怪力魔女は異世界でも腕力で無双する   作:手の遅いエリオット

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第一話

彼女は森の中で目を覚ました。

 

「なんだ……ここはどこだ?」

 

反射的に彼女は空を見上げる。敵は空から現れるからだ。

 

次に彼女は足へと意識を向ける。……長年の相棒がそこにはない。

 

「なんてことだ!ストライカーがない!どこだ!?」

 

機敏な動きで立ち上がるや、彼女は周囲を警戒しつつ観察する。なにしろ敵は狡猾でなんでもやってくる。警戒は厳に行うのが基本。

辺りを見回し、数メートルの範囲内で異常はないか確認しつつ検索したが何も特異なものは見当たらない。敵もいないが、ストライカーもMG42もフリーガーハマーもない。ロッテを組んでいたエーリカもいない。耳のインカムもなくなった。

魔法力は健在。ストライカーの増幅は得られないがシールドは張れるし固有魔法もしっかり使える。試しに傍らにあった大木に手を伸ばし力を込めてみたがメキメキと音を立てて木は倒れた。目立つわけにはいかないので魔法の検証はこれ以上は控える。

 

彼女、ゲルトルート・バルクホルンは現状把握が一旦終わり、自身の安全を確認したところでため息と共に頭をかいた。

 

「だいたいは現状を確認した。どうやら軍服以外は装備が失われている。だがネウロイも見当たらない。地形は見覚えがない。そもそも欧州の気候かどうかも怪しい。どうなっているかさっぱりわからんぞ」

 

彼女は歴戦の軍人である。現状を把握したらどうすべきかを迅速に判断し、取るべき指針が明確になったら即座に行動する。そうじゃなければ戦場で生き残れないからだ。

だが、まず自分が立っている場所の座標が不明確だ。ストライカーがあればまず飛び立ち周囲の地形を確認して大まかな座標を特定し、誰かウィッチや友軍の助けが得られないかを考える。だが空に飛べない上に通信手段も無いとなればそれも困難だ。そうなると火を起こしたりして敵に察知される行動も慎まなければならない。歴戦の勇士である彼女にはそういう判断力が骨身に染みついている。

 

次善の策として、彼女はそこを離れ索敵も兼ねて大きく移動する判断を下した。誰かが自分を探している可能性を鑑み、彼女は周囲を警戒しつつ周囲の大木をなぎ倒し、501の部隊章の意匠に似せた空き地を作った。空から見れば501の関係者が意図的に作ったと判断できるはずだ。これでここにいた手がかりを残せる。かなり大きな音を立ててしまったが周囲にネウロイがいるらしき様子はない。

 

さすがに力を使ったことで空腹を覚える結果となった。体力を考えるとゆっくりもしていられない。

彼女は近くで一番高い木に登ることにした。飛べないとはいえ、やはり高所から周囲を観察するのは基本である。枝打ちをしていない針葉樹は手がかりもそこそこあり登るのに苦労しなかった。……ふと、彼女は木登りして昼寝をする手のかかる同僚の顔を思い浮かべた。ルッキーニは元気にやっているだろうか?

周囲を見渡せる高さまで登った彼女の視野に、そう遠くない場所に街並みが映った。これが罠で無いならば助けが得られそうだ。なにより腹が減ってしまったので何か食料が欲しい。ジャガイモがあれば助かるが贅沢は言っていられない。

 

移動する道すがら、彼女は仲間たちの安否を思いやる。故郷の地は奪い返したとは言え、まだ戦いは終わっていない。憎きネウロイの巣はまだまだ残り、彼女が戦うべき戦場は残っている。人類の存亡をかけた決戦が続く限り彼女たちの任務は終わらないのだ。こんなところでじっとしていられない。なんとか仲間の元に帰らねば。

 

遠くから見えた街に近づくと、ディテールははっきりしてきた。しっかりした城塞に囲まれ、物見の櫓も存在する。入り口には武装した門番が立ち、明らかに外部からの敵の侵入を防ぐ体制だ。彼女の兵士としての経験からこういうケースにおける対応はよく分かっている。

 

門番の目鼻立ちが視認できる、その上で投擲武器の届かない距離まで近づいたところで彼女は腕を後ろに組み、敬礼の姿勢を取った。

「私は統合連合軍、第501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズ所属のゲルトルート・バルクホルン少佐だ!戦闘任務中に問題が発生し、急遽支援が必要な状況となってしまった。一刻も早い原隊復帰を果たすために手助けを求めたい。こちらには敵対の意志はない!どうか力を貸していただきたいので上官への取り次ぎをお願いしたい!」

 

大声を張り上げ相手に必要な用件を伝えた……はずだ。相手には聞こえたであろうと思われる。だが、相手の門番は彼女を見てはいるものの、反応が鈍い。

礼儀を考え、彼女はしばし敬礼の姿勢のまま待機した。だが相手からの反応が無い。しばらく彼女と門番は互いに動けず硬直したままとなった。

 

そこに新たな門番がやってきた。すると元の門番となにやら会話を交わしている。だが……聞いたことの無い言語のように聞こえる。

彼女はここで新たな悪い情報を得ることとなった。自分がいた世界の言語は大まかに把握しているし、人類の存亡の危機に接した状態になってからは世界で言語がブリタニアベースになっているはず。と、いうことは……ここが『彼女が知らない世界である』可能性があるのだ。

これは困った。さすがに地球上ではあろうが、それでも公用語が通じない未見の地域に来てしまったとなれば対応が難しい。あらゆる可能性が彼女の頭を駆け巡ったが、現状においては相手の反応を見てからになる。そもそもが腹が減っていて頭の動きも鈍い。いざとなれば彼女が単身で彼らを相手に大立ち回りを演じる必要もあるかもしれない、だがそれは避けたい。

 

新たに来た門番は一旦下がり、またしばらく時間が経過した。なんとも気まずい雰囲気だ。

次に来たのは門番の格好ではなく、比較的身なりの整った男性であった。

 

「あなたは地球から来られた方ですか?」

 

やや癖のあるブリタニア語。これなら会話は成立しそうだ。だが。

 

「すまないが状況を整理させて欲しい。つまりここは、地球ではないと言うことか?」

「こちらからは明確にお答えはしかねますが、少なくともここにはあなたのように地球から来られると思われる方が時々来られるのです。よって、私のように地球で一般的な言語である英語を話せる渉外担当がいるのです」

「あー、あなたの言っている内容は理解できた、だが情報がまだ足りていないところがある。最低限会話が成立しているのはありがたいが、可能であればもう少し情報共有をお願いしたい、それと……」

 

彼女の腹がぐううと、盛大な音を立てた。

思わず彼女は赤面する。

 

「申し訳ないが食料を分けてはもらえないだろうか?」

 

相手の人物の顔が緩んだ。

 

「承知しました。まず食事を用意しましょう。急なことですので芋などの簡単なものになりますが」

「それでいい!むしろありがたい!」

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