怪力魔女は異世界でも腕力で無双する   作:手の遅いエリオット

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第八話

バルクホルンがこの世界にたどり着いて一週間が経過した。彼女は足繁くギルドに通い、ミラシャナに手がかりがないか問い詰め、成果がないと分かるやその足で街を探索し、様々な人に話しかけつつ情報を集めるのが日課になっていた。

今のバルクホルンは巻きスカートを身にまとっている。下半身が露出しているのは傍目から見て扇情的でよろしくないとミラシャナにこっぴどく忠告されたからだ。

 

「いいですか、バークさんは魅力的な女性です!そんなチャーミングなあなたが足もあらわに歩いていたら世の男性方にあらぬ誤解や期待を持たれてしまいますよ!その上でバークさんは強いから言い寄ってきた男性方をみんな返り討ちにしちゃうじゃないですか!それが回り回ってギルドへと届けられてこちらの事務仕事が増えるんです!これは必要なことだと割り切っていただいてこちらの風習に従って下さい!」

 

と、ここまで言われてしまっては致し方がない。せめてもの妥協策として、魔力発動時にすぐ下半身の衣服を脱げるように外しやすい巻きスカートを身につけることとしたのだった。

 

あいかわらず足にまとわりつくスカートの感覚は慣れない。だが必要ならば我慢せねば。

 

彼女を悩ませているのは他にもあった。魔力発動のタイミングである。

ここにはストライカーがない。魔力を増幅し補助してくれる機器がない。ウルスラがいたらなんとかしてくれそうだなと思ってみたりもするが、どうせ実験で爆発騒ぎも起こすだろうからそれはそれで悩みの種にもなりそうではある。バルクホルンには魔導機関の使い方は分かっても工学的な知識はないので、ここで再現させるのは不可能だ。結果として、ストライカーがあるときのように常時魔力を発動させておくことはできない。ここぞというタイミングまで温存せねばならない訳だ。

そして、別の問題も存在した。

 

バルクホルンが魔力を発動させ使い魔の耳と尻尾を発現させると、周囲から人が消えるのである。

たいていそういうときにはみんな物陰に隠れておびえているのである。

 

「すいません、すいません、ただどうしても反射的に怖くなるんですよぅ」

「バークさんに罪はないのは理解しているんですが、あの凄まじい破壊の光景が脳裏に残っていましてね、理屈じゃなく感情で動いてしまいます。申し訳ありません」

 

ミラシャナとフィンにこうまで言われてしまった。そのほかの人々も、彼女の怪力を目の当たりにした次からは同様の反応になる。曰く、見目麗しい女性が笑顔と共に理外の力を行使してあらゆるものを破壊する光景がとんでもないインパクトに映るという。

 

そう言われてしまうとバルクホルンにも反論の目はない。ここはネウロイもいないしストライカーを用いた軍隊装備もない。女性が重量のある装備を振り回すのに慣れ親しんでいない以上、違和感があるのはしょうがないことだ。ましてや彼女の固有魔法は怪力。大きな岩石を持ち上げ、大木を引き抜いて振り回す。魔物に使えば拳が当たった瞬間に相手が血煙と共に木っ端微塵になる。……さすがにこれを間近で見てしまうと恐怖感が湧き上がるのもむべなるかな。

 

とはいえ、バルクホルンも年齢的にはまだ十代のうら若き女性であるわけであり、露骨に怖がられ遠ざかれてしまうのは心が痛かった。

ああ、早く帰りたい。みんなのところに帰りたい。バルクホルンは改めてそう思った。

 

「バークさん、どうしたの、ぼうっとして」

「あらら、バークさんにしては珍しい」

「何か考え事?だとしたら興味があるなぁ、何を考えてたんですか?」

 

立ち止まって物思いに耽っていたバルクホルンにパーティーメンバーが声をかけてきた。

 

「……なんでもない」

 

彼らも彼女のことをバークと呼んでくる。最初は何とかしてバルクホルンと呼ばせる努力をしてみたのだが、結局無理だった。

 

大柄で気のいい戦士の男性、彼は地球のブラジルから流れ着いた人物で「トニャオ」という名前だ。地球ではあるがバルクホルンのいた地球ではない。大振りの剣を携え、頑丈そうな盾も装備している。

 

二人目のスカウトを務める小柄の女性はこの世界の出身で「フィエラ」。装備としては必要最小限で、革製の胴鎧に小手を使っている。

 

三人目の魔法使いの女性は「タヴィサ」と言った。彼女は変わり種で、アフリカから流れてきた地球人が大昔に流れ着いた際にこちらの世界の人間と婚姻を結び、そこから産まれた女性だ。父の家系か母の家系かよく分かっていないが産まれながらにして生来の高い魔法特性があったことから魔法使いとして冒険者をしながら魔法の研究にも携わっている。先祖の文化を大事にしており、顔に独特なペインティングをして首から派手な装飾品をぶら下げている。

 

彼らは冒険者としての経験が豊富で、今までも数多くの魔物討伐を成し遂げている。

トニャオが前衛に立ち相手の攻撃をいなしている間にタヴィサが魔法で支援や攻撃を行う。フィエラはそこからやや離れた場所に身を隠しており、敵の状況を把握して仲間に適切な指示を飛ばしつつ、隙を見て自分も短剣で適宜攻撃に参加するスタイルだ。

 

ここにアタッカーとしてバルクホルンが加わった。シールドで攻撃を受け流しつつ棍棒で攻撃。歯ごたえのある魔物の場合、怪力を乗せた攻撃で吹っ飛ばす。

 

ただ、可能な限り魔法は使わない攻撃を心がけていた。なにしろ威力が高すぎるのだ。攻撃で魔物が木っ端微塵になってしまうので、魔物討伐の証拠が残らない。……あと、パーティーメンバーが怖がってしまいフォーメーションも崩れてしまうのも問題だった。

 

戦闘のたびにこのようなやりとりが発生する。

 

「……バークさーん!僕のそばでそれをやらないでくださいよ!僕まで木っ端微塵になりそうで怖いんですけど!」

「あーあ……また討伐記録が残らない……どうしよう」

「おおおおお!相変わらず凄まじいですね!怪力魔法、是非とも解明したい!研究したいのでもう一回ぶっ放してくださーい!」

「タヴィサ!私の身体にベタベタ触るな!うっとうしい!」

 

……タヴィサだけは怖がらず、むしろバルクホルンに対してぐいぐい迫ってきた。今まで知らなかった魔法体系に興味津々で、怪力を行使するたびに距離を縮めてくる。ただバルクホルンにとっては実験動物として観察されているようで不快だった、とはいえ、三人ともまっすぐな性格で付き合うには心地よい者たちだ。というか、問題行動を起こす人物は慣れっこであるのでこのくらいの素行の悪さは許容範囲だった。

 

元の世界に戻る手段を捜すうえでも、三人は適役と言えた。

トニャオは同じ地球出身者だ。身の上などから共通項が見つかるかもしれない。

フィエラは調べごとが得意で、あちこちから転移した人の情報を探ってくれていた。

タヴィサは魔導に精通しており、こちらの魔法に加えてアフリカの精霊魔法についても多少の知識があるようだ。バルクホルンがシールドを展開させた際に現れた魔方陣に大変興味を示し、細かく描き写して研究対象にしたようだった。

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