと。

 押さえつけてバールで叩けば、コンクリートの床にだってゴーレムコアをめり込ませられる。

 つまり、

 

「押さえつけてぶっ叩けば、どんな硬いものにも突き刺さるッ!!」

 

『や、やめてくれええええええええええええッ!!』

 

 大蜘蛛の顔面に突き立ったバールに、ヤッキーが渾身の力を込めて両腕を振り下ろす!

 釘打ちの要領で叩き込まれたバールの先端は、深々と大蜘蛛の顔面に突き刺さり、ついにその脳を粉砕した!

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 

 断末魔の叫びが上がる。

 数年にわたって都市の闇に潜み、罪もない人間を貪り喰ってきた鋼鉄の蜘蛛は、ついに最期の時を迎えた。

 

 

 

 春夢はふうっと息を吐きながら、繭の中から子供たちを引きずり出す。

 蜘蛛糸に包まれた2人の少年は顔色が悪かったが、どうやら命には別条はないようだった。悪夢も覚めつつあるのか、小さな寝息を立てつつある。

 

 春夢の喉から、ほっと安堵の息が漏れた。

 

 そんな彼女の背中に、絶命寸前の蜘蛛が小さな囁き声を漏らす。

 

『た……助けて……助けてくれ……私が悪かった……』

 

 春夢は立ち上がると、今際の際に命乞いしようとする怪物を無言でじっと見下ろした。

 その隣に、小蜘蛛を始末した雫が並んでくる。

 

『こ、子供……お前は子供を助けたいんだよな? 私だって子供だぞ。私は死にゆく子供の恐怖から生まれたんだ。つまり子供と言っていいだろう?』

 

「こいつ……!」

 

「……」

 

 眉をしかめる雫の隣で、春夢はただじっと黙っていた。

 その沈黙に付け入る隙があるとみなしたか、大蜘蛛が語気を強める。

 

『お前は子供を殺すのか? お前が助けようとした子供と私に何の違いがある? な、見逃してくれよ。もう二度とお前の前には現れない、人間も喰わない。約束するよ……な? な?』

 

「言いたいことはそれだけか」

 

 春夢はつかつかと大蜘蛛の前に歩み寄ると、腰をかがめてその顔に手を添える。

 それは死にゆく怪物に慈悲をかける乙女にも見えるポーズで。

 雫はただ、春夢が何をするかを見守っていた。

 

「お前は勘違いしている。子供が守られるべき存在なのは、未来の種だから。まだ何者でもない可能性の種だからだ。お前は確かにかつて子供だったろう。でも、今は“人食いの化け物”に成った。子供を好んで喰らう最低の化け物に。お前のような悪夢にかける情けはない」

 

『あ……?』

 

 冷たい声に、大蜘蛛は呆気にとられた声を上げる。

 そして、春夢は大蜘蛛の顔の奥に埋まったバールに向かってスキルを起動した。

 

「“点火(イグニッション)”」

 

『~~~~~~~~~~~~~!!!!!』

 

 体内から一千度を超える灼熱に焼かれ、大蜘蛛は一瞬で業火の中へと消える。

 その炎に振り向きもせず、春夢は保護した少年たちを腕の中に抱きしめながら呟いた。

 

「消えろ、悪しき夢。子供には幸せな夢がふさわしい」

 

 

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【TIPS】

 

【乱世の余燼(よじん)

茜川春夢が持つユニークスキル。

HPが0になった後も、無理矢理に体を動かして戦闘を続行する。

このとき敵の気勢が春夢より劣っていれば、敵に恐怖状態を付与する。

当然この状態で攻撃を喰らうと致命傷となり、死亡する。

 

かつてグレンが生きた時代、これは戦士ならば誰もが持つ、スキルとも呼べないほどの心構えだった。

誰もが生身で戦に臨み、血に狂い、他人の命を奪うことで自分の命を長らえていた。

これは乱世の戦場に生身で立つ者の狂奔を示すスキルだ。

 

500年が経ち、今は誰もがその狂奔を忘れ去った。

今なお唯一それを覚えている者がいるとしたら、それはユニークスキルと呼べるだろう。

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